世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚霧の街・ブリュエル〛[/中央寄せ]
霧がようやく晴れてきて、視界が開ける。そこに広がっていたのは蒸気と灯りで溢れた街。
「え...?カタパリア...ではないですよね...。」
フィルマリーは目を覚ましてからしばらく霧の中を歩いていたが、ノイトたちとはぐれてしまったようだ。しかし、ノイトの居場所はすぐに分かった。街の巨大な時計塔の上で、何かが戦っている。
(ノイトさん...多分、リーリャさんあの王女様も一緒...。早く私も合流しないと...!)
フィルマリーはノイトたちと合流するべく、時計塔の方へと走り出した。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
その少し前、ノイトたちは時計塔内部の無限螺旋階段で足止めを喰らっていた。ノイトのせいでリーリャとルミナスの2人はノイトのマジックバッグの中を彷徨っている。
「もう......もう、ノイトったらいきなり何するの...?ここ、結構広いしなんか感覚が変なんだけど...。」
[太字][明朝体]「...ここは、お兄ちゃんのマジックバッグの中...でしょうか?」[/明朝体][/太字]
2人が見上げると真っ黒な空間に色々な魔具や武器が浮かんでいる。革の手袋の魔具や【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】や[漢字]波刃剣[/漢字][ふりがな]フランベルジュ[/ふりがな]。[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]に[漢字]希璋石[/漢字][ふりがな]フィスリテル[/ふりがな]にルミナスの手紙。色々なものが収納されているようだった。
[太字][明朝体]「私の手紙...ちゃんと大事にしてくれているんですね...。」[/明朝体][/太字]
「...ノイトって思い返してみたらすごい数の魔具を扱ってたけど...こんなにたくさん持ってたんだ...!」
見覚えがあるものを見つける度に、リーリャは今までのノイトとの冒険の出来事を思い出す。そして、自分の役目を見つけた。
(そうだ...私はピアノでノイトのことを守ったり、一緒に魔神と戦ったりしてたんだった...。あのミエルって言う人とノイトが戦うことになったら、私も一緒に戦わないといけないはずだよね!)
一方のルミナスも、ノイトの数々の所有物を見てはノイトのことを改めて敬服する。
[太字][明朝体]「こんなに沢山...!魔具の数だけお兄ちゃんの思い出が...すごいです、本当に...ッ!!」[/明朝体][/太字]
頬を赤らめて目を細め、ノイトのことでルミナスの頭はいっぱいになった。リーリャはルミナスの様子を見て謎の焦燥感に駆られながら上を見上げる。
(ノイト......。あんまり他の子のこと見すぎないでね...?)
ノイトは無限螺旋階段のある程度の下の段とある程度の上の段に大量の[漢字]希璋石[/漢字][ふりがな]フィスリテル[/ふりがな]を置いた。
「ふぅ...これで[漢字]位置置換[/漢字][ふりがな]サブスティテュート[/ふりがな]を繰り返せば覚えられるかな...?やや強引だけど...[漢字]反復横跳び[/漢字][ふりがな]シャトルラン[/ふりがな]開始!」
ノイトは上の方の段の石と自身の位置を入れ替える。
(この魔力の反応ね、覚えた。)
次にノイトは下の段の石と位置を入れ替えた。ノイトが石と入れ替わったことで他の石はさらに下の段へと落ちていく。
(下。次は上。)
ノイトはまた上の段へと移動し、その次の瞬間には下へと移動した。ひたすらそれを繰り返し、段々と石の位置を覚えてくる。
(だいぶ慣れてきた...後は石の魔力反応を架空のものとして座標を意識して...その空間と自分が入れ替わる....イメージ!)
