世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
部屋に戻ったノイトはすぐにリュミエに枕を投げつけられた。
「ノイトくん反応鈍すぎ〜!」
「だから疲れてるんだって......。それはともかく、早く寝なさい。今何時だと思ってるの?」
「......2時?」
「違う、4時だよ。」
「え!?」
ノイトに関しては昨夜からずっと組織に乗り込んで幹部を倒し、さらに夜通し“知識の魔神”との戦闘に参加していたのだ。
「もうここまで来たらオールで良いんじゃない?」
「寝かせてほしいんだけど......。」
「え?“寝かしてけて欲しい”?それなら私が...」
「言ってない。」
そこでミドネイトが杖を掲げた。
「まぁまぁ、ノイトも疲れてるって言ってるし、みんなもまだ寝てないでしょ。ゆっくり休んでて良いよ。」
ミドネイトの杖から放たれた光が辺りを包みこんだかと思うと、外の月の位置が変わっていた。
[太字][明朝体]「ん?今、ミドネイト様は何をなさったのですか?」[/明朝体][/太字]
そこでラルカが月の位置を見ながらルミナスの問いに答える。
「月の位置が23時頃のものになっているな。時間を巻き戻したのだろう。」
「御名答。ほら、休んだ休んだ〜。」
ミドネイトに促されるまま全員が布団を敷き始めた。
「それで、ノイトくんの隣で寝るの?」
「「「私」」です!」
リーリャとリュミエとフィルマリーが同時に手を挙げる。無論修羅場である。
「なんでこうなったんだか......。」
「あぁ〜、そういう呪いだろうね。解呪はほぼ不可能だから諦めな〜。」
ミドネイトの何気ない発言にノイトが反応した。
「初耳なんだけど?」
「フィルマリーだったら気が付いてたんじゃない?」
「あ、はい!先生の言う通りです。最初に会ったときから呪いの気配は感じてたんですけど、特に問題もなさそうなので指摘はしませんでした!」
「それで今こういう問題が起きてるんですけど?ハァ......もう良いや、おやすみ。」
ノイトは布団を持って隣の部屋に布団を敷いた。余程修羅場に巻き込まれたくないのだろう。ノイトの心中を察したミドネイトは杖を掲げて全員にこっそりと眠気を施した。寝間着に着替えておらず壁に寄りかかって既に眠っていたフェノルの近くにエルクスとザルヤとシルイが集まり、今までそうしてきたかのように眠りに落ちた。ルミナスはレイクとカメリアの近くで寝息を立て始め、2人その側で見守ることにした。リーリャとメルクとリュミエはノイトが離れていってしまった原因が誰かで言い争っていたが急に睡魔に襲われて布団の上に倒れた。ユリムとユリメラは既に幸せそうに眠っている。残っているのはイグとラルカと朱羅だ。
「何じゃ......!? 急に眠り始めて......。」
「全員疲れているのだろう。この部屋はもう狭いことだ、私たちはノイトが居る方で休むことにしよう。」
そう言いながらラルカはミドネイトの方を見ていた。ミドネイトは微笑んで頷いている。ミドネイトの目から見ても1番平和な形で終わり、後で何か起こる心配がない者を残したようだ。
「イグさん、あとは僕が見守っておきます。」
「助かるな。ありがとう。」
ミドネイトは2人が隣の部屋へ入ったのを見送って部屋の明かりを消し、目を閉じた。
「ん......2人ともどうしたの?」
ノイトはもう既に部屋のど真ん中に堂々と敷いた布団の中に居た。ラルカと朱羅はその隣に自身の分を敷く。
「向こうの部屋はもう寝ているやつらばかりで狭いんだ。ここで休んでも問題ないな?」
「まぁ、それは構わないけど......あっちの部屋は大丈夫そう?」
「問題ない。お前の父上とイグが見守ってくれている。」
「じゃあ大丈夫か。」
朱羅は両手を頭の後ろに組んで天井を見つめていた。明かりが消えた部屋。魔力の淀みがない、静かで落ち着く空間。
しばらくボーっとしていた朱羅だったが、口を開いて隣のノイトに話しかけた。
「なぁ、ノイト。」
「......どうしたの?」
「わしは、なんでこんな風なんじゃ?」
「“こんな風”って?」
「わしは昔ここらに栄えていたエオボロビアンを滅ぼした災害じゃぞ?なぜ人間の隣で眠っているのか......。」
「......なるほど。このままで良いのか分からないんだね?」
「......よく分かったな。」
「そのくらいは僕の想像力で補えるから。......朱羅はさ、何が目的でエオボロビアンを滅ぼしたの?」
「そりゃあ......わしの恐ろしさを人間共に知らしめるためじゃ。」
「嫌われたかったの?」
「そんなわけなかろう。わしが求めていたのは知名度じゃ。」
「知名度?」
「強いやつ程知名度が高いものじゃろう。わしはもっと強くなるために強いやつと戦いたいんじゃ。」
「強者と出会い、さらなる成長を求める......それが本当の目的?」
「そうじゃな。」
「それで、今は僕の隣で寝てて、随分変わったことを憂いていると?」
