世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ノイトとリーリャは“記憶の魔神”ゲデニスが放った光に飲み込まれた。
([斜体]...!![/斜体])
目の前にはある光景が映る。雨が降った、暗い夜。サイレンを鳴らした救急車がこちらに向かってきて、視界を通り抜けた。振り返ると、そこで救急車が停まっている。どうやら事故が起こったようだ。
――あれ...?これ、知ってる...。確か誰かが轢かれて...、...!!
走ってきた救急車に無理やり乗せられてたのは見覚えのある少年だった。ノイトはそれを見て思い出す。
(...これ、僕だ。...そうだ、思い出した。僕は雨の日の夜、図書館からの帰りに轢かれて命を落とした。)
魔神の光の中ではリーリャにもノイトの心の声が聞こえている。リーリャはノイトの心の声を聞いて驚いた。
(え...?...それじゃあ、私が前世で乗せられた救急車で轢かれたのって...!!)
魔神の声がする。
《そうだ。前世とやらのことはよく分からないが...昔、貴様らは同じ車に乗ったのだ。少年の方は重症で助からなかったようだがな。》
(そんな...!!私があの時階段を踏み外したせいで、前世のノイトは...!!)
嘆くリーリャの声を聞いてノイトは優しく声をかける。
(リーリャのせいじゃ、ないよ。気にしないで。事故ならしょうがないからね。リーリャを助けるために救急隊員の人たちは急いでくれてたんだろうし、そのお陰で前世のリーリャは助かったんでしょ?それだけでも、僕は十分良かったと思うよ。)
《少年の方は少女の方の少し前に命を落としたようだな...、しかし少女の方も酷い死に方をしたものだ。》
その瞬間、リーリャの顔つきが変わる。恐怖で強張って動けなくなったような表情のリーリャは何かを思い出してしまいそうだった。思わず頭を抱えて俯き、しゃがみ込んでしまったリーリャの声が光の中に響く。
[水平線]
[大文字]([斜体]やめて...!!思い出させないで!![/斜体])[/大文字]
[水平線]
《強い拒絶だな...しかし、それも過去の事実だ。己の過去と向き合ってこそ、新たな歩みがあるものなのだぞ?》
ノイトは【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を強く握った。
(それでも...、過去の全てと向き合おうとしたらいつか必ず壊れるときが来る...。それを無理やり押し付けるのは見過ごせないんだけど...?)
ノイトの目は魔神の方に据わっている。ノイトはどこか機嫌が悪そうだ。
《事実は事実だ。過去から逃げるのか?》
(逆に、逃げて悪いのか...?)
《逃げとは、弱さだ。》
[大文字](違う。逃げは強さでもある。)[/大文字]
ノイトの声にリーリャが顔を上げた。ノイトは武器をさらに強く握りしめて続ける。
(自分の限界は自分にしか分からないんだ。自分の限界に気が付いて、自分が壊れないように逃げるのは手段として正しい。)
《限界を自分で決めることで怠ける可能性だってあるんだぞ?》
(それはその人自身も問題だ。個人差があるんだから、それが全ての人に当てはまるだなんて決めつけるものじゃないよ。)
《個人を見ることは出来ない。人間と言ってもたくさん居るのだからな。私が全ての人間に過去と向き合う時間をくれてやっていると言うのに、何故それを拒絶するのだ?》
(人間がピンキリでまとめられて同族嫌悪に陥るのが嫌だからじゃない?粗探しに特化した人間も多いからね...。)
《私の介入は余計だ、とでも言いたいのか?それが私の存在理由の一つでもあるのだが...?》
(うん、断言出来るね。余計な真似だけはするな。)
魔神の光が消えて視界に広がった情景が元の森に戻る。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]ガキンッ[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
次の瞬間、魔神の拳がノイトの武器によって受け止められていた。続いて魔神の思い一撃がノイトに向かって加えられるが、ノイトも対抗する。
[水平線]
[中央寄せ][太字][斜体][大文字]〔[漢字][明朝体]時帝神[/明朝体][/漢字][ふりがな]クロノス[/ふりがな]〕[/大文字][/斜体][/太字][/中央寄せ]
[水平線]
魔神の動きは止まった。その隙にノイトは魔神の腕を落とそうと攻撃を喰らわせる。
[中央寄せ][[太字][漢字]水製長剣[/漢字][ふりがな]ネロ・スパタ[/ふりがな][/太字]][/中央寄せ]
水を限界まで圧縮して作った剣で魔神の左腕の表面を抉る。
(硬いな...、これじゃあ無理か...。それなら...!!)