ノイトは石がないところへと移動出来ていた。しかし、意識していた座標がブレたせいで階段からズレてしまった。
[斜体]「うわっ!」[/斜体]
咄嗟に階段の手すりに掴まったことで落下せずに済んだが、危うく永遠に落下する羽目になるところだった。
(ハァ...危なかった...。もっとブレないイメージをしないと...。)
そこでノイトは下の方の段に置いてあった石がかなり下の段まで落ちていることに気がつく。そして、ノイトは上の方の段に置いてあった石の座標を確認し、下の方の段に置いてあった石を螺旋階段のてすりの外から下へと落とした。しばらくしてからノイトは落下中の石と位置を入れ替える。
[中央寄せ][[漢字][太字]位置置換[/太字][/漢字][ふりがな]サブスティテュート[/ふりがな]][/中央寄せ]
当然だが、石の重力落下慣性は消えない。その慣性はノイトに移り、ノイトはどんどん下へと落ちていく。
[斜体](うん...これくらいならもう大丈夫だろう。)[/斜体]
ノイトは先程上の方の段に置いてあった石と位置を入れ替えた。すると、
[中央寄せ]〈[明朝体]バリンッ[/明朝体]〉[/中央寄せ]
何かが割れる音がして、気がつけばノイトは上の階に居た。恐らく螺旋階段の長さにはある程度の限界があり、ノイトと上の石との距離がそれ以上の長さになった瞬間に位置を入れ替えたことでこの魔法が限界を迎えたのだろう。
「ふぅ...次だね。...あ、その前に......!」
マジックバッグの中からノイトはリーリャとルミナスを引っ張り出した。
「お待たせ。ごめんね、さっきはいきなりバッグの中に突っ込んじゃって。」
ノイトが無限螺旋階段の魔法を破ったことに気づくと同時に、リーリャにはノイトの笑顔と先程の焦燥感が1度にまとまってのしかかってきた。
「...もう、いきなりはやめてよね...?」
「......はい。」
[太字][明朝体]「お兄ちゃん!あの魔具全てにお兄ちゃんの思い出が詰まっているんですよね?! もしよろしければお兄ちゃんの思い出、教えてください!!」[/明朝体][/太字]
ルミナスは翡翠色の瞳をキラキラと輝かせながら寄ってくる。
「ん〜、えっと......また今度ね?」
しかし、流石に珍しくリーリャが怒っているように感じたノイトは、ルミナスのことは後回しになってしまうのだった。
そのとき、ノイトは反射的に振り返る。すると、そこには仮面の人物が立っていた。リーリャとルミナスは警戒してノイトの後ろで構えるが、ノイトは一歩前へと歩み出す。
「...ミエルさん、ですか...?」
[明朝体]「...。」[/明朝体]
仮面の人物は何も答えなかったが、否定していない。この人がミエルで間違いないようだ。ミエルが手を軽くあげると、ノイトたちの横に巨大なチェスが現れる。
「勝負、ですか......良いですよ。受けて立ちましょう。」
[太字][明朝体]「お兄ちゃん、チェスも出来るんですね!すごいです!頑張ってください!!」[/明朝体][/太字]
「ノイト、頑張ってね!」
仲間の応援を背中に受けながら、ノイトはどこかやるせない気持ちを抱えていた。
(ハイヴさんの方が適任者だっただろうけど...まぁ、まだ合流出来てないからしょうがないのかな...。)
ノイトは白い駒たちの方へと立った。
「さぁ、始めましょう。」
──数分後。
「あぁ〜、負けた〜!」
ノイトのチェスのレーティングはせいぜい500~800程度。対して、ミエルのレーティングはどんなに低くても1000を下回ることはないだろう。[漢字]凡人[/漢字][ふりがな]ノイト[/ふりがな]vs[漢字]秀才[/漢字][ふりがな]ミエル[/ふりがな]は後者の勝利となった。
(ハイヴさんなら勝てたのかな...?先読みは苦手だから分からない...。)
どうやらミエルはまだもの足りないらしく、気がつけば目の前にはドミノボードとドミノ牌が置かれている。
「次はドミノですか...良いですよ。ドローゲームでどうです?」
7枚の牌が手元に配られた。ゲームスタートだ。
──さらに数分後。
現在、ノイトから始まったゲームが終盤に差し掛かっていた。第1ラウンドでミエルに7点取られた後に第2ラウンドでさらに27点取られ、第3ラウンドでもさらに9点取られた。第4ラウンドで何とかノイトが7点獲得し、第5ラウンドで驚異の58点を獲得。第6ラウンドでも引き続きノイトが4点を獲得したが、第7ラウンドと第8ラウンドではミエルの手持ちの牌が先になくなったもののノイトが0と0の牌を持っていたため互いに加点なし。
そしてこの第9ラウンドでノイトの前世での運の悪さが伝染ったのか、ミエルが連続で場に出せない牌を引きまくり、そこでノイトの手持ちの牌がなくなった。その時にミエルの手持ちの牌の目の数は合計で75。ノイトは75点を獲得し、最終的に144対43で勝利した。
(あっぶな〜...途中まで僕の前世の運の悪さが復活してきててどうなるかと思ったけど...何とか勝てた...。...ん?でも運の良さで考えるならルミナの方が良かったんじゃ...。)
ノイトとミエルの勝負は現在1勝1敗。ミエルからは全然焦りのようなものを感じないため、恐らく3本先取か5回勝負なのだろう。次はトランプでダウトをするようだ。
ダウトは、簡単に言えばターンごとに既に場に出ているカードに書かれた数の次の数のカードを出していくゲームである。しかし、全く違うカードを出しても、バレなければそのまま続けることが出来る。もちろんバレてしまったらその罰として全てのカードを手札に迎え入れなければならないのだが。
