世界に溢れる夢
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3人でオボロノサトを出てしばらく道を歩いていた時、メルクは唐突に言い出した。
「実は、この先に私のこの世界での故郷があるんだよね。」
「「え?」」
ノイトは地図を確認した。オボロノサトの北に位置する町の名前は霊峰の町・ノービリアだった。ノイトは、そこには温泉があるという噂を聞いたことがある。
「温泉があるって聞いたことあるけど、本当?」
「うん、あるよ。混浴も出来るけど、入ってく?」
メルクがあまりにも自然に言ってきたためノイトは珍しく一瞬固まったが、今度は先程とは違ってすぐに反応することが出来た。
「温泉は入りたいかもな〜。混浴は嫌だけど。」
「メルク、温泉宿とかもあるの?」
「もちろん!今日はそこに泊まってくと良いよ!!町も案内するし!」
ノイトとリーリャはメルクの故郷に一晩泊まっていくことに決める。ノービリアまでの案内を務めてくれるメルクに着いていき、自然豊かな町に辿り着いた。
「到着!ここが私の故郷...、霊峰の町・ノービリア!!宿は確かこっちにあったはず...。」
メルクの歩幅は心做しかいつもよりも小さい気がする。ノイトは里帰りしたはずなのにそこまではしゃいでいないメルクの様子を見てどうしたのか気になった。
「メル、せっかくの里帰りなのに、それにしては元気ないね?どうかしたの?」
メルクはノイトの方を振り返らずに歩きながら答えた。
「だってほら、私は小さい頃からこの町に着た先代のボスに着いて行かれちゃったからさ。今のボスは言ってることはおかしいけど根は優しいんだよ。...でも、昔のことはあんまり覚えていないんだ。この町のことも、今少しずつ思いだしている感じだし...。」
リーリャはメルクの話を聞いて少し俯いた。ノイトはメルクが所属している組織については後で深堀りして今は温泉を堪能することで場の空気を和らげようと思う。
「メル、温泉宿に着いたら今日はもう寝ちゃおうか。」
「...また、一緒に寝るの?」
「[漢字]同衾共枕[/漢字][ふりがな]いっしょ[/ふりがな]じゃないけど、[漢字]同じ部屋[/漢字][ふりがな]いっしょ[/ふりがな]、かな。」
そうこう言っている内に宿に到着した。
「ここが温泉宿だよ。この町の人たちは自分の家に温泉があるところも多いから、あんまり使ってない。貸切でラッキーだね!」
3人は宿の中に入っていくのだった。
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肩から下に感じるお湯が温かい。お湯に浸からないように結った髪の束が床に当たった感覚がする。上を見上げると白い湯気が黒い空に吸い込まれていくようだった。
「...メル、連れてきてくれてありがとね。お陰で疲れもちゃんと取れそうだよ。」
どういたしましてと向かい側から声が聞こえる。しかし、リーリャはどうしても自分の顔を前に居るメルの方に向ける気にはなれなかった。
(どうしてだろう...。私も疲れてるのかな...?)
静かな露天風呂で、何も考える気になられないのはどうしてだろうか。
(後でノイトに聞いてみよう...。こういうの、何ていうんだっけ...。)
しばらくしてメルがそろそろ上がろうかと言ったのを境にお湯が揺れたのを感じる。リーリャは目を閉じて1回深呼吸をし、自信もお湯から上がるのだった。
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部屋に入るとノイトはもう既に中に居た。リーリャは先程の疑問をノイトに離す。
「ん?..あぁ、身体がリラックスしてセロトニンとかエンドルフィン、っていうホルモンが分泌されて眠くなったからじゃないかな?もしくはあれだ、アパシー。」
「ライクの反対?」
「少し意味の捉え方が違うかな...。文脈の違いだけど。」
メルクの質問にも冷静に答えているノイトの様子を見る限り、ノイトも疲れを取ることが出来たようだ。ノイトはリーリャが眠そうな目でこちらを見ていることに気づき、もう寝るかを聞く。
「リーリャ、眠そうだね...。今日はもう寝る?」
リーリャは静かに頷いて布団を敷き始めた。メルクもやや眠そうだったため、ノイトもその日は眠ることにした。
布団を敷き終えて3人は横になる。電気が消えた部屋でリーリャがノイトに話しかけた。
「ノイト...?」
「どうしたの?」
「ううん...何でもない。読んでみただけ。おやすみ〜。」
「うん、おやすみ。」
ノイトはすぐにリーリャが寝たことに気が付いて今までのことを振り返る。
(ウォルディードでは犠牲もたくさん出たし、その後もノルティーク帝国の王族の前で演奏会...。結構緊張したんだろうな。...ちょっと頑張らせ過ぎかな?ノルティーク帝国から帰ってきて、その翌日にはもうヴェルグランド大陸だからな...。...ルミナス、元気かな〜。...あれ、話題ズレてる?)