「......まぁ、そんなもんじゃ。わしはこれからどうすれば良いんじゃろうなぁ......?あっちの部屋に居るミドネイトとか言うやつ、最強なんじゃろ?桁が違いすぎてわしでも届かんわい。」
「そうだね......あの人に関しては本当に規格外......僕より冷静だし判断力もあるし実力もある。僕の上位互換と言っても差し支えないでしょ。」
朱羅は上体を起こしてノイトを見つめた。
「......ノイトは............。」
「?」
「何故そんなに分かる?」
「えっと......何のこと?」
「わしの考えてることじゃ。聞き流すだけで良かったものを、わざわざ受け止めてわしの考えの整理までしよって。さらには自分を客観的に見据える視点まで持っておる。何故そんなに器用な人間で居られる?」
「......僕は、色々捨ててきたから。」
ノイトが一瞬見せた虚ろな目を見て朱羅の表情が強張る。
「それは......。」
そこで言葉を飲み込んだ。聞く勇気と受け止める責任がなかったからだ。
「......朱羅は、.........僕みたいにならないでね。大丈夫だと思うけど。」
「......分かっている。誰がお前のようなやつになれるか。」
「そう。なら良かった。」
「......っ、湿気た話は嫌いじゃ!わしはもう寝る!!」
「おやすみ。」
朱羅は再び横になって布団を被った。しばらくすると静かな寝息が聞こえてくる。眠ったようだ。
(僕が、器用............?偏った知識で筋通してるだけの僕が......?なんでそうも騙されるんだか............やっぱり僕は人と関わるのは苦手な方だよ。そもそも、なんで僕はこんなに他に人に懐かれる?)
「......弥哲。」
ラルカの呼びかけで正気に戻ったノイトはハッとしてラルカの方に振り向いた。
「眠れないのか?」
「あぁ〜、ちょっとね。考え事しちゃってて。」
「......さっき、メルクと何を話していたんだ?」
「え?あぁ、リーリャといつキスしたのか問い詰められたんだよ。」
「そうか。それは災難だったな。」
「まぁ、結果僕のガードが崩れてメルの思い通りになっちゃったけど......別に良いや。」
「......珍しいな、弥哲がガードを崩されるなんて。以前は絡んできた不良に怒鳴られても冷静に論破出来るような人間だっただろうに。」
「そういう系は今でも出来るから良いんだよ。ただ、最近はちょ〜っと緩んできてるんだよね。」
「原因は掴めているのか?」
「うん。一応自業自得だよ。リーリャとキスしたときに時間止めただけだけど。」
「あの魔法か......。普段の代償を変えたのか?」
「そうだね。普段は僕の時間と引き換えに対象を止めるもの。だけど、そのときは僕も動かないといけないし、逆にあの場に居たみんなは止めないと行けない。」
「なるほど。それで何を代償にしたんだ?」
「僕の冷静さだよ。」
「そういうことか。だがまぁ、弥哲のガードが崩れるのがそっち方面だけであれば問題なかろう。」
「一応それ以前の僕でもパニクることはあるからね?」
「それは余程の緊急事態だろうな。図書館で地震が起きても冷静に来観客に指示が出来ていたお前が崩れる姿はなかなか想像出来ん。」
「......まぁ、前世では捨てたはずものを現世で拾っちゃったからかな......。変わってるのは僕の方だよ。」
「そうか?嫌味も言うようになったし煽りにもさらにキレがかかったようだが、こうして話していると、お前は前世とあまり変わらんぞ。」
「......そうかな?」
「あぁ。忘れなるなよ、お前と1番付き合いが長いのは私だからな。」
ラルカが手を伸ばしてそっとノイトの頬に触れた。
「現世でもまた会えたと分かったとき、私はすごく嬉しかった。」
(ん......?ラルカまでガード崩そうとしてきてるな......。まぁ、良いや。考えるのが面倒だ、し......?)
ラルカが額をくっつけてくる。超至近距離からラルカの碧い瞳がノイトを覗き込んでいた。キョトンとしているノイトを見てラルカが笑う。
「アハハッ............弥哲のそういう顔、始めて見たかも。」
「ん......世宥の方こそ、ここまで近いのは始めてじゃない?」
「そうかもね〜。」
「......そろそろ寝よっか。もう遅いし、明日もゆっくり出来ると思うから。」
「そうだね。」
そのとき朱羅が2人の方を見て鬱陶しそうな目線を向けてきた。
「おい、いつまで[漢字]巫山戯[/漢字][ふりがな]ふざけ[/ふりがな]ているんじゃ、眠れないじゃろ。」
「んん?! あぁ、朱羅ごめん......。」
「い、今のは......その......忘れろ......!!」
「ハァ〜......まったく。」
気まずさ故に離れた2人は各々の布団に潜って寝た。
翌朝。目を覚ますとちゃんと朝になっていた。
(お父さんの魔法でどうなるか少しだけ不安だったけど、杞憂だったか......。ん?)
