二次創作
転生したら愛された件について【sha】
〈シャオロンside〉
「ほんまに?」
不機嫌そうに顔をしかめるロボロに「ほんと」と笑って返す。
恐怖心は、見ないふりをして。
俺が高校生だった頃の、未熟な心。
それは、ツギハギだらけで、血だらけで、ズタズタだった。
ぬめりと黒く光る、怒りと恨みが混じった血。
忘れることができていたのに、アリアのせいで全部全部思い出してしまった。
見ないふりをしても、しっかりと存在感を残した感情は、どこに捨てればいいんだろう。この感情は、ずっとずっと前からあったはずなのに、まだこの感情との向き合い方を知らない。
アリスの、アリアの、青い瞳が俺の中の何もかも、見透かしてくる気がして、その瞳の色が大嫌いだった。俺の真っ黒なブラックホールを見つけられてしまわないかと内心ひやひやした。
足取りがおぼつかなくて、倒れかける。ふらりとした感覚だけが唯一わかったことで、鈍い頭はなにが起きたのかさえ理解できない。
そのまま、隣にいたロボロに受け止められた。申し訳ないと思いつつも、今のままでは立ち上がることもできなかった。
「ほら、大丈夫やないやん」
耳のすぐ近くで、透き通った綺麗な声。
息が耳にかかって、びくっとする。それもロボロは分かっているくせにやってくるから、たちが悪い。
「! …っ」
そのせいで余計脱力してしまって、ずる、としゃがみこむ。
ゾムの慌てたような顔が視界の端にちらりと見えた。ロボロもしゃがんでくれて、頭を優しく撫でられる。
眼の前に、マゼンダピンクの瞳。俺が大好きなそれはただ、優しさを灯して俺を見ていた。
「ぅ、あ……ふ…っ」
じわりと涙が滲む。
ずっとむかしの親友たち。ジジッとノイズがかかった昔の記憶と、ロボロがピッタリ重なる。
あのときも、俺が辛いときにあいつが撫でてくれた気がする…。
もう、あの日になくしたはずのぬくもり。撫で方も、本当にどこまでもあいつに似ている。
「え!? シャオロン…?」
ゾムはしゃがみ、慌てたように俺のことを見ている。そりゃそうよな。急に隣にいたやつが泣き始めたら。
けど、今はそれに対応することもできない。今だけは、目の前の温もりに甘えていたかった。
「大丈夫だから」
ふわりと抱きしめられる。
さらに涙が止まらなくなって、ロボロの肩に顔を埋める。この情けない顔を見られないように。
なんとなく心細くて、ロボロの片方の袖を握る。すると、そっちの手は俺の指と絡ませられる。しかも恋人つなぎ。ちょっとびっくりした。先ほど俺が重ねていたあいつは、こんなことしただろうか。
トントンと背中を軽く叩かれる。まるで親が子どもにするように。これはきっとゾムだろう。少し不器用な感じがする。
ふたりの暖かさが直接与えられて安心する。そのせいか、なんだか眠くなってきた。
「寝てええで」
それを見透かしたみたいにピンポイントでロボロがいう。
撫でられるのがとても心地よくて、意識がどんどん薄れていく。
温かい体温に甘えながら。
〈ロボロside〉
シャオロンが俺の肩に身を埋めて寝た。こいつが泣いているところなんて初めて見た…気がしないのは、なぜだろうか。俺がこのシチュエーションに遭遇したのは初めてなはずなのに。
なんで泣いてしまったのだろう。アリアとやらが原因らしいが…。それさえも詳しくはわからないけど、なんだかその気持ちがわかる気がした。
心がズキリと痛む。彼と初めて会ったときから、感じていた痛み。
初対面のはずなのに、昔からこいつを探していた気がした。会ったことのある気がした。ずっと、謝らなければいけないことがあった気がしてやまないのだ。
「いっぱい辛い思いさせて、ごめんなぁ」
口をついて出た言葉。これを、なぜかずっとお前に言いたくて。
強く抱きしめると、シャオロンの身体がぴくりと震えた。その無防備な顔がどうしようもなく愛おしくて、思わずキスをする。
「ん…っ」
シャオロンが小さく声を漏らす。まさかではあるが、襲われたいん?
