世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
リーリャの演奏が始まる。しばらく使われていなかった音楽堂が久々に利用されるとのことで古い音楽堂の周りには人だかりが出来ているが、騎士たちが警備をしているため、外にいる住人たちは中から聞こえてくるオルガンの音しか聞くことが出来ない。
中ではパイプオルガンをリーリャが演奏していて、王族やごく一部の中央貴族とノイトたちがそれを聞いている。パイプオルガンのパイプが白い魔力の五線譜が伸びてきていた。ノイトは今までとは違うリーリャの魔法の様子に目を丸くした。
(今までとは色が違う...!!なんでだろう...『失われた古城』と『幸福のチャペル』では同じ色だったのに...?)
ノイトの隣のルミナスはリーリャの魔法に見とれている。離れた席で演奏を聞いている王族や中央貴族たちもリーリャの演奏を聞いて言葉が出せないようだった。
そしてもう1人、リーリャの演奏に見とれている人物が居た。ルミナスとは反対側に座っているメルクである。リーリャをただ一点に見つめて目を見開いている。
([斜体]え...あれ...?どこかで...聞いたことある...。いつ...どこで?違う。リーリャと出会ったのはつい数日前なのに...懐かしくて、暖かい...。[/斜体])
メルクは必死に自分の記憶を辿っていく。組織での出来事やコロフェリスに住むようになるよりももっと前。メルクはどんどん過去を遡って考える。
([斜体]...違う。もっと前。それも違う。違う。いつ...?いつなの?[/斜体])
ノイトはメルクの様子がおかしいことに気が付いてメルクの方を見た。
「メル...?どうかしたの?」
([斜体]...違う。あれ、これより前って...前世。......!![/斜体])
あることを思い出したメルクは、思わず声を漏らしてしまう。
「[斜体][小文字]...思い出した!!樟本さん...。まさか、[漢字]そう[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]なの...?[/小文字][/斜体]」
ノイトはメルクが呟いた人の名前がメルクの前世に関係する人だとすぐに分かった。ノイトはメルク本人が今までに見たことないほど集中していることを察して黙っておく。しかし、脳内でノイトは考えた。
(樟本...誰かの苗字だろうな...。メルの前世で大切な人だったのか...?でも大切な人だったら忘れているのはちょっと酷いな...本当に大切な人だったのか?...メルは前世での記憶を結構覚えていると思うけど、...かなり昔のことなのかな?)
先程まで静かにリーリャの演奏を聞いていたルミナスはノイトに声をかけた。
[明朝体][太字]「[小文字]お兄ちゃん...。どうかしましたか?リーリャ様の演奏はまだ途中ですよ?[/小文字]」[/太字][/明朝体]
ノイトはルミナスに声をかけられて我に返る。そしてノイトのことを心配そうな表情で見上げているルミナスを見て答えた。
「いや、何でもないよ。そうだったね、リーリャの演奏を聞かないと。」
ノイトは曲を演奏しているリーリャを見て再び考える。
(リーリャもこれで何か思い出せるかな...。記憶が全部戻ってくれれば良いんだけど、...ここで演奏しても戻らなかったらヴェルグランド大陸にも旅に行くことになるかもね。一応準備はしておこう。)
しばらくして、リーリャが最後の音を弾き終えた。最後の音が音楽堂に長い余韻を残す。それはとても長いものに感じられたが、決してしつこいものではなくしみじみとするものだった。曲を弾き終えたリーリャは席から立ち上がり深く礼をする。音楽堂内が拍手に包まれ、よく耳を澄ますと音楽堂の外からも拍手が聞こえる。恐らく音楽堂の外まで曲が聞こえていて、それを聞いた誰かが拍手をしてくれているのだろう。そこでリーリャは拍手を聞いてある記憶を思い出した。
[水平線]
[大文字]「第▓回全国ピアノコ▓▓ール、最優▓賞▓▓樟本 ▓▓さんで▓。」[/大文字]
――私が、▓▓良賞!!本当▓...!?や▓た!嬉し▓!!