アテルがまだノイトにしがみついている。隣には布団を剥いで寝ている朱羅が居た。
(まったく、だらしないなぁ......少し寝間着がはだけてるし......。)
ノイトが自分の布団を畳んで隣の部屋に入るとミドネイトとイグとレイクは既に目を覚ましていた。
「おはよう、ノイト。」
「おはよう。......今日はどうするの?ここで休む?」
「そうだね、ノイトもまだ回復してないだろうし今日は休もうか。」
「了解。」
「わしはオボロノサトに戻るが......ノイトはどうする?」
「そうですね、ツバメに顔だけ見せていこうと思います。」
そこでアテルが目を覚ました。
「ん〜?もう朝〜?」
「おはよう、アテル。結構寝てたね。」
「えへへ......ノイトがポカポカするからいっぱい寝ちゃった。」
「アテルはどうする?オボロノサト行く?」
「行く!ツルさんに忍術を教えてもらいに行く!!」
「ツルさん?」
「オボロノサトに居るくノ一だ。ツバメとスズメの師でもある。」
イグの補足でノイトが納得する。
「流石に全員で移動するのはアレですし、いくつかのグループに分けて行動しましょうか。」
[大文字]「うむ。それで良いだろう。私はルミナス様の護衛を務める。」[/大文字]
「分かりました。取り敢えずオボロノサトに行くグループとノービリアを観光するグループに分けるとして......それでも人数が多いような......。」
「それなら、隣の山にでも言ってみると良いよ。」
ミドネイトの発言の意図が分からなかったノイトは首を傾げたが、イグが説明してくれた。
「ノービリアの隣の霊峰には昔ここにあった絢爛都市・エオボロビアンを滅ぼしたという伝説の災害が封印されていたんじゃ。」
「朱羅のことですよね?出てきちゃってますけども......。」
「まぁ......力は衰えておらんようだったが、もし暴れ出してもここに居る者で抑え込めるだろうな。」
それも当然、何せ今ここに居るのは世界最強の称号を持つ者とノルティーク最強の称号を持つ魔剣士、そして[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態のときとは言え“全能の魔神”と渡り合った少年が居る。各々が朱羅と伍するかそれ以上の実力を持っていた。
「レイクさん。レイクさんから見て朱羅はどのくらい強いですか?」
[大文字]「うむ、私1人で戦った場合互角かやや私が押されるくらいだろうな。」[/大文字]
「なるほど、やっぱり魔神クラスの実力者であることは間違いないと......。」
「それを一手間に抑え込んだノイトもすごいけどね〜。」
「お父さんでもやろうと思えば出来たでしょ。朱羅みたいなのは1番扱いやすいタイプだし。」
「まぁね〜。」
「まぁ、それはともかく、オボロノサトグループ、ノービリア観光グループ、霊峰観光グループの3つに分けるとして、誰をどこに組み込みます?」
「わしはオボロノサトグループだな。アテルも。」
[大文字]「まだ幼きルミナス様に山道を歩かせるわけにもいかない。私とルミナス様はノービリア観光グループだ。」[/大文字]
「メルは霊峰観光グループかな。念のためリュミエも。」
「確かにその方が良いかもね。あそこは魔力が少し歪んでる。“[漢字]拍子の記章[/漢字][ふりがな]メトロノーム・バッジ[/ふりがな]”を持ってるリュミエを向かわせるのが良いだろう。」
「アテル、他の人たちはどこに向かわせるのが良いかな?」
「そうですね〜、“全能の魔神”のときの戦闘を見た限りだとノイト、リーリャ、ルミナス、レイク、イグはオボロノサトグループで、エルクス、シルイ、ザルヤ、フェノル、フィルマリー、ユリム、ユリメラ、朱羅、ミドネイトさんがノービリア観光グループで、メルク、リュミエ、カメリア、ラルカ、リオールが霊峰観光グループが良いと思う!」
「それならバランスも取れるね。良いと思うよ。」
「やったぁ〜!」
ミドネイトに褒められて喜んでいるアテルの声で他の人たちも目を覚ます。
「朝から騒がしいんだけど......?」
「ノイト、おはよ〜。」
「もうちょっとだけ寝かせて〜。」
「リュミエは別に寝なくても問題ないでしょ......。」
各々が開口一番寝ぼけていたりボーッとしていたり。個性はこういう所で見られるものである。
「何じゃ何じゃ朝から騒がしいのう......!」
「朱羅、おはよう。」
「おう、おはようさん。」
メルクが寝癖を撫でながら朱羅の方を見て口を開いた。
「ねぇ、朱羅ってもしかして“紅き災害”の朱羅珠雀?なんで封印解けてるの?」
「二百年も経てば封印も劣化するじゃろう。わしを興味本位で目覚めさせる身の程知らずが居なかったからわしが自力で出る羽目になったぞ。」
