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本作は一部を除きフィクションです。
一部を除き、実在する人物、出来事、組織とは関係ありません。

また、一部微細な暴力表現や戦争などに関連する内容が含まれている場合があります。
これらを苦手とする方は閲覧をお控えいただくことをお勧めします。

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世界に溢れる夢

#85

85.行き違い

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

ノイト、リーリャ、フィルマリー、そしてハイヴの4人は荷物をまとめて執事喫茶から出た。
「ハイヴさん、店長さんにちゃんと許可取れたんですか?」
「えぇ、昨日はお客様がノイト様がただけでしたので私1人でお相手をさせていただきましたが、他にも[漢字]執事[/漢字][ふりがな]バトラー[/ふりがな]はおりますので。」
フィルマリーは特に二日酔いもしていない様子で元気そうだった。しかし、ノイトはあまりフィルマリーの方を向いていない。
「ノイトさん...私、昨日何かしましたか...?」
「......はい。」
「え、そこは"全然大丈夫です、何もありませんでしたよ!"と言う流れでは...?」
「いや、何もなかったわけではないですけど...まぁ、もう気にする必要はないですよ。」
そこで、リーリャがノイトに次の目的地を確認する。
「ノイト、次はこのままディアス......なんとか大陸に向かうんだよね?」
「ディアスムングロール大陸ね。このままフィルさんに[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]で港まで転送してもらってから飛行船に乗ろう。」
「任せてください!それでは準備は良いですか〜?」
フィルマリーの声に3人が頷く。それを確認したフィルマリーが左手を空へと掲げると足元に魔法陣が浮かび上がった。その魔法陣が光を放ち、4人は港まで転送された。

