世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚ノルティーク大陸/ノルティーク帝国近隣の遺跡 跡地〛[/中央寄せ]
ロズウェルは剣を地面に突き立てて倒れそうになったのを防ぐ。ベルリスやモルディーも武器を持っているが、服装の至る所が土や煤のようなもので汚れている。そして何より、魔神が封印されていた遺跡が丸々崩壊している。ルベリアが隊員の人数を確認すると、1人を除いて全員が揃っていることに気づく。では残りの1人はどこに居るのか。彼女は遺跡の瓦礫の下から出てきた。
[斜体][明朝体][太字]「スゥ──────────ッ」[/太字][/明朝体][/斜体]
エスミルト騎士団の2番隊と5番隊、そして瓦礫の影で剣を構えていたレイクといつの間にかこの大陸へと来ていたフィルマリー。その場に居た全員が彼女を見ていた。
「ラルカ......。」
ラルカはこの“絶望の魔神”戦で一大活躍をした。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ロズウェルは5番隊の隊員によって魔神の復活の報告を受け、2番隊の出撃指示をした。その後、ベルリスの[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]でノルティーク帝国近隣までワープし、“絶望の魔神”カヴローチェの復活を確認した。
総員で攻撃を仕掛けた所でレイクが跳んできて協力してくれることを理解する。
「[斜体]レイクさん...!![/斜体]」
[大文字]「また魔神か...。ノイトが不在の今、私たちで倒すしかあるまい...。」[/大文字]
レイクが魔神に向かって剣を振るう。
[中央寄せ][斜体][太字][大文字]〔[漢字][明朝体]暴風神[/明朝体][/漢字][ふりがな]ルドラ[/ふりがな]〕[/大文字][/太字][/斜体][/中央寄せ]
レイクの斬撃は圧縮された猛風そのもので、魔神は槍で受けていなければ確実に致命傷を受けていただろう。しかし、槍で防いだとは言えレイクの一撃は元から重い。魔神は必死に地面を踏み込んで耐えきったが、また次の一撃が魔神を襲う。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体]〔[漢字][明朝体]雷帝神[/明朝体][/漢字][ふりがな]トール[/ふりがな]〕[/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
霹靂の如く放たれた高速の一撃は電撃を纏って魔神に絡みつき、その動きを一瞬封じる。
[大文字][明朝体][太字][斜体]「グゥッ」[/斜体][/太字][/明朝体][/大文字]
ロズウェルがその隙に魔神へと攻撃を喰らわせた。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][[漢字]青龍御剣[/漢字][ふりがな]セイリュウミケン[/ふりがな]]!![/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
蒼い斬撃が魔神の胴体に傷を刻む。しかしすぐに魔神の黒い槍が高速でロズウェルに向かって振り下ろされたため、ロズウェルはすぐに引き下がった。ロズウェルは先程のレイクの攻撃の効き具合と魔神の反応からあることに気が付いた。
(レイクさんの攻撃を直に喰らえば確実にダメージを負い、俺の攻撃も充分に当たる速度...。恐らくこの魔神は、“終焉の魔神”よりも弱い...。)
魔神が槍を構えて殺意を向けてきた。しかし、そこでさらに誰かが移動してきた。
[中央寄せ][[漢字][太字]空間転移[/太字][/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]][/中央寄せ]
そこに来たのはヴェルグランド大陸の魔導都市・マギノシティで魔具を扱っている店の店主のフィルマリーだった。
「何やら妙な気配を感じて来てみれば...あれは魔神ですかね?...せっかくノイトさんをコレクションにする作戦を練っていたのに...。邪魔されちゃいましたね。」
ラルカはノイトの名前に反応する。