[水平線]
――あれ...?これは[漢字]あの時[/漢字][ふりがな][大文字][太字]・・・[/太字][/大文字][/ふりがな]の...。
[水平線]
《あ▓まりはしゃぐ▓▓ないぞ〜?》
「▓▓夫だっ▓〜。...[斜体][大文字]あっ[/大文字][/斜体]」
[水平線]
――そうだ...。私は前世でコンクールの後に階段から落ちて...指と足を折っちゃったんだっけ。それで...ピアノが弾けなくなって...。
[水平線]
《お▓!▓▓轢か▓たぞ!▓うする!》
《と、取り敢▓▓見過ご▓ないか▓▓せるぞ!》
――ど▓したん▓▓う...痛い...。▓うでも、い▓▓...。
[水平線]
――あぁ...私が救急車で運ばれているときに誰かが轢かれちゃったんだった。雨の日の寄るだったからなぁ...あの[漢字]子[/漢字][ふりがな][太字][大文字]・[/大文字][/太字][/ふりがな]はどうなったんだろう...?
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ノイトは舞台の上でずっと突っ立ったままのリーリャに声をかけた。
「リーリャ、お疲れ様。...どうかしたの?何か思い出した?」
しばらくしてリーリャは声をかけられたことに気が付いて返事をした。
「あ、うん。ノイト。ちょっと前世のこ、[斜体][大文字][明朝体][太字]ンンッ[/太字][/明朝体][/大文字][/斜体]」
ノイトはリーリャの口を指でそっと押さえて塞いだ。近くにルミナスが居たからだ。前世のことを口走ってしまえばどうなるのか分からない。ルミナスはリーリャの演奏に感動してはしゃいでいる。
[明朝体][太字]「リーリャ様、演奏お疲れ様です!本当に素晴らしい演奏でした!!」[/太字][/明朝体]
「ルミナ、あんまりはしゃぐと危ないよ〜?」
[明朝体][太字]「大丈夫ですよ〜、私だってそんなにドジじゃな、...[太字][斜体][大文字]あっ!![/大文字][/斜体][/太字]」[/太字][/明朝体]
リーリャの目にはルミナスがかつての自分が重なって見えた。
([斜体]待って...!![太字]私みたいに、ならないで!![/太字][/斜体])
ルミナスの足が舞台を踏み外し、ルミナスの身体は観客席に落ちようとしている。
リーリャの演奏が始まる。しばらく使われていなかった音楽堂が久々に利用されるとのことで古い音楽堂の周りには人だかりが出来ているが、騎士たちが警備をしているため、外にいる住人たちは中から聞こえてくるオルガンの音しか聞くことが出来ない。
中ではパイプオルガンをリーリャが演奏していて、王族やごく一部の中央貴族とノイトたちがそれを聞いている。パイプオルガンのパイプが白い魔力の五線譜が伸びてきていた。ノイトは今までとは違うリーリャの魔法の様子に目を丸くした。
(今までとは色が違う...!!なんでだろう...『失われた古城』と『幸福のチャペル』では同じ色だったのに...?)
ノイトの隣のルミナスはリーリャの魔法に見とれている。離れた席で演奏を聞いている王族や中央貴族たちもリーリャの演奏を聞いて言葉が出せないようだった。
そしてもう1人、リーリャの演奏に見とれている人物が居た。ルミナスとは反対側に座っているメルクである。リーリャをただ一点に見つめて目を見開いている。
([斜体]え...あれ...?どこかで...聞いたことある...。いつ...どこで?違う。リーリャと出会ったのはつい数日前なのに...懐かしくて、暖かい...。[/斜体])
メルクは必死に自分の記憶を辿っていく。組織での出来事やコロフェリスに住むようになるよりももっと前。メルクはどんどん過去を遡って考える。
([斜体]...違う。もっと前。それも違う。違う。いつ...?いつなの?[/斜体])
ノイトはメルクの様子がおかしいことに気が付いてメルクの方を見た。
「メル...?どうかしたの?」
([斜体]...違う。あれ、これより前って...前世。......!![/斜体])
あることを思い出したメルクは、思わず声を漏らしてしまう。
「[斜体][小文字]...思い出した!!樟本さん...。まさか、[漢字]そう[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]なの...?[/小文字][/斜体]」
ノイトはメルクが呟いた人の名前がメルクの前世に関係する人だとすぐに分かった。ノイトはメルク本人が今までに見たことないほど集中していることを察して黙っておく。しかし、脳内でノイトは考えた。
(樟本...誰かの苗字だろうな...。メルの前世で大切な人だったのか...?でも大切な人だったら忘れているのはちょっと酷いな...本当に大切な人だったのか?...メルは前世での記憶を結構覚えていると思うけど、...かなり昔のことなのかな?)
