世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
3人はノルティーク帝国に続く道の上を歩いている。
「リーリャ、もう落ち着いた?」
「うん、もう大丈夫。」
ノイトは普段と比べて異様にメルクが優しいことに薄々感付いているが、それもメルクの成長なのだろうと思って静かに噛み締める。そしてノイトは2人に話しかけた。
「リーリャ、メル、そう言えば昼から何も食べてなかったね。何か食べたい人〜」
「「はーい!!」」
元気そうな2人の様子はとても微笑ましい。ノイトはマジックバッグからマシュマロを取り出した。
「おぉ~マシュマロだぁ~!いっぱいある!!」
「今日はマシュマロパーティーだね!」
ノイトは道から少しそれて森の中へと進み、しばらく歩いたところで足を止める。
「よ〜し、マシュマロだけじゃ物足りないからね...メル、食材調達を頼めるかな?」
「もちろん、任せといて!!」
メルクはスティレットを取り出して森の奥へと駆け出していった。ノイトはマジックバッグからテントを取り出して設置する。そこで、隣でじっとノイトの様子を見ていたリーリャがニコニコしながらノイトに話しかけた。
「ノイト、私は何をすれば良い?」
「ん?どうしたの、スゴい笑顔じゃん。」
「いや〜、別に〜?何でもないよ〜だ!」
いつにも増して嬉しそうな顔をするリーリャを見てノイトは何か良いことでもあったのかと聞く。
「う〜ん、そうだね~。だって、こうやって2人きりになるの久しぶりじゃない?」
「あ〜、確かにそう言われてみれば久しぶりかも。」
リーリャは暗くなった森の中で星空を見上げて続けた。
「そうだよ。メルクと会うまではずっと2人で旅するのかな〜、って思ってたんだけど、メルクみたいに強くてかわいい人が仲間に加わっちゃったんだね。」
リーリャが無意識のうちにノイトがいる方から顔を反らしていて、顔を上げたノイトはリーリャの表情が上手く読み取れない。しかし、リーリャの声が震えていることからノイトはリーリャが何か大きな想いを抱えていることを察する。
「メルクは仲間として、すごく誇らしいし頼もしい人だよ。...でもね、何だかメルクにノイトのことを取られちゃいそうで怖いの...。ねぇ、ノイト。私って[漢字]友達[/漢字][ふりがな]トモダチ[/ふりがな]なの?」
リーリャが振り返ってノイトの目を見つめる。ノイトを見ると隣にメルクがいるときのことばかり思い出してしまい、目の前のノイトがぼやけてくる。
リーリャの問いを受けて、ノイトは少しの間だけ考える。そして覚悟を目に宿してリーリャの質問に答えた。
「リーリャが僕にとって大切な人であることに変わりはないし、別に僕はメルに取られたりなんかしないよ。それは保証する。それに...」
リーリャはぼやけたノイトをじっと見つめ続けている。ノイトはリーリャの目を真っすぐと見て言葉を続けた。
「[斜体]リーリャ、君は僕の1番大切な [太字][明朝体][漢字]友達[/漢字][ふりがな]パートナー[/ふりがな][/明朝体][/太字] だよ。[/斜体]」
リーリャはノイトの答えを聞いて頬と胸に温かく沁みる何かを感じる。未だにノイトがぼやけて見えるのは、ノイトを直視したらもう戻れないと思ってしまったからだった。
ノイトはリーリャの反応を見て一瞬驚いたが、すぐに微笑んで手に革の手袋の魔具を装備する。身体の中をじんわりと温める魔力を魔具へと流し込んで魔法を唱える。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][[漢字]記憶の指輪[/漢字][ふりがな]メモリー・ペークシス[/ふりがな]][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
ノイトがかざした魔具から魔力が放たれて、放たれた魔力が一つの[漢字]指輪[/漢字][ふりがな]リング[/ふりがな]になる。勿忘草色の結晶は内に蒼く静かな魔力を宿していた。細やかな模様が刻まれている銀白色のサイドストーンはノイトの繊細さを映し出しているようで、指輪に施されたセンターストーンが[漢字]爪[/漢字][ふりがな]プロング[/ふりがな]はなく[漢字]輪郭部分[/漢字][ふりがな]ガードル[/ふりがな]のみで止められているのはノイトの気遣いが連想される。
