世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
普段通りの道に、普段通りの教室。いつもの席に付けば窓の外に空が広がっていた。
(今日も綺麗。ずっとこうなら良いな......。)
教室の騒音も、外を見ていると聞こえなくなる。
他の人から見た今の僕は空気か、あるいは近寄りがたい雰囲気の人間か。
どの道静かに考え事したいときは寧ろそれで好都合だから良いんだけど。
雲が白い。形はいつ見ても違う。流れていくから見飽きることもない。
(入道雲......明日からもう夏休みか......。)
予鈴のチャイムが遠くでなった気がするけど、授業中でも関係ない。
退屈、というこ言葉がこれ以上相応しい状態があるのかな。
頬杖を突いて、窓の外をボーッと眺め、周りを一切気にしていない。
退屈以外のなんでもないと思うね。
足音が遠くでバタバタ聞こえる。[漢字]HR[/漢字][ふりがな]ホームルーム[/ふりがな]始まるかな。面倒だから省略して欲しい。
立ち上がる音が聞こえない。省略されたかな。
ドアが開く音が聞こえる。誰か来た。なんかザワザワしてるね。
〈おい、澪凪。お前に用があるんだとさ。〉
「ん?」
〈ちょっとお話があります!一緒に来てください!!〉
(なんだろ。周りがヒューヒューうるさいけど、僕はそういうのとは縁がない人間だからな......。)
空き教室に呼ばれた。他の人に聞かれたくない話かな。
〈あの、実は澪凪くんのことをずっと前から見てました。〉
そう。導入というよりは本題の前提条件の提示、言ったところかな。
〈それで、澪凪くんはなんか他の生徒とは違うなって感じたことが沢山あって......。〉
違う、か。周りから見てもそう感じるんだね。
〈澪凪くんはいつもブレなくて冷静で、ボーッとしてることも多いのにテストの成績はよくて......。〉
理由でも聞かれるのかな。なんとなくとしか答えようがないけど。暗黙知かな。
〈澪凪くんは私の、その......憧れなんです!どうやったら澪凪くんの隣に立てますか!!〉
(そう来たか......。でも、“そもそも”が違うな。)
「僕は誰かと上下関係があるようには感じてないよ。だから、最低限1人の相手として対等な立場にあると思ってる。隣に立つのは全然難しいことじゃないよ。」
〈えっと......そうじゃなくて......。〉
「ただ、僕よりも一緒に居て楽しい人は世の中にゴロゴロ居る。僕よりも大事な人のことをもっと大事にしてあげると良いよ。」
〈えっ......それは......。〉
「それじゃあ。終業式に間に合うようにね。」
(空き教室に置いて行っちゃったけど......終業式に遅れる人が2人も居たら後で面倒なことになるからしょうがないか。)
サボりたい気持ちは十分にあるが、最低限やらなければいけないことがある。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
「......ノイト?」
ノイトはリーリャの声で我に返った。ボーッとしていたようだ。
「あぁ、ごめん。ちょっと昔のこと考えてて。」
「さっきまで未遂だって言ってたのに、遂に既遂になったね。」
「うん、そうだね......。」
「......それで、何考えてたの?」
「夏休み前のこと。」
「現世では今 冬なんだけど?なんで夏なの?」
「ん〜、前世の夏が1番気に入ってたからかな......?」
「そっか......もしいつか、また戻れるようだったら私にも教えてね......?」
「......分かった。」
リーリャは少しノイトとの距離を縮めた。
「ねぇ、ノイト。」
「何?」
「ノイト、なんかちょっとツラそうな顔してる。何かあった?」
「え、あぁ......疲れてるのかな?」
「それだけじゃないでしょ。」
「......。」
「ついさっきまで思い出してた思い出、どんなのだったの。」
「......1人で窓の外をボーッと眺めてたときに別のクラスの生徒に呼ばれて僕が憧れだとか、隣に立ちたいだとか言ってきた。」
「それで、どうしたの。」
「僕は1人の人間としてその相手と対等な立場だと思ってるから隣も何もない、って言って、それから、それでも僕より大事な人と居る時間を大切にした方が良い、って言った。」
「えぇ......。」
「......何。」
「いや、それって素?」
「着飾ったつもりはないけど......。」
「鈍い。鈍すぎるよノイト。それってほぼ告白じゃん!」
「僕とは無縁の言葉だね。」
「え、は......え......?それ本気で言ってる?」
「え、うん。」
リーリャは呆れすぎて気が遠くなりそうだった。
「ノイト、私のときみたいにはっきり言わないと気が付けないの?」
「多分。」
「即答する所じゃないからね?あのね、ノイト。仮にその子が恋愛感情的じゃない“憧れ”だったとしてもそんな的外れな返事されたらどう返せば良いのか分からなくなっちゃうでしょ!」
「( 'ー' )」
「何その表情......分かってないでしょ。」
ノイトは無言で頷く。
「ハァ......。ノイト、文学的文章の問題苦手だったでしょ。」