流石に2人では相手の手札が分かってしまうため、第三者の立場の助っ人が必要だった。そこで呼ばれたのが黒い霧のような人型の何か。ノイトたちが先程喫茶店で見かけた者たちと同じものだろう。それが3人増えた。合計で5人であるため、ゲームとしては充分に成立する。
ノイトがダウトで勝負をしている間、リーリャはピアノの練習をしていた。「ジムノペディ 第1番」※¹の演奏が始まり、ルミナスはその横で静かに演奏を聞いている。リーリャが演奏している曲は静かなものであるため、ノイトたちは演奏によって気が散ることはない。
ノイトとミエルと3人の霧を含めた計5人の勝負は長引いている。
(ん...普通に全員強いな......。あ、バレた。)
ノイトは間違ったカードを自分の手札に加えながらリーリャの演奏を聞く。特に意味が込められているわけではないが、それでも1音1音が丁寧に奏でられているようだった。やがてジムノペディの演奏が終わっても、勝負は続いていたため、リーリャはもう一曲弾くことにした。次にリーリャが演奏したのは「ジュ・トゥ・ヴー」※²である。直訳すると「あなたが欲しい」という意味であるが、恐らくリーリャはその意味を知らずに弾いている。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ハイヴはピアノの演奏に気がついてその音が聴こえる方へと走り出した。
(あの霧を吸わずにここまで来ることは出来ましたが...丁度道標が欲しい所でした。)
その演奏は時計塔の中から聴こえるようだった。ハイヴは時計塔内部に入り、目の前の螺旋階段を見上げる。
(これは...上限がない......?魔法の一種のようですが、どういたしましょう...。)
そこで[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]がハイヴの元へと降りてきた。どうやら、ノイトたちに置いていかれてしまったようだった。ハイヴは[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]に触れるとノイトの現在地を感じ取った。そして、ハイヴが目を閉じて正確な座標を予測し、魔法を唱える。
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
ハイヴと[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]はノイトたちの元へと[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]した。すると、リーリャとルミナスがピアノの椅子に座ってピアノの練習をしていて、ノイトとペストマスクの仮面を被った人物は黒い霧のような人型の何かに見守られながら何かをしている。[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]がルミナスの方へと飛んでいき、それに気がついたルミナスは笑顔でそれを迎えた。
[太字][明朝体]「[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]!」[/明朝体][/太字]
「ハイヴさん!どうしてここが...?」
ハイヴはノイトが居る方を一瞥し、リーリャの質問に答える。
「街の中を歩いていたらピアノの演奏が聞こえましたので、その音を頼りに。先日、リーリャ様が私が勤めておりました喫茶店でピアノを演奏なさっているのを思い出しましたので、もしやと思いここまで参りました。」
そう答えた後にハイヴはノイトの方へと歩いていった。
「ノイト様、合流が遅くなってしまいまして申し訳ありませんでした。」
「お、ハイヴさん!この人はミエルさんという人で、この街の管理者だそうですよ。歓迎なのかお手並み拝見的なものなのかは分かりませんけど、今はこの人と勝負してるところです。」
ハイヴはノイトの横で歩みを止め、ミエルに挨拶をする。
「はじめまして、.........でしょうか?それとも、久しぶり...と申し上げた方がよろしいのでしょうか...ミエル。」
ミエルは何も答えないままハイヴの方をじっと見つめているようだった。ハイヴも同様にミエルのことを見つめている。リーリャとルミナスはハイヴのミエルに対しての挨拶を聞いて振り向いた。ノイトや周囲の黒い霧たちもミエルのことを見つめている。
その場の中心となったミエルは答える代わりに、右手を上へとかざした。咄嗟にノイトとハイヴはリーリャとルミナスの方へと跳び、2人を抱えてさらに跳び上がった。その瞬間、気がつけば4人はその時計塔の高層階のバルコニーに居た。
(無詠唱の[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]...いや、[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]か。かなりの実力者なのはよく分かった...。)
バルコニーに着地した瞬間、ミエルが黒い羽のようなものを持ってノイトの間合いに入ってきていた。
[斜体](速い...!それにこれは...!!)[/斜体]
[中央寄せ][斜体][大文字][太字][明朝体]«[漢字]黒羽[/漢字][ふりがな]la plume noire[/ふりがな]»[/明朝体][/太字][/大文字][/斜体][/中央寄せ]
ノイトは身体を仰け反らせてそれを躱すが腕の振りと共に放たれた羽が壁に刺さると、その羽から黒い影が伸びてきてノイトへと向かってくる。
(羽だけ前払いで募金しろ、ってことじゃないよね...?)
