世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚霧の街・ブリュエル〛[/中央寄せ]
ノイトはマジックバッグから魔具を取り出した。
「ノイト...それは......?」
ノイトの手に握られていたのは【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】ではなく、[漢字]波刃剣[/漢字][ふりがな]フランベルジュ[/ふりがな]だ。この剣は以前ノイトが戦争の終結に貢献したお礼としてノルティーク王から貰ったものである。ただの剣ではなく、[漢字]黒色の金属[/漢字][ふりがな]スタチアル[/ふりがな]製であるため、しなりがあって丈夫であり、近距離や中距離の戦闘では便利だろう。ノイトが武器を構えたことに気がついたルミナスは自身も剣を構える。リーリャは武器を持っているわけではなかったため、ノイトの邪魔にならない程度に近くで構えた。
[明朝体][太字]「お兄ちゃん...何か居るのですか...?私の魔法ではまだ何も感じませんが...。」[/太字][/明朝体]
背中を預けた3人の周りは静かだった。ただ遠くから歯車が回る音や蒸気が吹き出す音などは聞こえたが、他には何も感じない。振り向かないままノイトはルミナスの質問に答える。
「いや...ちょっと妙な感じがしてね。」
次の瞬間、3人の足元に無数の影が現れた。影は鴉の形をしていて、群れを成している。
([斜体][漢字]影鴉[/漢字][ふりがな]コルニクス[/ふりがな]...!?[/斜体])
足元に夢中になっている3人の上空に気配を感じたノイトは[漢字]波刃剣[/漢字][ふりがな]フランベルジュ[/ふりがな]を持つ力を強め、咄嗟に上空...ではなく、近くの手すりの方へと振り向き、その勢いで武器を振るった。
[明朝体]「お見事...。」[/明朝体]
3人の上空に居た気配は一瞬で近くの手すりの上に移動していて、ノイトは反射的にその方へと手を打ったのだ。ノイトの攻撃は容易く躱され、ペストマスクを付けた人物がそのまま後ろへ倒れて下の街へと落ちていった。
([斜体]......っ!![/斜体])
「跳んで!」
ノイトはそう叫ぶと同時にリーリャを抱え、ノイトの声を聞いたルミナスも咄嗟に跳び上がった。その刹那に、ほんの今し方までそこに合った足場が内側から爆ぜ、足場とは呼べないものになる。
(ルミナスも咄嗟に反応出来ている...判断力と行動力は合格かな...。)
いつの間にかノイトたちの上空に移動してきていた人物がノイトたちに向かって何かを放とうとしていた。
ノイトは空中で身をひねって回転し、その人物の攻撃を魔法を纏わせたで斬撃で相殺する。
[中央寄せ][太字][大文字][斜体][明朝体]«[漢字]蜜蝋[/漢字][ふりがな]Cire d'abeille[/ふりがな]»[/明朝体][/斜体][/大文字][/太字][/中央寄せ]
[中央寄せ][太字][大文字][斜体][明朝体][[漢字]熔解[/漢字][ふりがな]フォンドル[/ふりがな]][/明朝体][/斜体][/大文字][/太字][/中央寄せ]
仮面を被った人物は手から蜜蝋のようなものを放ち、ノイトは即座にそれを[漢字]熔[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]かした。ノイトは落ちるルミナスを腕で抱えて一緒に落ちていく。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん...!!」[/明朝体][/太字]
「大丈夫。」
ノイトたちは下に広がる街へと落ちている。ペストマスクの人物は特に追ってくる様子もなく、ただ落ちていくノイトたちを眺めていた。
(追ってくる様子もないな...取り敢えずこのまま落ちてみるか。)
「ノイト!地面にぶつかっちゃう!!」
[中央寄せ][[漢字][太字]空中浮遊[/太字][/漢字][ふりがな]レビテーション[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトの魔法で3人は地面に激突することなく着地した。上空を見上げると、もうそこには誰も居ない。
[太字][明朝体]「あの方は何をしたかったのでしょうか...?」[/明朝体][/太字]
「う〜ん、取り敢えず僕達をどこかに連れていきたいのかな...?...こっちから追いかけるのは無理そうだね。諦めて観光でもしようか。」
ノイトはリーリャとルミナスを降ろして街を歩きだす。他に1人も居ない静かなはずの街は歯車と蒸気の音で満たされ、路地裏を見れば鼠がじっとこちらを見つめていた。
「ノイト...なんか、ちょっとだけ不気味だね...。」
[太字][明朝体]「お兄ちゃん、このような場所でも“住めば都”と言う言葉は通じるのでしょうか...?」[/明朝体][/太字]
ルミナスの質問を聞いて少し考える素振りをした後にノイトが答える。
「ん〜、一応鼠がこれだけ生きていられる程の食料はあるみたいだし、建物も見た感じしっかりしてるから通じることは通じるんじゃないかな...?」
警戒心を解かず、しかしどこか落ち着いた様子で歩くノイトに続いた2人は素直に街の感想を述べていった。
[太字][明朝体]「ここは暖かくてどこか落ち着く感じがしますね...それに、ツンとしたの匂いの他に、何だか甘い匂いもします。」[/明朝体][/太字]