「いや......そこまで悪くはなかったかな?僕が前世で解いたことある問題は綺麗事ばかり書かれてる文章だったから。ある程度テンプレとか言い換えの表現を頭の中に入れておけば楽勝だったよ。」
「筆者へのリスペクトがない......!」
「論理的文章の方が得意だったけど、小説とか物語文も得点は取れてたからそこで筆者の気持ちを無駄にはしてないと思いたいけど。」
「ノイトが物語書いたら堅苦しい表現の濫用と綺麗事のないリアルな心理表現ばかりで読みにくそうだね......。」
「まぁ、そうなるね。」
「ノイトには共感性とか感受性がないの?」
「かなり薄い方だと自負しております。左脳の方が発達してそう。」
「想像力は右脳のはずだけど......ノイトの想像力はどこから来たの......?」
「前世で哲学もといそれに近しい妄想で培ってきたのかもね。」
「自分で妄想とか言っちゃうんだ......。」
「まぁ、事実だし。」
「......ノイト、なんか淡々としてて冷たいよね。」
「そうだね。」
「そうだね、って......。それで良いの?......って聞いても意味ないか。」
「そういうもんでしょ、で片付けられるし。そこまで気にしてないから。」
「やっぱりノイトは変わってるよ。すごく。変な意味で。そういうとこ、心配......。」
「......心配?」
「そうだよ。だってノイトが周りから変なやつだって思われるの嫌だもん。ノイトはなんでそんなにスルースキル高いの?」
「僕は性格悪いからね、相手の思い通りになんてなってたまるか、って思ってたらいつの間にかこうなってた。」
「性格悪い......?ノイト、優しいしかっこいいじゃん。」
「性格良い面と性格悪い面があるんでしょ。前者は素の本音、後者は素の悪戯心かな。両方 素だよ。」
「素でそれなの......?でもまぁ、そういう変わってるところがノイトの魅力かもね。」
「変人とすごい人は紙一重だよ。僕は前者。」
「違う。ほんの少しだけ前者よりの後者。」
「そう?」
「そうだよ。」
リーリャがさらに距離を縮めてノイトに顔を近づけた。
「ノイトはスゴい人。昨日の夜も言ったでしょ?褒めた人への冒涜はやめて。」
「............。」
「返事。」
「............。」
「返事。」
「......はい。」
「よろしい。とにかく、ノイトも自信持ってよ。ノイトはスゴい人だって、私が保証するから。」
「あまり1人で抱え込まないでよ?」
「ノイトにだけは言われたくない!全部1人で抱え込んでた人が言うセリフじゃないでしょ。」
「それはそうか。」
リーリャはノイトにもたれかかる。
「ノイト、芯はある癖にあまり自分から手出したりしないよね。手加減してるの?もっと本気になって良いんだよ?私は全力のノイトが見てみたい。」
「ん〜、あまり乗り気になれないな......受動的な人間だから。」
「受動的?でも何かあったときに指示してくれるじゃん。あれ結構正確で助かってるんだよ?」
「あれは“いざってとき”だからね。」
「ラルカも“知識の魔神”との戦いで指揮執ってたね。ラルカって前世でノイトと関わりがあったんでしょ?ノイトに似たのかな。」
「多分ね。少なくとも、僕と出逢う前のラルカは前線に出るような人ではなかったから。」
「そうなんだ......。前世のラルカってどんな人だったの?」
「ん〜、あんまり人の前世を掘り返すと怒られちゃうからなぁ......。」
「それじゃあ、しょうがないか......。」
「まぁ、過去は過去だけど、そう簡単に切り離せるものとは限らないからその気質はあったのかもしれないけど。......それに、ここで話すのは良くないでしょ。」
「あっ、そうだった......。」
ここは前世世界ではないため、あまりこういう話をするべきではない。転生者の存在はおとぎ話として知られるばかりで、実在した痕跡はあっても現代に実在するとは誰も思っていないかもしれない。
「色々面倒になるから言わない方が良いんだよね?」
「うん。言った方が良い、っていう時以外は言わないで大丈夫。」
「分かった。」
身体を起こしたリーリャがふと後ろを振り返るとアテルと甘味屋のお婆さんがじっと見つめていた。
「!? ノイト、全部聞こえちゃってる......!!」
「ん〜、アテルなら大丈夫でしょ。」
「そんなに軽いものなの......?」
「まぁ、アテルだし。」
「えぇ......?ホントに大丈夫?ノイトなら記憶消せるんじゃない?」
「消せなくはないけど、アテルは魔界に無限に残機を持ってるようなやつだから記憶も共有されてて完全に消すのは無理だよ。」
「それでも大丈夫だって言えるのはなんで?」
「......アテルは言わば魔力の底が見えない[漢字]窖[/漢字][ふりがな]あなぐら[/ふりがな]。だけどそれを表から感じさせない。つまり最低限守秘は出来る。」
「確かにノイトが“全能の魔神”と戦ってるときに魔神のこと飲み込もうとしてたけど......。」
「アテルがあの時本気で狩りに言ってたら、“全能の魔神”はもうその時点で吸収されてたかもね。」
少しの間沈黙が落ちた。それからトテトテと足音が聞こえてきて、アテルが覗き込んでくる。
「ノイト〜?」
「アテル。どうしたの?」
「私の話ししてたの?」
「うん、そうだよ。」
