世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
崩壊した水中都市を後にし、ノイトたちは陸上へと戻った。
「さてと...すぐに切り替えて、とは言わないけども...あまり長い時間引きずりすぎるのも良くないよ。それに、僕たちが逃げられた人たちの分が悲しむ分まで取っていっちゃったら、それこそ助けられなかった人たちが可哀想だしね。」
ノイトの言葉を聞いてリーリャはせめて助けられなかった人たちのためにもと言い、ある提案をする。
「助けられなかった人たちにも、私のピアノは届くかな...?」
ノイトは優しく微笑んで答える。
「もちろん、きっと届くよ。リーリャの想いを届けてあげると良い。」
リーリャが首にかけたままだった[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]が再びピアノをその魔力で具現化させる。今回はただピアノを具現化するだけではなく、演奏台まで具現化している。恐らく湖畔であるがために足場を安定させるためだろうが、今のノイトたちにとっては何か他に特別な意味があるかのように感じられた。
リーリャはゆっくりと台に上がってピアノ椅子に腰をかける。鍵盤に指を乗せてから、深く静かに息を吸ってしばらくの間の沈黙が訪れる。そして、リーリャがゆっくりと息を吐き、追悼の「ゴンドラの船頭歌」※を演奏し始めた。
演奏の中でノイトとメルクは目を瞑って黙祷をし、リーリャも演奏をしながら助けてあげられなかった人たちのことを想う。
(ごめんなさい...助けてあげられなくて...。せめて...、せめて私たちの想いで少しでも楽になれますように...。)
[水平線]
[中央寄せ]『超級魔法:[明朝体][大文字][斜体][太字][漢字]幻想奏楽[/漢字][ふりがな]パフォーマンス[/ふりがな][漢字]・[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな][漢字]哀悼[/漢字][ふりがな]コンドレンセズ[/ふりがな][/太字][/斜体][/大文字][/明朝体]』[/中央寄せ]
[水平線]
透明は五線譜が哀悼の色に澄み、湖底に沈んだ街に響き渡る。太陽の光を浴びて煌めいた水面の先から聞こえてくる澄んだピアノの音は崩壊した街に想いを届け、街は静かに眠りにつくのだった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
演奏が終わる。しかし、それは想いの終わりではなく、残った者たちの背中を押す希望の始まりであった。
「リーリャ、...行こうか。」
目を開けてノイトが声をかけてから数秒の静寂が2人を包み、しばらくしてからリーリャが顔を上げて答える。その目には決意と希望と、僅かな後悔が宿っていた。
「...うん、行こう。ノイト。」
メルクも静かに頷いて沈んだ街を後にする。3人はまた旅を続けるために前を向いた。ノイトはマジックバッグの肩紐を、リーリャは[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]を、メルクはローブの[漢字]上襟[/漢字][ふりがな]ショールカラー[/ふりがな]を握りしめて足を踏み出す。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
3人は湖から離れてノルティーク帝国へと続く道を歩いていた。
「ねぇ、ノイト。...ノルティーク帝国ってどんな場所なのかな?」
「ノルティーク帝国は、まぁ...王様が居て、国民が居て、騎士団が居て...至って普通の王国だよ。権力者が少し厄介だという話はよく聞くけど、まぁ別に悪人じゃないらしいし、きっと何かあっても大丈夫だよ。心配しないでね。」
リーリャはまだ水中都市での出来事を忘れきれないまま、ノイトの言葉を聞き止める。
(ノイトは優しいんだよ...。さっきは少し冷たいことも言っちゃってたけど、ノイトは何も間違ったことは言っていないし...ちゃんと忘れずにいる。ノイトは...、本当に...。)
リーリャはいつの間にか瞼を濡らしていた涙で滲んだ視界の中でノイトをじっと見つめる。そんなリーリャの様子を見てノイトは慌てて心配した。
「ん?リーリャ、どうしたの?!そんな泣きそうな顔しちゃって...。」
気づいたら立ち止まってしまっていたリーリャの頭をそっと撫でながらノイトはリーリャを慰める。
「大丈夫、大丈夫だから泣かないで...。もちろん泣きたいときは思いっきり泣いちゃっても良いけど、今はそうじゃないんでしょ?」
リーリャはノイトが着ているカーキ色のボタン付きのシャツの襟元をそっと掴んで泣くのをこらえようとする。そんなリーリャの様子を見たメルクもリーリャを落ち着かせようとした。
「偉いんだね、リーリャは。私よりも若いのに、色々なこと溜め込んじゃって...ツライときは頼ってくれて良いんだよ?」
(メル...逆に泣かせに来ていないかそれは...?でもまぁ、これもメルなりの優しさなんだろう...。)
リーリャは目に残った涙を拭う。
「ありがとう...もう大丈夫。[斜体][小文字]だけど...ノイトが優しすぎるせいだよ、もう![/小文字][/斜体]」
リーリャは小声でそう呟いたが、ノイトは聞こえないふりをして道の先の方へと目線を向ける。リーリャはノイトの態度にまたノイトの優しさを感じるのだった。ノイトが見据える先には、いつの間にか沈もうとしていた夕日が空を茜色に染めている。
※「ゴンドラの船頭歌」/ヨハン・フリードリヒ・フランツ・ブルクミュラー。