「ハァ......まぁ、厄介なことに変わりはないか。それで?ノイトくん、この後どうするの?」
「丁度さっきまで話してたところだよ。3つのグループに分けて観光。夜になったらまたここに集合。それだけ。」
「昨日あんなことがあったのに休むの......?ノルストラの方は大丈夫そう?」
メルクの質問にミドネイトが答えた。
「あの時は街全体にバリアを張っておいたから大丈夫だよ。今もステラの人が調査してるみたいだけど、特に問題はない。」
[太字][明朝体]『街全体にバリアを......?魔力消費が尋常じゃないはずだけど......。』[/明朝体][/太字]
「エル兄、お腹空いた〜。早く朝ごはん食べに行こ?」
カメリアが空腹を訴えていたため広間に朝食を摂りに行くことにした。
[中央寄せ]エリア〚ノルティーク大陸/学術都市・ノルストラ〛[/中央寄せ]
ドメリアスとイルムと数人の付き添いがノルストラに出向いている。辺りを見渡しても何事もないように平和だった。
「妙だな。確かに魔神の出現の報告を受けたはずだが。」
「平和ですね......住人への聞き込みで収穫があるか不安になるくらいに。」
「まぁ聞いてみないと分からんだろ。二人一組でペア組んで聞き込みだ。......ん?」
ドメリアスの目に留まったのはメイド服を来た女性。ノルティーク王城から着いてきたようだ。
「おい、今から聞き込みに行くがお前はどうする?着いてきた理由があるなら何か目的があるんだろ?」
「私は王女様方の行方を追っているだけです。近くにお二方の気配はありませんし、私はこのままここで待機します。」
「おぉ、そうか。それじゃあなんかあったら念話で報告を頼みたい。良いか?」
「えぇ、承知しました。」
ドメリアスを始めとするノルティーク帝国直属の研究調査機関・ステラの面々は聞き込みを開始した。
(......それにしてもあのメイド、やけに隠しているな。手駒にされたくないだとか目立ちたくないだとか、そういう理由だろうが気配の隠し方がわざとらしい。綺麗すぎる。)
ドメリアスのメモ帳に記されなかったそのメイドは、じっと時計塔の方を見つめていた。
[中央寄せ]エリア〚ヴェルグランド大陸/霊峰の町・ノービリア〛[/中央寄せ]
「さて、と。朝食も食べ終わったしさっき割り振ったグループで観光開始!一応貸し切りとは言えお風呂はまとめて入る方が良いだろうし遅くなりすぎないように!それじゃあ夜まで解散!!」
ノイトは同じくオボロノサトグループのリーリャ、ルミナス、イグ、レイク、アテルと町の外へと向かった。道中でアテルがノイトの手を取って尋ねてくる。
「ねぇノイト!私ね、オボロノサトに着いたらノイトに甘味屋のみたらし団子食べて欲しい!! すっごくおいしいから!」
「そうなの?楽しみだね〜!」
「きれいな川が見られる橋もあるんだよ〜!!」
「へぇ〜!良いね!!」
すっかりはしゃぐ子どもと保護者のような空気が流れているが、一応このグループのメンバーの中で現状1番強いのはアテルである。恐らく全回復したノイトでもアテルに完全に勝つことは不可能。そんな最強のスライムが幼女の姿で1人の少年に懐いていると誰が想像出来ようか。
リーリャがノイトの隣に並んで少しだけ距離を詰めてきた。
「ねぇノイト。他のグループの人たちは大丈夫かな?」
「大丈夫。ノービリア観光グループはフィルさんや朱羅が居るけど、お父さんが見ててくれるし問題ないでしょ。霊峰観光グループもラルカとリオールさんが居るしね。」
「あぁ〜、確かにそう考えるとバランス良いのかも。」
「そう。割り振りを考えてくれたアテルに感謝しないとね。」
「えへへ、どういたしましてですっ!!」
誇らしげに胸を張ったアテルを微笑ましげに眺めるルミナスも楽しそうに辺りの風景を見渡していた。
[大文字]「ルミナス様、足元にお気をつけください。」[/大文字]
[太字][明朝体]「あっ、そうでした!ありがとう、レイク。」[/明朝体][/太字]
[大文字]「いえ、この周囲の景色は確かに美しい......雄大な自然に見とれてしまうのも分かります。」[/大文字]
「あっ!見えてきた!!」
アテルが指差す方を見ると江戸時代のような町並みが広がっていた。
「イグ!ツバメとスズメは稽古場に居るよね?」
「そうだな。いつもこの時間はツルのところで稽古を付けてもらってるはずだ。」
「それじゃあ早速行こ〜う!!」
アテルの元気な声が一行にとっての到着の合図となっていた。
部屋に戻ったノイトはすぐにリュミエに枕を投げつけられた。
「ノイトくん反応鈍すぎ〜!」
「だから疲れてるんだって......。それはともかく、早く寝なさい。今何時だと思ってるの?」
「......2時?」
「違う、4時だよ。」
「え!?」