「...あ、ホントだ!甘い感じ...。」
リーリャもルミナスの話を聞いて匂いに気がついたようだ。ノイトは巨大な時計塔の方を見上げる。
(あそこなら街が一望出来そうだな...。行ってみるか。)
「ねぇ、ノイト...あっちになんかあるよ?」
リーリャが指差す方を見ると、喫茶店のような所があった。灯りは点いていて、特に不穏な気配も感じない。3人はその店に入ってみることにした。
[中央寄せ][斜体]〈カランカラン〉[/斜体][/中央寄せ]
中に入ると、黒い霧のような人型の何かが人のように振る舞っている。
[明朝体]{いらっしゃい...お好きな席へどうぞ...。}[/明朝体]
その声は直接頭に流れ込んできた。きっとテレパシーのようなものなのだろう。3人は他の客らしき黒い霧たちが居ない、空いている席に座る。
[明朝体]{生きている人間が...この街に来るなんて...珍しいね...。}[/明朝体]
そう言っておしぼりを出してくれた。
(サービス精神は日本と同じ...最初からおしぼりを無料で出してくれるのはありがたいな。見た感じ、この街に蒸気は充分にあるみたいだね。)
[明朝体]{うちは“[漢字]憶い灯[/漢字][ふりがな]mémoire[/ふりがな]”...と言う店だよ...。珍しいお客さんには...おもてなしをしないとね...。}[/明朝体]
そう言った店員はメニュー表を渡してくれる。それを開くと、紅茶やコーヒーなどが並んでいた。
(コーヒーショップみたいな感じか...僕はカフェラテで良いかな。)
「それじゃあ、僕はカフェラテでお願いします。」
「私は紅茶をお願いします!」
[太字][明朝体]「私は、お兄ちゃんと同じものをお願いします!」[/明朝体][/太字]
(ん...珍しいな。リーリャはいつも僕と同じメニューを頼むのに...。紅茶には何か思い入れがあるのかな?)
ルミナスの周りを飛んでいる[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]がルミナスと遊んでいる。ノイトはルミナスの楽しそうな様子を見て微笑んだ。隣に座っているリーリャは何か懐かしいものを見ているような目でノイトと同じ方を向いている。
しばらくして黒い霧の店員が注文の品を持ってきてくれた。
[明朝体]{お待たせ...淹れ立てだから...火傷しないようにね...。}[/明朝体]
「[太字][明朝体]「[/明朝体][/太字]「ありがとうございます。」[太字][明朝体]」[/明朝体][/太字]」
ノイトとルミナスはカフェラテを、リーリャは紅茶を一口飲む。
[太字][明朝体]「ん、温かくて美味しいです!」[/明朝体][/太字]
「ん〜、甘みがあって良いね!なんかすごく、落ち着く感じ。」
「良い香り〜!」
ルミナスの[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]は相変わらずルミナスの周りを飛んでいて、ルミナスもまた[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]の方を見ては微笑みを浮かべた。ノイトはリーリャが何故紅茶を頼んだのかそれとなく聞いてみることにした。
「そういえば、リーリャが僕と違う飲み物頼むなんて珍しいね。今日は紅茶の気分だったの?」
「あ...いや、以前フィルマリーさんのお店で出してもらった紅茶が美味しかったからまた飲みたいな〜、って思って。」
[太字][明朝体]「フィルマリーさん、と言うのは先程まで一緒に居られた方ですか?」[/明朝体][/太字]
ルミナスはまだフィルマリーとハイヴのことをよく知らなかった。そこでノイトとリーリャが2人について説明をする。
「フィルマリーさんは元・魔道士で、魔導都市・マギノシティにある魔具のお店の店主なんだよ〜。」
「そうだね。ルミナにあげた聖剣と聖鎧もフィルさんの店で買ったものだよ。」
ルミナスは説明を楽しそうに聞いている。[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]は大人しくルミナスの肩に止まってルミナスと同じように話を聞いていた。
「ハイヴさんは機械都市・カタパリアにある執事喫茶で働いていたんだけど、僕が仲間に誘ったら着いてきてくれたんだよね。交渉術とかにも長けてそうだし、チェスとかドミノも僕より上手いよ。」
[太字][明朝体]「なるほど...!その方たちが今のお兄ちゃんとリーリャさんの仲間なんですね!!」[/明朝体][/太字]
ノイトはカフェラテを一口飲んでから何かを思い出したように話し始めた。
「後は、今は修行中...(?)のメルが霊峰の町ノービリアに居るね。...そういえば、リーリャもルミナに敬語使わずに話してたね。リラックス出来ているようで良かったよ。」
ハッと気がついたリーリャはルミナスと目が合う。笑顔のルミナスにつられてリーリャも笑ってしまい、その場にはまさに和やかと呼べる空間が広がっていた。2人が何かを話しているうちにノイトは先程の仮面の人物について考える。
(あの人、蜜蝋みたいなものを出していたな...さっきの小屋の中でもハイブツールを見つけたし、何か関係あるかも...。いきなり出てきたけど、何者なんだろ...?)