崩壊した水中都市を後にし、ノイトたちは陸上へと戻った。
「さてと...すぐに切り替えて、とは言わないけども...あまり長い時間引きずりすぎるのも良くないよ。それに、僕たちが逃げられた人たちの分が悲しむ分まで取っていっちゃったら、それこそ助けられなかった人たちが可哀想だしね。」
ノイトの言葉を聞いてリーリャはせめて助けられなかった人たちのためにもと言い、ある提案をする。
「助けられなかった人たちにも、私のピアノは届くかな...?」
ノイトは優しく微笑んで答える。
「もちろん、きっと届くよ。リーリャの想いを届けてあげると良い。」
リーリャが首にかけたままだった[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]が再びピアノをその魔力で具現化させる。今回はただピアノを具現化するだけではなく、演奏台まで具現化している。恐らく湖畔であるがために足場を安定させるためだろうが、今のノイトたちにとっては何か他に特別な意味があるかのように感じられた。
リーリャはゆっくりと台に上がってピアノ椅子に腰をかける。鍵盤に指を乗せてから、深く静かに息を吸ってしばらくの間の沈黙が訪れる。そして、リーリャがゆっくりと息を吐き、追悼の「ゴンドラの船頭歌」※を演奏し始めた。
演奏の中でノイトとメルクは目を瞑って黙祷をし、リーリャも演奏をしながら助けてあげられなかった人たちのことを想う。
(ごめんなさい...助けてあげられなくて...。せめて...、せめて私たちの想いで少しでも楽になれますように...。)
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[中央寄せ]『超級魔法:[明朝体][大文字][斜体][太字][漢字]幻想奏楽[/漢字][ふりがな]パフォーマンス[/ふりがな][漢字]・[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな][漢字]哀悼[/漢字][ふりがな]コンドレンセズ[/ふりがな][/太字][/斜体][/大文字][/明朝体]』[/中央寄せ]
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透明は五線譜が哀悼の色に澄み、湖底に沈んだ街に響き渡る。太陽の光を浴びて煌めいた水面の先から聞こえてくる澄んだピアノの音は崩壊した街に想いを届け、街は静かに眠りにつくのだった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
演奏が終わる。しかし、それは想いの終わりではなく、残った者たちの背中を押す希望の始まりであった。
「リーリャ、...行こうか。」
目を開けてノイトが声をかけてから数秒の静寂が2人を包み、しばらくしてからリーリャが顔を上げて答える。その目には決意と希望と、僅かな後悔が宿っていた。
「...うん、行こう。ノイト。」
メルクも静かに頷いて沈んだ街を後にする。3人はまた旅を続けるために前を向いた。ノイトはマジックバッグの肩紐を、リーリャは[漢字]幻想の首飾り[/漢字][ふりがな]ファンタジア・ペンダント[/ふりがな]を、メルクはローブの[漢字]上襟[/漢字][ふりがな]ショールカラー[/ふりがな]を握りしめて足を踏み出す。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
3人は湖から離れてノルティーク帝国へと続く道を歩いていた。
「ねぇ、ノイト。...ノルティーク帝国ってどんな場所なのかな?」
「ノルティーク帝国は、まぁ...王様が居て、国民が居て、騎士団が居て...至って普通の王国だよ。権力者が少し厄介だという話はよく聞くけど、まぁ別に悪人じゃないらしいし、きっと何かあっても大丈夫だよ。心配しないでね。」
リーリャはまだ水中都市での出来事を忘れきれないまま、ノイトの言葉を聞き止める。
(ノイトは優しいんだよ...。さっきは少し冷たいことも言っちゃってたけど、ノイトは何も間違ったことは言っていないし...ちゃんと忘れずにいる。ノイトは...、本当に...。)
リーリャはいつの間にか瞼を濡らしていた涙で滲んだ視界の中でノイトをじっと見つめる。そんなリーリャの様子を見てノイトは慌てて心配した。
「ん?リーリャ、どうしたの?!そんな泣きそうな顔しちゃって...。」
気づいたら立ち止まってしまっていたリーリャの頭をそっと撫でながらノイトはリーリャを慰める。
「大丈夫、大丈夫だから泣かないで...。もちろん泣きたいときは思いっきり泣いちゃっても良いけど、今はそうじゃないんでしょ?」
リーリャはノイトが着ているカーキ色のボタン付きのシャツの襟元をそっと掴んで泣くのをこらえようとする。そんなリーリャの様子を見たメルクもリーリャを落ち着かせようとした。
「偉いんだね、リーリャは。私よりも若いのに、色々なこと溜め込んじゃって...ツライときは頼ってくれて良いんだよ?」
(メル...逆に泣かせに来ていないかそれは...?でもまぁ、これもメルなりの優しさなんだろう...。)
リーリャは目に残った涙を拭う。
「ありがとう...もう大丈夫。[斜体][小文字]だけど...ノイトが優しすぎるせいだよ、もう![/小文字][/斜体]」
リーリャは小声でそう呟いたが、ノイトは聞こえないふりをして道の先の方へと目線を向ける。リーリャはノイトの態度にまたノイトの優しさを感じるのだった。ノイトが見据える先には、いつの間にか沈もうとしていた夕日が空を茜色に染めている。
※「ゴンドラの船頭歌」/ヨハン・フリードリヒ・フランツ・ブルクミュラー。