ノイトに関しては昨夜からずっと組織に乗り込んで幹部を倒し、さらに夜通し“知識の魔神”との戦闘に参加していたのだ。
「もうここまで来たらオールで良いんじゃない?」
「寝かせてほしいんだけど......。」
「え?“寝かしてけて欲しい”?それなら私が...」
「言ってない。」
そこでミドネイトが杖を掲げた。
「まぁまぁ、ノイトも疲れてるって言ってるし、みんなもまだ寝てないでしょ。ゆっくり休んでて良いよ。」
ミドネイトの杖から放たれた光が辺りを包みこんだかと思うと、外の月の位置が変わっていた。
[太字][明朝体]「ん?今、ミドネイト様は何をなさったのですか?」[/明朝体][/太字]
そこでラルカが月の位置を見ながらルミナスの問いに答える。
「月の位置が23時頃のものになっているな。時間を巻き戻したのだろう。」
「御名答。ほら、休んだ休んだ〜。」
ミドネイトに促されるまま全員が布団を敷き始めた。
「それで、ノイトくんの隣で寝るの?」
「「「私」」です!」
リーリャとリュミエとフィルマリーが同時に手を挙げる。無論修羅場である。
「なんでこうなったんだか......。」
「あぁ〜、そういう呪いだろうね。解呪はほぼ不可能だから諦めな〜。」
ミドネイトの何気ない発言にノイトが反応した。
「初耳なんだけど?」
「フィルマリーだったら気が付いてたんじゃない?」
「あ、はい!先生の言う通りです。最初に会ったときから呪いの気配は感じてたんですけど、特に問題もなさそうなので指摘はしませんでした!」
「それで今こういう問題が起きてるんですけど?ハァ......もう良いや、おやすみ。」
ノイトは布団を持って隣の部屋に布団を敷いた。余程修羅場に巻き込まれたくないのだろう。ノイトの心中を察したミドネイトは杖を掲げて全員にこっそりと眠気を施した。寝間着に着替えておらず壁に寄りかかって既に眠っていたフェノルの近くにエルクスとザルヤとシルイが集まり、今までそうしてきたかのように眠りに落ちた。ルミナスはレイクとカメリアの近くで寝息を立て始め、2人その側で見守ることにした。リーリャとメルクとリュミエはノイトが離れていってしまった原因が誰かで言い争っていたが急に睡魔に襲われて布団の上に倒れた。ユリムとユリメラは既に幸せそうに眠っている。残っているのはイグとラルカと朱羅だ。
「何じゃ......!? 急に眠り始めて......。」
「全員疲れているのだろう。この部屋はもう狭いことだ、私たちはノイトが居る方で休むことにしよう。」
そう言いながらラルカはミドネイトの方を見ていた。ミドネイトは微笑んで頷いている。ミドネイトの目から見ても1番平和な形で終わり、後で何か起こる心配がない者を残したようだ。
「イグさん、あとは僕が見守っておきます。」
「助かるな。ありがとう。」
ミドネイトは2人が隣の部屋へ入ったのを見送って部屋の明かりを消し、目を閉じた。
「ん......2人ともどうしたの?」
ノイトはもう既に部屋のど真ん中に堂々と敷いた布団の中に居た。ラルカと朱羅はその隣に自身の分を敷く。
「向こうの部屋はもう寝ているやつらばかりで狭いんだ。ここで休んでも問題ないな?」
「まぁ、それは構わないけど......あっちの部屋は大丈夫そう?」
「問題ない。お前の父上とイグが見守ってくれている。」
「じゃあ大丈夫か。」
朱羅は両手を頭の後ろに組んで天井を見つめていた。明かりが消えた部屋。魔力の淀みがない、静かで落ち着く空間。
しばらくボーっとしていた朱羅だったが、口を開いて隣のノイトに話しかけた。
「なぁ、ノイト。」
「......どうしたの?」
「わしは、なんでこんな風なんじゃ?」
「“こんな風”って?」
「わしは昔ここらに栄えていたエオボロビアンを滅ぼした災害じゃぞ?なぜ人間の隣で眠っているのか......。」
「......なるほど。このままで良いのか分からないんだね?」
「......よく分かったな。」
「そのくらいは僕の想像力で補えるから。......朱羅はさ、何が目的でエオボロビアンを滅ぼしたの?」
「そりゃあ......わしの恐ろしさを人間共に知らしめるためじゃ。」
「嫌われたかったの?」
「そんなわけなかろう。わしが求めていたのは知名度じゃ。」
「知名度?」
「強いやつ程知名度が高いものじゃろう。わしはもっと強くなるために強いやつと戦いたいんじゃ。」
「強者と出会い、さらなる成長を求める......それが本当の目的?」
「そうじゃな。」
「それで、今は僕の隣で寝てて、随分変わったことを憂いていると?」
「......まぁ、そんなもんじゃ。わしはこれからどうすれば良いんじゃろうなぁ......?あっちの部屋に居るミドネイトとか言うやつ、最強なんじゃろ?桁が違いすぎてわしでも届かんわい。」