あまりにも、無防備すぎる。いくら寝ていても、俺が男だとしても、油断しちゃいけんのにな…。微笑ましいその額にもう一度口づけする。
起きたらその旨を教えなければ、と思いながらゾムを一瞥すると、予想通り慌てている。
「ろ、ロボロ、シャオロンどないしよ…?」
右に左に、おろおろとしているゾムに思わず笑ってしまう。「なに笑ってんねん!」とぽかぽか殴られたのは仕方ないのかもしれない。
「いったん、部屋に運ぼうか」
汗でべったりと張り付いている前髪をはらってやりながら、彼の体をゾムに引き渡した。
ゾムに運んでもらっているシャオロンはまだ時折涙をこぼしている。痛ましい姿に顔をしかめながら、目尻の涙を優しく拭い取った。
城内をてくてく歩いていく。広すぎて最初こそ迷ったものだが、何回もシャオロンのもとを訪ねているので道は熟知している。
ダークオークに、琥珀の装飾が施された扉。そこが、シャオロンの部屋だった。
彼の部屋は城の中でも東側の、塔のようなところにある。塔といえど、城なのでめちゃくちゃ広い。俺の自室の軽く数倍はある。
王子なのだから当然だが。
「もしもし」
とんとん、と軽くドアをノックすると、猛スピードでドアが開いた。予期せぬことに対処できず、ごんっと額にドアがぶつかる。
「いっっっった!」
「あ、ごめんなさい…って、シャオさん…?」
やはり中から出てきたのは、ショッピくんだった。
シャオロンは喧嘩をしたとは言っていたけど、やはり心配だったらしい。シャオロンが一方的にキレているといったところか。ショッピくんもショッピくんで、シャオさんがキレるくらい悪いことをしたらしいので、仕方ない。
彼はゾムに横抱きされたまま寝ているシャオさんに、すぐに駆け寄った。
彼はただ泣きながら眠っている。今は伏せられたシトリンの瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。
「これ…」
明確な敵意を示し始めた彼に、ゾムは全力で首を横に振った。とんでもないとばっちりである。
「ちゃうちゃうっ!」
「なにがですか? さっさと説明しやがれください」
それでも、彼はゴゴゴ…と効果音を出さんばかりに殺意を高めている。人を殺すことに躊躇しない、マジな目をしている。
こいつはシャオロンのためなら世界だって敵にまわせる気がする。まあ、俺等もだけど。
さっき運んでるときにゾムがシャオロンの首にこっそりキスマ残してたのは言わんほうがええな…。
いつかはバレるだろうけど、今言ったらとんでもないことになる。
彼の腰に常備されているレイピアを見ながら思う。確かシャオロンからの贈り物だった気がする。ボンメルにはアメシストがピタリとはめ込まれていた。
「あの…一旦部屋はいらん…? シャオロン寝かせな」
気まずいのは承知で声をかけると、ショッピくんは意外にも秒速で頷いた。アメシストの瞳が、シャオロンを愛しげに写している。
「当然です」
このシャオロン至上主義者が。
その言葉をぐっと抑え、シャオロンの部屋へおじゃまする。
ショッピくんはベッドに寝かせられたシャオさんの頭を優しく撫でた。
涙の跡が赤くなってしまっていて、悔しい思いに駆られる。幸い、雑に拭ったりして擦ってはいないようだ。
アリアとかいうやつ…なんなん?