先程まで静かにリーリャの演奏を聞いていたルミナスはノイトに声をかけた。
[明朝体][太字]「[小文字]お兄ちゃん...。どうかしましたか?リーリャ様の演奏はまだ途中ですよ?[/小文字]」[/太字][/明朝体]
ノイトはルミナスに声をかけられて我に返る。そしてノイトのことを心配そうな表情で見上げているルミナスを見て答えた。
「いや、何でもないよ。そうだったね、リーリャの演奏を聞かないと。」
ノイトは曲を演奏しているリーリャを見て再び考える。
(リーリャもこれで何か思い出せるかな...。記憶が全部戻ってくれれば良いんだけど、...ここで演奏しても戻らなかったらヴェルグランド大陸にも旅に行くことになるかもね。一応準備はしておこう。)
しばらくして、リーリャが最後の音を弾き終えた。最後の音が音楽堂に長い余韻を残す。それはとても長いものに感じられたが、決してしつこいものではなくしみじみとするものだった。曲を弾き終えたリーリャは席から立ち上がり深く礼をする。音楽堂内が拍手に包まれ、よく耳を澄ますと音楽堂の外からも拍手が聞こえる。恐らく音楽堂の外まで曲が聞こえていて、それを聞いた誰かが拍手をしてくれているのだろう。そこでリーリャは拍手を聞いてある記憶を思い出した。
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[大文字]「第▓回全国ピアノコ▓▓ール、最優▓賞▓▓樟本 ▓▓さんで▓。」[/大文字]
――私が、▓▓良賞!!本当▓...!?や▓た!嬉し▓!!
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――あれ...?これは[漢字]あの時[/漢字][ふりがな][大文字][太字]・・・[/太字][/大文字][/ふりがな]の...。
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《あ▓まりはしゃぐ▓▓ないぞ〜?》
「▓▓夫だっ▓〜。...[斜体][大文字]あっ[/大文字][/斜体]」
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――そうだ...。私は前世でコンクールの後に階段から落ちて...指と足を折っちゃったんだっけ。それで...ピアノが弾けなくなって...。
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《お▓!▓▓轢か▓たぞ!▓うする!》
《と、取り敢▓▓見過ご▓ないか▓▓せるぞ!》
――ど▓したん▓▓う...痛い...。▓うでも、い▓▓...。
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――あぁ...私が救急車で運ばれているときに誰かが轢かれちゃったんだった。雨の日の寄るだったからなぁ...あの[漢字]子[/漢字][ふりがな][太字][大文字]・[/大文字][/太字][/ふりがな]はどうなったんだろう...?
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ノイトは舞台の上でずっと突っ立ったままのリーリャに声をかけた。
「リーリャ、お疲れ様。...どうかしたの?何か思い出した?」
しばらくしてリーリャは声をかけられたことに気が付いて返事をした。
「あ、うん。ノイト。ちょっと前世のこ、[斜体][大文字][明朝体][太字]ンンッ[/太字][/明朝体][/大文字][/斜体]」
ノイトはリーリャの口を指でそっと押さえて塞いだ。近くにルミナスが居たからだ。前世のことを口走ってしまえばどうなるのか分からない。ルミナスはリーリャの演奏に感動してはしゃいでいる。
[明朝体][太字]「リーリャ様、演奏お疲れ様です!本当に素晴らしい演奏でした!!」[/太字][/明朝体]
「ルミナ、あんまりはしゃぐと危ないよ〜?」
[明朝体][太字]「大丈夫ですよ〜、私だってそんなにドジじゃな、...[太字][斜体][大文字]あっ!![/大文字][/斜体][/太字]」[/太字][/明朝体]
リーリャの目にはルミナスがかつての自分が重なって見えた。
([斜体]待って...!![太字]私みたいに、ならないで!![/太字][/斜体])
ルミナスの足が舞台を踏み外し、ルミナスの身体は観客席に落ちようとしている。