港に着くと、巨大な飛行船が浮かんでいた。ノイトたちは一度この飛行船に乗ってレミステラに到着してから今度は鉄道でディアスムングロール大陸まで向かう予定だ。
飛行船へ入ると、他の乗客たちの目線が集まる。しかし、それも当然だった。貧相な格好の少年の後ろに華奢な女子と背中に大きな魔法の杖を背負った女性、そしてビクトリア朝の紳士の服を着た男性が立っているのだ。恐らく他の転生者がノイトたちを見たらファンタジーものの冒険者パーティーだと勘違いされていただろう。実際、戦績は偉大である。ノイトは一度魔神をほぼ単独で討伐しており、リーリャもそれに協力していた。さらには上級魔道士を相手にして勝利している。フィルマリーも同様に魔神討伐に貢献したことがあり、元魔道士であるにも関わらず現役の上級魔道士に勝利した。ハイヴも他の3人に引けを取らない威厳を感じるため、一般人にとっては畏怖の対象でしかない。
「ねぇ、ノイト...なんか、目立ってるよね...?」
「主にフィルさんが、だけど...ね?」
まだティフォンが昨日と同じ場所に居たら間違いなく戦わされる。そのことを察したノイトは大人しく甲板の隅に縮こまっていることにした。
しばらくしてから飛行船が動き出し、ノイトはノルティーク大陸の方を見た。すると、まだティフォンが居た。
(あ...今こっち見なかったか...?なんか...こっちに向かってきてない...?!)
やがて他の乗客たちもそれに気がついてノイトたちの方を見る。
(止めろ止めろ!こっちを見るなぁ!!)
もう既にティフォンに認知されている以上、昨日のように魔法で時間を止めても意味がない。
「...フィルさん、ハイヴさん、どうします...?」
「ん〜、そこはノイトさんに考えて欲しいところですけど...私のぬいぐるみコレクションは効かないでしょうね...。」
「話が通じる相手であれば何とか...。」
「ノイト、私も何かした方が良いんじゃ...?」
ノイトはリーリャが前に出ようとするのを止めた。
「待って。多分リーリャの演奏を聞かせたら、逆に気に入られて最悪の場合飛行船ごと海に沈められる。ティフォンから見れば飛行船もナノサイズのおもちゃだからね...。」
その時、他の乗客たちが訴えかけてきた。
「おい、あんたたち!武器持ってるならあんなやつさっさと倒しちまえよ!!」
「早く!! こんなところで人生終了とかマジでありえないんですけど!!」
フィルマリーは取り敢えず魔法の杖を手に持って魔法を唱える。
[中央寄せ][[漢字][太字]広範拡声[/太字][/漢字][ふりがな]アンプリフィケーション[/ふりがな]][/中央寄せ]
ハイヴの足元に魔法陣が展開され、ハイヴの声がティフォンにも聞こえる程に拡声された。ハイヴは冷静にティフォンへと話しかけた。
[大文字][太字]『こんにちは。私が話す言葉が理解出来ますでしょうか?』[/太字][/大文字]
[大文字][明朝体][太字]『人間か...私の視界で何をしている...?』[/太字][/明朝体][/大文字]
[大文字][太字]『これは、大陸間を移動する飛行船と言うものにございます。誠に恐れ入りますが、あなた様がこちらへお近づきになられると、膨大な魔力波に晒されて船の操縦が出来かねます。多数の命を乗せておりますので、どうか距離を取っていただけませんでしょうか...?』[/太字][/大文字]
[大文字][明朝体][太字]『そうか、我の魔力は貴様らには強すぎるのか...。我に貴様らごときの命を奪うような気はない。だが......。』[/太字][/明朝体][/大文字]
その言葉の続きを、乗客全員が固唾をのんで待っていた。ティフォンは息を吸って続ける。
[大文字][明朝体][太字]『先日も我の近くを通っていたな...?その時に我に魔法を使用した者が居た...膨大な魔力量だ。その者と話をしたい。』[/太字][/明朝体][/大文字]
ノイトを目を見開いた。ハイヴにとっては一応他人事であるため冷静さを保っているが、リーリャやフィルマリーは咄嗟にノイトの方を見る。
(...あのティフォンが...僕と話を"したい"...?! 魔族から見た人間なんて虫やそれ以下の存在のはず...それなのに、何故僕を一個人として..."者"として扱ってくれているんだ...?!)
ノイトはすぐにハイヴと位置を交代してティフォンへと話しかける。
[大文字][太字]『...僕が、先日あなたに対して魔法を使用した者です。...一体、何の用でしょうか...?』[/太字][/大文字]
必死に震えそうな声を絞り出した。だが、それでもノイトは責任と不安に押し潰されそうなままだ。
[大文字][明朝体][太字]『お前が...そうか......名は、何という...?』[/太字][/明朝体][/大文字]
[大文字][太字]『...ノイト=ソルフォトス...です。』[/太字][/大文字]
[大文字][明朝体][太字]『ノイト=ソルフォトス......!貴様は先日膨大な魔力を消費したであろう...人間のような小さなものにも、それほどの魔力があるものなのか...?』[/太字][/明朝体][/大文字]
[大文字][明朝体]『...いえ、人間の魔力量にはあなた方から見ても分かる程の個人差があります。僕は生まれつき、人一倍多くの魔力量を持っていたので...あなたが先日、僕の魔法を感じることが出来たのでしょう...。』[/明朝体][/大文字]
[大文字][明朝体][太字]『...そうか.........。』[/太字][/明朝体][/大文字]
ティフォンの思惑が全く読めない。
[大文字][明朝体][太字]『我は長らく、退屈している...。貴様の魔法で、我を楽しませてみせろ...!』[/太字][/明朝体][/大文字]
視線が一斉にノイトへと集中する。
(え...魔族を、楽しませる...?どうやって...魔法で?......ん...やるしかない、よな...?)
ノイトは、目の前にいる魔族の機嫌を取ることにした。飛行船本体への負担が最大限小さくなるようにギリギリまで外側へと近づく。フィルマリーは拡声の魔法を解除し、今度はノイトの足元へと魔法陣を展開した。魔法陣から膨大な魔力が湧き出て、ノイトがかざした手の先へと集まる。
[斜体](ゔあ゙っ...すごい魔力量...!? ...でも、やらないと何されるか分からない...!!)[/斜体]
魔力波の影響で飛行船のバリアにヒビが入り、ついに砕けてしまった。飛行船の外に異常な程の魔力が密集している。外から冷たい空気が入ってきているはずなのに、魔力波の熱で汗ばんできた。
[斜体](やっば...?! 手が震え...)[/斜体]
そこでハイヴが指を鳴らした。すると、一箇所に集中した魔力が球体の結界に覆われてまとまった。
(よし、これなら発動まで持つ...!! あとは最大限の威力を出すために完全詠唱を...!)
ティフォンはその様子を見て構えている。フィルマリーが魔法陣の範囲を拡大して自信も魔法陣の上に立った。
[大文字][明朝体][太字]『ほぉ...中々の魔力量だ...。』[/太字][/明朝体][/大文字]
ノイトとフィルマリーは真っ直ぐとティフォンを見据えて詠唱を始める。
[水平線]
[斜体][小文字][中央寄せ][漢字]ᛚᛁᚵᚺᛏ ᛒᛖᚳᛟᛗᛖᛋ ᛋᚺᚪᛞᛟᚥ,[/漢字][ふりがな][大文字]ᛏᚺᛖ ᛋᚢᚾ, ᛋᚺᛁᚾᛁᚾᚵ ᛒᚱᛁᚵᚺᛏᛖᚱ ᛏᚺᚪᚾ ᚪᚾᚤᛏᚺᛁᚾᚵ[/大文字][/ふりがな][/中央寄せ]
[中央寄せ][漢字]ᛋᚺᚪᛞᛟᚥ ᛒᛖᚳᛟᛗᛖᛋ ᛚᛁᚵᚺᛏ.[/漢字][ふりがな] [大文字]ᛖᛚᛋᛖ ᚪᚾᛞ ᚥᚪᚱᛗᛖᚱ ᛏᚺᚪᚾ ᚪᚾᚤᛏᚺᛁᚾᚵ ᛖᛚᛋᛖ,[/大文字][/ふりがな][/中央寄せ]

