おほほですわ
夜の街をタッタッタっと軽快に足を動かして走る1人の男がいた。
「ふう」
近くの家の壁に背中を預けてエナジードリンクの缶のプルタブをカシュッ! と開ける。豪快にグビグビと飲む。
「もうひと踏ん張りだな」
バッ! と勢いよくその場で跳躍。家の屋根に着地する。そしてそのまま屋根伝いに駆けだしていった。
男の名はワン。夜の街を前傾姿勢で颯爽と駆け抜ける姿はさながら影の力を得た闘犬のようであった。
「よっと」
端っこの家の屋根まで渡りきるとワンは下を覗き込んだ。そこには何やら怪しい男たちが取引をしているみたいだった。
「例のブツは?」
「ああ、抜かりない。ちゃんと持ってきたぜ。早く報酬を……」
「待て。こっちの確認が先だ」
あれか。ワンは取引現場を注意深く観察する。見たところコートを着込んでマスクをし、ゴツいアタッシュケースを持っている男が依頼人で、トサカみたいな頭をしてて耳と鼻にピアスを付けている若い男が売人か。情報は高く売れるのは常識だが、それゆえに取り扱いが慎重になる。その隙を、突く。
ワンが、動いた。
ビュ! ジャケットのポケットからスプレー缶みたいなものを素早く取り出し、下へと投げつけた。
カン!
「「!?」」
男たちは同時に音に反応する。
「何だ!?」
「誰だ!?」
プシューー! スプレー缶みたいなものから煙が吹き出してきた。
「うわっ!?」
「ガス!?」
男たちは慌てて鼻と口を押さえる。その隙にガスマスクを装着したワンは屋根から飛び降りて、華麗に難なく着地。男たちの懐までダッシュする。
「悪いな。こいつは回収させてもらう」
ワンは若い男が持っていたUSBメモリをさっと奪って手中に収めた。
あまりの早業に男たちは驚愕の表情を浮かべる。
「なっ……! て、てめえっ!」
若い男が動こうとするも、ガッと腕を抑え、ワンは言った。
「武器を捨てろ。これ以上踏み込むな。命が惜しくばな」
「ぐっ……!」
ナイフか拳銃か武器を取り出そうとしたのだろうが先手を打たれ、ガスが充満した空間で、片手が塞がっていた男は抵抗むなしくガクッと意識を落とした。
ガスが晴れて、ガスマスクを外したワンはチラリと腰を抜かして地べたに座り込んでいる男を見て言った。
「これはこの国の最重要機密情報が入っている代物だ。あまり危険なことに首は突っ込まない方がいい」
「は、はいいいいいい!!」
男はさっと顔色を青ざめ、そそくさと退散していった。
その様子を見届け、さっとスマホを取り出し、連絡をするワン。
「もしもし、任務完了しました。今からそちらへ戻ります」
『ご苦労。さすが愛しのワンだな』
上官の声がスマホ越しに聞こえ、ふうとワンは呆れたように息をつく。
「すぐ戻ります」
そうとだけ伝え、通話を切る。
男の名は〖暗号名、コードネーム〗ワン。この国随一の孤高の敏腕スパイである。
「ふう」
近くの家の壁に背中を預けてエナジードリンクの缶のプルタブをカシュッ! と開ける。豪快にグビグビと飲む。
「もうひと踏ん張りだな」
バッ! と勢いよくその場で跳躍。家の屋根に着地する。そしてそのまま屋根伝いに駆けだしていった。
男の名はワン。夜の街を前傾姿勢で颯爽と駆け抜ける姿はさながら影の力を得た闘犬のようであった。
「よっと」
端っこの家の屋根まで渡りきるとワンは下を覗き込んだ。そこには何やら怪しい男たちが取引をしているみたいだった。
「例のブツは?」
「ああ、抜かりない。ちゃんと持ってきたぜ。早く報酬を……」
「待て。こっちの確認が先だ」
あれか。ワンは取引現場を注意深く観察する。見たところコートを着込んでマスクをし、ゴツいアタッシュケースを持っている男が依頼人で、トサカみたいな頭をしてて耳と鼻にピアスを付けている若い男が売人か。情報は高く売れるのは常識だが、それゆえに取り扱いが慎重になる。その隙を、突く。
ワンが、動いた。
ビュ! ジャケットのポケットからスプレー缶みたいなものを素早く取り出し、下へと投げつけた。
カン!
「「!?」」
男たちは同時に音に反応する。
「何だ!?」
「誰だ!?」
プシューー! スプレー缶みたいなものから煙が吹き出してきた。
「うわっ!?」
「ガス!?」
男たちは慌てて鼻と口を押さえる。その隙にガスマスクを装着したワンは屋根から飛び降りて、華麗に難なく着地。男たちの懐までダッシュする。
「悪いな。こいつは回収させてもらう」
ワンは若い男が持っていたUSBメモリをさっと奪って手中に収めた。
あまりの早業に男たちは驚愕の表情を浮かべる。
「なっ……! て、てめえっ!」
若い男が動こうとするも、ガッと腕を抑え、ワンは言った。
「武器を捨てろ。これ以上踏み込むな。命が惜しくばな」
「ぐっ……!」
ナイフか拳銃か武器を取り出そうとしたのだろうが先手を打たれ、ガスが充満した空間で、片手が塞がっていた男は抵抗むなしくガクッと意識を落とした。
ガスが晴れて、ガスマスクを外したワンはチラリと腰を抜かして地べたに座り込んでいる男を見て言った。
「これはこの国の最重要機密情報が入っている代物だ。あまり危険なことに首は突っ込まない方がいい」
「は、はいいいいいい!!」
男はさっと顔色を青ざめ、そそくさと退散していった。
その様子を見届け、さっとスマホを取り出し、連絡をするワン。
「もしもし、任務完了しました。今からそちらへ戻ります」
『ご苦労。さすが愛しのワンだな』
上官の声がスマホ越しに聞こえ、ふうとワンは呆れたように息をつく。
「すぐ戻ります」
そうとだけ伝え、通話を切る。
男の名は〖暗号名、コードネーム〗ワン。この国随一の孤高の敏腕スパイである。
このボタンは廃止予定です