糖花のような恋に落つ
「今日も暇だなー。店番の時間はほぼ勉強の時間」
店の外から差し込む、ぎらついたまばゆい太陽。それを照明代わりにして、オレは今日も、のどかな駄菓子屋の中で勉強する。
駄菓子屋といえば、子供がよく来るイメージだが、今の時代、子供はあまり来ない。有り余ったここのお菓子たちを、誰かに早く食べて欲しいのだが。いや、食べてくれなきゃ廃棄処分になるので、食べてくださいと言うべきなのか。
「ふぁ……退屈だなあ」
思わずあくびしてしまう程の、やわらかくゆるやかな時間。今オレは、駄菓子屋の店番をしている。
しかし、そんな時間を変えにきたと言わんばかりにやって来る若者たちの足音は、よく店に響き渡っていた。
「お?誰か来る……」
びっくりしつつも、少し店の外に顔を出してみると、そこに居たのは、懐かしい制服を着た男子高校生達だった。
「やべっ、あいつら風鈴か!準備しねえと……」
咄嗟に勉強道具を片付けて、着崩していた服を整える。そしたら準備は万全。あいつらを迎え入れる準備も整った。
「おーい!買ってけよ!」
駄菓子屋から出て、全員に向かってそう言うと、高校生たちはは顔を輝かせていた。
「ここが、梅宮さんの言っていた駄菓子屋ですか!」
「そうそう、ここの自家製せんべいが美味いんだよー!」
よくよくメンツを見ると、一人二人知ってる奴がいた、名前はあんまり知らないが、確か柊とか梅宮とか、そんな感じだったか。
「お、確か……梅宮と柊じゃねーか。お前らがそいつら呼んだの?」
「そうですよ、樫木さん!俺が呼びました!」
白髪の方が答える。こっちが梅宮だったっけか。
「そうか。ま、みんな買ってけよ。菓子が余ると怒られちまうんだ」
見たところ、梅宮が連れてきたのは、風鈴の一年か。制服姿に初々しさがあるような、そんな気がした。
ぞろぞろと駄菓子屋に入ってくる風鈴生たち。喧嘩ばかりですぐ腹が空いているのか、それとも駄菓子屋という場所が物珍しいのか、全員が普通の人より多めに商品を取っていく。オレはそれをただ眺めていた。平和だ。
「……そこのさー、白黒の髪の君。変わった髪と目の色だね」
ふと思った事をそのまま言う。一年っぽい風鈴生の中に、一人だけ、見たことがない髪と目の色をしている奴を見つけたから。でも、この言葉と思いに悪意はなくて、むしろ、少し彼が綺麗だと感じていた。
しかし真逆の意味として受け取ってしまったのか、彼はオレを睨み付ける。
「ああ?んだよ」
これは警戒されてる。そう思うのは容易だった。
「やだな、睨むんじゃねえよ。悪意はねえんだし」
そう言ってはみたものの、周りから見れば、悪意があると見られてもおかしくない表情と口調だった。表情はにたにた笑い。口調は強め。これじゃあオレは差別主義者だ。
「は?ざっけんじゃねぇ」
彼は拳を握った。
「待て待て!手え出そうとすんな!オレはさ、お前のソレ綺麗だなって思ったんだよ。だからお前、すぐ暴力振るおうとすんなよ」
必死に制止して話をすると、彼の顔はみるみる内に赤くなっていった。
「なっ……はあ!これ、が、綺麗って…………、は、はあ!」
もしかしてこいつは、褒められたりする事に慣れていないのか。そう思うと、感じた事のない感情__知らない感情が、心を満たそうとした。
「はっ!照れてんのかよ?……お前さ、名前なに?ずっとお前呼びは味気ねえし、名前教えろ」
「ああ?…………桜遥」
「意外と可愛い名前だな」
「るっせぇ!」
また手を出そうとする遥を止めて言う。
「すぐ手出そうとすんのやめろよ……。ま、遥呼びでいいよな?よろしくな、遥!」