ノイトが頭を撫でるとアテルは気持ちよさそうに目を細めた。髪の感触はスライムとは思えないほどリアルである。リーリャはアテルにおずおずと話しかけてみた。
「ねぇアテル。」
「ん?どうしたの〜?」
「アテルってどのくらい強いの?」
「ん〜、正確には分かんないけど......ミドネイトさん以外には勝てるんじゃないかなぁ?」
「えっ!? それってノイトにも......?」
「ん〜、多分。」
アテルはノイトの膝の上によじ登って座る。
「ノイトは、私のこと怖いと思ってるの?」
「いいや、全然。むしろ癒しって感じがする。」
「でも私、スライムだよ?魔界にたくさん残機があるバケモノだよ?」
「関係ないでしょ。アテルはアテルだし。」
アテルは頬を赤くしてノイトの指を噛み始めた。
「......何してるの?」
「食べてふ」
「なんで?」
「ノイトを私のものにしまふ」
そこでリーリャが慌てて立ち上がる。
「ダメ!ノイトはわた......誰のものでもないから!」
(今一瞬所有物発言されかけたな......。)
「ハァ......ほら、もう良いから。観光の続き。ルミナたちと合流しよ。」
「え、あれ?ルミナスとレイクさんとイグさんは......?」
「その3人ならさっき別のところ行ってたよ。ノイト、探しに行く?」
「そうだね。」
ノイトはお代を甘味屋のお婆さんに渡してから町の中へと入っていく。
「ノイト、3人がどこ行ったか分かる?」
「少しだけ聞いてた感じだとイグさんは壊れた家の様子を見に行くんだとか。ルミナは......あっちだね。」
「なんで分かったの?」
「ルミナには[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]が付いてるからね。僕の魔力で作ったものだし場所は分かるよ。」
「普段は居ないように見えるけど......意識したら見えるようになる感じ?」
「そうだね。微妙に光ってるものがチラチラ視界に入るのも正直邪魔だし。」
「それ言っちゃうんだ......。」
そう言ってる間に既にイグを見つけた。かなり近くに居たようだ。崩れた家の周囲に人だかりが出来ている。
「イグ〜!」
手を大きく振ったアテルに気が付いて瓦礫の様子を見ていたイグが顔をあげた。
「おぉ、食べ終わったか。」
「イグさん、この家は?」
「あぁ、昨日の夜に朱羅が壊したようでな。まだ中に人が閉じ込められているようなんだ。」
「えっ!? じゃあ早く助けないと......。」
「いや、そうも行かないと思うよ。下手に瓦礫を動かせば完全に崩れて閉じ込められてる人が潰れちゃう。」
「じゃあどうすれば......。」
「まぁ、この規模なら問題ないでしょ。僕がやる。」
[中央寄せ][[漢字][太字]空中浮遊[/太字][/漢字][ふりがな]レビテーション[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトが手を翳すと崩れた家の瓦礫が浮かび上がり、中に閉じ込められていた男性が姿を現した。
「イグ様......!!」
「おぉ、無事だったか。」
瓦礫をおろしたノイトはイグに話しかけた。
「イグさん、ルミナとレイクさん捜しに行きますよ。」
「分かった。」
ノイトは[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]の魔力を辿りながら町の外れの石像の元に辿り着いた。2人は石像を見物しているようだ。
「ルミナ、レイクさん、その石像は?」
[太字][明朝体]「あっ、お兄ちゃん!この石像はどうやら昔ここで起きた災害と共に現れたものを模したもののようです。」[/明朝体][/太字]
「ん〜、これって......。」
リーリャもイグもその石像の姿を見てノイトと同じことを考えただろう。
(((朱羅だな......。)))
「まぁ、一応都市1つ滅ぼしてるからこうやって歴史に残ることもあるだろうね。」
「ノイトも牢獄都市滅ぼしてなかったっけ?」
「そんなこともあったな。」
「あはは......そうだったね。」
ノイトはノルティーク大陸にある牢獄都市・サラヴァルトを滅ぼしたことがある。お陰で未だに瓦礫ばかりが転がっている跡地となっているだろう。
「そういえばイグさん、あそこに居た囚人たちはどうなったんですか?」
「あぁ、全員捕らえてノルティーク帝国の地下牢に放り込んであるぞ。」
「禁忌魔法使う連中を帝国に入れちゃって大丈夫なんですか?」
[大文字]「問題ない。イグ殿によって連れてこられた囚人たちは皆特殊な高速具を装着させた状態だ。」[/大文字]
「なるほど。レイクさんがそこまで言うのであれば心配なさそうですね。」
そこでアテルがノイトの袖を引っ張ってノービリアの方を指差した。
「ねぇノイト〜。あっちの空が変だよ?」
見ると雲が異様に発達していて今にも嵐が起きそうな様子だった。
「朱羅か!町中で暴れ出して......!!」
「大丈夫ですよイグさん。お父さんが居るんですぐに収まります。」
しばらく様子を見ていると一瞬で雷雲が消し飛ばされ、大人しくなった。
「こう見ると割と離れてるように見えますけど、一応昔は1つの都市があったんですよね?」
「あぁ、わしがこの世に生を受ける前の話だがな。」
「ノイト〜、お腹空いたよぉ。」