[太字][明朝体][大文字]「[斜体]遅い..!![/斜体]」[/大文字][/明朝体][/太字]
魔神が拳を振りかざしてノイトに迫った。咄嗟に躱したノイトは攻撃を放つ。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体]〔[明朝体][漢字]記憶の再現[/漢字][ふりがな]メモリーフラッシュ[/ふりがな][/明朝体]〕[/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
(この技は、この技を受けた者の記憶を一時的に再現する。コイツは“記憶の魔神”だから上手く行けば...)
魔神は目を見開いて硬直した。ノイトはニヤリと笑みを浮かべて再び構える。
(膨大な記憶が脳内で再現されて情報処理が追いつかず、一時的に硬直する!!)
武器を振りかぶってノイトが攻撃を加えた。
[中央寄せ][大文字][太字]〔[斜体][漢字][明朝体]魔力斬[/明朝体][/漢字][ふりがな]マギノ・スラッシュ[/ふりがな][/斜体]〕[/太字][/大文字][/中央寄せ]
ノイトの斬撃が魔神の胴体に斜めの傷を付ける。リーリャはノイトがたった1人で魔神と戦っているのを見て驚くばかりだ。
「[斜体]フゥ...。[/斜体]流石に硬いね...。どうやってバラしていくかな?」
(ノイト...すごい!!1人で魔神とやりあえてる...。でも、それだけじゃダメ...ノイトが武器を取られたりなんかしたら、魔神が一気に有利になっちゃう。私もノイトのために何か...!!)
リーリャは[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]が具現化したピアノを演奏しようとした。しかしそこで、再び魔神が動き始めた。ノイトも予想以上の早さに驚いている。
([斜体]早っ...!!もう情報を読み終えたのか...!?[/斜体])
魔神は鬱陶しそうに頭を右手で押さえながら話した。
[明朝体][太字][大文字]「ハァ......やはり他者の記憶は読み取るよりも体験する方が良いな。ん?何だその光は...鬱陶しい...!!」[/大文字][/太字][/明朝体]
魔神はリーリャの首飾りが放つ光が目障りだと感じたようだ。ノイトがすぐさま武器を持ってリーリャの元へと跳ぼうとしたが、一足遅かった。リーリャは魔神が放つ激しい光に包まれたあと、再び頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
[大文字][斜体]「やめて...!!そんな、嫌ァ...!!」[/斜体][/大文字]
ノイトの武器が魔神の左腕に喰い込むが、それ以上は通らない。
[斜体]「んっ!!」[/斜体]
魔神はノイトの攻撃は一切ものともせずリーリャに近づいてその首飾りを叩き割った。そしてもちろん、リーリャにもその拳は当たるはずだった。しかし、[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]が光を放ってリーリャへの攻撃を防ぐ。そのお陰でリーリャにダメージは無かったが、首飾りは完全に粉々になってしまう。
リーリャは目の前の魔神が自分を殺そうとしていることがすぐに分かった。当然ノイトが放っておくはずもなく、攻撃を加えようとする。
[太字][明朝体]禁忌魔術:[大文字]『[漢字]時[/漢字][ふりがな]と[/ふりがな]...[/大文字][/明朝体][/太字]
[大文字][斜体][明朝体]ゲホッ ゴホッ、ガッ[/明朝体][/斜体][/大文字]
しかし、ノイトが禁忌魔法を使おうとすると肺が強力な魔術で締め付けられる。魔神はその様子を見てノイトの記憶を読み取った。
[太字][明朝体][大文字]「なるほど...禁忌魔法が使えるのか。厄介だな...私の邪魔をするようであれば、まずは貴様から消してやろう。」[/大文字][/明朝体][/太字]
ノイトは必死に意識を繋いで【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を握る力を強める。魔神がノイトにゆっくりと歩み寄ってくる中、ノイトの武器の[漢字]魔霊晶[/漢字][ふりがな]アメジスト[/ふりがな]が鈍く光を放っていた。
ノイトとリーリャは“記憶の魔神”ゲデニスが放った光に飲み込まれた。
([斜体]...!![/斜体])
目の前にはある光景が映る。雨が降った、暗い夜。サイレンを鳴らした救急車がこちらに向かってきて、視界を通り抜けた。振り返ると、そこで救急車が停まっている。どうやら事故が起こったようだ。
――あれ...?これ、知ってる...。確か誰かが轢かれて...、...!!