[中央寄せ][漢字]ᚠᛟᛚᛚᛟᚥ ᛏᚺᛖ ᚠᚪᛏᛖ ᛟᚠ[/漢字][ふりがな][大文字] ᚥᚪᛏᚳᚺᛖᛋ ᛟᚡᛖᚱ ᛏᚺᛖ ᛖᚪᚱᛏᚺ,[/大文字][/ふりがな] [/中央寄せ]
[中央寄せ][漢字]ᛏᚺᛖ ᚱᛖᚡᛟᛚᚡᛁᚾᚵ ᛋᛏᚪᚱᛋ ᚪᚾᛞ [/漢字][ふりがな][大文字] ᚪᚾᛞ ᛏᚺᛖ ᚳᛟᛚᛞ ᛗᛟᛟᚾ,[/大文字][/ふりがな][/中央寄せ]
[中央寄せ][漢字]ᛒᛖᚳᛟᛗᛖᚪ ᛒᛖᚪᛗ ᛟᚠ ᛚᛁᚵᚺᛏ [/漢字][ふりがな][大文字] ᚱᛖᚳᛖᛁᚡᛁᚾᚵ ᚪᚾᛞ ᚱᛖᚠᛚᛖᚳᛏᛁᚾᚵ ᛁᛏᛋ ᛚᛁᚵᚺᛏ.[/大文字][/ふりがな][/中央寄せ]
[中央寄せ][漢字]ᛏᚺᚪᛏᛈᛁᛖᚱᚳᛖᛋ ᛖᚡᛖᚾ[/漢字][ふりがな][大文字]ᛚᛁᛋᛏᛖᚾ ᛏᛟ ᛏᚺᛖ ᚡᛟᛁᚳᛖ ᛟᚠ ᛏᚺᛖ ᛟᚾᛖ[/大文字][/ふりがな][/中央寄せ]
[中央寄せ][漢字] ᛏᚺᛖ ᚥᛟᚱᛚᛞ.[/漢字][ふりがな][大文字] ᚥᚺᛟ ᚳᛟᛗᛗᚪᚾᛞᛋ ᛒᛟᛏᚺ, ᚪᚾᛞ ᛈᛁᛖᚱᚳᛖ ᚺᛁᛗ ᚾᛟᚥ.[/大文字][/ふりがな][/中央寄せ][/小文字][/斜体]
[水平線]
完全詠唱を終え、ノイトが技を放った。

[中央寄せ][大文字][大文字][明朝体][太字]二重詠唱/上級魔術:『ᚵᛟᛞ ᛋᛚᚪᚤᛖᚱ』[/太字][/明朝体][/大文字][/大文字][/中央寄せ]

