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本作は一部を除きフィクションです。
一部を除き、実在する人物、出来事、組織とは関係ありません。

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世界に溢れる夢

#68

68.反乱(3)

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

中央広場から避難した住人たちが街の外へと走っている。それを見た七賢の1人が住人たちを止めようと上空から白い綿のようなものを放つ。無詠唱で放たれたその魔術は、触れたものの動きを封じるものだった。走っている住人の1人に抱えられている1人の子供がそれに気がついた。
「パパ...、雲が降ってくるよ?」
その一言を聞いた住人たちが走りながら空を見上げた。巨大な綿がいくつも降ってくる。それらが住人たちに向かって落下してきていた。住人たちは必死に逃げようとするが、綿が巨大過ぎて逃げ切れない。
「もう、...ダメっ!!」
住人たちがその綿の魔術に取り込まれそうになった、その時。ピアノの音が響いた。
虹色の魔力を帯びた黒い五線譜が綿を受け止める。その様子を見ていた七賢の1人が目を[漢字]眇[/漢字][ふりがな]すが[/ふりがな]めた。
「特殊な魔法だな...面白い...。だが、しかし...律を壊す動きに乗る者であれば、慈悲はないぞ?」
リーリャはピアノを弾く手を止めない。
「七賢である私の言葉に慄かず、ただ住人たちを守ると言うのか...素晴らしい集中力だ。だが...そこに遂行力はあるのか?」
その七賢はファルムと言った。なかなかにガタイの良い剣士のように見えるが、腰の剣は抜かずに魔術を扱っているようだ。
「ん...?昨日リオールが連れてきた少女だったか...。だが、[漢字]無視[/漢字][ふりがな]それ[/ふりがな]は私への反旗を翻したと言う事だ。決して許されることではないぞ?」
ファルムの手に浮かべられた赤い魔法陣がリーリャの手元にも浮かびあがり、リーリャが付けていた魔具が壊れてしまう。
「[斜体][大文字]あっ...!![/大文字][/斜体]」
リーリャは、ルベリアに買ってもらった魔具が壊れてしまったのを見て指を止めた。
「私の話を聞け...どんな理由があろうともこの街の制度は変えさせんぞ...。だが、命まで取る気はない...逃げるなら今のうちだぞ?」
リーリャは先程から一方的に話しかけてきたファルムに向かって開口一番、文句を言う。
「この魔具、買ってもらったものなんですけど!弁償してくれるんですか?!」
「それは、...[小文字]すまない。[/小文字]」
「それと、さっきから[斜体]"[漢字]〜[/漢字][ふりがな]なんとか[/ふりがな]。だが、" [/斜体]って何回言うんですか?」
「それは...」
「同じ街に済んでいる人たちに向かって攻撃を仕掛けるなんて酷いですよ!どこが"賢者"なんですか!!」
リーリャにしては珍しく饒舌だ。ファルムは一方的に話されたため、何も言い返せなくなっている。やがて、しばらく黙っていたファルムが再び口を開いた。
「私は...この街の制度は、住人たちを守るためにあると考えている。魔術の技術がより高い者程徳を積んでおり、そうでない者を導くことが出来るからだ。そうしてより高度な文明にしていくことが重要だとは思わないか?」
「思わないです。」
リーリャが即答する。ファルムはリーリャがそう答えたのが何故か理解出来ていないようだった。
「自分たちが優れていると思って周りが見えなくなってしまうこともたくさんあります。本当にそれがその人たちのためになっているのか、聞いてみたことはあるんですか...?」
ファルムは再び黙ってしまった。リーリャが続ける。
「相手の気持ちも知らずに自分勝手にやりたい放題やったら、ノイトが怒りますよ!」
「...あの少年か...。それなら、何故彼が怒ると断言出来るのだ?」
「だって...他の誰よりも長く一緒に居たから。」
ファルムはリーリャの返答を聞いてから続ける。
「誰かと長く時を共にすれば、自然と分かるものなのか...?」
[斜体]「はい。」[/斜体]
リーリャの目に迷いはない。それはノイトへの信頼からなるもので、リーリャがこの世界でノイトに出会って手に入れたものだった。
ファルムは住人たちの避難を妨害するのを止め、中央広場の方を見る。
「それなら、私が直接試してみよう...あの少年が、本当に怒っているのか。どれほど怒っているのか。」
そう言ってファルムは中央広場へと飛んでいった。リーリャは中央広場の方を見ながら様子を見る。
(...ノイトが魔法を使ったお陰でフィルマリーさんが拘束されてない...!フィルマリーさんが相手をしている七賢の人がノイトの魔法の範囲内にいるからかな...?そう言えば、この街の強制拘束システムってどういう仕組みなんだろう...?)