リーリャは指輪を受け取って自分の左手の中指にはめた。少し赤くなった頬を夜風がなで、リーリャはノイトの方を見る。
「[斜体]ありがとね[小文字]っ!![/小文字][/斜体]」
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
それからしばらくしてメルクが戻ってきた。どうやらこの森には食べられる生物があまり生息しておらず、しかも野生の動物だらけで流石に荒らす気が失せたらしい。
「ごめんね〜、食用になりそうな生物が全然居なくって...。」
「いや、大丈夫だよ。お疲れ様。今夜は僕が持ってたマシュマロで我慢して、明日ノルティーク帝国に着いたらそこで何か食べようか。」
「そうだね。早くマシュマロ焼こ!」
3人はテントの側に小さな焚き火を組んでマシュマロを焼き始めた。談笑の中でリーリャは“終焉の魔神”・マズロインとの戦いを思い出してメルクに聞かせる。
「以前ノイトが魔神と戦ったことがあったんだけど、その時にレイクさんっていう最強の剣士...みたいな人が来て、一緒に戦ってくれたんだよ。確かノルティーク帝国の騎士団の司令官をやってるってロズウェルさんが...、あぁロズウェルさんっていうのはね...」
(リーリャ、説明があんまり上手くないのかな...?でもまぁ、思い出したものはどんどん周りに伝えていってもらわないと困ることも多いか。この調子でリーリャの前世の記憶も戻ってくれると良いな...。)
しばらくして3人は眠りにつくことにした。焚き火の火を消してテントに入り、中でノイトを挟んで川の字に寝転がる。
「メル、そう言えばこの前別にブランケット要らなかっただろ。ローブがあったじゃん。」
「あぁ...その手があったか、...っていうか実際そうしたんだけどさぁ...。それでもローブとブランケットは別物でしょ?だからやっぱりブランケットの方が良かったよ。」
ノイトは何故自分が[漢字]真ん中の位置[/漢字][ふりがな][大文字]幼児と同じポジション[/大文字][/ふりがな]なのか疑問に思いつつも目を閉じた。リーリャとメルクはノイトが目を閉じた後もしばらく何かを話していたが、やがて話し声が止まる。変わりに小さな寝息が聞こえてきたため、ノイトもそれにつられて眠りに落ちていくのであった。
3人はノルティーク帝国に続く道の上を歩いている。
「リーリャ、もう落ち着いた?」
「うん、もう大丈夫。」
ノイトは普段と比べて異様にメルクが優しいことに薄々感付いているが、それもメルクの成長なのだろうと思って静かに噛み締める。そしてノイトは2人に話しかけた。
「リーリャ、メル、そう言えば昼から何も食べてなかったね。何か食べたい人〜」
「「はーい!!」」
元気そうな2人の様子はとても微笑ましい。ノイトはマジックバッグからマシュマロを取り出した。
「おぉ~マシュマロだぁ~!いっぱいある!!」
「今日はマシュマロパーティーだね!」
ノイトは道から少しそれて森の中へと進み、しばらく歩いたところで足を止める。
「よ〜し、マシュマロだけじゃ物足りないからね...メル、食材調達を頼めるかな?」
「もちろん、任せといて!!」
メルクはスティレットを取り出して森の奥へと駆け出していった。ノイトはマジックバッグからテントを取り出して設置する。そこで、隣でじっとノイトの様子を見ていたリーリャがニコニコしながらノイトに話しかけた。
「ノイト、私は何をすれば良い?」
「ん?どうしたの、スゴい笑顔じゃん。」
「いや〜、別に〜?何でもないよ〜だ!」
いつにも増して嬉しそうな顔をするリーリャを見てノイトは何か良いことでもあったのかと聞く。
「う〜ん、そうだね~。だって、こうやって2人きりになるの久しぶりじゃない?」
「あ〜、確かにそう言われてみれば久しぶりかも。」
リーリャは暗くなった森の中で星空を見上げて続けた。
「そうだよ。メルクと会うまではずっと2人で旅するのかな〜、って思ってたんだけど、メルクみたいに強くてかわいい人が仲間に加わっちゃったんだね。」
リーリャが無意識のうちにノイトがいる方から顔を反らしていて、顔を上げたノイトはリーリャの表情が上手く読み取れない。しかし、リーリャの声が震えていることからノイトはリーリャが何か大きな想いを抱えていることを察する。
「メルクは仲間として、すごく誇らしいし頼もしい人だよ。...でもね、何だかメルクにノイトのことを取られちゃいそうで怖いの...。ねぇ、ノイト。私って[漢字]友達[/漢字][ふりがな]トモダチ[/ふりがな]なの?」