店の外から差し込む、ぎらついたまばゆい太陽。それを照明代わりにして、オレは今日も、のどかな駄菓子屋の中で勉強する。
駄菓子屋といえば、子供がよく来るイメージだが、今の時代、子供はあまり来ない。有り余ったここのお菓子たちを、誰かに早く食べて欲しいのだが。いや、食べてくれなきゃ廃棄処分になるので、食べてくださいと言うべきなのか。
「ふぁ……退屈だなあ」
思わずあくびしてしまう程の、やわらかくゆるやかな時間。今オレは、駄菓子屋の店番をしている。
しかし、そんな時間を変えにきたと言わんばかりにやって来る若者たちの足音は、よく店に響き渡っていた。
「お?誰か来る……」
びっくりしつつも、少し店の外に顔を出してみると、そこに居たのは、懐かしい制服を着た男子高校生達だった。
「やべっ、あいつら風鈴か!準備しねえと……」
咄嗟に勉強道具を片付けて、着崩していた服を整える。そしたら準備は万全。あいつらを迎え入れる準備も整った。
「おーい!買ってけよ!」
駄菓子屋から出て、全員に向かってそう言うと、高校生たちはは顔を輝かせていた。
「ここが、梅宮さんの言っていた駄菓子屋ですか!」
「そうそう、ここの自家製せんべいが美味いんだよー!」
よくよくメンツを見ると、一人二人知ってる奴がいた、名前はあんまり知らないが、確か柊とか梅宮とか、そんな感じだったか。
「お、確か……梅宮と柊じゃねーか。お前らがそいつら呼んだの?」
「そうですよ、樫木さん!俺が呼びました!」
白髪の方が答える。こっちが梅宮だったっけか。
「そうか。ま、みんな買ってけよ。菓子が余ると怒られちまうんだ」
見たところ、梅宮が連れてきたのは、風鈴の一年か。制服姿に初々しさがあるような、そんな気がした。
ぞろぞろと駄菓子屋に入ってくる風鈴生たち。喧嘩ばかりですぐ腹が空いているのか、それとも駄菓子屋という場所が物珍しいのか、全員が普通の人より多めに商品を取っていく。オレはそれをただ眺めていた。平和だ。
「……そこのさー、白黒の髪の君。変わった髪と目の色だね」
ふと思った事をそのまま言う。一年っぽい風鈴生の中に、一人だけ、見たことがない髪と目の色をしている奴を見つけたから。でも、この言葉と思いに悪意はなくて、むしろ、少し彼が綺麗だと感じていた。
しかし真逆の意味として受け取ってしまったのか、彼はオレを睨み付ける。
「ああ?んだよ」
これは警戒されてる。そう思うのは容易だった。
「やだな、睨むんじゃねえよ。悪意はねえんだし」
そう言ってはみたものの、周りから見れば、悪意があると見られてもおかしくない表情と口調だった。表情はにたにた笑い。口調は強め。これじゃあオレは差別主義者だ。
「は?ざっけんじゃねぇ」
彼は拳を握った。
「待て待て!手え出そうとすんな!オレはさ、お前のソレ綺麗だなって思ったんだよ。だからお前、すぐ暴力振るおうとすんなよ」
必死に制止して話をすると、彼の顔はみるみる内に赤くなっていった。
「なっ……はあ!これ、が、綺麗って…………、は、はあ!」
もしかしてこいつは、褒められたりする事に慣れていないのか。そう思うと、感じた事のない感情__知らない感情が、心を満たそうとした。
「はっ!照れてんのかよ?……お前さ、名前なに?ずっとお前呼びは味気ねえし、名前教えろ」
「ああ?…………桜遥」
「意外と可愛い名前だな」
「るっせぇ!」
また手を出そうとする遥を止めて言う。
「すぐ手出そうとすんのやめろよ……。ま、遥呼びでいいよな?よろしくな、遥!」
このボタンは廃止予定です
この小説はコメントオフに設定されています