希望に満てる知識欲
「どうしてそんなに悲しい顔するの?」
「[太字]あなたは特別なのよ。木偶の坊のお姉ちゃんとは違うのよ、シエル[/太字]」
「このままいい子に育ってね。」
「[小文字]…[太字]私たちのために。[/太字][/小文字]」
あたしはずっと周りから特別な子として育てられた。
生まれつき賢くて、能力も便利で。
だから学校も受験させられた。仲の良い友人ができても、離れて遠くの頭のいい学校に行かされた。
ずっとあたしは賢くて特別で いい子で天才で
そんなレッテルをずっと貼られてきた。
___[小文字]あたしはこんな生き方、嫌…[/小文字]
「…だめ、みんなあたしに期待してるんだから、そんなこと言ったら罰が当たる」
___いつまでこんな顔してればいいの?
「いつまでもだよ。ずっと耐えた先に、愛されるあたしが待ってるんだから…」
___[大文字]どんなあたしでも愛してよ、いい子のあたししか認められないの?
そんな世界、そんなルール…![/大文字]
「……うるさい!黙って、周りの型に合わせるの!!!!!」
そうしてあたしは、本心に蓋をした。
姿も
心も
役割も
みんなみんな あたしのために誰かが作ったもの。
それを使って生きることが、あたしの人生の道。
高校生になっても変わらなかった。
ずっと同じ気持ちで、期待に応える100点の日々。
ただ違ったのが、先輩の存在だった。
[太字]神威 柳太[/太字]。
良く知らないけど、彼は中学生のころ、酷いいじめに遭っていたらしい。
神威「求真さん!」
その声からは想像も出来ないほどの暗い背景に、あたしも踏み込む気にはなれなかったんだけど。
神威「悩んでることあったらいつでも言ってね、力になるから!」
先輩はあたしをずっと気にかけてくれた。
2年生になったいつだったかのテスト。
親に褒められるために、愛されるためにキープしてきた学年1位。
その時は取り逃してしまったんだ。
神威「大丈夫だよ、2位ったって10点差でしょ?」
先輩はその日も励ましてくれた。
シエル「…あたしもそう思うんです、1位も2位も大差ないって。
…でも、だめなの。
みんなはずっとあたしに期待してるから…完璧な人生を…
もし「完璧から落ちた」ことを知ったら…あたしは…
お姉ちゃんみたいに…」
神威「……そんなこと、誰が言ったの?誰が決めたの?
…求真さんは本当に…その地位を、大切にしたいの?」
シエル「…」
神威「もっと求真さんらしくいこうよ!
…もし今までの事がつっかえてしまうなら、
それだって壊しちゃえばいいんだ!」
シエル「……あたし、らしく…」
って、何だっけ?
このままずっと高成績を保つことは、きっと将来役立つ。
あたしだって、いい仕事についていい生活したい。したいんだ…
…でも、本当に…したい、のかな…?
___[小文字]あたしはずっと、こんな生き方、嫌だったよ。[/小文字]
シエル「…!」
___こんなあたしでも愛してくれる人はいるよ。
シエル「でも…でも…」
___わからなくていい、今だけ、この蓋を取って?
シエル「…っ」
シエル「…あたしが…ほんとに…したいことは…!」
「シエル、あなたどういうつもりなの!!」
シエル「どうもこうもない、[太字]あたしは高校を中退して、
この家からも出ていって、知りたいことを追い求めるから。
聞こえなかった?何度でも言ってあげるよ。あたしは折れない。[/太字]」
「このままいい子にしてれば、もっといい職業につけるのよ!?」
シエル「で?それが何。興味ない、そんなの。」
シエル「あたしはもう、そんないい子いい子の立場は、嫌なの!!!!」
シエル「…貴女がこんなに拘束してよしよしした子にも、こうして逃げられた。
もう希望はないんじゃない?」
「…親に向かってなんて態度…!!」
シエル「お前こそ娘に向かってどーゆー態度してんだクズ!!お前のせいで
何度お姉ちゃんは泣くことになったと思ってんだ!!」
後にも先にも、これ以来あたしはこんなに声を荒げたことはない。
でも、これがあたしのありのまま。
嘘で作った蓋は捨てた。
知りたいことを知りに行く。
今までの地位も、権威も全部捨てたってかまわない。
あたしは求める、真に知りたいことを。
あたしはそうやって、前を向いたんだっけ…。
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