ハイヴの魔力結界が解除され、光の柱がティフォンへと放たれる。それは構えたティフォンの手を押し飛ばし、ティフォンの胴体に光の柱が突き刺さる。
[大文字][明朝体][太字]『グゥッ...フハハハ...! 見事だ!! ノイト=ソルフォトス...!!』[/太字][/明朝体][/大文字]
ティフォンはそのままさらに上空へと昇っていき、それとなく魔術を受け流して消えていった。
(...っ、あの魔族...!! 人の魔力に耐えきれなくなってきたからって逃げたなァ...!!)
魔力を吸い取られるように放ちきってノイトは後ろへと倒れてしまう。
「ノイト!!」「ノイト様!!」
リーリャとハイヴが咄嗟に支えたお陰でノイトは頭を強打することはなかったが、支えられてもまだ身体に力が入らなかった。
「......ゔぅ゙...疲れた...。」
すぐにフィルマリーが治癒魔術を施してくれたが、ノイトの回復は中々進まない。
「ノイトさん...お疲れ様ですっ!膝枕してあげましょうか?」
「必要...ない、で...す......。」
ノイトたちのお陰で飛行船はレミステラに無事に到着した。港にはたくさんの人だかりが出来ている。恐らく先程の魔術が見えたのだろう。
(うわ...目立ってる...これはちょっと...。)
「リーリャ、フィルさん、ハイヴさん...逃げましょう。」
何とか立ち上がりながらそう言ったノイトの言葉を聞いて4人は鉄道へと駆け出していった。

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

[明朝体][太字]「ん...?今、何か...。」[/太字][/明朝体]
ルミナスは貿易都市・レミステラのムールの鍛冶場に来ていた。ノイトにプレゼントしてもらった聖剣を強化してもらいに来たのだ。元の予定では1日で終わる予定だったのだが、レミステラまでに向かう途中で崩壊していた水中都市・ウォルディードの状況調査が臨時で入ってしまい、本来の用事が2日目までに伸びてしまった。
[大文字]「膨大な魔力を感じました...魔神でないと良いのですが...。」[/大文字]
レイクはルミナスをムールに頼んで少しだけ外の様子を見に行く。ルミナスは一切動じずに剣を打ち続けているムールを見て感心した。
[明朝体][太字]「ムール様は、何故そんなにも何事もないかのように作業を続けられるのでしょうか...?」[/太字][/明朝体]
「わしはもう、この先長くない。いつ死んでもおかしくないからこそ、ちょっとしたことで同様している暇はないんだ。だから弟子を取ったと言うのに...そこの馬鹿者はわしがせっかく教えてやった技術を完全に忘れおって...!」
ムールの隣で熱くなった鉄を必死に叩いていたのはナールゲイルだ。ノイトとリーリャが待賢都市・グレイベアルドを訪れた際に杖作りを依頼したのだが、すっかり腕が落ちていて役に立たなかったのであった。
「本当に...すみませんでした...。」
「全く...わしの技術をちゃんと継ぐことが出来れば魔神にも対抗出来る武器が[漢字]鍛造[/漢字][ふりがな]つく[/ふりがな]れるようになると言うのに...。」
ルミナスは手際よく聖剣を強化しているムールの言葉を聞きながら外の騒ぎを気にしていた。やがてレイクが戻ってきてルミナスに事態を報告してくる。
[大文字]「どうやら、ノルティーク大陸ーヴェルグランド大陸間の上空に魔族が現れたようでして...」[/大文字]
[明朝体][太字]「魔族が...!! それで、どうなったのですか?!」[/太字][/明朝体]
レイクはらしくないため息をついて答えた。
[大文字]「それが...ノイトくんたちが追い払ったそうです。」[/大文字]
ルミナスはそれを聞いて目を輝かせた。昨日から護衛のために集まってきてくれていたエスミルト騎士団の青年がノイトの話をしていたこともあり、ノイトを近くに感じる。
[明朝体][太字]「...お兄ちゃんが......!![小文字]......行き違ってしまいましたね...。[/小文字]」[/太字][/明朝体]
ルミナスも魔族が下手をすれば魔神以上の危機となり得ることを知っていた。それを敬愛するノイトが追い払ったというのだ。ますますルミナスから見たノイトの株は上がる一方だった。
[大文字]「どういたしましょうか?ノイトくんにお会いになりますか...?」[/大文字]
ルミナスはムールに武器が完成するまでは移動しないように言われている。ルミナスは首を横に降って拳を胸の前でぎゅっと握った。
[明朝体][太字]「いえ...お兄ちゃんと合流するのは向こうについてから、と約束しましたから。それに、私が途中で離れてしまっては、後々お兄ちゃんの役に立てる機会があったとしても役に立てなくなってしまいます。」[/太字][/明朝体]
[大文字]「承知いたしました。」[/大文字]
ルミナスはノイトの顔を思い浮かべて頬を赤くする。
[明朝体][太字](もし合流出来たら、なんて言えば...そもそも、合流するときはどんな登場で...?いきなり飛びついて驚かせる...いえ、それともお兄ちゃんたちがピンチの時に颯爽と現れて...?)[/太字][/明朝体]
頭の中がこんがらがってしまい、ルミナスはムールが武器を完成させる直前までずっとノイトのことを考えていたのだった。

