彼は生きる意味を見失い、灰色の日々をぼんやりと過ごしていた。夢は既に色褪せ、何も感じられなくなっていた。自分が何のために生きているのかすら分からない。

ある夜、仕事の帰り道に見慣れない路地裏があった。何も考えないまま吸い込まれるように足を進めると、次第に見知らぬ世界へと迷い込んでいた。空は暗く白く淡い光が漂っている。
それは人々が諦めた夢の残骸だった。
彼は眺めているうちにその光に見惚れていた。誘われるように触れそうになったその時、低く不気味な声が背後から響いた。

振り返るとそこには何者かが立っていた。
薄暗い霧がその姿を包んでいて、顔はよく見えず、ただ瞳だけが光っていてこちらを見つめているようだった。黒いローブは地面に溶け込むように垂れ、異様な威圧感と緊張に押し潰されそうになった。何者かは静かに語り始めた。

｢ここは夢の墓場だ。お前が捨てた夢もここにある。お前に二つの選択肢を与える。｣

｢過去の夢を抱き締め、再び現実に戻るか。あるいはその夢を潰し永遠の安らぎを選ぶか。｣

夢を抱き締めればまたあの日々が続くのだろうか。
夢を潰せば、この腐った世界から永遠に離れられる気がする。
彼は迷いながらも、自らの人生を振り返った。

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｢どちらを選ぶ？｣

彼は大きく息を吸い込み、哀しい目を浮かべ口角を少しだけ上げた。
彼は夢を精一杯の力で抱き締めるように潰した。

その瞬間、視界が白く染まり、身体が宙に浮かぶような感覚がした。なぜか涙が溢れてくる。
遠のく意識の中で、夢の番人がこちらを見つめているのを感じながら、彼は静かに消えていった。