走ってきた救急車に無理やり乗せられてたのは見覚えのある少年だった。ノイトはそれを見て思い出す。
(...これ、僕だ。...そうだ、思い出した。僕は雨の日の夜、図書館からの帰りに轢かれて命を落とした。)
魔神の光の中ではリーリャにもノイトの心の声が聞こえている。リーリャはノイトの心の声を聞いて驚いた。
(え...?...それじゃあ、私が前世で乗せられた救急車で轢かれたのって...!!)
魔神の声がする。
《そうだ。前世とやらのことはよく分からないが...昔、貴様らは同じ車に乗ったのだ。少年の方は重症で助からなかったようだがな。》
(そんな...!!私があの時階段を踏み外したせいで、前世のノイトは...!!)
嘆くリーリャの声を聞いてノイトは優しく声をかける。
(リーリャのせいじゃ、ないよ。気にしないで。事故ならしょうがないからね。リーリャを助けるために救急隊員の人たちは急いでくれてたんだろうし、そのお陰で前世のリーリャは助かったんでしょ?それだけでも、僕は十分良かったと思うよ。)
《少年の方は少女の方の少し前に命を落としたようだな...、しかし少女の方も酷い死に方をしたものだ。》
その瞬間、リーリャの顔つきが変わる。恐怖で強張って動けなくなったような表情のリーリャは何かを思い出してしまいそうだった。思わず頭を抱えて俯き、しゃがみ込んでしまったリーリャの声が光の中に響く。
[水平線]
[大文字]([斜体]やめて...!!思い出させないで!![/斜体])[/大文字]
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《強い拒絶だな...しかし、それも過去の事実だ。己の過去と向き合ってこそ、新たな歩みがあるものなのだぞ?》
ノイトは【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を強く握った。
(それでも...、過去の全てと向き合おうとしたらいつか必ず壊れるときが来る...。それを無理やり押し付けるのは見過ごせないんだけど...?)
ノイトの目は魔神の方に据わっている。ノイトはどこか機嫌が悪そうだ。
《事実は事実だ。過去から逃げるのか?》
(逆に、逃げて悪いのか...?)
《逃げとは、弱さだ。》
[大文字](違う。逃げは強さでもある。)[/大文字]
ノイトの声にリーリャが顔を上げた。ノイトは武器をさらに強く握りしめて続ける。
(自分の限界は自分にしか分からないんだ。自分の限界に気が付いて、自分が壊れないように逃げるのは手段として正しい。)
《限界を自分で決めることで怠ける可能性だってあるんだぞ?》
(それはその人自身も問題だ。個人差があるんだから、それが全ての人に当てはまるだなんて決めつけるものじゃないよ。)
《個人を見ることは出来ない。人間と言ってもたくさん居るのだからな。私が全ての人間に過去と向き合う時間をくれてやっていると言うのに、何故それを拒絶するのだ?》
(人間がピンキリでまとめられて同族嫌悪に陥るのが嫌だからじゃない?粗探しに特化した人間も多いからね...。)
《私の介入は余計だ、とでも言いたいのか?それが私の存在理由の一つでもあるのだが...?》
(うん、断言出来るね。余計な真似だけはするな。)
魔神の光が消えて視界に広がった情景が元の森に戻る。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]ガキンッ[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
次の瞬間、魔神の拳がノイトの武器によって受け止められていた。続いて魔神の思い一撃がノイトに向かって加えられるが、ノイトも対抗する。
[水平線]
[中央寄せ][太字][斜体][大文字]〔[漢字][明朝体]時帝神[/明朝体][/漢字][ふりがな]クロノス[/ふりがな]〕[/大文字][/斜体][/太字][/中央寄せ]
[水平線]
魔神の動きは止まった。その隙にノイトは魔神の腕を落とそうと攻撃を喰らわせる。
[中央寄せ][[太字][漢字]水製長剣[/漢字][ふりがな]ネロ・スパタ[/ふりがな][/太字]][/中央寄せ]
水を限界まで圧縮して作った剣で魔神の左腕の表面を抉る。
(硬いな...、これじゃあ無理か...。それなら...!!)