そこで黒い霧の店員が戻ってきた。
[明朝体]{今日は...鴉たちが騒がしいね...あの人は今...どんな気持ちなんだろう...。}[/明朝体]
「...あの人?」
[明朝体]{昔から...この街の管理人を...してくれている、...鴉の仮面を付けた...人だよ。名前は...ミエルって言う...。}[/明朝体]
(......ミエル、か...。フランス語でそんな単語があったような...もしかしたら僕やリーリャと同じ転生者...?そんなにゴロゴロ居るものなのかな〜...?)
「それと、“どんな気持ちなんだろう”って言うのはどういうことなんですか?」
黒い霧の店員は霧の中に浮かぶ白い丸を外の窓の方へと向けて話す。
[明朝体]{あの人は...鴉と蜜と霧を操っているんだよ...この街が壊されないように...余所の人たちを...追い出してくれる...。でも...今日は珍しく...君たちが来た...。}[/明朝体]
[太字][明朝体]「なるほど...。それで“どんな気持ち”か、と言うことですか...。」[/明朝体][/太字]
「...なんでそのミエルって言う人は私たちを呼んだのかな?確か“ようこそ”って言ってたよね?」
「そうだね...フィルさんって言う明らかに魔力量が桁違いの人が居るのに街に入れるのは何でだろう...?」
(あぁ...こういう時にメルが居たらツッコんでくれてたよな...懐かしい。いつか必ず合流しよう。)
[太字][明朝体]「あの...あの方は私たちの所へ来ましたよね?だとすれば、この3人の中の誰かに用があるのでは...?」[/明朝体][/太字]
「そっか...だとすれば誰だと思う...?」
[太字][明朝体]「さっきは私には目もくれずお兄ちゃんとリーリャさんの方を攻撃していました。あの方が音楽に興味があるのかどうかも分かりませんし、そもそもリーリャさんがピアノを弾けることを知らないのだと考えると...お兄ちゃんを狙っていたのではないでしょうか。」[/明朝体][/太字]
ルミナスの名推理はノイトを納得させるには充分だった。
「うん、なかなか良い考えだね。そう考えるのが妥当って所かな...。それじゃあ、少し休んだらあのミエルって言う人に話を聞いてみよう。」
「でも、どこにいるか分かるの...?」
リーリャの質問を聞いてノイトは笑みを浮かべる。
「大丈夫。向こうの狙いが僕だったら向こうから来るだろうし、もし来なくても、この街の管理人なのであればこの街が一望出来る場所に居ると思うよ。どこだと思う?」
ルミナスが街の様子を思い出し、ノイトが求める答えに辿り着く。
[太字][明朝体](お兄ちゃんはさっき、私とリーリャさんが匂いに気がついたときに時計塔の方を見上げていた...。)[/明朝体][/太字]
リーリャもその答えに気が付き、声をあげる。
「時計塔...?」
ノイトは笑みを浮かべたまま頷く。それを見た2人は目的地が決まり、残っているの飲み物を飲みきってしまうことにした。
「店員さん、なんかあんまり注文出来なくてすみません。」
[明朝体]{大丈夫だよ...もし機会があれば...また来てね...。}[/明朝体]
「はい!」
3人はカフェラテと紅茶をそれぞれ飲み干した後、店を後にして街に佇む巨大な時計塔に向かう。
「ノイト、もしかして...走るの?」
「ん〜...歩いて行ったとしても、もたもたしてるって思われて向こうが攻撃仕掛けてきたら街に被害が出かねないからな...。うん、やっぱり走るか。」
[太字][明朝体]「あの、お兄ちゃん...私はお兄ちゃん程速くは走れないのですが...どうすれば良いでしょうか?」[/明朝体][/太字]
(そっか...リーリャも[打消し]意外と[/打消し]足が速いし...かと言って歩いていくのも、ルミナを抱えて行くのもいざという時に困るな...。う〜ん......あっ、そう言えば...!!)