彼女を見た瞬間、彼はぴたりと固まり、絶望したように見ていた。
いつもは生き生きと輝いているシトリンが、陰りを帯びて何も移さなくなって、怖いと初めて思った。
まるで、無機質なガラス玉同然の瞳だったのだ、あれは。今思い出しても鳥肌が立つ。
とにかく、あいつがシャオロンに恐怖を与えていることは間違いない。
彼には、あの太陽のような笑顔で笑っていてほしい。ただ、それだけ。傍で見つめていたいだけなのだ。
だから、それを邪魔するものは敵。俺等が排除する。
シャオロンを、守っていたいから。
彼の傍に居続けたいから。
「ほんまに?」
不機嫌そうに顔をしかめるロボロに「ほんと」と笑って返す。
恐怖心は、見ないふりをして。
俺が高校生だった頃の、未熟な心。
それは、ツギハギだらけで、血だらけで、ズタズタだった。
ぬめりと黒く光る、怒りと恨みが混じった血。
忘れることができていたのに、アリアのせいで全部全部思い出してしまった。
見ないふりをしても、しっかりと存在感を残した感情は、どこに捨てればいいんだろう。この感情は、ずっとずっと前からあったはずなのに、まだこの感情との向き合い方を知らない。
アリスの、アリアの、青い瞳が俺の中の何もかも、見透かしてくる気がして、その瞳の色が大嫌いだった。俺の真っ黒なブラックホールを見つけられてしまわないかと内心ひやひやした。
足取りがおぼつかなくて、倒れかける。ふらりとした感覚だけが唯一わかったことで、鈍い頭はなにが起きたのかさえ理解できない。
そのまま、隣にいたロボロに受け止められた。申し訳ないと思いつつも、今のままでは立ち上がることもできなかった。
「ほら、大丈夫やないやん」
耳のすぐ近くで、透き通った綺麗な声。
息が耳にかかって、びくっとする。それもロボロは分かっているくせにやってくるから、たちが悪い。
「! …っ」
そのせいで余計脱力してしまって、ずる、としゃがみこむ。
ゾムの慌てたような顔が視界の端にちらりと見えた。ロボロもしゃがんでくれて、頭を優しく撫でられる。
眼の前に、マゼンダピンクの瞳。俺が大好きなそれはただ、優しさを灯して俺を見ていた。
「ぅ、あ……ふ…っ」
じわりと涙が滲む。
ずっとむかしの親友たち。ジジッとノイズがかかった昔の記憶と、ロボロがピッタリ重なる。
あのときも、俺が辛いときにあいつが撫でてくれた気がする…。
もう、あの日になくしたはずのぬくもり。撫で方も、本当にどこまでもあいつに似ている。
「え!? シャオロン…?」
ゾムはしゃがみ、慌てたように俺のことを見ている。そりゃそうよな。急に隣にいたやつが泣き始めたら。
けど、今はそれに対応することもできない。今だけは、目の前の温もりに甘えていたかった。
「大丈夫だから」
ふわりと抱きしめられる。
さらに涙が止まらなくなって、ロボロの肩に顔を埋める。この情けない顔を見られないように。
なんとなく心細くて、ロボロの片方の袖を握る。すると、そっちの手は俺の指と絡ませられる。しかも恋人つなぎ。ちょっとびっくりした。先ほど俺が重ねていたあいつは、こんなことしただろうか。
トントンと背中を軽く叩かれる。まるで親が子どもにするように。これはきっとゾムだろう。少し不器用な感じがする。
ふたりの暖かさが直接与えられて安心する。そのせいか、なんだか眠くなってきた。
「寝てええで」
それを見透かしたみたいにピンポイントでロボロがいう。
撫でられるのがとても心地よくて、意識がどんどん薄れていく。
温かい体温に甘えながら。
〈ロボロside〉
シャオロンが俺の肩に身を埋めて寝た。こいつが泣いているところなんて初めて見た…気がしないのは、なぜだろうか。俺がこのシチュエーションに遭遇したのは初めてなはずなのに。
なんで泣いてしまったのだろう。アリアとやらが原因らしいが…。それさえも詳しくはわからないけど、なんだかその気持ちがわかる気がした。
心がズキリと痛む。彼と初めて会ったときから、感じていた痛み。
初対面のはずなのに、昔からこいつを探していた気がした。会ったことのある気がした。ずっと、謝らなければいけないことがあった気がしてやまないのだ。
「いっぱい辛い思いさせて、ごめんなぁ」
口をついて出た言葉。これを、なぜかずっとお前に言いたくて。
強く抱きしめると、シャオロンの身体がぴくりと震えた。その無防備な顔がどうしようもなく愛おしくて、思わずキスをする。
「ん…っ」
シャオロンが小さく声を漏らす。まさかではあるが、襲われたいん?
