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本作は一部を除きフィクションです。
一部を除き、実在する人物、出来事、組織とは関係ありません。

また、一部微細な暴力表現や戦争などに関連する内容が含まれている場合があります。
これらを苦手とする方は閲覧をお控えいただくことをお勧めします。

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世界に溢れる夢

#88

88.迷子

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚???〛[/中央寄せ]

深い霧が[漢字]罹[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]った街の建物の一角に、1人のペストマスクを被った人物が立っている。
「...。」
その人物は古くなった黒いクロークを身に纏い、ただずっとそこに立っていた。仮面の奥にどんな表情があるのかも、クロークの中に何を抱えているのかも分からない。

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

ノイトたちは古びた小屋の中で休んでいた。リーリャとフィルマリーは既に寝てしまっていて、今はノイトとハイヴが起きている。
「ハイヴさん...この霧って自然現象と人為的なもの、どっちだと思います?」
ランタンの光に照らされたノイトの目がじっと窓の外を見ている様子を眺めながら、ハイヴは答えた。
「恐らくは、自然現象かと...誰かが操っているような魔力も感じませんので。ただし、この霧が何等かの魔力で“ただの霧”として生み出されたのなら、人為的であるとも言えますし、魔力を一切感じないのも合点が行くでしょうね。」
一般に、魔力で火や水を具現化するときは自身の魔力を帯びさせるものだ。自身の魔力さえ帯びていれば、それを操る事が出来るためである。しかし、ただ魔力を消費して火や水を具現化するだけであれば魔力を帯びさせる必要はない。この廃屋を包む深い霧は、[漢字]それ[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]である可能性が高い。
「霧の発生条件は“水蒸気を含む空気が冷やされること”。温度が露点以下になった空気の水蒸気が凝結することで霧が発生する...この辺りはそんなに気温が低かったのかが問題ですね。」
ノイトは霧の出処を考えながら、窓の外の気配を探っている。
(...そろそろ来るかな...?明日にはこの小屋を出るつもりだから、それまでには合流したいけど...向こうも疲れてるか...。)
「ハイヴさん、取り敢えずフィルさんのぬいぐるみもいるわけですし、僕たちも仮眠を取っておいたほうが良いと思います。」
「では、そうさせて頂きましょうか。」
2人は小屋のドアの前で見張りをしているぬいぐるみたち、通称・“看守長”と通称・“[漢字]檻On[/漢字][ふりがな]オリオン[/ふりがな]”に警備を任せて眠ることにした。
(もうすぐルミナと...ふふっ...楽しみだな。)
深い霧の中の小屋は完全に静まり、小屋の上に浮かんでいる炎だけが夜を照らす目印となっていた。

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

少し離れた場所にて。プラチナブロンドの髪の少女と、赤い髪の女性が降水都市・レインフォリアの中心に位置する湖の近くに立っていた。
「ルミナス様、もう夜も更けていることですし、そろそろお休みになっては...?」
[明朝体][太字]「いえ、私は早くお兄ちゃんと合流したいのです!お兄ちゃんたちならきっとこの街で休んでいた...私たちが先を急げば必ず追いつけるはずです!!」[/太字][/明朝体]
ルミナスは街の向こうの、霧がかった方を見ている。それを見てイルムは少し首を傾げた。
「おかしい...霧が発生するには高さと気温の条件が合わない...。[漢字]研究調査機関[/漢字][ふりがな]イスラ[/ふりがな]が把握していた情報と違う...?」
ルミナスはイルムが何を考えているのかなどは知る由も無く、どんどん先へと進んでいく。
「ルミナス様!情報がない以上、この先に進むのは危険です!引き返しましょう!!」
しかし、イルムの忠告はルミナスを止める程、彼女の心には響かなかった。
[明朝体][太字]「引き返しません。お兄ちゃんなら、自分の進みたい所に進んでいきます。それに...お兄ちゃんはきっと、この霧の先に入ります。」[/太字][/明朝体]
「ルミナス様...!」
[明朝体][太字]「ここから先は私1人でも構いませんよ。イルム、ここまでの付き添いご苦労さまでした。」[/太字][/明朝体]
イルムは何も言えなかった。ノルティーク王に言われたことを思い出したのだ。