「え、さっきお団子食べたでしょ?」
「うどん食べたい!」
「ふむ、それなら町中のうどん屋で昼食でも取りに行くか。」
「やったぁ〜!」
[太字][明朝体]「ふふっ、アテルは元気ですね。一緒に居て楽しいです。」[/明朝体][/太字]
(やっぱりアテルを見た後だとルミナが大人しいお姉さんにしか見えない......。)
アテルを先頭に、うどん旅客団が結成されたかもしれない。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚ヴェルグランド大陸/霊峰の町・ノービリア〛[/中央寄せ]
「痛いのじゃあ!」
朱羅が町のど真ん中に座り込んでいた。暴れようとした結果ミドネイトに抑え込まれたようだ。
「先生、流石に朱羅ちゃんが可哀想なんじゃ......?」
「ちゃん付けで呼ぶなぁ!」
「流石に町中で暴れられたら困るからね。フィルマリーも、朱羅も、場所を考えるように。」
「むぅ......はい。」
ちなみに事の発端は朱羅の一言だった。朱羅がノイトに勝つと宣言した結果フィルマリーが怒って2人の激突が起こり、ミドネイトが2人とも沈めただけで済んだが。
フィルマリーと朱羅の様子を見ながらザルヤとシルイがエルクスに話しかけた。
「なぁエルクス。ノイトとフィルマリーと朱羅、誰が1番強いと思う?」
[太字][明朝体]『ノイトかな。“全能の魔神”を倒した後の彼と仲間の対話の一部だけで思考レベルが高いのはよく分かった。それに、“知識の魔神”との戦闘でもあれだけ協力な技を使ったんだ。僕はその3人の中では1番強いのはノイトだと思う。』[/明朝体][/太字]
「なるほどねぇ。じゃあさ、私の召喚獣で1番強い子とどっちが強いかな?」
「多分ノイトだね。以前魔族と遭遇した際に彼が追い返したという報告があったらしい。」
「えぇ!? 魔族を!? っていうかなんで魔族が人間界に?」
「さぁね。彼らも気まぐれなんだろう。ずっと魔界に居ても暇なのかもしれない。」
「フェノルは魔界に行ったことあるか?」
フェノルは無言で頷く。
「まぁ、あまり人間が立ち寄る場所ではないだろうな。」
ふと視線を戻すと未だに朱羅とフィルマリーは言い合っていた。
「じゃから!わしがあいつを超えるのじゃ!!」
「ダメです!ノイトさんの方が強いんです!!」
ミドネイトは呆れながら近くの店で買った温泉まんじゅうを食べている。
(本気で戦えばフィルマリーが勝つだろうね。[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態のフィルマリーなら魔神にも勝てるだろう。“全能の魔神”くらい速い相手だとキツいかもしれないけど。)
肩に立て掛けている杖でいつでも2人の喧嘩を止められるため、ミドネイトは今は温泉まんじゅうを堪能しているようだった。
(ノイトは[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態になったときは“全能の魔神”よりも強くなってたし、魔力量はあれでほぼ限界。限界とは言っても大陸の1つや2つは容易く消せるだろうね。昨日の夜にあの組織の拠点に乗り込んだときは制御が出来ている状態で幹部を蒸発させてたようだし、まだ伸びるな。)
朱羅が全身に赤い雷を纏わせ始め、フィルマリーも杖を構えて魔術を放とうとした。ミドネイトはまた先程と同じように杖から光を放って雷と魔術を消滅させる。
「ぬあぁぁ〜!」
(ノイトのあの技は明らかにオーバーキルだった。恐らくあれが使えるのは精神的な限界で1日に1回程度。集中力が切れたらもう撃てない。それも普段から使えるわけじゃないし膨大な魔力を消費する。)
温泉まんじゅうを食べ終えたミドネイトは立ち上がって魔術を唱えた。
[水平線]
[太字][中央寄せ]«ᛒᛁᚾᛞ ᛁᛏ... ᛒᛁᚾᛞ ᛁᛏ... [/中央寄せ]
[中央寄せ]ᛋᚢᛒᛞᚢᛖ ᛏᚺᚪᛏ ᛈᛁᛏᛁᚠᚢᛚ ᛏᚪᚾᚢᚴᛁ[/中央寄せ]
[中央寄せ]—ᛞᚱᛁᚡᛖᚾ ᛒᚤ ᛁᛗᛈᚢᛚᛋᛖ—[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚪᚾᛞ ᚺᛟᛚᛞ ᚺᛁᛗ ᚠᚪᛋᛏ ᚪᛋ ᚪ ᛈᚢᛈᛈᛖᛏ.»[/中央寄せ][/太字]
[水平線]
「なんじゃ!?」
「先生、その魔術は!!」
[水平線]
[太字][中央寄せ]«ᛈᚢᛈᛈᛖᛏ»[/中央寄せ][/太字]
[水平線]
朱羅とフィルマリーの頭上に青く光るラインが入った黒い環のようなものが現れ、2人の身体が動かなくなった。
「身体が動かんぞ!なんじゃこれは!!」
「先生!なんで私まで...」
「2人とも、宿屋に戻るまではこの状態で居てね。」
ユリメラとユリムは互いに顔を見合わせ、エルクス一行はミドネイトの判断を見て納得している。
[太字][明朝体]『僕たちはあくまでも休憩を兼ねた観光をしているだけだしね。町が壊れたらそれどころじゃない。』[/明朝体][/太字]
「だな。」「うんうん!」
フェノルも頷いていた。
当の本人たちだけが納得出来ていないようだが、ミドネイトに逆らうことは出来ないと悟り大人しくなった。
(ノイトの方は......うどん食べてるのか。美味しそうだね。リオールの方は......少し何か起きてるみたいだね。)