あまりにも、無防備すぎる。いくら寝ていても、俺が男だとしても、油断しちゃいけんのにな…。微笑ましいその額にもう一度口づけする。
起きたらその旨を教えなければ、と思いながらゾムを一瞥すると、予想通り慌てている。
「ろ、ロボロ、シャオロンどないしよ…?」
右に左に、おろおろとしているゾムに思わず笑ってしまう。「なに笑ってんねん!」とぽかぽか殴られたのは仕方ないのかもしれない。
「いったん、部屋に運ぼうか」
汗でべったりと張り付いている前髪をはらってやりながら、彼の体をゾムに引き渡した。
ゾムに運んでもらっているシャオロンはまだ時折涙をこぼしている。痛ましい姿に顔をしかめながら、目尻の涙を優しく拭い取った。
城内をてくてく歩いていく。広すぎて最初こそ迷ったものだが、何回もシャオロンのもとを訪ねているので道は熟知している。
ダークオークに、琥珀の装飾が施された扉。そこが、シャオロンの部屋だった。
彼の部屋は城の中でも東側の、塔のようなところにある。塔といえど、城なのでめちゃくちゃ広い。俺の自室の軽く数倍はある。
王子なのだから当然だが。
「もしもし」
とんとん、と軽くドアをノックすると、猛スピードでドアが開いた。予期せぬことに対処できず、ごんっと額にドアがぶつかる。
「いっっっった!」
「あ、ごめんなさい…って、シャオさん…?」
やはり中から出てきたのは、ショッピくんだった。
シャオロンは喧嘩をしたとは言っていたけど、やはり心配だったらしい。シャオロンが一方的にキレているといったところか。ショッピくんもショッピくんで、シャオさんがキレるくらい悪いことをしたらしいので、仕方ない。
彼はゾムに横抱きされたまま寝ているシャオさんに、すぐに駆け寄った。
彼はただ泣きながら眠っている。今は伏せられたシトリンの瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。
「これ…」
明確な敵意を示し始めた彼に、ゾムは全力で首を横に振った。とんでもないとばっちりである。
「ちゃうちゃうっ!」
「なにがですか? さっさと説明しやがれください」
それでも、彼はゴゴゴ…と効果音を出さんばかりに殺意を高めている。人を殺すことに躊躇しない、マジな目をしている。
こいつはシャオロンのためなら世界だって敵にまわせる気がする。まあ、俺等もだけど。
さっき運んでるときにゾムがシャオロンの首にこっそりキスマ残してたのは言わんほうがええな…。
いつかはバレるだろうけど、今言ったらとんでもないことになる。
彼の腰に常備されているレイピアを見ながら思う。確かシャオロンからの贈り物だった気がする。ボンメルにはアメシストがピタリとはめ込まれていた。
「あの…一旦部屋はいらん…? シャオロン寝かせな」
気まずいのは承知で声をかけると、ショッピくんは意外にも秒速で頷いた。アメシストの瞳が、シャオロンを愛しげに写している。
「当然です」
このシャオロン至上主義者が。
その言葉をぐっと抑え、シャオロンの部屋へおじゃまする。
ショッピくんはベッドに寝かせられたシャオさんの頭を優しく撫でた。
涙の跡が赤くなってしまっていて、悔しい思いに駆られる。幸い、雑に拭ったりして擦ってはいないようだ。
アリアとかいうやつ…なんなん?
彼女を見た瞬間、彼はぴたりと固まり、絶望したように見ていた。
いつもは生き生きと輝いているシトリンが、陰りを帯びて何も移さなくなって、怖いと初めて思った。
まるで、無機質なガラス玉同然の瞳だったのだ、あれは。今思い出しても鳥肌が立つ。
とにかく、あいつがシャオロンに恐怖を与えていることは間違いない。
彼には、あの太陽のような笑顔で笑っていてほしい。ただ、それだけ。傍で見つめていたいだけなのだ。
だから、それを邪魔するものは敵。俺等が排除する。
シャオロンを、守っていたいから。
彼の傍に居続けたいから。