「そうだね......あの人に関しては本当に規格外......僕より冷静だし判断力もあるし実力もある。僕の上位互換と言っても差し支えないでしょ。」
朱羅は上体を起こしてノイトを見つめた。
「......ノイトは............。」
「?」
「何故そんなに分かる?」
「えっと......何のこと?」
「わしの考えてることじゃ。聞き流すだけで良かったものを、わざわざ受け止めてわしの考えの整理までしよって。さらには自分を客観的に見据える視点まで持っておる。何故そんなに器用な人間で居られる?」
「......僕は、色々捨ててきたから。」
ノイトが一瞬見せた虚ろな目を見て朱羅の表情が強張る。
「それは......。」
そこで言葉を飲み込んだ。聞く勇気と受け止める責任がなかったからだ。
「......朱羅は、.........僕みたいにならないでね。大丈夫だと思うけど。」
「......分かっている。誰がお前のようなやつになれるか。」
「そう。なら良かった。」
「......っ、湿気た話は嫌いじゃ!わしはもう寝る!!」
「おやすみ。」
朱羅は再び横になって布団を被った。しばらくすると静かな寝息が聞こえてくる。眠ったようだ。
(僕が、器用............?偏った知識で筋通してるだけの僕が......?なんでそうも騙されるんだか............やっぱり僕は人と関わるのは苦手な方だよ。そもそも、なんで僕はこんなに他に人に懐かれる?)
「......弥哲。」
ラルカの呼びかけで正気に戻ったノイトはハッとしてラルカの方に振り向いた。
「眠れないのか?」
「あぁ〜、ちょっとね。考え事しちゃってて。」
「......さっき、メルクと何を話していたんだ?」
「え?あぁ、リーリャといつキスしたのか問い詰められたんだよ。」
「そうか。それは災難だったな。」
「まぁ、結果僕のガードが崩れてメルの思い通りになっちゃったけど......別に良いや。」
「......珍しいな、弥哲がガードを崩されるなんて。以前は絡んできた不良に怒鳴られても冷静に論破出来るような人間だっただろうに。」
「そういう系は今でも出来るから良いんだよ。ただ、最近はちょ〜っと緩んできてるんだよね。」
「原因は掴めているのか?」
「うん。一応自業自得だよ。リーリャとキスしたときに時間止めただけだけど。」
「あの魔法か......。普段の代償を変えたのか?」
「そうだね。普段は僕の時間と引き換えに対象を止めるもの。だけど、そのときは僕も動かないといけないし、逆にあの場に居たみんなは止めないと行けない。」
「なるほど。それで何を代償にしたんだ?」
「僕の冷静さだよ。」
「そういうことか。だがまぁ、弥哲のガードが崩れるのがそっち方面だけであれば問題なかろう。」
「一応それ以前の僕でもパニクることはあるからね?」
「それは余程の緊急事態だろうな。図書館で地震が起きても冷静に来観客に指示が出来ていたお前が崩れる姿はなかなか想像出来ん。」
「......まぁ、前世では捨てたはずものを現世で拾っちゃったからかな......。変わってるのは僕の方だよ。」
「そうか?嫌味も言うようになったし煽りにもさらにキレがかかったようだが、こうして話していると、お前は前世とあまり変わらんぞ。」
「......そうかな?」
「あぁ。忘れなるなよ、お前と1番付き合いが長いのは私だからな。」
ラルカが手を伸ばしてそっとノイトの頬に触れた。
「現世でもまた会えたと分かったとき、私はすごく嬉しかった。」
(ん......?ラルカまでガード崩そうとしてきてるな......。まぁ、良いや。考えるのが面倒だ、し......?)
ラルカが額をくっつけてくる。超至近距離からラルカの碧い瞳がノイトを覗き込んでいた。キョトンとしているノイトを見てラルカが笑う。
「アハハッ............弥哲のそういう顔、始めて見たかも。」
「ん......世宥の方こそ、ここまで近いのは始めてじゃない?」
「そうかもね〜。」
「......そろそろ寝よっか。もう遅いし、明日もゆっくり出来ると思うから。」
「そうだね。」
そのとき朱羅が2人の方を見て鬱陶しそうな目線を向けてきた。
「おい、いつまで[漢字]巫山戯[/漢字][ふりがな]ふざけ[/ふりがな]ているんじゃ、眠れないじゃろ。」
「んん?! あぁ、朱羅ごめん......。」
「い、今のは......その......忘れろ......!!」
「ハァ〜......まったく。」
気まずさ故に離れた2人は各々の布団に潜って寝た。
翌朝。目を覚ますとちゃんと朝になっていた。
(お父さんの魔法でどうなるか少しだけ不安だったけど、杞憂だったか......。ん?)