ノイトは考えるのも少し面倒だと思ってすぐに布団をかぶって寝る。まだメルクは起きていたようだが、ノイトは特に何もしないでおいた。
翌朝、メルクは目覚めた2人にあることを告げる。
「あのね、...ノイトくん、リーリャ...。私、この町に残ろうと思うの...!せっかく生まれた町に戻ってきたのに、たった一日でまたどこかに行くっていうのもちょっと、ね...。今はもう忘れちゃってても、もしかしたら大切なものがあったのかもしれないし...。この町のすぐ隣にある山からも、何か感じるんだよ。しばらくの間は、そこで過ごそうと思う。」
リーリャはノイトの方を見る。ノイトは少し考えていたが、考えをまとめて頷いた。
「メルがそう決めたんだったら、僕に止める権利は無いね。...昨日の夜、1人で考えてたんでしょ?必死に考えた結果だったら仕方ないよ。」
「ありがとう...。2人とも、頑張ってね。」
「メルクも、頑張って!!」
リーリャはメルクと固い握手をした。ノイトは町のすぐ隣の山を見つめながら何かを考えていたようだが、メルクがぎゅっと黒いローブを握りしめながら歩み寄ってきてメルクの方を見る。
「ノイトくん、今までありがとね...!気をつけて。」
ノイトはメルクを真っ直ぐと見て答えた。
「もちろん。一度別れた仲間が、後でもっと強くなって再登場するのはあるあるだからね。期待してるよ?」
「うん!!」
ノイトとリーリャはメルクに手を振ってノービリアを後にする。
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「ねぇ、ノイト...。また会えるんだよね?」
「もちろん、とは断言できないけど...メルならきっと大丈夫だよ。あの子は、強いから。」
リーリャは微笑みながらノイトの隣に並んで歩いた。ノイトとの、2人きりでの旅が再び始まった。この後に何があるのかを知らない2人は、空を見上げながら笑って道の上を進んでいく。
3人でオボロノサトを出てしばらく道を歩いていた時、メルクは唐突に言い出した。
「実は、この先に私のこの世界での故郷があるんだよね。」
「「え?」」
ノイトは地図を確認した。オボロノサトの北に位置する町の名前は霊峰の町・ノービリアだった。ノイトは、そこには温泉があるという噂を聞いたことがある。
「温泉があるって聞いたことあるけど、本当?」
「うん、あるよ。混浴も出来るけど、入ってく?」
メルクがあまりにも自然に言ってきたためノイトは珍しく一瞬固まったが、今度は先程とは違ってすぐに反応することが出来た。
「温泉は入りたいかもな〜。混浴は嫌だけど。」
「メルク、温泉宿とかもあるの?」
「もちろん!今日はそこに泊まってくと良いよ!!町も案内するし!」
ノイトとリーリャはメルクの故郷に一晩泊まっていくことに決める。ノービリアまでの案内を務めてくれるメルクに着いていき、自然豊かな町に辿り着いた。
「到着!ここが私の故郷...、霊峰の町・ノービリア!!宿は確かこっちにあったはず...。」
メルクの歩幅は心做しかいつもよりも小さい気がする。ノイトは里帰りしたはずなのにそこまではしゃいでいないメルクの様子を見てどうしたのか気になった。
「メル、せっかくの里帰りなのに、それにしては元気ないね?どうかしたの?」
メルクはノイトの方を振り返らずに歩きながら答えた。
「だってほら、私は小さい頃からこの町に着た先代のボスに着いて行かれちゃったからさ。今のボスは言ってることはおかしいけど根は優しいんだよ。...でも、昔のことはあんまり覚えていないんだ。この町のことも、今少しずつ思いだしている感じだし...。」
リーリャはメルクの話を聞いて少し俯いた。ノイトはメルクが所属している組織については後で深堀りして今は温泉を堪能することで場の空気を和らげようと思う。
「メル、温泉宿に着いたら今日はもう寝ちゃおうか。」
「...また、一緒に寝るの?」
「[漢字]同衾共枕[/漢字][ふりがな]いっしょ[/ふりがな]じゃないけど、[漢字]同じ部屋[/漢字][ふりがな]いっしょ[/ふりがな]、かな。」
そうこう言っている内に宿に到着した。
「ここが温泉宿だよ。この町の人たちは自分の家に温泉があるところも多いから、あんまり使ってない。貸切でラッキーだね!」
3人は宿の中に入っていくのだった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
肩から下に感じるお湯が温かい。お湯に浸からないように結った髪の束が床に当たった感覚がする。上を見上げると白い湯気が黒い空に吸い込まれていくようだった。
「...メル、連れてきてくれてありがとね。お陰で疲れもちゃんと取れそうだよ。」
どういたしましてと向かい側から声が聞こえる。しかし、リーリャはどうしても自分の顔を前に居るメルの方に向ける気にはなれなかった。
(どうしてだろう...。私も疲れてるのかな...?)