ミドネイトは微笑みながら霊峰の方を眺めるのだった。
普段通りの道に、普段通りの教室。いつもの席に付けば窓の外に空が広がっていた。
(今日も綺麗。ずっとこうなら良いな......。)
教室の騒音も、外を見ていると聞こえなくなる。
他の人から見た今の僕は空気か、あるいは近寄りがたい雰囲気の人間か。
どの道静かに考え事したいときは寧ろそれで好都合だから良いんだけど。
雲が白い。形はいつ見ても違う。流れていくから見飽きることもない。
(入道雲......明日からもう夏休みか......。)
予鈴のチャイムが遠くでなった気がするけど、授業中でも関係ない。
退屈、というこ言葉がこれ以上相応しい状態があるのかな。
頬杖を突いて、窓の外をボーッと眺め、周りを一切気にしていない。
退屈以外のなんでもないと思うね。
足音が遠くでバタバタ聞こえる。[漢字]HR[/漢字][ふりがな]ホームルーム[/ふりがな]始まるかな。面倒だから省略して欲しい。
立ち上がる音が聞こえない。省略されたかな。
ドアが開く音が聞こえる。誰か来た。なんかザワザワしてるね。
〈おい、澪凪。お前に用があるんだとさ。〉
「ん?」
〈ちょっとお話があります!一緒に来てください!!〉
(なんだろ。周りがヒューヒューうるさいけど、僕はそういうのとは縁がない人間だからな......。)
空き教室に呼ばれた。他の人に聞かれたくない話かな。
〈あの、実は澪凪くんのことをずっと前から見てました。〉
そう。導入というよりは本題の前提条件の提示、言ったところかな。
〈それで、澪凪くんはなんか他の生徒とは違うなって感じたことが沢山あって......。〉
違う、か。周りから見てもそう感じるんだね。
〈澪凪くんはいつもブレなくて冷静で、ボーッとしてることも多いのにテストの成績はよくて......。〉
理由でも聞かれるのかな。なんとなくとしか答えようがないけど。暗黙知かな。
〈澪凪くんは私の、その......憧れなんです!どうやったら澪凪くんの隣に立てますか!!〉
(そう来たか......。でも、“そもそも”が違うな。)
「僕は誰かと上下関係があるようには感じてないよ。だから、最低限1人の相手として対等な立場にあると思ってる。隣に立つのは全然難しいことじゃないよ。」
〈えっと......そうじゃなくて......。〉
「ただ、僕よりも一緒に居て楽しい人は世の中にゴロゴロ居る。僕よりも大事な人のことをもっと大事にしてあげると良いよ。」
〈えっ......それは......。〉
「それじゃあ。終業式に間に合うようにね。」
(空き教室に置いて行っちゃったけど......終業式に遅れる人が2人も居たら後で面倒なことになるからしょうがないか。)
サボりたい気持ちは十分にあるが、最低限やらなければいけないことがある。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
「......ノイト?」
ノイトはリーリャの声で我に返った。ボーッとしていたようだ。
「あぁ、ごめん。ちょっと昔のこと考えてて。」
「さっきまで未遂だって言ってたのに、遂に既遂になったね。」
「うん、そうだね......。」
「......それで、何考えてたの?」
「夏休み前のこと。」
「現世では今 冬なんだけど?なんで夏なの?」
「ん〜、前世の夏が1番気に入ってたからかな......?」
「そっか......もしいつか、また戻れるようだったら私にも教えてね......?」
「......分かった。」
リーリャは少しノイトとの距離を縮めた。
「ねぇ、ノイト。」
「何?」
「ノイト、なんかちょっとツラそうな顔してる。何かあった?」
「え、あぁ......疲れてるのかな?」
「それだけじゃないでしょ。」
「......。」
「ついさっきまで思い出してた思い出、どんなのだったの。」
「......1人で窓の外をボーッと眺めてたときに別のクラスの生徒に呼ばれて僕が憧れだとか、隣に立ちたいだとか言ってきた。」
「それで、どうしたの。」
「僕は1人の人間としてその相手と対等な立場だと思ってるから隣も何もない、って言って、それから、それでも僕より大事な人と居る時間を大切にした方が良い、って言った。」
「えぇ......。」
「......何。」
「いや、それって素?」
「着飾ったつもりはないけど......。」
「鈍い。鈍すぎるよノイト。それってほぼ告白じゃん!」
「僕とは無縁の言葉だね。」
「え、は......え......?それ本気で言ってる?」
「え、うん。」
リーリャは呆れすぎて気が遠くなりそうだった。
「ノイト、私のときみたいにはっきり言わないと気が付けないの?」
「多分。」
「即答する所じゃないからね?あのね、ノイト。仮にその子が恋愛感情的じゃない“憧れ”だったとしてもそんな的外れな返事されたらどう返せば良いのか分からなくなっちゃうでしょ!」
「( 'ー' )」
「何その表情......分かってないでしょ。」
ノイトは無言で頷く。
「ハァ......。ノイト、文学的文章の問題苦手だったでしょ。」
「いや......そこまで悪くはなかったかな?僕が前世で解いたことある問題は綺麗事ばかり書かれてる文章だったから。ある程度テンプレとか言い換えの表現を頭の中に入れておけば楽勝だったよ。」