アテルがまだノイトにしがみついている。隣には布団を剥いで寝ている朱羅が居た。
(まったく、だらしないなぁ......少し寝間着がはだけてるし......。)
ノイトが自分の布団を畳んで隣の部屋に入るとミドネイトとイグとレイクは既に目を覚ましていた。
「おはよう、ノイト。」
「おはよう。......今日はどうするの?ここで休む?」
「そうだね、ノイトもまだ回復してないだろうし今日は休もうか。」
「了解。」
「わしはオボロノサトに戻るが......ノイトはどうする?」
「そうですね、ツバメに顔だけ見せていこうと思います。」
そこでアテルが目を覚ました。
「ん〜?もう朝〜?」
「おはよう、アテル。結構寝てたね。」
「えへへ......ノイトがポカポカするからいっぱい寝ちゃった。」
「アテルはどうする?オボロノサト行く?」
「行く!ツルさんに忍術を教えてもらいに行く!!」
「ツルさん?」
「オボロノサトに居るくノ一だ。ツバメとスズメの師でもある。」
イグの補足でノイトが納得する。
「流石に全員で移動するのはアレですし、いくつかのグループに分けて行動しましょうか。」
[大文字]「うむ。それで良いだろう。私はルミナス様の護衛を務める。」[/大文字]
「分かりました。取り敢えずオボロノサトに行くグループとノービリアを観光するグループに分けるとして......それでも人数が多いような......。」
「それなら、隣の山にでも言ってみると良いよ。」
ミドネイトの発言の意図が分からなかったノイトは首を傾げたが、イグが説明してくれた。
「ノービリアの隣の霊峰には昔ここにあった絢爛都市・エオボロビアンを滅ぼしたという伝説の災害が封印されていたんじゃ。」
「朱羅のことですよね?出てきちゃってますけども......。」
「まぁ......力は衰えておらんようだったが、もし暴れ出してもここに居る者で抑え込めるだろうな。」
それも当然、何せ今ここに居るのは世界最強の称号を持つ者とノルティーク最強の称号を持つ魔剣士、そして[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態のときとは言え“全能の魔神”と渡り合った少年が居る。各々が朱羅と伍するかそれ以上の実力を持っていた。
「レイクさん。レイクさんから見て朱羅はどのくらい強いですか?」
[大文字]「うむ、私1人で戦った場合互角かやや私が押されるくらいだろうな。」[/大文字]
「なるほど、やっぱり魔神クラスの実力者であることは間違いないと......。」
「それを一手間に抑え込んだノイトもすごいけどね〜。」
「お父さんでもやろうと思えば出来たでしょ。朱羅みたいなのは1番扱いやすいタイプだし。」
「まぁね〜。」
「まぁ、それはともかく、オボロノサトグループ、ノービリア観光グループ、霊峰観光グループの3つに分けるとして、誰をどこに組み込みます?」
「わしはオボロノサトグループだな。アテルも。」
[大文字]「まだ幼きルミナス様に山道を歩かせるわけにもいかない。私とルミナス様はノービリア観光グループだ。」[/大文字]
「メルは霊峰観光グループかな。念のためリュミエも。」
「確かにその方が良いかもね。あそこは魔力が少し歪んでる。“[漢字]拍子の記章[/漢字][ふりがな]メトロノーム・バッジ[/ふりがな]”を持ってるリュミエを向かわせるのが良いだろう。」
「アテル、他の人たちはどこに向かわせるのが良いかな?」
「そうですね〜、“全能の魔神”のときの戦闘を見た限りだとノイト、リーリャ、ルミナス、レイク、イグはオボロノサトグループで、エルクス、シルイ、ザルヤ、フェノル、フィルマリー、ユリム、ユリメラ、朱羅、ミドネイトさんがノービリア観光グループで、メルク、リュミエ、カメリア、ラルカ、リオールが霊峰観光グループが良いと思う!」
「それならバランスも取れるね。良いと思うよ。」
「やったぁ〜!」
ミドネイトに褒められて喜んでいるアテルの声で他の人たちも目を覚ます。
「朝から騒がしいんだけど......?」
「ノイト、おはよ〜。」
「もうちょっとだけ寝かせて〜。」
「リュミエは別に寝なくても問題ないでしょ......。」
各々が開口一番寝ぼけていたりボーッとしていたり。個性はこういう所で見られるものである。
「何じゃ何じゃ朝から騒がしいのう......!」
「朱羅、おはよう。」
「おう、おはようさん。」
メルクが寝癖を撫でながら朱羅の方を見て口を開いた。
「ねぇ、朱羅ってもしかして“紅き災害”の朱羅珠雀?なんで封印解けてるの?」