[中央寄せ][[漢字][太字]明光[/太字][/漢字][ふりがな]ライト[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトが振り向きざまに放った光によって影が怯んで羽へと戻っていった。もちろん、その隙にミエルが次の羽を飛ばしてきていた。そこでノイトの背を守るようにハイヴが飛んでいき、自身のマジックバッグから取り出したレイピアで羽を弾く。ルミナスも剣を抜いてミエルの方へと向かっていったが、ハイヴが弾いて床にあたるタイルに刺さったところから影が伸びてきて襲いかかってきた。
[太字][明朝体][斜体]「やぁっ!」[/斜体][/明朝体][/太字]
ルミナスの一振りが影を斬り祓い、影は羽へと戻っていく。ミエルは次々に羽を飛ばし、その度に影が現れた。一度羽へと戻っていった影も再び襲いかかってきて、その数はどんどん増える一方だ。
ミエル本体はノイトと戦っていたため、時計塔の屋根の方へと跳び上がっていった。リーリャ、ルミナス、ハイヴの3人は影たちの相手をし、[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]はノイトの元へと着いてくる。
「ふぅ...それで、あなたは何がしたいんですか?ちゃんと言ってくれないと分かりませんよ。」
[明朝体]「......私は、ミエル。この街の管理者を務めている。君たちを呼んだのは、......君たちの実力を測るため...。」[/明朝体]
ノイトはマジックバッグから取り出した【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を握る手にゆっくりと力を込めながらミエルの言葉を聞く。
「“実力を測るため”ですか......なぜ、そんなことをするんですか?」
[明朝体](“そんなこと”...?)[/明朝体]
ミエルはノイトの言葉に何かを感じつつも、冷たい風を受けながらノイトの問いに答えた。
[明朝体]「...この街のさらに下には、魔族と化したこの街の心臓が居る。それを説得するのも私の仕事だが...最近はやけに燃料を過剰に欲しがってな。少し躾ける必要があるんだ。」[/明朝体]
ノイトは少し息を吐いてから真っ直ぐとミエルを見据えて口を開く。
「僕が、[漢字]躾ける役[/漢字][ふりがな]ハンドラー[/ふりがな]に値するかを試していた、ということですね...。チェスやドミノ、ダウト、挙句の果てには本格的な戦闘...。あなた、前半はただ遊んでいただけでは?」
[明朝体]「......。」[/明朝体]
ミエルは言い返せなかった。恐らく純粋に遊んで楽しんでいただけだったのだろう。先程の喫茶店の店員の話では、長年この街の管理者を務めているとのことだった。久しぶりにノイトのような者にあったため遊んでみたかったようだ。
「ハァ...魔族を相手にするのは嫌ですよ。面倒なんで。ただ、試すと言ったからには最後までやりますよね?まだ勝負の決着は決まってないでしょう。ほら、かかってきて良いですよ?」
[中央寄せ][[漢字][太字]付与[/太字][/漢字][ふりがな]グラント[/ふりがな][太字]:[/太字][明朝体][漢字][太字]耐性強化[/太字][/漢字][ふりがな]レジスタント[/ふりがな][/明朝体]][/中央寄せ]
ノイトは自身に耐性強化の魔法を付与した。普段は戦闘は効率化のための手段として扱っていたためこの魔法は使わない。しかし、魔法や魔術の能力も実力のうち。実力を試されるのであればこちらもその期待を上回るのが[漢字]礼儀[/漢字][ふりがな]サービス[/ふりがな]だと思い、ノイトはこの手に出たのだ。
(これであの影たちも僕の方に寄ってくるだろうな。マズロイン戦の時はあまり目立ちたくなかったから使わなかったけど...この街ならヘイトを取っても大丈夫だろう。)
[中央寄せ][斜体][明朝体][大文字][太字]«[漢字]蜜蝋[/漢字][ふりがな]Cire d'abeille[/ふりがな]»[/太字][/大文字][/明朝体][/斜体][/中央寄せ]
ミエルの背中には蜜蝋が固まって出来た翼が生えてきた。2人の戦闘は空中戦になりそうだった。
(この街...一定の硬度を境に昼夜が固定されているな...。流石にイカロスの二の舞いにはならなさそうだね。まったく...僕は戦闘向きではない、はずなんだけど...。)
対峙する2人が互いに警戒心を強め、相手の微細な動きも見逃すまいと集中している。リーリャたちは上の気配の在り方が変わったのを感じつつ、目の前の影たちと対峙していたのだった。
※¹…「ジムノペディ 第1番/エリック・サティ」
※²…「ジュ・トゥ・ヴー/エリック・サティ」
[中央寄せ]エリア〚霧の街・ブリュエル〛[/中央寄せ]
霧がようやく晴れてきて、視界が開ける。そこに広がっていたのは蒸気と灯りで溢れた街。
「え...?カタパリア...ではないですよね...。」
フィルマリーは目を覚ましてからしばらく霧の中を歩いていたが、ノイトたちとはぐれてしまったようだ。しかし、ノイトの居場所はすぐに分かった。街の巨大な時計塔の上で、何かが戦っている。
(ノイトさん...多分、リーリャさんあの王女様も一緒...。早く私も合流しないと...!)
