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本作は一部を除きフィクションです。
一部を除き、実在する人物、出来事、組織とは関係ありません。

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世界に溢れる夢

#45

45.演奏会

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

ノイトは王城の接客室に戻ってマジックバッグを見つけた。
(よし...大広間に戻ろう。レイクさんとドメリアスさんはどちらも間違っていないけど、間違っている。早く止めに入らないと。)
接客室を出て通路に出たときに、ノイトが聞いたのはピアノの音。ノイトはこの曲を知っている。「目覚めよと呼ぶ声あり」※と呼ばれる曲で、バッハの曲だった気がする。
「リーリャか...!」
ノイトは大広間へと駆け出した。壁も床も白い通路に敷かれた赤いカーペットの上を走り、やがて大広間に辿り着いた。

[中央寄せ][大文字]『超級魔法:[太字][漢字][明朝体]幻想奏楽[/明朝体][/漢字][ふりがな]パフォーマンス[/ふりがな][/太字]』[/大文字][/中央寄せ]

虹色の魔力を帯びた黒い五線譜が大広間の中に広がった。レイクとドメリアスの諍いを見物していた周囲の貴族たちや王族たちはリーリャが演奏する姿に目が奪われているようだ。
(リーリャ...僕の代わりにあの2人を止めようとして...!!)
レイクとドメリアスも互いに冷静であるため、リーリャの演奏の1音目で動きを止めていた。ドメリアスはその時にはもうカメリアがメルクに向かって攻撃を仕掛けることはないだろうと思って魔法での拘束を解いていたため、カメリアも身動きは自由に出来る。それでも動かなかったのはリーリャの演奏に見とれていたから。ノイトはリーリャの演奏を聞きながらゆっくりとルミナスの元へ歩み寄る。
「ルミナ、せっかくの歓迎会だったのにうちのメルがごめんね。せめてリーリャの演奏で相子にしてもらえないかな?」
ルミナスはノイトが戻ってきたことでやや不安そう表情から笑顔に戻った。
[明朝体][太字]「ノイト様...。いえ、こちらこそ良いものを聞かせていただきありがとうございます。それと、...どうか私に免じて、私の姉の無礼をお許ししていただけませんでしょうか?」[/太字][/明朝体]
「いや、僕は全然気にしてないから良いよ。王族を許すなんて権利は僕達にはないし。」
ルミナスはノイトの言葉を聞いて目を細める。
[明朝体][太字]「そうですか...ありがとうございます!」[/太字][/明朝体]
やがてリーリャの演奏が終わっていつの間にか[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]が具現化していたピアノは消え、そこにはリーリャだけが立っていた。
周りの貴族たちは是非屋敷でもリーリャの演奏を聞きたいとリーリャを勧誘しようとするが、すぐにカメリアがその前に立って道を塞ぐ。
[明朝体][大文字]「ダメよ。この子は私の[太字]友達[/太字]だもの。」[/大文字][/明朝体]
少しだけでもとまだ諦めようとしない貴族たちも居たが、レイクが立ち塞がる。
[大文字]「王族の意向に背くものは何人たりとも許されないぞ。」[/大文字]
レイクがノイトたちの方を見ると、ノイトの隣に立っているルミナスも頷く。王族専用の席の方も同様の反応だ。
[大文字]「決まりだな。ここにいる少女・リーリャは魔神戦でも我々を支えてくれた。演奏だけを目的にする貴族たちには勿体ないだろう。」[/大文字]
貴族たちはまだ不満そうだ。レイクはあくまでもノルティーク騎士団の総司令官であって、身分としては辺境貴族よりも低い。しかし、王族の面々に強い信頼を抱かれているため、特権として本来の立場以上の地位と与えられているのだ。
カメリアはノイトに話しかけた。
[明朝体]「ごめんなさい、ノイトくん。...いえ、ノイト様。私の先ほどの無礼はノイト様のお気に障りましたでしょうか?」[/明朝体]
「いえ、お気になさらず。カメリア様のような強くてお綺麗な方には笑っていて頂きたいので、先ほどのことは忘れてしまって構いませんよ。」
ノイトは微笑んでカメリアの不安を取り除いた。それを聞いたカメリアはこちらをじっと見ているルミナスを見て少しからかいたくなってくる。
[明朝体]「あぁ、そういえば。私、まだ婚約者が見つからなくて困っていますの。もし良ければ、その...ノイト様のような方が良いなと...」[/明朝体]
ルミナスは驚いてむっとした表情になったが、ノイトは笑顔を崩さずに即答する。
「謹んでお断りします。」
カメリアは笑いながら続けた。
「[明朝体]やはりダメですか...!!ノイト様のような優しくて賢く、面白い方と出会えて妹も喜んでいると思います。もし何か我々に出来ることがありましたら、是非私にお申し付けください。いつでもお力になります。」[/明朝体]
「そうですか...。では、そのときが来たらよろしくお願いします、カメリア様。」
カメリアはノイトに一礼してからリーリャに話しかけに行った。その一方で、メルクは近くのテーブルに置いてあった料理を再びつまんでいる。
ふたたび平和になった大広間での宴の中、ルミナスはノイトに話しかけた。
[明朝体][太字]「ノイト様...その、後で私の部屋に来ていただけませんでしょうか?」[/太字][/明朝体]
(女性...しかも王族の部屋に、今日初めて話したばかりの男を呼ぶか普通?)

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

ルミナスの部屋にルミナスとノイトがいる。ルミナスがこっそりとノイトを連れ込んだため、リーリャとメルクはまだ大広間にいる。
ルミナスは部屋の窓を開けてバルコニーへと出た。ノイトも後に続き、ルミナスに用件を聞く。
「それで、...どうかしたの?なんで僕をわざわざ部屋に?」
ルミナスは振り返ってノイトの質問に答える。月光が後ろから当たっていてルミナスの顔に暗がりが出来ていたが、その顔は少し赤くなっているように見えた。
[明朝体][太字]「実は、ノイト様にお願いがありまして...。私を一度城の外に連れ出していただけませんか?」[/太字][/明朝体]
ノイトは色々と考えが浮かんだ。
(う〜ん、ファンタジーものでは確かにお姫様を王城の外に連れ出すのが多いけど...どうも気が引けるな...。この前魔神の封印を解かれたのもただの偶然か人為的なものか分からない以上、迂闊に王族を連れ出すわけにも行かないんだよな...。)
ノイトはため息をついて背に腹は代えられないと思い、ルミナスに正直に答える。
「ごめんね。魔神がいつまた復活するか分からない以上、この国の外に連れ出すことは出来ない。」
ルミナスは少し残念そうな顔をしたが諦めた。
[明朝体][太字]「そうですか...それなら仕方がありませんね。...それなら、せめてもう一つだけ...。」[/太字][/明朝体]
ルミナスは背後から月光を浴びてノイトのことをじっと見つめて立っていた。

※カンタータ第140番『目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声』 BWV140
 /ヨハン・ゼバスティアン・バッハ


作者メッセージ

 作者の御鏡 梟(みかがみ きょう)です。
今回はリーリャの演奏が貴族たちに絶讃されることになりましたね。これによって本来は使用が制限されている『旧・王立音楽堂 パルモニカ』が特別に使用出来るようになりました。次回もお楽しみに!!
本作を読んでの感想の他、キャラクターや世界観についての感想も受付けています。
本作品を読んでいただき、ありがとうございました!!

2025/11/15 12:41

御鏡 梟 ID:≫ m9kR/WFBrng.A
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