[太字][明朝体][大文字]「[斜体]遅い..!![/斜体]」[/大文字][/明朝体][/太字]
魔神が拳を振りかざしてノイトに迫った。咄嗟に躱したノイトは攻撃を放つ。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体]〔[明朝体][漢字]記憶の再現[/漢字][ふりがな]メモリーフラッシュ[/ふりがな][/明朝体]〕[/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
(この技は、この技を受けた者の記憶を一時的に再現する。コイツは“記憶の魔神”だから上手く行けば...)
魔神は目を見開いて硬直した。ノイトはニヤリと笑みを浮かべて再び構える。
(膨大な記憶が脳内で再現されて情報処理が追いつかず、一時的に硬直する!!)
武器を振りかぶってノイトが攻撃を加えた。
[中央寄せ][大文字][太字]〔[斜体][漢字][明朝体]魔力斬[/明朝体][/漢字][ふりがな]マギノ・スラッシュ[/ふりがな][/斜体]〕[/太字][/大文字][/中央寄せ]
ノイトの斬撃が魔神の胴体に斜めの傷を付ける。リーリャはノイトがたった1人で魔神と戦っているのを見て驚くばかりだ。
「[斜体]フゥ...。[/斜体]流石に硬いね...。どうやってバラしていくかな?」
(ノイト...すごい!!1人で魔神とやりあえてる...。でも、それだけじゃダメ...ノイトが武器を取られたりなんかしたら、魔神が一気に有利になっちゃう。私もノイトのために何か...!!)
リーリャは[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]が具現化したピアノを演奏しようとした。しかしそこで、再び魔神が動き始めた。ノイトも予想以上の早さに驚いている。
([斜体]早っ...!!もう情報を読み終えたのか...!?[/斜体])
魔神は鬱陶しそうに頭を右手で押さえながら話した。
[明朝体][太字][大文字]「ハァ......やはり他者の記憶は読み取るよりも体験する方が良いな。ん?何だその光は...鬱陶しい...!!」[/大文字][/太字][/明朝体]
魔神はリーリャの首飾りが放つ光が目障りだと感じたようだ。ノイトがすぐさま武器を持ってリーリャの元へと跳ぼうとしたが、一足遅かった。リーリャは魔神が放つ激しい光に包まれたあと、再び頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
[大文字][斜体]「やめて...!!そんな、嫌ァ...!!」[/斜体][/大文字]
ノイトの武器が魔神の左腕に喰い込むが、それ以上は通らない。
[斜体]「んっ!!」[/斜体]
魔神はノイトの攻撃は一切ものともせずリーリャに近づいてその首飾りを叩き割った。そしてもちろん、リーリャにもその拳は当たるはずだった。しかし、[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]が光を放ってリーリャへの攻撃を防ぐ。そのお陰でリーリャにダメージは無かったが、首飾りは完全に粉々になってしまう。
リーリャは目の前の魔神が自分を殺そうとしていることがすぐに分かった。当然ノイトが放っておくはずもなく、攻撃を加えようとする。
[太字][明朝体]禁忌魔術:[大文字]『[漢字]時[/漢字][ふりがな]と[/ふりがな]...[/大文字][/明朝体][/太字]
[大文字][斜体][明朝体]ゲホッ ゴホッ、ガッ[/明朝体][/斜体][/大文字]
しかし、ノイトが禁忌魔法を使おうとすると肺が強力な魔術で締め付けられる。魔神はその様子を見てノイトの記憶を読み取った。
[太字][明朝体][大文字]「なるほど...禁忌魔法が使えるのか。厄介だな...私の邪魔をするようであれば、まずは貴様から消してやろう。」[/大文字][/明朝体][/太字]
ノイトは必死に意識を繋いで【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を握る力を強める。魔神がノイトにゆっくりと歩み寄ってくる中、ノイトの武器の[漢字]魔霊晶[/漢字][ふりがな]アメジスト[/ふりがな]が鈍く光を放っていた。