「筆者へのリスペクトがない......!」
「論理的文章の方が得意だったけど、小説とか物語文も得点は取れてたからそこで筆者の気持ちを無駄にはしてないと思いたいけど。」
「ノイトが物語書いたら堅苦しい表現の濫用と綺麗事のないリアルな心理表現ばかりで読みにくそうだね......。」
「まぁ、そうなるね。」
「ノイトには共感性とか感受性がないの?」
「かなり薄い方だと自負しております。左脳の方が発達してそう。」
「想像力は右脳のはずだけど......ノイトの想像力はどこから来たの......?」
「前世で哲学もといそれに近しい妄想で培ってきたのかもね。」
「自分で妄想とか言っちゃうんだ......。」
「まぁ、事実だし。」
「......ノイト、なんか淡々としてて冷たいよね。」
「そうだね。」
「そうだね、って......。それで良いの?......って聞いても意味ないか。」
「そういうもんでしょ、で片付けられるし。そこまで気にしてないから。」
「やっぱりノイトは変わってるよ。すごく。変な意味で。そういうとこ、心配......。」
「......心配?」
「そうだよ。だってノイトが周りから変なやつだって思われるの嫌だもん。ノイトはなんでそんなにスルースキル高いの?」
「僕は性格悪いからね、相手の思い通りになんてなってたまるか、って思ってたらいつの間にかこうなってた。」
「性格悪い......?ノイト、優しいしかっこいいじゃん。」
「性格良い面と性格悪い面があるんでしょ。前者は素の本音、後者は素の悪戯心かな。両方 素だよ。」
「素でそれなの......?でもまぁ、そういう変わってるところがノイトの魅力かもね。」
「変人とすごい人は紙一重だよ。僕は前者。」
「違う。ほんの少しだけ前者よりの後者。」
「そう?」
「そうだよ。」
リーリャがさらに距離を縮めてノイトに顔を近づけた。
「ノイトはスゴい人。昨日の夜も言ったでしょ?褒めた人への冒涜はやめて。」
「............。」
「返事。」
「............。」
「返事。」
「......はい。」
「よろしい。とにかく、ノイトも自信持ってよ。ノイトはスゴい人だって、私が保証するから。」
「あまり1人で抱え込まないでよ?」
「ノイトにだけは言われたくない!全部1人で抱え込んでた人が言うセリフじゃないでしょ。」
「それはそうか。」
リーリャはノイトにもたれかかる。
「ノイト、芯はある癖にあまり自分から手出したりしないよね。手加減してるの?もっと本気になって良いんだよ?私は全力のノイトが見てみたい。」
「ん〜、あまり乗り気になれないな......受動的な人間だから。」
「受動的?でも何かあったときに指示してくれるじゃん。あれ結構正確で助かってるんだよ?」
「あれは“いざってとき”だからね。」
「ラルカも“知識の魔神”との戦いで指揮執ってたね。ラルカって前世でノイトと関わりがあったんでしょ?ノイトに似たのかな。」
「多分ね。少なくとも、僕と出逢う前のラルカは前線に出るような人ではなかったから。」
「そうなんだ......。前世のラルカってどんな人だったの?」
「ん〜、あんまり人の前世を掘り返すと怒られちゃうからなぁ......。」
「それじゃあ、しょうがないか......。」
「まぁ、過去は過去だけど、そう簡単に切り離せるものとは限らないからその気質はあったのかもしれないけど。......それに、ここで話すのは良くないでしょ。」
「あっ、そうだった......。」
ここは前世世界ではないため、あまりこういう話をするべきではない。転生者の存在はおとぎ話として知られるばかりで、実在した痕跡はあっても現代に実在するとは誰も思っていないかもしれない。
「色々面倒になるから言わない方が良いんだよね?」
「うん。言った方が良い、っていう時以外は言わないで大丈夫。」
「分かった。」
身体を起こしたリーリャがふと後ろを振り返るとアテルと甘味屋のお婆さんがじっと見つめていた。
「!? ノイト、全部聞こえちゃってる......!!」
「ん〜、アテルなら大丈夫でしょ。」
「そんなに軽いものなの......?」
「まぁ、アテルだし。」
「えぇ......?ホントに大丈夫?ノイトなら記憶消せるんじゃない?」
「消せなくはないけど、アテルは魔界に無限に残機を持ってるようなやつだから記憶も共有されてて完全に消すのは無理だよ。」
「それでも大丈夫だって言えるのはなんで?」
「......アテルは言わば魔力の底が見えない[漢字]窖[/漢字][ふりがな]あなぐら[/ふりがな]。だけどそれを表から感じさせない。つまり最低限守秘は出来る。」
「確かにノイトが“全能の魔神”と戦ってるときに魔神のこと飲み込もうとしてたけど......。」
「アテルがあの時本気で狩りに言ってたら、“全能の魔神”はもうその時点で吸収されてたかもね。」
少しの間沈黙が落ちた。それからトテトテと足音が聞こえてきて、アテルが覗き込んでくる。
「ノイト〜?」
「アテル。どうしたの?」
「私の話ししてたの?」
「うん、そうだよ。」
ノイトが頭を撫でるとアテルは気持ちよさそうに目を細めた。髪の感触はスライムとは思えないほどリアルである。リーリャはアテルにおずおずと話しかけてみた。
