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#1


主人公の少年は、何年もこの場所で過ごしていた。
だけど心の奥底ではここに居るべきではないと感じていた。曖昧で未来の見えない、存在しない希望と絶望が交差する前途多難な日々に辟易としていた。
ある日彼は同じ場所で同じような少女と出会う。少年と少女は互いに心の傷を隠しながらも、言葉にならない共感で繋がっていた。
少年はある日衝動で彼女に伝えた。
「ここから抜け出してみない?」
少女は明らかに驚きながらも少年の目を見つめ静かに頷いた。二人は必要なものを鞄に詰め込み闇のようなドアをそっと開いた。
外は霧が一面に立ち込めていた。どれだけ歩こうとも景色は変わらない。それでも二人は互いに語り合い、足を止めなかった。夜を明かし朝を迎え言葉も少なくなってきた。その沈黙が妙に心地よい。
どれくらいの時間が過ぎただろうか。ふと天を見上げると遠くに淡く光る物が見えた。
すると突然雨が降り始めた。冷たい雨に打たれながら二人は洞窟に駆け込んだ。凍える体を寄せ合い、持ってきたマッチに火を付け枯れ木を燃やす。温かさと安心感が二人を包み込み、眠りに落ちていった。やがて鋭い太陽の光が二人の目を覚ました。外には見事な虹が架かっていた。少年は衝動で彼女に伝えた。
「そうだ!あの虹を目指そう!」
少女は少年の目を見つめ輝くような笑顔で頷いた。
数時間が経った頃、以前とは比較にならない程の濃い霧が立ち込めた。次第にお互いの姿が見えなくなっていく。視界は完全に白く染まった。二人はもう二度と会えない事を悟った。
「また、会おうね」
涙を零しながら掠れた声でそんな言葉を交わした。
視界が歪んでゆく。少年は最後に少女の笑顔を見た気になった。気付くと彼は一人だった。
冷たい現実に覆われた見慣れた景色が目の前に広がっていた。

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2024/10/29 22:42

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