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

メルクは精神的に限界だった。
(本当に何なの、この男...!!さっきから私を変な目で見て...本当にノイトが言ってたようにエフェボなの..?!)
ユプシーバが小さな見えない斬撃を無数に飛ばしてくる。メルクは先程から『[漢字]灼愛射閼召[/漢字][ふりがな]ヤマナイアメ[/ふりがな]』で防いでいるが、限りがない。
(斬撃に限りがない...魔力の斬撃じゃないってこと...?目に見えないのなら...、空気か!!)
ユプシーバは周囲の空気を剣で吸収して真空の斬撃操作をする術式の魔法陣を展開していたのだ。メルクは自分のスティレットを見る。
(少し歪んできている...[漢字]青白磁の金属[/漢字][ふりがな]サスロイカ[/ふりがな]製なのに...!!あれが真空の刃なのだとすれば武器が歪むのも納得出来る...!!)
メルクは早く決着を付けたかった。しかし、以外にも隙がなく少しずつ追い詰められている。剣の技術は断然メルクの方が上だが、ユプシーバの視線がメルクの精神を蝕んでいるのだ。
「...ノイト、早く...助けてよぉ...!」

処刑台の上からぬいぐるみを使ってデリーチェの足止めをしているフィルマリーは少しずつデリーチェを追い詰めていた。ぬいぐるみは大小様々で形状も重さも違う。ぬいぐるみが爆発する度に確実にデリーチェの体力を削っていて、デリーチェも爆発によるダメージを軽減させるために[漢字]自動発動[/漢字][ふりがな]オート[/ふりがな]で展開される防御魔法と攻撃魔術が、魔力も少しずつ削れている。フィルマリーはチラリとノイトの方を見てから笑みを浮かべた。
(ふふっ...そろそろ時間ですし、決着を付けておきましょうか...。)
フィルマリーが指をパチンと鳴らすと、ぬいぐるみがデリーチェを囲む。デリーチェはどこかからフィルマリーが直接攻撃してくると考えて気配を探りつつ振り返る。
「挙動不審ですね〜。七賢は、もっと堂々と構えている方々のイメージが強かったのですが...私の勘違いだったみたいですね。」
次の瞬間、そこに居た全てのぬいぐるみがデリーチェに飛びかかってきて、デリーチェは完全に身動きが取れなくなる。
(まずい...!!そろそろ魔力が持たない...防御魔術も展開されない!!)
フィルマリーが指を鳴らす。そして、ぬいぐるみが爆発して中央広場の上空に爆発音は轟く。
丁度そこでノイトの魔法が解けた。ノイトは座り込んで息をつく。
「ハァ...疲れた...。」
フィルマリーは手を降ってノイトに声をかける。
「ノイトさ〜ん!ギリギリ間に合いました〜!!」
ノイトはフィルマリーが七賢の1人を倒したことに気がついて手を振り返した。
(別にやっつけるまではしなくても良かったんだけど...そうでもしないと制度が変えられないような街になっちゃってるのかな、[漢字]ここ[/漢字][ふりがな]グレイベアルド[/ふりがな]は...?)
ノイトが立ち上がった瞬間、ノイトは中央広場の外から何かが飛んできたことに気がついて【[漢字][漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな][/漢字][ふりがな][/ふりがな]】でそれを受け止めた。

[大文字][太字][明朝体][斜体][中央寄せ]ガキンッ[/中央寄せ][/斜体][/明朝体][/太字][/大文字]
ノイトに向かって飛んできたのは剣を持ったガタイの良い銀髪の壮年男性。 
「先程あの少女と話をしてきた...彼女は君が怒ると言って住人たちの避難に協力していた。だが...疑り深い正確でな、それが本当かどうか試させてもらおう。」


作者メッセージ

 作者の御鏡 梟(みかがみ きょう)です。
今回はリーリャの陰ながらの活躍と七賢の1人・ファルムとの対話、そしてフィルマリーとデリーチェの決着を描きました。次回もお楽しみに!!
本作を読んでの感想の他、キャラクターや世界観についての質問も受付けています。
本作品を読んでいただき、ありがとうございました!!

2025/11/23 17:13

御鏡 梟 ID:≫ m9kR/WFBrng.A
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