「ノイト=ソルフォトス...。」
フィルマリーはラルカがノイトのことを知っていることに驚いた。
「あら、ノイトさんのこと知ってるの?昨日、丁度私の店に来たんですけど...すごく強いですね〜。」
「...強いの?」
ラルカは目深に被った帽子から鋭い視線を覗かせる。ただならぬ視線に周りの騎士たちは思わずたじろぐが、流石のレイクやフィルマリーはその視線を真っ直ぐと受け止めた。
「はい、とっても。」
そこでレイクが話に入ってくる。
[大文字]「うむ、あの歳の子供にしては妙にませている。それに、かの“絶望の魔神”の討伐に於いて最も貢献していたからな。」[/大文字]
「そうか...。」
ラルカが少し俯いたことで視線が帽子に隠れ、余計に何を考えているのかが分からなくなった。そうこうしている内に“絶望の魔神”・カヴローチェの黒い槍がラルカに向かって突き出される。
「...。」
ラルカは何も言わないまま後ろへと倒れ、魔神の攻撃を最小限の動きで裂けながら攻撃冷酷な視線を再び覗かせた。レイクとフィルマリーも攻撃を仕掛ける。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体][明朝体]〔[漢字]暴風神[/漢字][ふりがな]ルドラ[/ふりがな]〕[/明朝体][/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][明朝体][大文字][太字]上級魔術:〘ᚺᛖᛚᛚ'ᛋ ᛁᚾᚠᛖᚱᚾᛟ〙[/太字][/大文字][/明朝体][/中央寄せ]
魔神は左右から肉体を切り裂く猛風と肉体を灰と化す炎を受けた。
[大文字][明朝体][太字][斜体]「ガッ」[/斜体][/太字][/明朝体][/大文字]
あまりもの威力に叫び声すらまともに出せない魔神を、ラルカが取り出した[漢字]拳銃[/漢字][ふりがな]ハンドガン[/ふりがな]が狙う。
[大文字][中央寄せ][斜体][太字]─── [太字]ピシュンッ[/太字] ───[/太字][/斜体][/中央寄せ][/大文字]
乾いた着弾音が魔神の心臓を打ち抜いた。その瞬間、魔神の心臓から冷気が噴き出して魔神の動きが止まる。魔神が憎しみの表情を浮かべて自身の魔力を心臓に集中させる。
[斜体](まさか...!!)
[大文字](自爆か...。)[/大文字]
「総員、退避!!」[/斜体]
レイクとロズウェルは剣で衝撃に備える。他の騎士たちはロズウェルの迅速な指示によっていち早く魔神から離れることが出来ていた。しかしそれでも魔神の自爆の衝撃の範囲内。そこでフィルマリーは防御魔術を展開し、騎士たちを守る。ラルカは仰向けに倒れたまま銃に弾を補填していた。次の瞬間。
[水平線]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字]ズバンッ[/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[水平線]
空間が爆ぜ、遺跡があった所が弾け飛んだ。魔神の魔力が熱となって衝撃波とともに煙を帯びる。宙に舞い上げられた瓦礫の雨の中で、ラルカがまだ原型を保っている魔神に突っ込んでいった。
[斜体](ラルカ..!? 1人で突っ込んでいくなんて!!)[/斜体]
ロズウェルは視界の中にたった1人で魔神へと突っ込むラルカの姿を見たが、魔神の自爆の衝撃波に耐えるので精一杯だった。上空から遺跡の瓦礫が大量に振ってきたことに気が付いてレイクとロズウェルが後ろへと跳んでいく。激しく土埃が舞い、ロズウェルはラルカを見失ってしまった。
しばらくして土埃が収まり、遺跡があった場所はバラバラになった瓦礫が散らばっていて、魔神の残骸は確認できない。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
瓦礫の下から出てきたラルカを全員が見つめている。彼女の手には魔神のものと思われる黒い槍が魔神の心臓を貫いたもの。
レイクは土埃の中で一部始終を見ていた。ラルカはたった1人で自爆した魔神に向かって突っ込んでいっていた。しかし、魔神は完全に自爆したのでは無く、その魔力を爆ぜさせた威力によってその場の全員を絶望させることが目的だったようだ。ラルカは魔神の思惑にいち早く気が付いてトドメを刺したらしい。まだ微かに残る土埃と地面の一部が蒸発して発生した煙の中で、ラルカは立っている。ラルカは帽子の鍔を持って帽子をさらに目深に被り、ロズウェルの方を見た。
