食堂の若女将、宮廷出仕する
「莉星、主上の夕餉を作った次には茶会なんて、大変ね」
そう双夏に言われた。確かに忙しい。
「まぁ、頑張らないとだし…」
「そうね。じゃあ厨房に行ってらっしゃい」
数時間後…
現在、[漢字]舞花[/漢字][ふりがな]マイファ[/ふりがな]様は、貴妃である[漢字]雪可[/漢字][ふりがな]シュカ[/ふりがな]妃と茶会中だ。舞花様は、新参者なので、挨拶をしなければいけないので、こうして茶会に誘っている。
雪可妃で四夫人は最後だ。だからと言って、「気楽」というわけではない。なぜなら、雪可様は妃達の中で1番家の格式が高いそうだ。代々帝から重要視されている寵臣の一族らしい。だからこそ、こちら側はとっても気を使うのである。
そんな中でも、舞花様は凛としていて、帝から賜った服を着て、上品さを醸し出していた。
一方の雪可妃は、
「舞花妃、今回はお誘いいただきありがとうございますね」
こんなふうに、
[大文字]余裕そうな感じだった。[/大文字]
雪可妃の方が先輩だし、妃として位も高いし、家の権力もある。だからと言って、舐められたら困る。
そんなことより莉星が気になっていたのは、
(みなさんめっちゃキレてるーーーーー!)
舞花様側の侍女は、物凄く怒っていた。よくよく考えると、身の回りにいる侍女は、特に忠誠を誓っているし、莉星と違ってお仕えしている年数も違うのだから当然だ。
けれど、そんな状況を逆手に取ったように雪可妃が言った。
「こちらの茶菓子、美味しいですわねぇ。お土産に貰っても?」
どこか妖艶で、自信たっぷりの笑みを浮かべていた。
だがそんな妃の言葉をふんわりとした物言いで「えぇ。ぜひお持ち帰りになってください」と舞花様はおっしゃった。
けれど、雪可妃は笑みを顔に浮かべたまま舞花様を見つめていた。
そんな雰囲気を変えようと舞花様が、
「莉星、[太字]あれ[/太字]を持ってきてちょうだい」
「承知しました」
あれとは何か、私といったら料理、ということで今回の茶会のためにちょっとした[漢字]点心[/漢字][ふりがな]おやつ[/ふりがな]を作っておいたのだ。
それを作っていたのは約4時間程前だ。
「莉星、今回の茶会で出す点心はなんなんですか?」
[漢字]麻豊[/漢字][ふりがな]マーホン[/ふりがな]が目をキラキラさせて聞いてくる。
「それは、杏仁豆腐です!」
「⁉︎いいなーたべたぁい」
どうやら杏仁豆腐は麻豊の大好物なようだ。
「あとでまた作ってあげるから」
そう言っておいて、杏仁豆腐作りを始める。
まずは、鉢ににかわを固めたものを入れる。にかわとは、動物の皮や骨を煮て作られたものだ。そのにかわを水に浸しておく。
その次に、前日水に浸しておいた主役の、[漢字]南杏[/漢字][ふりがな]ナンキョウ[/ふりがな]、[漢字]皇杏[/漢字][ふりがな]コウキョウ[/ふりがな]を別の鉢に入れる。その後、細かく潰しながら混ぜる。混ぜる時は、浸しておいた水と一緒に。
大体原型がなくなってきたら、晒しなどで濾して、なめらかな部分を抽出する。
とろとろしていて、固まったらどうなるんだろう、と小さい頃は必死に考えていたなぁ、そう思い出に浸る。
ただ、ボーっとしていてはいけない。我に帰ってまた集中する。
濾し終えると、杏仁液を鍋に移す。そうしたら、牛の乳、純乳脂、砂糖を入れ、中火で混ぜる。
(甘ーい、いい匂いだー)
しばらくすると、台所に甘い匂いが漂ってきた。
その後、鍋がふつふつ湧いてきたら、弱火にして、砂糖をさらに加える。
水で戻しておいたにかわを鍋に入れる。弱火のまま、溶けるまでよく混ぜる。
にかわが溶けたら鉢に移し、そこに氷水を当てて、粗熱を取る。
少しとろっとしてきたら、濾し器に入れ、さらに滑らかに。これをすることで、とろーりなめらかになるかが変わってくる。
最後に[漢字]硝子[/漢字][ふりがな]グラス[/ふりがな]に入れて、2、3時間程冷やし、固めてクコの実を乗せれば完成だ。
ぷるんぷるんでツヤツヤ輝く杏仁豆腐、甘党の莉星も麻豊と一緒で大好物だ。
そんなことはさておきそれを持ってきて、毒見の前に置く。
舞花様の毒見役はいつも通り頬を緩めていた。
相手側の毒見は…
(めっちゃ目、キラキラさせてるー!!)