リーリャが振り返ってノイトの目を見つめる。ノイトを見ると隣にメルクがいるときのことばかり思い出してしまい、目の前のノイトがぼやけてくる。
リーリャの問いを受けて、ノイトは少しの間だけ考える。そして覚悟を目に宿してリーリャの質問に答えた。
「リーリャが僕にとって大切な人であることに変わりはないし、別に僕はメルに取られたりなんかしないよ。それは保証する。それに...」
リーリャはぼやけたノイトをじっと見つめ続けている。ノイトはリーリャの目を真っすぐと見て言葉を続けた。
「[斜体]リーリャ、君は僕の1番大切な [太字][明朝体][漢字]友達[/漢字][ふりがな]パートナー[/ふりがな][/明朝体][/太字] だよ。[/斜体]」
リーリャはノイトの答えを聞いて頬と胸に温かく沁みる何かを感じる。未だにノイトがぼやけて見えるのは、ノイトを直視したらもう戻れないと思ってしまったからだった。
ノイトはリーリャの反応を見て一瞬驚いたが、すぐに微笑んで手に革の手袋の魔具を装備する。身体の中をじんわりと温める魔力を魔具へと流し込んで魔法を唱える。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][[漢字]記憶の指輪[/漢字][ふりがな]メモリー・ペークシス[/ふりがな]][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
ノイトがかざした魔具から魔力が放たれて、放たれた魔力が一つの[漢字]指輪[/漢字][ふりがな]リング[/ふりがな]になる。勿忘草色の結晶は内に蒼く静かな魔力を宿していた。細やかな模様が刻まれている銀白色のサイドストーンはノイトの繊細さを映し出しているようで、指輪に施されたセンターストーンが[漢字]爪[/漢字][ふりがな]プロング[/ふりがな]はなく[漢字]輪郭部分[/漢字][ふりがな]ガードル[/ふりがな]のみで止められているのはノイトの気遣いが連想される。
リーリャは指輪を受け取って自分の左手の中指にはめた。少し赤くなった頬を夜風がなで、リーリャはノイトの方を見る。
「[斜体]ありがとね[小文字]っ!![/小文字][/斜体]」
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
それからしばらくしてメルクが戻ってきた。どうやらこの森には食べられる生物があまり生息しておらず、しかも野生の動物だらけで流石に荒らす気が失せたらしい。
「ごめんね〜、食用になりそうな生物が全然居なくって...。」
「いや、大丈夫だよ。お疲れ様。今夜は僕が持ってたマシュマロで我慢して、明日ノルティーク帝国に着いたらそこで何か食べようか。」
「そうだね。早くマシュマロ焼こ!」
3人はテントの側に小さな焚き火を組んでマシュマロを焼き始めた。談笑の中でリーリャは“終焉の魔神”・マズロインとの戦いを思い出してメルクに聞かせる。
「以前ノイトが魔神と戦ったことがあったんだけど、その時にレイクさんっていう最強の剣士...みたいな人が来て、一緒に戦ってくれたんだよ。確かノルティーク帝国の騎士団の司令官をやってるってロズウェルさんが...、あぁロズウェルさんっていうのはね...」
(リーリャ、説明があんまり上手くないのかな...?でもまぁ、思い出したものはどんどん周りに伝えていってもらわないと困ることも多いか。この調子でリーリャの前世の記憶も戻ってくれると良いな...。)
しばらくして3人は眠りにつくことにした。焚き火の火を消してテントに入り、中でノイトを挟んで川の字に寝転がる。
「メル、そう言えばこの前別にブランケット要らなかっただろ。ローブがあったじゃん。」
「あぁ...その手があったか、...っていうか実際そうしたんだけどさぁ...。それでもローブとブランケットは別物でしょ?だからやっぱりブランケットの方が良かったよ。」
ノイトは何故自分が[漢字]真ん中の位置[/漢字][ふりがな][大文字]幼児と同じポジション[/大文字][/ふりがな]なのか疑問に思いつつも目を閉じた。リーリャとメルクはノイトが目を閉じた後もしばらく何かを話していたが、やがて話し声が止まる。変わりに小さな寝息が聞こえてきたため、ノイトもそれにつられて眠りに落ちていくのであった。