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚崇拝都市・プロセティア〛[/中央寄せ]

ノイトは神殿で治癒魔術をかけてもらった。
(神聖魔術...ノルティーク大陸にこれが使える人たちが居たとはね...。)
この街は崇拝都市・プロセティア。ノルティーク大陸の西に位置するとある大陸に総本山を置くヴェルソリクス教という宗教の支部が都市レベルにまで発達した場所だ。排他的な宗教ではないためノイトの治癒も快く受けてくれた。
「ハァ...本当に助かりました。ありがとうございます!」
「いえいえ、我らがクラル様は治癒魔術を人々に施してくださるのです。ヴェルソリクス教の教義が一つ、傷つく者を決して見捨てないこと。我々が幸せになるために必要なことなのですよ。」
(ちゃんと宗教してるんだな...。)
ノイトたちはプロセティアの人々に礼を言ってから鉄道まで移動した。
「ノイト、本当に大丈夫なの...?」
「もう大丈夫だよ。...心配かけてゴメンね。」
ノイトのことを心配したのはリーリャだけではない。フィルマリーやハイヴもノイトの仲間であることを自負していた。
「ツラくなったら直ぐに言ってくださいね〜!私が癒やしのぎゅーしてあげます!!」
「いや...遠慮させていただきます...。」
「ノイト様、私は先程プロセティアの方々に治癒魔術を教えていただいたので、これからは癒術士としての役目も務めさせていただければと。」
「本当ですか?! ありがとうございます!」
ノイトはハイヴがより高度な治癒魔術を使用できるようになり、フィルマリーが攻撃魔術や防御魔術、[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]に集中出来るようになったことを喜ばしく思う。
(これでバランスは中々良くなったな...。ここにメルが居れば完璧だね。さらにはルミナも仲間になってくれそうだし...アニメの主人公か、ってくらい運が良い...!)
4人は鉄道がある町に到着した。トロッコ列車が駅に停まっていて、丁度間もなく出発するという所のようだ。
「ノイト、走ったほうが良いんじゃない...?」
「まぁ、そうだね。一応時間稼ぎは理論上可能だけど...魔力は節約したいな...。」
ノイトが走り出し、他の3人も続いて走り出す。取り敢えず列車の1番最後の車両に乗り込み、丁度全員が乗り終えたタイミングで車掌が発車を知らせる笛を吹いた。
「ギリギリセーフ...!ノイトさん、間に合ってよかったですね!!」
「いやまぁ、車掌さんもちゃんと僕達のことは気づいていたから待ってくれてたと思うけど...?」
空いている車両を見渡して適当な席へと座り、振り向いて窓の外を見る。出発して外の景色が動き出し、窓から入り込んだ風が頬を撫でた。
「風が気持ち良い〜!ノイト、ディアス...なんとか大陸にはいつ着く予定なの?」
「ディアスムングロール大陸ね。そうだな...日が変わるまでには着くと思うよ?」
駅が離れていってトロッコ列車が森の中を走り抜けている。ノイトはそこで何かを感じてふと辺りを見回した。
「ノイト様、いかがなさいましたか?」
「いや、何か感じたような気がして......多分[漢字]惑霊の御鹿[/漢字][ふりがな]アム・セール[/ふりがな]ですかね...?」
ノイトの思考を置いて列車は森を通り抜け、やがて海が見えてきた。このトロッコ列車は海底トンネルを通じてディアスムングロール大陸へと向かうもので、動力は魔力であるため、環境への配慮もされている。ノイトたちを乗せたトロッコ列車は白い魔力を吐き出しながらトンネルへと入っていくのだった。


作者メッセージ

 作者の御鏡 梟(みかがみ きょう)です。
今回はティフォンとの関わりやノイトの回復を描きました。ディアスムングロール大陸へと向けて出発したノイトたちは先の地で、一体どんなものを目にするのか?次回もお楽しみに!!
本作を読んでの感想の他、キャラクターや世界観についての感想も受付けています。
本作品を読んでいただき、ありがとうございました!!

2025/12/15 19:24

御鏡 梟 ID:≫ m9kR/WFBrng.A
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