ノイトは指を鳴らす。すると、ルミナスの周りを飛んでいた[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]が小さな光の粒子を放ち、その粒子はルミナスの足を纏う。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん...これは?」[/明朝体][/太字]
「試しに走ってみな〜」
ルミナスはノイトに言われるままに前へと走ってみる。ルミナスは自身の足が軽く感じ、身体もどんどん前へと進んでいく。
[太字][明朝体]「わぁ!すごいです!! 足が軽いです!!」[/明朝体][/太字]
ノイトとルミナスはルミナスの後を追って走り出した。
「このスピードなら僕たちがルミナを置いていくことはないでしょ。」
[太字][明朝体]「ありがとうございます!お兄ちゃん!!」[/明朝体][/太字]
時計塔へとどんどん近づいていっているはずだが、時計塔は思ったよりも遠いようでなかなか辿り着かない。
[斜体]「そう言えばさ、ノイト。」[/斜体]
[斜体]「ん?どうしたの?」[/斜体]
[斜体]「なんでルミナス様はノイトのことを“お兄ちゃん”って呼んでるの?」[/斜体]
ノイトはルミナスと出会った時のことを思い出した。
(え〜っと...?確かいきなり部屋に連れて行かれてタメ口で話して良い、って言われて...。“お兄ちゃん”って呼びたいって言ってた理由を考えさせたら実績から僕がかっこいい人だ、って思ったからだって言ってたよね...?)
ノイトが考えている間にルミナスが代わりにリーリャの質問に答える。
[太字][明朝体]「それは、お兄ちゃんが魔神を倒したって言う功績をレイクから聞いて、お兄ちゃんがかっっこいい方だと思ったからです!」[/明朝体][/太字]
[斜体]「[小文字]かっこいいのは分かるけど...ずるいよ。[/小文字]」[/斜体]
[斜体]「...。」[/斜体]
3人はついに時計塔へと辿り着いた。
「ふぅ...結構大きいんだね...。」
「僕が住んでた時計塔の3倍くらい高いんじゃないコレ?」
[太字][明朝体]「ふふっ...いつかお兄ちゃんのお家に連れて行ってくださいね?」[/明朝体][/太字]
話しがどんどんズレていってしまうため、ノイトは適当に返事をして時計塔の中へと入っていく。時計塔の中は塔の周りの街以上の歯車やパイプ、ピストンなどが張り巡らされている。塔の中央の螺旋階段を先を見上げようとすると、先が見えない程高くまで伸びていた。
「えっと...これを上っていくの?」
「走ってきた後に言うのは酷だけど...そうだよ。」
[太字][明朝体]「上まで魔法で行けないのですか...?」[/明朝体][/太字]
ノイトは少し困った顔をしてルミナスの質問に答える。
「う〜ん、[漢字]空中浮遊[/漢字][ふりがな]レビテーション[/ふりがな]だと段に躓いたときに危ないし...僕はまだ[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]、使えないんだよね...。」
リーリャとルミナスはそれを聞いて驚いた。ノイトは魔神にも有効な魔法や魔術を扱えるが、[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]が使えないのは予想外であった。
[太字][明朝体]「え!? お兄ちゃんにも扱えない魔法があったんですか...?」[/明朝体][/太字]
「まぁ、僕だって万能じゃないんだよ。今まで、[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]はメルやフィルさんに任せてたからね...。そろそろ覚えておいた方が良いのかな...?」
「ノイト、ホントに使えなかったんだ...。」
リーリャに関してはカタパリアに向かうためにヴェルグランド大陸に行った際にノイトの口から聞いていたが、それが本当のことだと知ったのは今が初めてだった。
(...前にも言ったんだけどな......僕を励ますのに必死でマトモに聞いてなかったのか...。)
時計塔の螺旋階段を上っていき、最上階を目指す3人は周囲の歯車やパイプからたまに吹き出してくる油や蒸気を警戒しながら仮面の人物の元へと向かう。
([漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]を先に偵察に行かせているけど‹[小文字][小文字]※ルミナスの許可は取っていない。[/小文字][/小文字]›、確かにこの上に居るな...。)
ノイトは上の状況を遠隔で確認しつつ、奇襲が無いかを探る。見た所向こうはノイトたちを静かに待っているようだ。
「ねぇノイト、あとどのくらい上れば良いの...?」
「......してやられたな...。」
「...え、何、もしかして...。」
道理で1番上が見えない訳だ。この階段は魔力で無限に続いている。正確には、エスカレーターを逆走しているようなものだ。周囲の歯車やパイプ、ピストンなどの背景もノイトたちの動きに合わせて動いていたため、気づくのが遅れた。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん、どうするんですか...?」[/明朝体][/太字]
「ん〜このタイプの仕掛けの脱出方法はアニメで予習済みだけど...二手に別れるのはちょっと心許ないな...。」
[太字][明朝体]「...?」[/明朝体][/太字]
「と、なると......2人とも、ちょっと僕のマジックバッグの中に入ってて。大丈夫、僕を信じて。」