「ねぇアテル。」
「ん?どうしたの〜?」
「アテルってどのくらい強いの?」
「ん〜、正確には分かんないけど......ミドネイトさん以外には勝てるんじゃないかなぁ?」
「えっ!? それってノイトにも......?」
「ん〜、多分。」
アテルはノイトの膝の上によじ登って座る。
「ノイトは、私のこと怖いと思ってるの?」
「いいや、全然。むしろ癒しって感じがする。」
「でも私、スライムだよ?魔界にたくさん残機があるバケモノだよ?」
「関係ないでしょ。アテルはアテルだし。」
アテルは頬を赤くしてノイトの指を噛み始めた。
「......何してるの?」
「食べてふ」
「なんで?」
「ノイトを私のものにしまふ」
そこでリーリャが慌てて立ち上がる。
「ダメ!ノイトはわた......誰のものでもないから!」
(今一瞬所有物発言されかけたな......。)
「ハァ......ほら、もう良いから。観光の続き。ルミナたちと合流しよ。」
「え、あれ?ルミナスとレイクさんとイグさんは......?」
「その3人ならさっき別のところ行ってたよ。ノイト、探しに行く?」
「そうだね。」
ノイトはお代を甘味屋のお婆さんに渡してから町の中へと入っていく。
「ノイト、3人がどこ行ったか分かる?」
「少しだけ聞いてた感じだとイグさんは壊れた家の様子を見に行くんだとか。ルミナは......あっちだね。」
「なんで分かったの?」
「ルミナには[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]が付いてるからね。僕の魔力で作ったものだし場所は分かるよ。」
「普段は居ないように見えるけど......意識したら見えるようになる感じ?」
「そうだね。微妙に光ってるものがチラチラ視界に入るのも正直邪魔だし。」
「それ言っちゃうんだ......。」
そう言ってる間に既にイグを見つけた。かなり近くに居たようだ。崩れた家の周囲に人だかりが出来ている。
「イグ〜!」
手を大きく振ったアテルに気が付いて瓦礫の様子を見ていたイグが顔をあげた。
「おぉ、食べ終わったか。」
「イグさん、この家は?」
「あぁ、昨日の夜に朱羅が壊したようでな。まだ中に人が閉じ込められているようなんだ。」
「えっ!? じゃあ早く助けないと......。」
「いや、そうも行かないと思うよ。下手に瓦礫を動かせば完全に崩れて閉じ込められてる人が潰れちゃう。」
「じゃあどうすれば......。」
「まぁ、この規模なら問題ないでしょ。僕がやる。」
[中央寄せ][[漢字][太字]空中浮遊[/太字][/漢字][ふりがな]レビテーション[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトが手を翳すと崩れた家の瓦礫が浮かび上がり、中に閉じ込められていた男性が姿を現した。
「イグ様......!!」
「おぉ、無事だったか。」
瓦礫をおろしたノイトはイグに話しかけた。
「イグさん、ルミナとレイクさん捜しに行きますよ。」
「分かった。」
ノイトは[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]の魔力を辿りながら町の外れの石像の元に辿り着いた。2人は石像を見物しているようだ。
「ルミナ、レイクさん、その石像は?」
[太字][明朝体]「あっ、お兄ちゃん!この石像はどうやら昔ここで起きた災害と共に現れたものを模したもののようです。」[/明朝体][/太字]
「ん〜、これって......。」
リーリャもイグもその石像の姿を見てノイトと同じことを考えただろう。
(((朱羅だな......。)))
「まぁ、一応都市1つ滅ぼしてるからこうやって歴史に残ることもあるだろうね。」
「ノイトも牢獄都市滅ぼしてなかったっけ?」
「そんなこともあったな。」
「あはは......そうだったね。」
ノイトはノルティーク大陸にある牢獄都市・サラヴァルトを滅ぼしたことがある。お陰で未だに瓦礫ばかりが転がっている跡地となっているだろう。
「そういえばイグさん、あそこに居た囚人たちはどうなったんですか?」
「あぁ、全員捕らえてノルティーク帝国の地下牢に放り込んであるぞ。」
「禁忌魔法使う連中を帝国に入れちゃって大丈夫なんですか?」
[大文字]「問題ない。イグ殿によって連れてこられた囚人たちは皆特殊な高速具を装着させた状態だ。」[/大文字]
「なるほど。レイクさんがそこまで言うのであれば心配なさそうですね。」
そこでアテルがノイトの袖を引っ張ってノービリアの方を指差した。
「ねぇノイト〜。あっちの空が変だよ?」
見ると雲が異様に発達していて今にも嵐が起きそうな様子だった。
「朱羅か!町中で暴れ出して......!!」
「大丈夫ですよイグさん。お父さんが居るんですぐに収まります。」
しばらく様子を見ていると一瞬で雷雲が消し飛ばされ、大人しくなった。
「こう見ると割と離れてるように見えますけど、一応昔は1つの都市があったんですよね?」
「あぁ、わしがこの世に生を受ける前の話だがな。」
「ノイト〜、お腹空いたよぉ。」
「え、さっきお団子食べたでしょ?」
「うどん食べたい!」