フィルマリーはノイトたちと合流するべく、時計塔の方へと走り出した。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
その少し前、ノイトたちは時計塔内部の無限螺旋階段で足止めを喰らっていた。ノイトのせいでリーリャとルミナスの2人はノイトのマジックバッグの中を彷徨っている。
「もう......もう、ノイトったらいきなり何するの...?ここ、結構広いしなんか感覚が変なんだけど...。」
[太字][明朝体]「...ここは、お兄ちゃんのマジックバッグの中...でしょうか?」[/明朝体][/太字]
2人が見上げると真っ黒な空間に色々な魔具や武器が浮かんでいる。革の手袋の魔具や【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】や[漢字]波刃剣[/漢字][ふりがな]フランベルジュ[/ふりがな]。[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]に[漢字]希璋石[/漢字][ふりがな]フィスリテル[/ふりがな]にルミナスの手紙。色々なものが収納されているようだった。
[太字][明朝体]「私の手紙...ちゃんと大事にしてくれているんですね...。」[/明朝体][/太字]
「...ノイトって思い返してみたらすごい数の魔具を扱ってたけど...こんなにたくさん持ってたんだ...!」
見覚えがあるものを見つける度に、リーリャは今までのノイトとの冒険の出来事を思い出す。そして、自分の役目を見つけた。
(そうだ...私はピアノでノイトのことを守ったり、一緒に魔神と戦ったりしてたんだった...。あのミエルって言う人とノイトが戦うことになったら、私も一緒に戦わないといけないはずだよね!)
一方のルミナスも、ノイトの数々の所有物を見てはノイトのことを改めて敬服する。
[太字][明朝体]「こんなに沢山...!魔具の数だけお兄ちゃんの思い出が...すごいです、本当に...ッ!!」[/明朝体][/太字]
頬を赤らめて目を細め、ノイトのことでルミナスの頭はいっぱいになった。リーリャはルミナスの様子を見て謎の焦燥感に駆られながら上を見上げる。
(ノイト......。あんまり他の子のこと見すぎないでね...?)
ノイトは無限螺旋階段のある程度の下の段とある程度の上の段に大量の[漢字]希璋石[/漢字][ふりがな]フィスリテル[/ふりがな]を置いた。
「ふぅ...これで[漢字]位置置換[/漢字][ふりがな]サブスティテュート[/ふりがな]を繰り返せば覚えられるかな...?やや強引だけど...[漢字]反復横跳び[/漢字][ふりがな]シャトルラン[/ふりがな]開始!」
ノイトは上の方の段の石と自身の位置を入れ替える。
(この魔力の反応ね、覚えた。)
次にノイトは下の段の石と位置を入れ替えた。ノイトが石と入れ替わったことで他の石はさらに下の段へと落ちていく。
(下。次は上。)
ノイトはまた上の段へと移動し、その次の瞬間には下へと移動した。ひたすらそれを繰り返し、段々と石の位置を覚えてくる。
(だいぶ慣れてきた...後は石の魔力反応を架空のものとして座標を意識して...その空間と自分が入れ替わる....イメージ!)