静かな露天風呂で、何も考える気になられないのはどうしてだろうか。
(後でノイトに聞いてみよう...。こういうの、何ていうんだっけ...。)
しばらくしてメルがそろそろ上がろうかと言ったのを境にお湯が揺れたのを感じる。リーリャは目を閉じて1回深呼吸をし、自信もお湯から上がるのだった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
部屋に入るとノイトはもう既に中に居た。リーリャは先程の疑問をノイトに離す。
「ん?..あぁ、身体がリラックスしてセロトニンとかエンドルフィン、っていうホルモンが分泌されて眠くなったからじゃないかな?もしくはあれだ、アパシー。」
「ライクの反対?」
「少し意味の捉え方が違うかな...。文脈の違いだけど。」
メルクの質問にも冷静に答えているノイトの様子を見る限り、ノイトも疲れを取ることが出来たようだ。ノイトはリーリャが眠そうな目でこちらを見ていることに気づき、もう寝るかを聞く。
「リーリャ、眠そうだね...。今日はもう寝る?」
リーリャは静かに頷いて布団を敷き始めた。メルクもやや眠そうだったため、ノイトもその日は眠ることにした。
布団を敷き終えて3人は横になる。電気が消えた部屋でリーリャがノイトに話しかけた。
「ノイト...?」
「どうしたの?」
「ううん...何でもない。読んでみただけ。おやすみ〜。」
「うん、おやすみ。」
ノイトはすぐにリーリャが寝たことに気が付いて今までのことを振り返る。
(ウォルディードでは犠牲もたくさん出たし、その後もノルティーク帝国の王族の前で演奏会...。結構緊張したんだろうな。...ちょっと頑張らせ過ぎかな?ノルティーク帝国から帰ってきて、その翌日にはもうヴェルグランド大陸だからな...。...ルミナス、元気かな〜。...あれ、話題ズレてる?)
ノイトは考えるのも少し面倒だと思ってすぐに布団をかぶって寝る。まだメルクは起きていたようだが、ノイトは特に何もしないでおいた。
翌朝、メルクは目覚めた2人にあることを告げる。
「あのね、...ノイトくん、リーリャ...。私、この町に残ろうと思うの...!せっかく生まれた町に戻ってきたのに、たった一日でまたどこかに行くっていうのもちょっと、ね...。今はもう忘れちゃってても、もしかしたら大切なものがあったのかもしれないし...。この町のすぐ隣にある山からも、何か感じるんだよ。しばらくの間は、そこで過ごそうと思う。」
リーリャはノイトの方を見る。ノイトは少し考えていたが、考えをまとめて頷いた。
「メルがそう決めたんだったら、僕に止める権利は無いね。...昨日の夜、1人で考えてたんでしょ?必死に考えた結果だったら仕方ないよ。」
「ありがとう...。2人とも、頑張ってね。」
「メルクも、頑張って!!」
リーリャはメルクと固い握手をした。ノイトは町のすぐ隣の山を見つめながら何かを考えていたようだが、メルクがぎゅっと黒いローブを握りしめながら歩み寄ってきてメルクの方を見る。
「ノイトくん、今までありがとね...!気をつけて。」
ノイトはメルクを真っ直ぐと見て答えた。
「もちろん。一度別れた仲間が、後でもっと強くなって再登場するのはあるあるだからね。期待してるよ?」
「うん!!」
ノイトとリーリャはメルクに手を振ってノービリアを後にする。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
「ねぇ、ノイト...。また会えるんだよね?」
「もちろん、とは断言できないけど...メルならきっと大丈夫だよ。あの子は、強いから。」
リーリャは微笑みながらノイトの隣に並んで歩いた。ノイトとの、2人きりでの旅が再び始まった。この後に何があるのかを知らない2人は、空を見上げながら笑って道の上を進んでいく。