[水平線]
 ――もしもルミナスが1人で行きたいと言い出したり、ノイト=ソルフォトスと合流することが出来たのなら、付添人の役目は終わりで良いぞ。
[水平線]

イルムをその場に残してルミナスはどんどん先へと進んでいってしまう。
(違う...!そうじゃない!! ルミナス様...!)
必死に手を伸ばすが、口からは声が出ない。イルムが担当しているのは主に地質と水質の研究だった。つまり、彼女にとってはこの降水都市は研究調査の意欲が湧き上がる場所。彼女はこの場所に残りたかった。しかし、ルミナスを1人で行かせることにも懸念が多い。そこでルミナスが振り返って口を開く。
[太字][明朝体]「お兄ちゃんは、迷う暇があったら咄嗟に行動する人です。自分に正直で、常に真っすぐと自分の道を行く人なんです。私も...そういう人になりたい。...イルム、お元気で。」[/明朝体][/太字]
そう言い残してルミナスは霧の中へと消えていった。残されたイルムはルミナスの言葉を聞いた時、それがノイトの影響だと言うことが理解出来た。
(ルミナス様は...ああいう方ではなかった。ルミナス様が惚れ慕う程の少年が、あの方の信念を強くし、行動力の源になった。もう私では止められない...。)
イルムはしばらくそこに立ち尽くしていたが、やがて顔を上げてレインフォリアの方へと戻っていく。
(きっと、私が後を追った所で足手まといだと思われてしまう...。それに、ノイトという少年はこの先にいる。どの道私の出番はもうないんですね...。)
その背中は少し寂しく見えたが、ルミナスがそれを見ることはなかった。

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

翌朝、ノイトは朝になっても霧で外が暗く見えていることに気がつく。
(どれだけ深いんだ...この霧。ルミナは大丈夫かな...?)
「んん...おはよ〜、ノイト。」
「おはようございます、ノイトさん...起こしてくださ〜い。」
ノイトは目を覚ましたリーリャとフィルマリーに返事をする。
「おはよう。」
ノイトに引っ張られて起きたフィルマリーは、そこで何かを感じた。
「ノイトさん、誰か来ますよ...?」
恐らく小屋の見張りをしているぬいぐるみを通じて何かを感じたのだろう。
ノイトは小屋のドアを開けて外を見た。霧。
(霧しか見えない...。でも、確かに誰か居る...!)
小屋の上に目印として浮かべてあった火は霧の湿度のせいかかなり弱まっている。そこでハイヴも小屋から出てきて、ノイトに声をかけた。
「ノイト様、あちらからも微細な魔力反応を感じます。」
(進行方向に魔力反応...?魔獣だと面倒だな...。)
「フィルさん、何か代わりの目印を。」
「了解ですっ!」
[中央寄せ][[漢字][太字]花道[/太字][/漢字][ふりがな]プロムナード[/ふりがな]][/中央寄せ]
フィルマリーがぬいぐるみの召喚を解除すると同時に魔法を使い、小屋から霧の向こうの気配に向かって花で出来た道が出来る。ノイトは目印を作った気配の方も、微細な魔力反応もまだ少し離れていることを確認し、その隙に他の3人に食料を配布しておく。
「わぁ!サンドイッチ、いつの間に作ってたの?」
「昨日、リーリャとフィルさんが寝ている間にちょっとね。出来たてじゃなくて申し訳ないけど、まぁこの湿度じゃどの道長くは持たないよ。時間がある時にパパッと食べちゃって。」
そして、ノイトは[漢字]花道[/漢字][ふりがな]プロムナード[/ふりがな]の先から近づいてくる気配をの方を振り返る。
(こっちはあと数十メートル...あっちは百メートルくらいかな...?)
ノイトは指先に魔力を集中させ、光を放つ。蒼い光は2枚の翼が生えた球体となり、霧の中を飛んでいった。
「綺麗...!私のぬいぐるみコレクションにも光る子が欲しいです!!」
足音が近づいてきて、ノイトは顔を綻ばせる。