ノイトは石がないところへと移動出来ていた。しかし、意識していた座標がブレたせいで階段からズレてしまった。
[斜体]「うわっ!」[/斜体]
咄嗟に階段の手すりに掴まったことで落下せずに済んだが、危うく永遠に落下する羽目になるところだった。
(ハァ...危なかった...。もっとブレないイメージをしないと...。)
そこでノイトは下の方の段に置いてあった石がかなり下の段まで落ちていることに気がつく。そして、ノイトは上の方の段に置いてあった石の座標を確認し、下の方の段に置いてあった石を螺旋階段のてすりの外から下へと落とした。しばらくしてからノイトは落下中の石と位置を入れ替える。
[中央寄せ][[漢字][太字]位置置換[/太字][/漢字][ふりがな]サブスティテュート[/ふりがな]][/中央寄せ]
当然だが、石の重力落下慣性は消えない。その慣性はノイトに移り、ノイトはどんどん下へと落ちていく。
[斜体](うん...これくらいならもう大丈夫だろう。)[/斜体]
ノイトは先程上の方の段に置いてあった石と位置を入れ替えた。すると、
[中央寄せ]〈[明朝体]バリンッ[/明朝体]〉[/中央寄せ]
何かが割れる音がして、気がつけばノイトは上の階に居た。恐らく螺旋階段の長さにはある程度の限界があり、ノイトと上の石との距離がそれ以上の長さになった瞬間に位置を入れ替えたことでこの魔法が限界を迎えたのだろう。
「ふぅ...次だね。...あ、その前に......!」
マジックバッグの中からノイトはリーリャとルミナスを引っ張り出した。
「お待たせ。ごめんね、さっきはいきなりバッグの中に突っ込んじゃって。」
ノイトが無限螺旋階段の魔法を破ったことに気づくと同時に、リーリャにはノイトの笑顔と先程の焦燥感が1度にまとまってのしかかってきた。
「...もう、いきなりはやめてよね...?」
「......はい。」
[太字][明朝体]「お兄ちゃん!あの魔具全てにお兄ちゃんの思い出が詰まっているんですよね?! もしよろしければお兄ちゃんの思い出、教えてください!!」[/明朝体][/太字]
ルミナスは翡翠色の瞳をキラキラと輝かせながら寄ってくる。
「ん〜、えっと......また今度ね?」
しかし、流石に珍しくリーリャが怒っているように感じたノイトは、ルミナスのことは後回しになってしまうのだった。
そのとき、ノイトは反射的に振り返る。すると、そこには仮面の人物が立っていた。リーリャとルミナスは警戒してノイトの後ろで構えるが、ノイトは一歩前へと歩み出す。
「...ミエルさん、ですか...?」
[明朝体]「...。」[/明朝体]
仮面の人物は何も答えなかったが、否定していない。この人がミエルで間違いないようだ。ミエルが手を軽くあげると、ノイトたちの横に巨大なチェスが現れる。
「勝負、ですか......良いですよ。受けて立ちましょう。」
[太字][明朝体]「お兄ちゃん、チェスも出来るんですね!すごいです!頑張ってください!!」[/明朝体][/太字]
「ノイト、頑張ってね!」
仲間の応援を背中に受けながら、ノイトはどこかやるせない気持ちを抱えていた。
(ハイヴさんの方が適任者だっただろうけど...まぁ、まだ合流出来てないからしょうがないのかな...。)
ノイトは白い駒たちの方へと立った。
「さぁ、始めましょう。」
──数分後。
「あぁ〜、負けた〜!」
ノイトのチェスのレーティングはせいぜい500~800程度。対して、ミエルのレーティングはどんなに低くても1000を下回ることはないだろう。[漢字]凡人[/漢字][ふりがな]ノイト[/ふりがな]vs[漢字]秀才[/漢字][ふりがな]ミエル[/ふりがな]は後者の勝利となった。
(ハイヴさんなら勝てたのかな...?先読みは苦手だから分からない...。)
どうやらミエルはまだもの足りないらしく、気がつけば目の前にはドミノボードとドミノ牌が置かれている。
「次はドミノですか...良いですよ。ドローゲームでどうです?」
7枚の牌が手元に配られた。ゲームスタートだ。
──さらに数分後。
現在、ノイトから始まったゲームが終盤に差し掛かっていた。第1ラウンドでミエルに7点取られた後に第2ラウンドでさらに27点取られ、第3ラウンドでもさらに9点取られた。第4ラウンドで何とかノイトが7点獲得し、第5ラウンドで驚異の58点を獲得。第6ラウンドでも引き続きノイトが4点を獲得したが、第7ラウンドと第8ラウンドではミエルの手持ちの牌が先になくなったもののノイトが0と0の牌を持っていたため互いに加点なし。
そしてこの第9ラウンドでノイトの前世での運の悪さが伝染ったのか、ミエルが連続で場に出せない牌を引きまくり、そこでノイトの手持ちの牌がなくなった。その時にミエルの手持ちの牌の目の数は合計で75。ノイトは75点を獲得し、最終的に144対43で勝利した。
(あっぶな〜...途中まで僕の前世の運の悪さが復活してきててどうなるかと思ったけど...何とか勝てた...。...ん?でも運の良さで考えるならルミナの方が良かったんじゃ...。)
ノイトとミエルの勝負は現在1勝1敗。ミエルからは全然焦りのようなものを感じないため、恐らく3本先取か5回勝負なのだろう。次はトランプでダウトをするようだ。
ダウトは、簡単に言えばターンごとに既に場に出ているカードに書かれた数の次の数のカードを出していくゲームである。しかし、全く違うカードを出しても、バレなければそのまま続けることが出来る。もちろんバレてしまったらその罰として全てのカードを手札に迎え入れなければならないのだが。