「...ロズウェル、魔神の討伐は終わったぞ。私はもう2番隊を抜けることにした。これでお別れだ。」
ラルカはそれ以上何も言わずにどこかへ歩いて消えていった。残された者たちはしばらくの間ラルカの動勢を見て立ち上がれなかったが、やがてレイクが声をあげる。
[大文字]「魔神の討伐を確認した。エスミルト騎士団の2番隊、5番隊は任務完了、ということで良いな?...私はこのことをノルティーク様へ報告しに行く。諸君は被害の規模を確認して帰還、以上だ。」[/大文字]
レイクが帝国の王城へと跳んでいき、フィルマリーもノイトをもらう作戦を練るために[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]で帰ってしまう。何が起こっていたのかを未だに理解しきれないロズウェルたちだったが、幸い死者を出さずに魔神の討伐を完了出来たことは素直に喜ばしいことだ。ベルリスが全員をエスミルトまで転送し、“絶望の魔神”カヴローチェの討伐は異質なほどに静かに終わりを迎えたのだった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ラルカはノルティーク大陸の端へと辿り着き、海の向こうを見据える。
(ノイト=ソルフォトス...。...私も魔神を倒したぞ。)
ラルカの碧い瞳にはさらに闘志が[漢字]漲[/漢字][ふりがな]みなぎ[/ふりがな]っていた。
ノイトはふと何かを感じて振り返る。同じく魔神を倒したばかりのノイトはリーリャを背負ったまま何かを感じたような気がするが、それが何かは分からない。急に立ち止まったノイトにリーリャが声をかける。
「ん?ノイト、どうしたの〜?」
「...いや、何でもないよ。」
ノイトはリーリャを落ち着かせるように言いながら、再び次の街へと歩き始める。
[中央寄せ]エリア〚ノルティーク大陸/ノルティーク帝国近隣の遺跡 跡地〛[/中央寄せ]
ロズウェルは剣を地面に突き立てて倒れそうになったのを防ぐ。ベルリスやモルディーも武器を持っているが、服装の至る所が土や煤のようなもので汚れている。そして何より、魔神が封印されていた遺跡が丸々崩壊している。ルベリアが隊員の人数を確認すると、1人を除いて全員が揃っていることに気づく。では残りの1人はどこに居るのか。彼女は遺跡の瓦礫の下から出てきた。
[斜体][明朝体][太字]「スゥ──────────ッ」[/太字][/明朝体][/斜体]
エスミルト騎士団の2番隊と5番隊、そして瓦礫の影で剣を構えていたレイクといつの間にかこの大陸へと来ていたフィルマリー。その場に居た全員が彼女を見ていた。
「ラルカ......。」
ラルカはこの“絶望の魔神”戦で一大活躍をした。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ロズウェルは5番隊の隊員によって魔神の復活の報告を受け、2番隊の出撃指示をした。その後、ベルリスの[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]でノルティーク帝国近隣までワープし、“絶望の魔神”カヴローチェの復活を確認した。
総員で攻撃を仕掛けた所でレイクが跳んできて協力してくれることを理解する。
「[斜体]レイクさん...!![/斜体]」
[大文字]「また魔神か...。ノイトが不在の今、私たちで倒すしかあるまい...。」[/大文字]
レイクが魔神に向かって剣を振るう。
[中央寄せ][斜体][太字][大文字]〔[漢字][明朝体]暴風神[/明朝体][/漢字][ふりがな]ルドラ[/ふりがな]〕[/大文字][/太字][/斜体][/中央寄せ]
レイクの斬撃は圧縮された猛風そのもので、魔神は槍で受けていなければ確実に致命傷を受けていただろう。しかし、槍で防いだとは言えレイクの一撃は元から重い。魔神は必死に地面を踏み込んで耐えきったが、また次の一撃が魔神を襲う。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体]〔[漢字][明朝体]雷帝神[/明朝体][/漢字][ふりがな]トール[/ふりがな]〕[/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
