世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
夜の砂漠に1台の馬車と巨大な蛇の魔物がいる。白橡色の鱗を持つ蛇が大きな口を開けながら馬車に向かって突っ込んでいるが、それを止めるべく黒いローブに身を包んだ少女がスティレットを手に立っている。そして、頭だけでも馬車の3倍はあろう巨大な蛇の魔物へと跳びかかっていった。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][斜体]『[漢字]灼愛威閼召[/漢字][ふりがな]ヤマナイアメ[/ふりがな]』[/斜体][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
次の瞬間、月光を反射してキラキラと輝く無数の鱗が空に舞う。蛇の魔物は断末魔をあげることすら出来ずに力なく倒れ込んだ。『魔獣』と呼ばれない時点で魔物の中でもそこまで強くないことは分かっていたが、流石に馬車の倍以上に大きい巨体に丸呑みされたら助かる確率は低いだろう。しかし、そんな蛇が倒れた横で降る白い鱗の雨の中に立っているのはメルク。つい先程までのおふざけムーブとは一転して、本気の殺意を感じる。そんなメルクの様子をノイトはじっと見つめていた。
(うわ...メルクの殺意が半端ないな...。もし僕がさっき殺意を持たれている状態でメルに襲われてたら確実に死んでたよ...。)
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体]「ふぅ——っ」[/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
鋭く長い息を吐いたあと、メルクは元のメルクに戻る。
「ノイトくん、ちゃんと見てた?私頑張ったよ!褒めて〜!」
「うん...ちゃんと見てたよ。すごかった。」
メルクは頬を膨らませてノイトの顔を上目遣いで覗いた。なかなかにあざとい。
「え〜、それだけ?もっと褒めてよ〜!」
(上目遣いか...狙ってるな〜。...!?僕は一体何を考えているんだ...、まったくメルと一緒にいるとどうも調子が狂う...。)
ノイトはため息をつく。ノイトの心中など知らないメルクはため息をつかれたことに対してむっとした。
「ねぇノイトくん、なんでため息つくの?そんなに私のこと褒めるのが面倒なの?どうなの?」
「(うわ...ヘラッてるめんどくさ。)いや、ちょっと考え事してて。自分の考えに呆れただけだよ。」
それを聞いたメルクは機嫌を直して馬車に戻る。リーリャは荷台の上でずっとメルクの戦い方を見ていたが、ノイトの反応が薄いことからあまり大したものではないのかもしれないと考えていた。
「ねぇノイト。メルクの技についてどう思う?」
リーリャから聞かれるのが意外だったのか、ノイトは一瞬ぽかんとした表情を浮かべる。しかし、笑顔を作ってリーリャの質問に答えた。
「本当にすごいと思うよ。速度も全然あの魔神よりも速いし、今日見た技だけなら表面的な攻撃力は高い。他の技も機会があれば見せて欲しいと思ってる。」
ノイトの言葉を聞いたメルクは嬉しそうな笑みを浮かべたが、特に はしゃぐことようなはことしなかった。馬車の荷台の方を向いていたメルクがどんな表情をしていたのかはノイトには見ることが出来ない。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[水平線]
「樟▓さん、今日は▓アノ弾かな▓▓?」
――ご▓んね。▓う私、ピア▓は▓け▓▓▓。
▓段か▓▓ち▓、指▓▓▓しち▓っても▓治ら▓いの。
[水平線]
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
馬車の荷台の上でリーリャは目を覚ました。
「んん...朝?」
光が射し込む方を見ると、ノイトの背中が見える。
「ノイト、おはよう。」
ノイトはリーリャの声に気が付いて振り返り、挨拶をした。
「おはよう、リーリャ。もうすぐ着くよ。」
リーリャが起き上がると、肩から破れていないブランケットがするすると落ちるのを感じる。ノイトが指を指す方を見ると、巨大な湖があった。確か水中都市・ウォルティードに向かっていたはずだ。つまり、この湖の中にウォルティードがあるということだろうか。
「ノイトくん、おはよう。あ、リーリャも。」
黒いローブを着た少女がノイトとリーリャに挨拶をした。確か、昨日ノイトに向かってスティレットで攻撃を仕掛けてきた...メルクだ。念の為挨拶を返しておこう。
「おはよう、メルク。」
ノイトもリーリャと同じように挨拶を返す。
「おはよう、メル。」
メル...。メルクがノイトにだけ許した呼び名、即ち愛称。ずるい。数日間で芽生えたノイトとの友情が約1日でこの女に塗り替えられてしまいそうだった。
「ねぇ、ノイト。私のこと、どう思ってるの?」
え...?今、私なんて言った...?