「!?」[太字][明朝体]「!?」[/明朝体][/太字]
ノイトは2人の腕をマジックバッグの中に入れてマジックバッグの中にしまい込んだ。この世界のマジックバッグは入ったものを縮めて収納するものであるため、事故で異次元に収納物が飛んでしまうなどと言うことは起こらない。それを理解した上で安全面を考慮し、ノイトは2人をマジックバッグの中に避難させ、この階段の仕掛けを1人で解こうとしていた。
「さてと...立体螺旋構造タイプの高速反復横跳びか...[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]の練習になるかな...?」
[中央寄せ]エリア〚霧の街・ブリュエル〛[/中央寄せ]
ノイトはマジックバッグから魔具を取り出した。
「ノイト...それは......?」
ノイトの手に握られていたのは【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】ではなく、[漢字]波刃剣[/漢字][ふりがな]フランベルジュ[/ふりがな]だ。この剣は以前ノイトが戦争の終結に貢献したお礼としてノルティーク王から貰ったものである。ただの剣ではなく、[漢字]黒色の金属[/漢字][ふりがな]スタチアル[/ふりがな]製であるため、しなりがあって丈夫であり、近距離や中距離の戦闘では便利だろう。ノイトが武器を構えたことに気がついたルミナスは自身も剣を構える。リーリャは武器を持っているわけではなかったため、ノイトの邪魔にならない程度に近くで構えた。
[明朝体][太字]「お兄ちゃん...何か居るのですか...?私の魔法ではまだ何も感じませんが...。」[/太字][/明朝体]
背中を預けた3人の周りは静かだった。ただ遠くから歯車が回る音や蒸気が吹き出す音などは聞こえたが、他には何も感じない。振り向かないままノイトはルミナスの質問に答える。
「いや...ちょっと妙な感じがしてね。」
次の瞬間、3人の足元に無数の影が現れた。影は鴉の形をしていて、群れを成している。
([斜体][漢字]影鴉[/漢字][ふりがな]コルニクス[/ふりがな]...!?[/斜体])
足元に夢中になっている3人の上空に気配を感じたノイトは[漢字]波刃剣[/漢字][ふりがな]フランベルジュ[/ふりがな]を持つ力を強め、咄嗟に上空...ではなく、近くの手すりの方へと振り向き、その勢いで武器を振るった。
[明朝体]「お見事...。」[/明朝体]
3人の上空に居た気配は一瞬で近くの手すりの上に移動していて、ノイトは反射的にその方へと手を打ったのだ。ノイトの攻撃は容易く躱され、ペストマスクを付けた人物がそのまま後ろへ倒れて下の街へと落ちていった。
([斜体]......っ!![/斜体])
「跳んで!」
ノイトはそう叫ぶと同時にリーリャを抱え、ノイトの声を聞いたルミナスも咄嗟に跳び上がった。その刹那に、ほんの今し方までそこに合った足場が内側から爆ぜ、足場とは呼べないものになる。
(ルミナスも咄嗟に反応出来ている...判断力と行動力は合格かな...。)
いつの間にかノイトたちの上空に移動してきていた人物がノイトたちに向かって何かを放とうとしていた。
ノイトは空中で身をひねって回転し、その人物の攻撃を魔法を纏わせたで斬撃で相殺する。
[中央寄せ][太字][大文字][斜体][明朝体]«[漢字]蜜蝋[/漢字][ふりがな]Cire d'abeille[/ふりがな]»[/明朝体][/斜体][/大文字][/太字][/中央寄せ]
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仮面を被った人物は手から蜜蝋のようなものを放ち、ノイトは即座にそれを[漢字]熔[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]かした。ノイトは落ちるルミナスを腕で抱えて一緒に落ちていく。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん...!!」[/明朝体][/太字]
「大丈夫。」
ノイトたちは下に広がる街へと落ちている。ペストマスクの人物は特に追ってくる様子もなく、ただ落ちていくノイトたちを眺めていた。
(追ってくる様子もないな...取り敢えずこのまま落ちてみるか。)
「ノイト!地面にぶつかっちゃう!!」
[中央寄せ][[漢字][太字]空中浮遊[/太字][/漢字][ふりがな]レビテーション[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトの魔法で3人は地面に激突することなく着地した。上空を見上げると、もうそこには誰も居ない。
[太字][明朝体]「あの方は何をしたかったのでしょうか...?」[/明朝体][/太字]
「う〜ん、取り敢えず僕達をどこかに連れていきたいのかな...?...こっちから追いかけるのは無理そうだね。諦めて観光でもしようか。」
ノイトはリーリャとルミナスを降ろして街を歩きだす。他に1人も居ない静かなはずの街は歯車と蒸気の音で満たされ、路地裏を見れば鼠がじっとこちらを見つめていた。
「ノイト...なんか、ちょっとだけ不気味だね...。」
[太字][明朝体]「お兄ちゃん、このような場所でも“住めば都”と言う言葉は通じるのでしょうか...?」[/明朝体][/太字]
ルミナスの質問を聞いて少し考える素振りをした後にノイトが答える。
「ん〜、一応鼠がこれだけ生きていられる程の食料はあるみたいだし、建物も見た感じしっかりしてるから通じることは通じるんじゃないかな...?」