流石に2人では相手の手札が分かってしまうため、第三者の立場の助っ人が必要だった。そこで呼ばれたのが黒い霧のような人型の何か。ノイトたちが先程喫茶店で見かけた者たちと同じものだろう。それが3人増えた。合計で5人であるため、ゲームとしては充分に成立する。
ノイトがダウトで勝負をしている間、リーリャはピアノの練習をしていた。「ジムノペディ 第1番」※¹の演奏が始まり、ルミナスはその横で静かに演奏を聞いている。リーリャが演奏している曲は静かなものであるため、ノイトたちは演奏によって気が散ることはない。
ノイトとミエルと3人の霧を含めた計5人の勝負は長引いている。
(ん...普通に全員強いな......。あ、バレた。)
ノイトは間違ったカードを自分の手札に加えながらリーリャの演奏を聞く。特に意味が込められているわけではないが、それでも1音1音が丁寧に奏でられているようだった。やがてジムノペディの演奏が終わっても、勝負は続いていたため、リーリャはもう一曲弾くことにした。次にリーリャが演奏したのは「ジュ・トゥ・ヴー」※²である。直訳すると「あなたが欲しい」という意味であるが、恐らくリーリャはその意味を知らずに弾いている。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ハイヴはピアノの演奏に気がついてその音が聴こえる方へと走り出した。
(あの霧を吸わずにここまで来ることは出来ましたが...丁度道標が欲しい所でした。)
その演奏は時計塔の中から聴こえるようだった。ハイヴは時計塔内部に入り、目の前の螺旋階段を見上げる。
(これは...上限がない......?魔法の一種のようですが、どういたしましょう...。)
そこで[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]がハイヴの元へと降りてきた。どうやら、ノイトたちに置いていかれてしまったようだった。ハイヴは[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]に触れるとノイトの現在地を感じ取った。そして、ハイヴが目を閉じて正確な座標を予測し、魔法を唱える。
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
ハイヴと[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]はノイトたちの元へと[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]した。すると、リーリャとルミナスがピアノの椅子に座ってピアノの練習をしていて、ノイトとペストマスクの仮面を被った人物は黒い霧のような人型の何かに見守られながら何かをしている。[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]がルミナスの方へと飛んでいき、それに気がついたルミナスは笑顔でそれを迎えた。
[太字][明朝体]「[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]!」[/明朝体][/太字]
「ハイヴさん!どうしてここが...?」
ハイヴはノイトが居る方を一瞥し、リーリャの質問に答える。
「街の中を歩いていたらピアノの演奏が聞こえましたので、その音を頼りに。先日、リーリャ様が私が勤めておりました喫茶店でピアノを演奏なさっているのを思い出しましたので、もしやと思いここまで参りました。」
そう答えた後にハイヴはノイトの方へと歩いていった。
「ノイト様、合流が遅くなってしまいまして申し訳ありませんでした。」
「お、ハイヴさん!この人はミエルさんという人で、この街の管理者だそうですよ。歓迎なのかお手並み拝見的なものなのかは分かりませんけど、今はこの人と勝負してるところです。」
ハイヴはノイトの横で歩みを止め、ミエルに挨拶をする。
「はじめまして、.........でしょうか?それとも、久しぶり...と申し上げた方がよろしいのでしょうか...ミエル。」
ミエルは何も答えないままハイヴの方をじっと見つめているようだった。ハイヴも同様にミエルのことを見つめている。リーリャとルミナスはハイヴのミエルに対しての挨拶を聞いて振り向いた。ノイトや周囲の黒い霧たちもミエルのことを見つめている。
その場の中心となったミエルは答える代わりに、右手を上へとかざした。咄嗟にノイトとハイヴはリーリャとルミナスの方へと跳び、2人を抱えてさらに跳び上がった。その瞬間、気がつけば4人はその時計塔の高層階のバルコニーに居た。
(無詠唱の[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]...いや、[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]か。かなりの実力者なのはよく分かった...。)
バルコニーに着地した瞬間、ミエルが黒い羽のようなものを持ってノイトの間合いに入ってきていた。
[斜体](速い...!それにこれは...!!)[/斜体]
[中央寄せ][斜体][大文字][太字][明朝体]«[漢字]黒羽[/漢字][ふりがな]la plume noire[/ふりがな]»[/明朝体][/太字][/大文字][/斜体][/中央寄せ]
ノイトは身体を仰け反らせてそれを躱すが腕の振りと共に放たれた羽が壁に刺さると、その羽から黒い影が伸びてきてノイトへと向かってくる。
(羽だけ前払いで募金しろ、ってことじゃないよね...?)