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
リーリャに謎の質問をされたノイトが再び振り向くと、リーリャは顔を赤くして俯いていた。
「えっと...今更どうしたの?大切な友達だと思ってるし、僕はリーリャのこと好きだよ。」
メルクはそれを聞いてニヤける。
「あれ〜?ちょっと、伏線回収早くない?やっぱり主人公と結ばれるのは一緒に冒け」
[大文字]「黙って。」[/大文字]
メルクはノイトのあまりにも無機質で冷たい声に思わず目を剥いて黙る。そこでリーリャが本気で困っていることにようやく気が付いた。一方で、ノイトの声を聞いたリーリャは思わず顔を上げた。今までノイトと一緒に旅をしていたが、ノイトのこんな声は初めて聞く。
「ノイト...?」
夜の砂漠に1台の馬車と巨大な蛇の魔物がいる。白橡色の鱗を持つ蛇が大きな口を開けながら馬車に向かって突っ込んでいるが、それを止めるべく黒いローブに身を包んだ少女がスティレットを手に立っている。そして、頭だけでも馬車の3倍はあろう巨大な蛇の魔物へと跳びかかっていった。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][斜体]『[漢字]灼愛威閼召[/漢字][ふりがな]ヤマナイアメ[/ふりがな]』[/斜体][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
次の瞬間、月光を反射してキラキラと輝く無数の鱗が空に舞う。蛇の魔物は断末魔をあげることすら出来ずに力なく倒れ込んだ。『魔獣』と呼ばれない時点で魔物の中でもそこまで強くないことは分かっていたが、流石に馬車の倍以上に大きい巨体に丸呑みされたら助かる確率は低いだろう。しかし、そんな蛇が倒れた横で降る白い鱗の雨の中に立っているのはメルク。つい先程までのおふざけムーブとは一転して、本気の殺意を感じる。そんなメルクの様子をノイトはじっと見つめていた。
(うわ...メルクの殺意が半端ないな...。もし僕がさっき殺意を持たれている状態でメルに襲われてたら確実に死んでたよ...。)
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体]「ふぅ——っ」[/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
鋭く長い息を吐いたあと、メルクは元のメルクに戻る。
「ノイトくん、ちゃんと見てた?私頑張ったよ!褒めて〜!」
「うん...ちゃんと見てたよ。すごかった。」
メルクは頬を膨らませてノイトの顔を上目遣いで覗いた。なかなかにあざとい。
「え〜、それだけ?もっと褒めてよ〜!」
(上目遣いか...狙ってるな〜。...!?僕は一体何を考えているんだ...、まったくメルと一緒にいるとどうも調子が狂う...。)
ノイトはため息をつく。ノイトの心中など知らないメルクはため息をつかれたことに対してむっとした。
「ねぇノイトくん、なんでため息つくの?そんなに私のこと褒めるのが面倒なの?どうなの?」
「(うわ...ヘラッてるめんどくさ。)いや、ちょっと考え事してて。自分の考えに呆れただけだよ。」
それを聞いたメルクは機嫌を直して馬車に戻る。リーリャは荷台の上でずっとメルクの戦い方を見ていたが、ノイトの反応が薄いことからあまり大したものではないのかもしれないと考えていた。
「ねぇノイト。メルクの技についてどう思う?」
リーリャから聞かれるのが意外だったのか、ノイトは一瞬ぽかんとした表情を浮かべる。しかし、笑顔を作ってリーリャの質問に答えた。
「本当にすごいと思うよ。速度も全然あの魔神よりも速いし、今日見た技だけなら表面的な攻撃力は高い。他の技も機会があれば見せて欲しいと思ってる。」
ノイトの言葉を聞いたメルクは嬉しそうな笑みを浮かべたが、特に はしゃぐことようなはことしなかった。馬車の荷台の方を向いていたメルクがどんな表情をしていたのかはノイトには見ることが出来ない。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
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「樟▓さん、今日は▓アノ弾かな▓▓?」
――ご▓んね。▓う私、ピア▓は▓け▓▓▓。
▓段か▓▓ち▓、指▓▓▓しち▓っても▓治ら▓いの。
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馬車の荷台の上でリーリャは目を覚ました。
「んん...朝?」
光が射し込む方を見ると、ノイトの背中が見える。
「ノイト、おはよう。」
ノイトはリーリャの声に気が付いて振り返り、挨拶をした。
「おはよう、リーリャ。もうすぐ着くよ。」
リーリャが起き上がると、肩から破れていないブランケットがするすると落ちるのを感じる。ノイトが指を指す方を見ると、巨大な湖があった。確か水中都市・ウォルティードに向かっていたはずだ。つまり、この湖の中にウォルティードがあるということだろうか。
「ノイトくん、おはよう。あ、リーリャも。」
黒いローブを着た少女がノイトとリーリャに挨拶をした。確か、昨日ノイトに向かってスティレットで攻撃を仕掛けてきた...メルクだ。念の為挨拶を返しておこう。
「おはよう、メルク。」
ノイトもリーリャと同じように挨拶を返す。
「おはよう、メル。」
メル...。メルクがノイトにだけ許した呼び名、即ち愛称。ずるい。数日間で芽生えたノイトとの友情が約1日でこの女に塗り替えられてしまいそうだった。
「ねぇ、ノイト。私のこと、どう思ってるの?」
え...?今、私なんて言った...?
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
リーリャに謎の質問をされたノイトが再び振り向くと、リーリャは顔を赤くして俯いていた。
「えっと...今更どうしたの?大切な友達だと思ってるし、僕はリーリャのこと好きだよ。」
メルクはそれを聞いてニヤける。
「あれ〜?ちょっと、伏線回収早くない?やっぱり主人公と結ばれるのは一緒に冒け」
[大文字]「黙って。」[/大文字]
メルクはノイトのあまりにも無機質で冷たい声に思わず目を剥いて黙る。そこでリーリャが本気で困っていることにようやく気が付いた。一方で、ノイトの声を聞いたリーリャは思わず顔を上げた。今までノイトと一緒に旅をしていたが、ノイトのこんな声は初めて聞く。
「ノイト...?」