[太字][明朝体]「お兄ちゃん!」[/明朝体][/太字]
ノイトが振り返った先には、見覚えのあるプラチナブロンドの髪と翡翠色の瞳を持つ少女が居た。
「ルミナ、久しぶり!」
笑顔で軽く手を振ったノイトにルミナスが抱きつき、ノイトが軽く抱き返す。
[明朝体][太字]「会いたかった...です!! 一緒に冒険すると、約束を、ちゃんと、果たせて...!」[/太字][/明朝体]
一気に溢れ出した感情が頭の中でまとまる前に言葉になっているのが感じられる。ノイトはルミナスの頭を撫でながら、蒼く光る球体を彼女の左肩の上に止めた。
[明朝体][太字]「これは...?」[/太字][/明朝体]
「そうだね...[漢字][明朝体][太字]小夜啼鳥[/太字][/明朝体][/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]、とでも名付けておこうか。その子は自我を持つ、小さな鳥みたいなもの。合流出来た記念...って言ったら変だけど、ルミナスへのプレゼントだと思ってよ。」
ルミナスは肩に止まっている[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]を撫でて微笑んだ。
[太字][明朝体]「ありがとうございます!大事なお友達にします!!」[/明朝体][/太字]
それを聞いて頷いたノイトだったが、次の瞬間にはノイトたちの背後の気配によってその笑みは剥がれ落ちる。
[明朝体][大文字]「ようこそ、“霧の街・ブリュエル”へ。」[/大文字][/明朝体]
咄嗟に振り返っり、ノイトはルミナスを庇うように手を広げ、フィルマリーは杖を構え、ハイヴは短剣を構え、リーリャはノイトの空いている方の腕にしがみついた。
その人物はペストマスクを付けていて、古びた黒いクロークに身を包んでいる。
([斜体]さっきの微細な魔力反応の主か...!![/斜体] )
ノイトの魔力の残量は約20%程だった。ティフォンと最初に出会った時に80%程度使用し、そこから[漢字]羅針盤[/漢字][ふりがな]コンパス[/ふりがな]で2%を使用。一晩眠って70%程回復した後に、再びティフォンと遭遇し、フィルマリーの協力を得て一時的に97%の魔力を消費して二重詠唱の上級魔術を発動。崇拝都市・プロセティアで体力だけ回復し、ディアスムングロール大陸に到着してから[漢字]獄炎[/漢字][ふりがな]インフェルノ[/ふりがな]で4%を消費。そしてフィルマリーに怒られて体力を物理的に削られた。レインフォリアで休んだお陰で微量に魔力を回復させたが、その後[打消し]無駄に[/打消し]発動しようとした[漢字]守護[/漢字][ふりがな]バリア[/ふりがな]で魔力を消費。さらに仮眠を取ったものの...と言った所である。要するに、ノイトは今、抵抗出来る程の魔力を残していない、と言うことだ。何かを仕掛けられても何も出来ない。
霧が急激に深くなり、仮面の人物の姿は消えていく。ノイトとリーリャとルミナスは近くに居たため互いを見失わなかったが、フィルマリーとハイヴは少し離れていたため、それぞれを見失ってしまった。
(ノイトさん...!どこに居るんですか?...ノイトさんの魔力を感じない...この霧、ただの霧じゃない...!!)
(ノイト様、リーリャ様、フィルマリー様...そしてもう1人、ノイト様を兄と呼んでいた方。全員の気配と魔力反応が感じられない...この霧に魔力遮断の効果が...?!)
霧を吸い込んでしまったリーリャとルミナスは急激な眠気に襲われる。ノイトは咄嗟に息を止めていたが、流石に長くは持たない。
(あの人...霧を吸い込むと眠くなるのを知っていてマスクを付けていたのか...?とにかく、今は安全の確保が最優先!)
[漢字][[漢字][太字]浄化[/太字][/漢字][ふりがな]ピュリフィケーション[/ふりがな]][/漢字][ふりがな][/ふりがな]
ノイトの周囲2mの半球空間の霧が浄化された。リーリャとルミナスを庇いつつ最小限の魔力消費のはずだったが、それでもティフォンとの戦いの疲れがまだ抜けていないノイトには少し荷が重かった。
([斜体]すごい霧だ...!! 早く、霧が少しでも少ない所へ...![/斜体])