「ふむ、それなら町中のうどん屋で昼食でも取りに行くか。」
「やったぁ〜!」
[太字][明朝体]「ふふっ、アテルは元気ですね。一緒に居て楽しいです。」[/明朝体][/太字]
(やっぱりアテルを見た後だとルミナが大人しいお姉さんにしか見えない......。)
アテルを先頭に、うどん旅客団が結成されたかもしれない。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚ヴェルグランド大陸/霊峰の町・ノービリア〛[/中央寄せ]
「痛いのじゃあ!」
朱羅が町のど真ん中に座り込んでいた。暴れようとした結果ミドネイトに抑え込まれたようだ。
「先生、流石に朱羅ちゃんが可哀想なんじゃ......?」
「ちゃん付けで呼ぶなぁ!」
「流石に町中で暴れられたら困るからね。フィルマリーも、朱羅も、場所を考えるように。」
「むぅ......はい。」
ちなみに事の発端は朱羅の一言だった。朱羅がノイトに勝つと宣言した結果フィルマリーが怒って2人の激突が起こり、ミドネイトが2人とも沈めただけで済んだが。
フィルマリーと朱羅の様子を見ながらザルヤとシルイがエルクスに話しかけた。
「なぁエルクス。ノイトとフィルマリーと朱羅、誰が1番強いと思う?」
[太字][明朝体]『ノイトかな。“全能の魔神”を倒した後の彼と仲間の対話の一部だけで思考レベルが高いのはよく分かった。それに、“知識の魔神”との戦闘でもあれだけ協力な技を使ったんだ。僕はその3人の中では1番強いのはノイトだと思う。』[/明朝体][/太字]
「なるほどねぇ。じゃあさ、私の召喚獣で1番強い子とどっちが強いかな?」
「多分ノイトだね。以前魔族と遭遇した際に彼が追い返したという報告があったらしい。」
「えぇ!? 魔族を!? っていうかなんで魔族が人間界に?」
「さぁね。彼らも気まぐれなんだろう。ずっと魔界に居ても暇なのかもしれない。」
「フェノルは魔界に行ったことあるか?」
フェノルは無言で頷く。
「まぁ、あまり人間が立ち寄る場所ではないだろうな。」
ふと視線を戻すと未だに朱羅とフィルマリーは言い合っていた。
「じゃから!わしがあいつを超えるのじゃ!!」
「ダメです!ノイトさんの方が強いんです!!」
ミドネイトは呆れながら近くの店で買った温泉まんじゅうを食べている。
(本気で戦えばフィルマリーが勝つだろうね。[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態のフィルマリーなら魔神にも勝てるだろう。“全能の魔神”くらい速い相手だとキツいかもしれないけど。)
肩に立て掛けている杖でいつでも2人の喧嘩を止められるため、ミドネイトは今は温泉まんじゅうを堪能しているようだった。
(ノイトは[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態になったときは“全能の魔神”よりも強くなってたし、魔力量はあれでほぼ限界。限界とは言っても大陸の1つや2つは容易く消せるだろうね。昨日の夜にあの組織の拠点に乗り込んだときは制御が出来ている状態で幹部を蒸発させてたようだし、まだ伸びるな。)
朱羅が全身に赤い雷を纏わせ始め、フィルマリーも杖を構えて魔術を放とうとした。ミドネイトはまた先程と同じように杖から光を放って雷と魔術を消滅させる。
「ぬあぁぁ〜!」
(ノイトのあの技は明らかにオーバーキルだった。恐らくあれが使えるのは精神的な限界で1日に1回程度。集中力が切れたらもう撃てない。それも普段から使えるわけじゃないし膨大な魔力を消費する。)
温泉まんじゅうを食べ終えたミドネイトは立ち上がって魔術を唱えた。
[水平線]
[太字][中央寄せ]«ᛒᛁᚾᛞ ᛁᛏ... ᛒᛁᚾᛞ ᛁᛏ... [/中央寄せ]
[中央寄せ]ᛋᚢᛒᛞᚢᛖ ᛏᚺᚪᛏ ᛈᛁᛏᛁᚠᚢᛚ ᛏᚪᚾᚢᚴᛁ[/中央寄せ]
[中央寄せ]—ᛞᚱᛁᚡᛖᚾ ᛒᚤ ᛁᛗᛈᚢᛚᛋᛖ—[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚪᚾᛞ ᚺᛟᛚᛞ ᚺᛁᛗ ᚠᚪᛋᛏ ᚪᛋ ᚪ ᛈᚢᛈᛈᛖᛏ.»[/中央寄せ][/太字]
[水平線]
「なんじゃ!?」
「先生、その魔術は!!」
[水平線]
[太字][中央寄せ]«ᛈᚢᛈᛈᛖᛏ»[/中央寄せ][/太字]
[水平線]
朱羅とフィルマリーの頭上に青く光るラインが入った黒い環のようなものが現れ、2人の身体が動かなくなった。
「身体が動かんぞ!なんじゃこれは!!」
「先生!なんで私まで...」
「2人とも、宿屋に戻るまではこの状態で居てね。」
ユリメラとユリムは互いに顔を見合わせ、エルクス一行はミドネイトの判断を見て納得している。
[太字][明朝体]『僕たちはあくまでも休憩を兼ねた観光をしているだけだしね。町が壊れたらそれどころじゃない。』[/明朝体][/太字]
「だな。」「うんうん!」
フェノルも頷いていた。
当の本人たちだけが納得出来ていないようだが、ミドネイトに逆らうことは出来ないと悟り大人しくなった。
(ノイトの方は......うどん食べてるのか。美味しそうだね。リオールの方は......少し何か起きてるみたいだね。)
ミドネイトは微笑みながら霊峰の方を眺めるのだった。