警戒心を解かず、しかしどこか落ち着いた様子で歩くノイトに続いた2人は素直に街の感想を述べていった。
[太字][明朝体]「ここは暖かくてどこか落ち着く感じがしますね...それに、ツンとしたの匂いの他に、何だか甘い匂いもします。」[/明朝体][/太字]
「...あ、ホントだ!甘い感じ...。」
リーリャもルミナスの話を聞いて匂いに気がついたようだ。ノイトは巨大な時計塔の方を見上げる。
(あそこなら街が一望出来そうだな...。行ってみるか。)
「ねぇ、ノイト...あっちになんかあるよ?」
リーリャが指差す方を見ると、喫茶店のような所があった。灯りは点いていて、特に不穏な気配も感じない。3人はその店に入ってみることにした。
[中央寄せ][斜体]〈カランカラン〉[/斜体][/中央寄せ]
中に入ると、黒い霧のような人型の何かが人のように振る舞っている。
[明朝体]{いらっしゃい...お好きな席へどうぞ...。}[/明朝体]
その声は直接頭に流れ込んできた。きっとテレパシーのようなものなのだろう。3人は他の客らしき黒い霧たちが居ない、空いている席に座る。
[明朝体]{生きている人間が...この街に来るなんて...珍しいね...。}[/明朝体]
そう言っておしぼりを出してくれた。
(サービス精神は日本と同じ...最初からおしぼりを無料で出してくれるのはありがたいな。見た感じ、この街に蒸気は充分にあるみたいだね。)
[明朝体]{うちは“[漢字]憶い灯[/漢字][ふりがな]mémoire[/ふりがな]”...と言う店だよ...。珍しいお客さんには...おもてなしをしないとね...。}[/明朝体]
そう言った店員はメニュー表を渡してくれる。それを開くと、紅茶やコーヒーなどが並んでいた。
(コーヒーショップみたいな感じか...僕はカフェラテで良いかな。)
「それじゃあ、僕はカフェラテでお願いします。」
「私は紅茶をお願いします!」
[太字][明朝体]「私は、お兄ちゃんと同じものをお願いします!」[/明朝体][/太字]
(ん...珍しいな。リーリャはいつも僕と同じメニューを頼むのに...。紅茶には何か思い入れがあるのかな?)
ルミナスの周りを飛んでいる[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]がルミナスと遊んでいる。ノイトはルミナスの楽しそうな様子を見て微笑んだ。隣に座っているリーリャは何か懐かしいものを見ているような目でノイトと同じ方を向いている。
しばらくして黒い霧の店員が注文の品を持ってきてくれた。
[明朝体]{お待たせ...淹れ立てだから...火傷しないようにね...。}[/明朝体]
「[太字][明朝体]「[/明朝体][/太字]「ありがとうございます。」[太字][明朝体]」[/明朝体][/太字]」
ノイトとルミナスはカフェラテを、リーリャは紅茶を一口飲む。
[太字][明朝体]「ん、温かくて美味しいです!」[/明朝体][/太字]
「ん〜、甘みがあって良いね!なんかすごく、落ち着く感じ。」
「良い香り〜!」
ルミナスの[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]は相変わらずルミナスの周りを飛んでいて、ルミナスもまた[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]の方を見ては微笑みを浮かべた。ノイトはリーリャが何故紅茶を頼んだのかそれとなく聞いてみることにした。
「そういえば、リーリャが僕と違う飲み物頼むなんて珍しいね。今日は紅茶の気分だったの?」
「あ...いや、以前フィルマリーさんのお店で出してもらった紅茶が美味しかったからまた飲みたいな〜、って思って。」
[太字][明朝体]「フィルマリーさん、と言うのは先程まで一緒に居られた方ですか?」[/明朝体][/太字]
ルミナスはまだフィルマリーとハイヴのことをよく知らなかった。そこでノイトとリーリャが2人について説明をする。
「フィルマリーさんは元・魔道士で、魔導都市・マギノシティにある魔具のお店の店主なんだよ〜。」
「そうだね。ルミナにあげた聖剣と聖鎧もフィルさんの店で買ったものだよ。」
ルミナスは説明を楽しそうに聞いている。[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]は大人しくルミナスの肩に止まってルミナスと同じように話を聞いていた。
「ハイヴさんは機械都市・カタパリアにある執事喫茶で働いていたんだけど、僕が仲間に誘ったら着いてきてくれたんだよね。交渉術とかにも長けてそうだし、チェスとかドミノも僕より上手いよ。」
[太字][明朝体]「なるほど...!その方たちが今のお兄ちゃんとリーリャさんの仲間なんですね!!」[/明朝体][/太字]
ノイトはカフェラテを一口飲んでから何かを思い出したように話し始めた。
「後は、今は修行中...(?)のメルが霊峰の町ノービリアに居るね。...そういえば、リーリャもルミナに敬語使わずに話してたね。リラックス出来ているようで良かったよ。」
ハッと気がついたリーリャはルミナスと目が合う。笑顔のルミナスにつられてリーリャも笑ってしまい、その場にはまさに和やかと呼べる空間が広がっていた。2人が何かを話しているうちにノイトは先程の仮面の人物について考える。
(あの人、蜜蝋みたいなものを出していたな...さっきの小屋の中でもハイブツールを見つけたし、何か関係あるかも...。いきなり出てきたけど、何者なんだろ...?)
