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隣の席の赤新さん

#5


 昼休み。お腹空いた。僕はお弁当を持って教室を出て屋上へと向かう。晴れている日は大体そこに行くことが多い。僕が選ぶお気に入りスポットの1つだ。
「赤新さん、どこ行ったんだろう……」
 ふと気になった。赤新さんは授業が終わるや否やお友達? グループと一緒に出かけていった。無論それはいい。購買なり学食なり行く場所は色々あるだろう。ただ気になるのが……
「あのルーズリーフだよなあ……」
 女心と秋の空なんて言うけど、ホントに乙女心というのは複雑みたいだ。
 てっきり僕はお昼を誘われているものだと勘違いしてしまった。
 僕のようなぼっちは色々と勘違いしやすいのだ。だから変に期待をしない方がいいとあれほど思っていたのに……まあ、それくらい赤新千歳という女の子が魅力的なのだろう……。なんというか魔性の魅力というか……。
 いかん。顔が熱くなってきた。誰にも見られてなくてよかった。誰かに見られてたら文字通り顔から火が出るかもしれない。ボッ!!!!!! みたいな。
 僕は苦笑いしながら、階段を上り、屋上へと続くドアを開けた。
 屋上の中ほどにベンチがいくつか等間隔に並んでいる。さて、と空いているベンチは……っと。あれ?
 赤新さんだ。ベンチにポツンと1人で座っている。お友達? たちはどうしたのだろうか。
 まあ、お邪魔するわけにもいかないから他の空いているところを探す。僕はそそそと赤新さんの前を通りすぎようとすると――
「あっ」
 赤新さんがこちらを向いて微笑しながら、手を胸の前で小さく振っている。僕は後ろを向く。誰もいない。え? 僕?
 僕は自分で自分のことを指差すと、コクコクと赤新さんがしきりに頷いている。僕だったようだ。
 ゆっくりと赤新さんの方へと近づいていく。赤新さんはスカートの上にハートのマークと水玉があしらわれた風呂敷を乗せていた。きっと中身はお弁当箱が包まれているのであろう。
「ど、どうしたの? 赤新さん」
 僕が呼びかけると、赤新さんはポーッと遠い目をしながら僕に語りかける。
「ん。一緒にお昼どうかなって」
「え、あ、ああ!」
 あれ? 僕の勘違いじゃなかったの?
「えと、お友達は……?」
「ん。逃げてきた」
 んん? どういうことだ?
「私が勝手に逃げてきちゃったのです。そういうこと、よくあるよね?」
 ないと思います。あ、いや、僕友達いないからよく分からないけど。
「だからね。……今すっごく気まずいの」
 でしょうね。僕は冷や汗を垂らす。
「神様って……意地悪だね」
 いや、完全に自業自得では?
「だから、吉川君。一緒にお昼食べよう」
 脈絡どうなっているんだろう……?
 でも僕には断る理由はない。むしろ嬉しい。
 僕は内心ドキマギしながら赤新さんと一緒にお昼を食べることになった。

作者メッセージ

赤新さんとお昼を食べる事になりました。いいですね~。心がポカポカします。

2024/11/01 11:17

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