霹靂の如く放たれた高速の一撃は電撃を纏って魔神に絡みつき、その動きを一瞬封じる。
[大文字][明朝体][太字][斜体]「グゥッ」[/斜体][/太字][/明朝体][/大文字]
ロズウェルがその隙に魔神へと攻撃を喰らわせた。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][[漢字]青龍御剣[/漢字][ふりがな]セイリュウミケン[/ふりがな]]!![/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
蒼い斬撃が魔神の胴体に傷を刻む。しかしすぐに魔神の黒い槍が高速でロズウェルに向かって振り下ろされたため、ロズウェルはすぐに引き下がった。ロズウェルは先程のレイクの攻撃の効き具合と魔神の反応からあることに気が付いた。
(レイクさんの攻撃を直に喰らえば確実にダメージを負い、俺の攻撃も充分に当たる速度...。恐らくこの魔神は、“終焉の魔神”よりも弱い...。)
魔神が槍を構えて殺意を向けてきた。しかし、そこでさらに誰かが移動してきた。
[中央寄せ][[漢字][太字]空間転移[/太字][/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]][/中央寄せ]
そこに来たのはヴェルグランド大陸の魔導都市・マギノシティで魔具を扱っている店の店主のフィルマリーだった。
「何やら妙な気配を感じて来てみれば...あれは魔神ですかね?...せっかくノイトさんをコレクションにする作戦を練っていたのに...。邪魔されちゃいましたね。」
ラルカはノイトの名前に反応する。
「ノイト=ソルフォトス...。」
フィルマリーはラルカがノイトのことを知っていることに驚いた。
「あら、ノイトさんのこと知ってるの?昨日、丁度私の店に来たんですけど...すごく強いですね〜。」
「...強いの?」
ラルカは目深に被った帽子から鋭い視線を覗かせる。ただならぬ視線に周りの騎士たちは思わずたじろぐが、流石のレイクやフィルマリーはその視線を真っ直ぐと受け止めた。
「はい、とっても。」
そこでレイクが話に入ってくる。
[大文字]「うむ、あの歳の子供にしては妙にませている。それに、かの“絶望の魔神”の討伐に於いて最も貢献していたからな。」[/大文字]
「そうか...。」
ラルカが少し俯いたことで視線が帽子に隠れ、余計に何を考えているのかが分からなくなった。そうこうしている内に“絶望の魔神”・カヴローチェの黒い槍がラルカに向かって突き出される。
「...。」
ラルカは何も言わないまま後ろへと倒れ、魔神の攻撃を最小限の動きで裂けながら攻撃冷酷な視線を再び覗かせた。レイクとフィルマリーも攻撃を仕掛ける。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体][明朝体]〔[漢字]暴風神[/漢字][ふりがな]ルドラ[/ふりがな]〕[/明朝体][/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][明朝体][大文字][太字]上級魔術:〘ᚺᛖᛚᛚ'ᛋ ᛁᚾᚠᛖᚱᚾᛟ〙[/太字][/大文字][/明朝体][/中央寄せ]
魔神は左右から肉体を切り裂く猛風と肉体を灰と化す炎を受けた。
[大文字][明朝体][太字][斜体]「ガッ」[/斜体][/太字][/明朝体][/大文字]
あまりもの威力に叫び声すらまともに出せない魔神を、ラルカが取り出した[漢字]拳銃[/漢字][ふりがな]ハンドガン[/ふりがな]が狙う。
[大文字][中央寄せ][斜体][太字]─── [太字]ピシュンッ[/太字] ───[/太字][/斜体][/中央寄せ][/大文字]
乾いた着弾音が魔神の心臓を打ち抜いた。その瞬間、魔神の心臓から冷気が噴き出して魔神の動きが止まる。魔神が憎しみの表情を浮かべて自身の魔力を心臓に集中させる。
[斜体](まさか...!!)