そこで黒い霧の店員が戻ってきた。
[明朝体]{今日は...鴉たちが騒がしいね...あの人は今...どんな気持ちなんだろう...。}[/明朝体]
「...あの人?」
[明朝体]{昔から...この街の管理人を...してくれている、...鴉の仮面を付けた...人だよ。名前は...ミエルって言う...。}[/明朝体]
(......ミエル、か...。フランス語でそんな単語があったような...もしかしたら僕やリーリャと同じ転生者...?そんなにゴロゴロ居るものなのかな〜...?)
「それと、“どんな気持ちなんだろう”って言うのはどういうことなんですか?」
黒い霧の店員は霧の中に浮かぶ白い丸を外の窓の方へと向けて話す。
[明朝体]{あの人は...鴉と蜜と霧を操っているんだよ...この街が壊されないように...余所の人たちを...追い出してくれる...。でも...今日は珍しく...君たちが来た...。}[/明朝体]
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「...なんでそのミエルって言う人は私たちを呼んだのかな?確か“ようこそ”って言ってたよね?」
「そうだね...フィルさんって言う明らかに魔力量が桁違いの人が居るのに街に入れるのは何でだろう...?」
(あぁ...こういう時にメルが居たらツッコんでくれてたよな...懐かしい。いつか必ず合流しよう。)
[太字][明朝体]「あの...あの方は私たちの所へ来ましたよね?だとすれば、この3人の中の誰かに用があるのでは...?」[/明朝体][/太字]
「そっか...だとすれば誰だと思う...?」
[太字][明朝体]「さっきは私には目もくれずお兄ちゃんとリーリャさんの方を攻撃していました。あの方が音楽に興味があるのかどうかも分かりませんし、そもそもリーリャさんがピアノを弾けることを知らないのだと考えると...お兄ちゃんを狙っていたのではないでしょうか。」[/明朝体][/太字]
ルミナスの名推理はノイトを納得させるには充分だった。
「うん、なかなか良い考えだね。そう考えるのが妥当って所かな...。それじゃあ、少し休んだらあのミエルって言う人に話を聞いてみよう。」
「でも、どこにいるか分かるの...?」
リーリャの質問を聞いてノイトは笑みを浮かべる。
「大丈夫。向こうの狙いが僕だったら向こうから来るだろうし、もし来なくても、この街の管理人なのであればこの街が一望出来る場所に居ると思うよ。どこだと思う?」
ルミナスが街の様子を思い出し、ノイトが求める答えに辿り着く。
[太字][明朝体](お兄ちゃんはさっき、私とリーリャさんが匂いに気がついたときに時計塔の方を見上げていた...。)[/明朝体][/太字]
リーリャもその答えに気が付き、声をあげる。
「時計塔...?」
ノイトは笑みを浮かべたまま頷く。それを見た2人は目的地が決まり、残っているの飲み物を飲みきってしまうことにした。
「店員さん、なんかあんまり注文出来なくてすみません。」
[明朝体]{大丈夫だよ...もし機会があれば...また来てね...。}[/明朝体]
「はい!」
3人はカフェラテと紅茶をそれぞれ飲み干した後、店を後にして街に佇む巨大な時計塔に向かう。
「ノイト、もしかして...走るの?」
「ん〜...歩いて行ったとしても、もたもたしてるって思われて向こうが攻撃仕掛けてきたら街に被害が出かねないからな...。うん、やっぱり走るか。」
[太字][明朝体]「あの、お兄ちゃん...私はお兄ちゃん程速くは走れないのですが...どうすれば良いでしょうか?」[/明朝体][/太字]
(そっか...リーリャも[打消し]意外と[/打消し]足が速いし...かと言って歩いていくのも、ルミナを抱えて行くのもいざという時に困るな...。う〜ん......あっ、そう言えば...!!)