ノイトは2人を抱えて少しずつ移動する。ただ一心に霧の中を進んでいき、どんどん霧が薄くなっていく。
「プハァ...っ...ハァ......。」
息を少しずつ整えるノイトの視界には、霧に包まれたスチームパンクな世界が広がっていた。
(ここが...幻の......“霧の街・ブリュエル”...!?)
巨大な歯車がいくつも組み合わさっているものが付いている工場のような建物や、白い蒸気を吐き出す煙突、そして何より、ノイトが暮らしていたミストルの町のものよりも遥かに巨大で高い時計塔。どれもTHE・スチームパンクと言った雰囲気で風情がある。遥か遠くに見える暖かい光と街並みは、どこまでも続いているようだった。
(魔力で構成された別の世界か...それとも、僕たちが縮小されただけのミニチュア世界か...?どっちにせよ、あの霧があるんだったら長居しない方が良さそうだな...。)
しばらくの間ノイトが街を眺めていると、リーリャとルミナスが目を覚ました。
「ん...ノイト?ここは...?」
[太字][明朝体]「お兄ちゃん...、[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]...。......ここは一体...?」[/明朝体][/太字]
「2人して同じことを聞いてこなくても...まぁ、いいや。多分ここは、幻の街とも呼ばれる、“霧の街・ブリュエル”。[小文字]...さっきの人がそう言ってたし、多分そう。[/小文字]」
起き上がった2人は辺りを見渡している。
[明朝体][太字]「高い...ここは何かの建物の上、でしょうか...?」[/太字][/明朝体]
「いや、どこかを上がってきた記憶はない。この場所を基準として、周りが低いんだよ。」
ノイトの説明を聞いてリーリャは手すりを掴んで下の方を見てみる。
「うわ、高っ...絶対落ちたくない。」
「足を滑らせて落ちたりしないように気をつけてね〜。」
ノイトは再び周囲を見回しながらその場所の特徴を観測する。
(あれは本当に霧だったのかな...蒸気にしては熱くなかったけど、この気温じゃ霧なんて出来なさそうなんだけどなぁ...。...ん、温度...?)
ルミナスは[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]と遊んでいた。ナイチンゲールは圧縮したノイトの魔力の集合体であるため、霧の影響は一切受けていないようだ。ノイトは霧の発生条件をもう一度考え直し、あることに気がつく。
(...!! そうか、気圧か...!露点に影響するのは温度だけじゃない...この温度で霧がその形を保っているということはこの場所の気圧が低い、ということ。ここは低気圧にしては酸素も多い。霧と気圧と空気中の酸素濃度...どれも調整された人為的なもの。)
リーリャとルミナスはノイトが移動しようとしていることに気づき、ノイトの元へと戻ってきた。
「取り敢えず、フィルさんやハイヴさんとの合流を目指すと同時に、さっきの人の目的を探ろう。」
「分かった!」[太字][明朝体]「分かりました!!」[/明朝体][/太字]

遠くから3人を見ている人物が居た。何も喋らない。何もしない。しかし、その仮面の奥には僅かに期待が籠もっているように感じられた。


作者メッセージ

 作者の御鏡 梟(みかがみ きょう)です。
しばらくの間執筆が出来ていなくてすみませんでした...。(大雑把な内容は予め考えてあったんですけどモチベがどうも...。)
今回はノイトたちとルミナスの合流を描きました。次回からは“幻の街”篇に入ります!果たしてノイトたちの前に現れた人物は何者なのか...?次回もお楽しみに!!
本作を読んでの感想の他、キャラクターや世界観についての質問も受付けています。
本作品を読んでいただき、ありがとうございました!!

[追記]
ちなみに、ノイトが出した「2枚の翼が生えた蒼く光る球体」のモデルはゴールデンス◯ッチとシュトルヒ◯ッターです。ドイツ語ってかっこいいですね...。
とか思った矢先に、次篇はフランス語が多いです。

2025/12/31 14:56

御鏡 梟 ID:≫ m9kR/WFBrng.A
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