[大文字](自爆か...。)[/大文字]
「総員、退避!!」[/斜体]
レイクとロズウェルは剣で衝撃に備える。他の騎士たちはロズウェルの迅速な指示によっていち早く魔神から離れることが出来ていた。しかしそれでも魔神の自爆の衝撃の範囲内。そこでフィルマリーは防御魔術を展開し、騎士たちを守る。ラルカは仰向けに倒れたまま銃に弾を補填していた。次の瞬間。
[水平線]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字]ズバンッ[/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
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空間が爆ぜ、遺跡があった所が弾け飛んだ。魔神の魔力が熱となって衝撃波とともに煙を帯びる。宙に舞い上げられた瓦礫の雨の中で、ラルカがまだ原型を保っている魔神に突っ込んでいった。
[斜体](ラルカ..!? 1人で突っ込んでいくなんて!!)[/斜体]
ロズウェルは視界の中にたった1人で魔神へと突っ込むラルカの姿を見たが、魔神の自爆の衝撃波に耐えるので精一杯だった。上空から遺跡の瓦礫が大量に振ってきたことに気が付いてレイクとロズウェルが後ろへと跳んでいく。激しく土埃が舞い、ロズウェルはラルカを見失ってしまった。
しばらくして土埃が収まり、遺跡があった場所はバラバラになった瓦礫が散らばっていて、魔神の残骸は確認できない。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
瓦礫の下から出てきたラルカを全員が見つめている。彼女の手には魔神のものと思われる黒い槍が魔神の心臓を貫いたもの。
レイクは土埃の中で一部始終を見ていた。ラルカはたった1人で自爆した魔神に向かって突っ込んでいっていた。しかし、魔神は完全に自爆したのでは無く、その魔力を爆ぜさせた威力によってその場の全員を絶望させることが目的だったようだ。ラルカは魔神の思惑にいち早く気が付いてトドメを刺したらしい。まだ微かに残る土埃と地面の一部が蒸発して発生した煙の中で、ラルカは立っている。ラルカは帽子の鍔を持って帽子をさらに目深に被り、ロズウェルの方を見た。
「...ロズウェル、魔神の討伐は終わったぞ。私はもう2番隊を抜けることにした。これでお別れだ。」
ラルカはそれ以上何も言わずにどこかへ歩いて消えていった。残された者たちはしばらくの間ラルカの動勢を見て立ち上がれなかったが、やがてレイクが声をあげる。
[大文字]「魔神の討伐を確認した。エスミルト騎士団の2番隊、5番隊は任務完了、ということで良いな?...私はこのことをノルティーク様へ報告しに行く。諸君は被害の規模を確認して帰還、以上だ。」[/大文字]
レイクが帝国の王城へと跳んでいき、フィルマリーもノイトをもらう作戦を練るために[漢字]空間転移[/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]で帰ってしまう。何が起こっていたのかを未だに理解しきれないロズウェルたちだったが、幸い死者を出さずに魔神の討伐を完了出来たことは素直に喜ばしいことだ。ベルリスが全員をエスミルトまで転送し、“絶望の魔神”カヴローチェの討伐は異質なほどに静かに終わりを迎えたのだった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ラルカはノルティーク大陸の端へと辿り着き、海の向こうを見据える。
(ノイト=ソルフォトス...。...私も魔神を倒したぞ。)
ラルカの碧い瞳にはさらに闘志が[漢字]漲[/漢字][ふりがな]みなぎ[/ふりがな]っていた。
ノイトはふと何かを感じて振り返る。同じく魔神を倒したばかりのノイトはリーリャを背負ったまま何かを感じたような気がするが、それが何かは分からない。急に立ち止まったノイトにリーリャが声をかける。
「ん?ノイト、どうしたの〜?」
「...いや、何でもないよ。」
ノイトはリーリャを落ち着かせるように言いながら、再び次の街へと歩き始める。