ノイトは指を鳴らす。すると、ルミナスの周りを飛んでいた[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]が小さな光の粒子を放ち、その粒子はルミナスの足を纏う。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん...これは?」[/明朝体][/太字]
「試しに走ってみな〜」
ルミナスはノイトに言われるままに前へと走ってみる。ルミナスは自身の足が軽く感じ、身体もどんどん前へと進んでいく。
[太字][明朝体]「わぁ!すごいです!! 足が軽いです!!」[/明朝体][/太字]
ノイトとルミナスはルミナスの後を追って走り出した。
「このスピードなら僕たちがルミナを置いていくことはないでしょ。」
[太字][明朝体]「ありがとうございます!お兄ちゃん!!」[/明朝体][/太字]
時計塔へとどんどん近づいていっているはずだが、時計塔は思ったよりも遠いようでなかなか辿り着かない。
[斜体]「そう言えばさ、ノイト。」[/斜体]
[斜体]「ん?どうしたの?」[/斜体]
[斜体]「なんでルミナス様はノイトのことを“お兄ちゃん”って呼んでるの?」[/斜体]
ノイトはルミナスと出会った時のことを思い出した。
(え〜っと...?確かいきなり部屋に連れて行かれてタメ口で話して良い、って言われて...。“お兄ちゃん”って呼びたいって言ってた理由を考えさせたら実績から僕がかっこいい人だ、って思ったからだって言ってたよね...?)
ノイトが考えている間にルミナスが代わりにリーリャの質問に答える。
[太字][明朝体]「それは、お兄ちゃんが魔神を倒したって言う功績をレイクから聞いて、お兄ちゃんがかっっこいい方だと思ったからです!」[/明朝体][/太字]
[斜体]「[小文字]かっこいいのは分かるけど...ずるいよ。[/小文字]」[/斜体]
[斜体]「...。」[/斜体]
3人はついに時計塔へと辿り着いた。
「ふぅ...結構大きいんだね...。」
「僕が住んでた時計塔の3倍くらい高いんじゃないコレ?」
[太字][明朝体]「ふふっ...いつかお兄ちゃんのお家に連れて行ってくださいね?」[/明朝体][/太字]
話しがどんどんズレていってしまうため、ノイトは適当に返事をして時計塔の中へと入っていく。時計塔の中は塔の周りの街以上の歯車やパイプ、ピストンなどが張り巡らされている。塔の中央の螺旋階段を先を見上げようとすると、先が見えない程高くまで伸びていた。
「えっと...これを上っていくの?」
「走ってきた後に言うのは酷だけど...そうだよ。」
[太字][明朝体]「上まで魔法で行けないのですか...?」[/明朝体][/太字]
ノイトは少し困った顔をしてルミナスの質問に答える。
「う〜ん、[漢字]空中浮遊[/漢字][ふりがな]レビテーション[/ふりがな]だと段に躓いたときに危ないし...僕はまだ[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]、使えないんだよね...。」
リーリャとルミナスはそれを聞いて驚いた。ノイトは魔神にも有効な魔法や魔術を扱えるが、[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]が使えないのは予想外であった。
[太字][明朝体]「え!? お兄ちゃんにも扱えない魔法があったんですか...?」[/明朝体][/太字]
「まぁ、僕だって万能じゃないんだよ。今まで、[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]はメルやフィルさんに任せてたからね...。そろそろ覚えておいた方が良いのかな...?」
「ノイト、ホントに使えなかったんだ...。」
リーリャに関してはカタパリアに向かうためにヴェルグランド大陸に行った際にノイトの口から聞いていたが、それが本当のことだと知ったのは今が初めてだった。
(...前にも言ったんだけどな......僕を励ますのに必死でマトモに聞いてなかったのか...。)
時計塔の螺旋階段を上っていき、最上階を目指す3人は周囲の歯車やパイプからたまに吹き出してくる油や蒸気を警戒しながら仮面の人物の元へと向かう。
([漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]を先に偵察に行かせているけど‹[小文字][小文字]※ルミナスの許可は取っていない。[/小文字][/小文字]›、確かにこの上に居るな...。)
ノイトは上の状況を遠隔で確認しつつ、奇襲が無いかを探る。見た所向こうはノイトたちを静かに待っているようだ。
「ねぇノイト、あとどのくらい上れば良いの...?」
「......してやられたな...。」
「...え、何、もしかして...。」
道理で1番上が見えない訳だ。この階段は魔力で無限に続いている。正確には、エスカレーターを逆走しているようなものだ。周囲の歯車やパイプ、ピストンなどの背景もノイトたちの動きに合わせて動いていたため、気づくのが遅れた。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん、どうするんですか...?」[/明朝体][/太字]
「ん〜このタイプの仕掛けの脱出方法はアニメで予習済みだけど...二手に別れるのはちょっと心許ないな...。」
[太字][明朝体]「...?」[/明朝体][/太字]
「と、なると......2人とも、ちょっと僕のマジックバッグの中に入ってて。大丈夫、僕を信じて。」
「!?」[太字][明朝体]「!?」[/明朝体][/太字]
ノイトは2人の腕をマジックバッグの中に入れてマジックバッグの中にしまい込んだ。この世界のマジックバッグは入ったものを縮めて収納するものであるため、事故で異次元に収納物が飛んでしまうなどと言うことは起こらない。それを理解した上で安全面を考慮し、ノイトは2人をマジックバッグの中に避難させ、この階段の仕掛けを1人で解こうとしていた。
「さてと...立体螺旋構造タイプの高速反復横跳びか...[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]の練習になるかな...?」