嬉しいことだが大丈夫なのだろうか?そう思いつつ事を傍観する。
そして妃のところに杏仁豆腐が置かれる。
舞花様も笑みを浮かべて杏仁豆腐を味わっていた。
だが、雪可妃はどうだろ?そう思って雪可妃の方を向くと…
(めっちゃ目キラキラさせてるー!!)
いやいや、そんなに気に入った?正直淑女って感じだったから驚きだ。
「舞花様、こちらの杏仁豆腐美味しいですわね。皆様方がそのような表情をされるのも頷けますわ。[漢字]金剛石[/漢字][ふりがな]ダイヤモンド[/ふりがな]のように輝いていて、とってもプルンプルンしてて、歯で噛むととろんと溶ける、こんなに美味しい杏仁豆腐なんて食べたことありませんわ。この杏仁豆腐は誰がお作りに?」
その言葉に舞花様が答える。
「こちらの王莉星です」
紹介されたので、私はぺこりと頭を下げておく。
「あなたが…。とても料理が上手なのね」
「お褒めいただきありがとうございます。料理については食堂を営んでいましたので」
言葉があっているかわからないがとりあえず言っておく。
その後も2人でお話しをして、茶会は終わった。一部妃らしい探りを入れたような発言も見られたが、とりあえず終わったようで良かった。
雪可妃が席を立ち、「それでは」と言って、玄関の方へ向かったので、お辞儀をした。
その時、耳元で、
[明朝体]「ぜひまたあなたのお料理、食べたいわ」[/明朝体]
そう雪可妃に言われた。妖艶で、艶やかで、男であれば惚けてしまいそうな声で。
(ひとまず安心だと思ったけど、やっぱりそうでもないなぁ…)
そう双夏に言われた。確かに忙しい。
「まぁ、頑張らないとだし…」
「そうね。じゃあ厨房に行ってらっしゃい」
数時間後…
現在、[漢字]舞花[/漢字][ふりがな]マイファ[/ふりがな]様は、貴妃である[漢字]雪可[/漢字][ふりがな]シュカ[/ふりがな]妃と茶会中だ。舞花様は、新参者なので、挨拶をしなければいけないので、こうして茶会に誘っている。
雪可妃で四夫人は最後だ。だからと言って、「気楽」というわけではない。なぜなら、雪可様は妃達の中で1番家の格式が高いそうだ。代々帝から重要視されている寵臣の一族らしい。だからこそ、こちら側はとっても気を使うのである。
そんな中でも、舞花様は凛としていて、帝から賜った服を着て、上品さを醸し出していた。
一方の雪可妃は、
「舞花妃、今回はお誘いいただきありがとうございますね」
こんなふうに、
[大文字]余裕そうな感じだった。[/大文字]
雪可妃の方が先輩だし、妃として位も高いし、家の権力もある。だからと言って、舐められたら困る。
そんなことより莉星が気になっていたのは、
(みなさんめっちゃキレてるーーーーー!)