「二百年も経てば封印も劣化するじゃろう。わしを興味本位で目覚めさせる身の程知らずが居なかったからわしが自力で出る羽目になったぞ。」
「ハァ......まぁ、厄介なことに変わりはないか。それで?ノイトくん、この後どうするの?」
「丁度さっきまで話してたところだよ。3つのグループに分けて観光。夜になったらまたここに集合。それだけ。」
「昨日あんなことがあったのに休むの......?ノルストラの方は大丈夫そう?」
メルクの質問にミドネイトが答えた。
「あの時は街全体にバリアを張っておいたから大丈夫だよ。今もステラの人が調査してるみたいだけど、特に問題はない。」
[太字][明朝体]『街全体にバリアを......?魔力消費が尋常じゃないはずだけど......。』[/明朝体][/太字]
「エル兄、お腹空いた〜。早く朝ごはん食べに行こ?」
カメリアが空腹を訴えていたため広間に朝食を摂りに行くことにした。
[中央寄せ]エリア〚ノルティーク大陸/学術都市・ノルストラ〛[/中央寄せ]
ドメリアスとイルムと数人の付き添いがノルストラに出向いている。辺りを見渡しても何事もないように平和だった。
「妙だな。確かに魔神の出現の報告を受けたはずだが。」
「平和ですね......住人への聞き込みで収穫があるか不安になるくらいに。」
「まぁ聞いてみないと分からんだろ。二人一組でペア組んで聞き込みだ。......ん?」
ドメリアスの目に留まったのはメイド服を来た女性。ノルティーク王城から着いてきたようだ。
「おい、今から聞き込みに行くがお前はどうする?着いてきた理由があるなら何か目的があるんだろ?」
「私は王女様方の行方を追っているだけです。近くにお二方の気配はありませんし、私はこのままここで待機します。」
「おぉ、そうか。それじゃあなんかあったら念話で報告を頼みたい。良いか?」
「えぇ、承知しました。」
ドメリアスを始めとするノルティーク帝国直属の研究調査機関・ステラの面々は聞き込みを開始した。
(......それにしてもあのメイド、やけに隠しているな。手駒にされたくないだとか目立ちたくないだとか、そういう理由だろうが気配の隠し方がわざとらしい。綺麗すぎる。)
ドメリアスのメモ帳に記されなかったそのメイドは、じっと時計塔の方を見つめていた。
[中央寄せ]エリア〚ヴェルグランド大陸/霊峰の町・ノービリア〛[/中央寄せ]
「さて、と。朝食も食べ終わったしさっき割り振ったグループで観光開始!一応貸し切りとは言えお風呂はまとめて入る方が良いだろうし遅くなりすぎないように!それじゃあ夜まで解散!!」
ノイトは同じくオボロノサトグループのリーリャ、ルミナス、イグ、レイク、アテルと町の外へと向かった。道中でアテルがノイトの手を取って尋ねてくる。
「ねぇノイト!私ね、オボロノサトに着いたらノイトに甘味屋のみたらし団子食べて欲しい!! すっごくおいしいから!」
「そうなの?楽しみだね〜!」
「きれいな川が見られる橋もあるんだよ〜!!」
「へぇ〜!良いね!!」
すっかりはしゃぐ子どもと保護者のような空気が流れているが、一応このグループのメンバーの中で現状1番強いのはアテルである。恐らく全回復したノイトでもアテルに完全に勝つことは不可能。そんな最強のスライムが幼女の姿で1人の少年に懐いていると誰が想像出来ようか。
リーリャがノイトの隣に並んで少しだけ距離を詰めてきた。
「ねぇノイト。他のグループの人たちは大丈夫かな?」
「大丈夫。ノービリア観光グループはフィルさんや朱羅が居るけど、お父さんが見ててくれるし問題ないでしょ。霊峰観光グループもラルカとリオールさんが居るしね。」
「あぁ〜、確かにそう考えるとバランス良いのかも。」
「そう。割り振りを考えてくれたアテルに感謝しないとね。」
「えへへ、どういたしましてですっ!!」
誇らしげに胸を張ったアテルを微笑ましげに眺めるルミナスも楽しそうに辺りの風景を見渡していた。
[大文字]「ルミナス様、足元にお気をつけください。」[/大文字]
[太字][明朝体]「あっ、そうでした!ありがとう、レイク。」[/明朝体][/太字]
[大文字]「いえ、この周囲の景色は確かに美しい......雄大な自然に見とれてしまうのも分かります。」[/大文字]
「あっ!見えてきた!!」
アテルが指差す方を見ると江戸時代のような町並みが広がっていた。
「イグ!ツバメとスズメは稽古場に居るよね?」
「そうだな。いつもこの時間はツルのところで稽古を付けてもらってるはずだ。」
「それじゃあ早速行こ〜う!!」
アテルの元気な声が一行にとっての到着の合図となっていた。