[中央寄せ][[漢字][太字]明光[/太字][/漢字][ふりがな]ライト[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトが振り向きざまに放った光によって影が怯んで羽へと戻っていった。もちろん、その隙にミエルが次の羽を飛ばしてきていた。そこでノイトの背を守るようにハイヴが飛んでいき、自身のマジックバッグから取り出したレイピアで羽を弾く。ルミナスも剣を抜いてミエルの方へと向かっていったが、ハイヴが弾いて床にあたるタイルに刺さったところから影が伸びてきて襲いかかってきた。
[太字][明朝体][斜体]「やぁっ!」[/斜体][/明朝体][/太字]
ルミナスの一振りが影を斬り祓い、影は羽へと戻っていく。ミエルは次々に羽を飛ばし、その度に影が現れた。一度羽へと戻っていった影も再び襲いかかってきて、その数はどんどん増える一方だ。
ミエル本体はノイトと戦っていたため、時計塔の屋根の方へと跳び上がっていった。リーリャ、ルミナス、ハイヴの3人は影たちの相手をし、[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]はノイトの元へと着いてくる。
「ふぅ...それで、あなたは何がしたいんですか?ちゃんと言ってくれないと分かりませんよ。」
[明朝体]「......私は、ミエル。この街の管理者を務めている。君たちを呼んだのは、......君たちの実力を測るため...。」[/明朝体]
ノイトはマジックバッグから取り出した【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を握る手にゆっくりと力を込めながらミエルの言葉を聞く。
「“実力を測るため”ですか......なぜ、そんなことをするんですか?」
[明朝体](“そんなこと”...?)[/明朝体]
ミエルはノイトの言葉に何かを感じつつも、冷たい風を受けながらノイトの問いに答えた。
[明朝体]「...この街のさらに下には、魔族と化したこの街の心臓が居る。それを説得するのも私の仕事だが...最近はやけに燃料を過剰に欲しがってな。少し躾ける必要があるんだ。」[/明朝体]
ノイトは少し息を吐いてから真っ直ぐとミエルを見据えて口を開く。
「僕が、[漢字]躾ける役[/漢字][ふりがな]ハンドラー[/ふりがな]に値するかを試していた、ということですね...。チェスやドミノ、ダウト、挙句の果てには本格的な戦闘...。あなた、前半はただ遊んでいただけでは?」
[明朝体]「......。」[/明朝体]
ミエルは言い返せなかった。恐らく純粋に遊んで楽しんでいただけだったのだろう。先程の喫茶店の店員の話では、長年この街の管理者を務めているとのことだった。久しぶりにノイトのような者にあったため遊んでみたかったようだ。
「ハァ...魔族を相手にするのは嫌ですよ。面倒なんで。ただ、試すと言ったからには最後までやりますよね?まだ勝負の決着は決まってないでしょう。ほら、かかってきて良いですよ?」
[中央寄せ][[漢字][太字]付与[/太字][/漢字][ふりがな]グラント[/ふりがな][太字]:[/太字][明朝体][漢字][太字]耐性強化[/太字][/漢字][ふりがな]レジスタント[/ふりがな][/明朝体]][/中央寄せ]
ノイトは自身に耐性強化の魔法を付与した。普段は戦闘は効率化のための手段として扱っていたためこの魔法は使わない。しかし、魔法や魔術の能力も実力のうち。実力を試されるのであればこちらもその期待を上回るのが[漢字]礼儀[/漢字][ふりがな]サービス[/ふりがな]だと思い、ノイトはこの手に出たのだ。
(これであの影たちも僕の方に寄ってくるだろうな。マズロイン戦の時はあまり目立ちたくなかったから使わなかったけど...この街ならヘイトを取っても大丈夫だろう。)
[中央寄せ][斜体][明朝体][大文字][太字]«[漢字]蜜蝋[/漢字][ふりがな]Cire d'abeille[/ふりがな]»[/太字][/大文字][/明朝体][/斜体][/中央寄せ]
ミエルの背中には蜜蝋が固まって出来た翼が生えてきた。2人の戦闘は空中戦になりそうだった。
(この街...一定の硬度を境に昼夜が固定されているな...。流石にイカロスの二の舞いにはならなさそうだね。まったく...僕は戦闘向きではない、はずなんだけど...。)
対峙する2人が互いに警戒心を強め、相手の微細な動きも見逃すまいと集中している。リーリャたちは上の気配の在り方が変わったのを感じつつ、目の前の影たちと対峙していたのだった。
※¹…「ジムノペディ 第1番/エリック・サティ」
※²…「ジュ・トゥ・ヴー/エリック・サティ」