舞花様側の侍女は、物凄く怒っていた。よくよく考えると、身の回りにいる侍女は、特に忠誠を誓っているし、莉星と違ってお仕えしている年数も違うのだから当然だ。
けれど、そんな状況を逆手に取ったように雪可妃が言った。
「こちらの茶菓子、美味しいですわねぇ。お土産に貰っても?」
どこか妖艶で、自信たっぷりの笑みを浮かべていた。
だがそんな妃の言葉をふんわりとした物言いで「えぇ。ぜひお持ち帰りになってください」と舞花様はおっしゃった。
けれど、雪可妃は笑みを顔に浮かべたまま舞花様を見つめていた。
そんな雰囲気を変えようと舞花様が、
「莉星、[太字]あれ[/太字]を持ってきてちょうだい」
「承知しました」
あれとは何か、私といったら料理、ということで今回の茶会のためにちょっとした[漢字]点心[/漢字][ふりがな]おやつ[/ふりがな]を作っておいたのだ。
それを作っていたのは約4時間程前だ。
「莉星、今回の茶会で出す点心はなんなんですか?」
[漢字]麻豊[/漢字][ふりがな]マーホン[/ふりがな]が目をキラキラさせて聞いてくる。
「それは、杏仁豆腐です!」
「⁉︎いいなーたべたぁい」
どうやら杏仁豆腐は麻豊の大好物なようだ。
「あとでまた作ってあげるから」
そう言っておいて、杏仁豆腐作りを始める。
まずは、鉢ににかわを固めたものを入れる。にかわとは、動物の皮や骨を煮て作られたものだ。そのにかわを水に浸しておく。
その次に、前日水に浸しておいた主役の、[漢字]南杏[/漢字][ふりがな]ナンキョウ[/ふりがな]、[漢字]皇杏[/漢字][ふりがな]コウキョウ[/ふりがな]を別の鉢に入れる。その後、細かく潰しながら混ぜる。混ぜる時は、浸しておいた水と一緒に。
大体原型がなくなってきたら、晒しなどで濾して、なめらかな部分を抽出する。
とろとろしていて、固まったらどうなるんだろう、と小さい頃は必死に考えていたなぁ、そう思い出に浸る。
ただ、ボーっとしていてはいけない。我に帰ってまた集中する。
濾し終えると、杏仁液を鍋に移す。そうしたら、牛の乳、純乳脂、砂糖を入れ、中火で混ぜる。
(甘ーい、いい匂いだー)
しばらくすると、台所に甘い匂いが漂ってきた。
その後、鍋がふつふつ湧いてきたら、弱火にして、砂糖をさらに加える。
水で戻しておいたにかわを鍋に入れる。弱火のまま、溶けるまでよく混ぜる。
にかわが溶けたら鉢に移し、そこに氷水を当てて、粗熱を取る。
少しとろっとしてきたら、濾し器に入れ、さらに滑らかに。これをすることで、とろーりなめらかになるかが変わってくる。
最後に[漢字]硝子[/漢字][ふりがな]グラス[/ふりがな]に入れて、2、3時間程冷やし、固めてクコの実を乗せれば完成だ。
ぷるんぷるんでツヤツヤ輝く杏仁豆腐、甘党の莉星も麻豊と一緒で大好物だ。
そんなことはさておきそれを持ってきて、毒見の前に置く。
舞花様の毒見役はいつも通り頬を緩めていた。
相手側の毒見は…
(めっちゃ目、キラキラさせてるー!!)
嬉しいことだが大丈夫なのだろうか?そう思いつつ事を傍観する。
そして妃のところに杏仁豆腐が置かれる。
舞花様も笑みを浮かべて杏仁豆腐を味わっていた。
だが、雪可妃はどうだろ?そう思って雪可妃の方を向くと…
(めっちゃ目キラキラさせてるー!!)
いやいや、そんなに気に入った?正直淑女って感じだったから驚きだ。
「舞花様、こちらの杏仁豆腐美味しいですわね。皆様方がそのような表情をされるのも頷けますわ。[漢字]金剛石[/漢字][ふりがな]ダイヤモンド[/ふりがな]のように輝いていて、とってもプルンプルンしてて、歯で噛むととろんと溶ける、こんなに美味しい杏仁豆腐なんて食べたことありませんわ。この杏仁豆腐は誰がお作りに?」
その言葉に舞花様が答える。
「こちらの王莉星です」
紹介されたので、私はぺこりと頭を下げておく。
「あなたが…。とても料理が上手なのね」
「お褒めいただきありがとうございます。料理については食堂を営んでいましたので」
言葉があっているかわからないがとりあえず言っておく。
その後も2人でお話しをして、茶会は終わった。一部妃らしい探りを入れたような発言も見られたが、とりあえず終わったようで良かった。
雪可妃が席を立ち、「それでは」と言って、玄関の方へ向かったので、お辞儀をした。
その時、耳元で、
[明朝体]「ぜひまたあなたのお料理、食べたいわ」[/明朝体]
そう雪可妃に言われた。妖艶で、艶やかで、男であれば惚けてしまいそうな声で。
(ひとまず安心だと思ったけど、やっぱりそうでもないなぁ…)