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本作は一部を除きフィクションです。
一部を除き、実在する人物、出来事、組織とは関係ありません。

また、一部微細な暴力表現が含まれている場合があります。
これを苦手とする方は閲覧をお控えいただくことをお勧めします。

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世界に溢れる夢

#132

132.“紅き災害”

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

イグは“紅き災害”がどこか遠くの方を見ていることに気がつく。
(あの方角......ノルティーク大陸か!)
跳び上がったところで炎の竜がイグを襲う。
[中央寄せ][斜体][明朝体]居合[[漢字]愛喰[/漢字][ふりがな]まなぐい[/ふりがな]][/明朝体][/斜体][/中央寄せ]
イグの目の映った“紅き災害”は女性の姿をしていた。
「その老体で立ち向かってくるとは大した度胸じゃ。」
次の瞬間、イグは猛風で地面へと叩きつけられた。受け身をとったため大したダメージはないようだが、かなり遠くまで飛ばされてしまった。
「さて、と......。」
“紅き災害”はノルティーク大陸の方を見ている。
「何か居るのぉ......行ってみるか。」
そのまま嵐と共に“紅き災害”はノルティーク大陸の方角へと飛んでいってしまった。当然そのまま見過ごすわけにもいかず、イグもすぐに駆け出していく。
「おぉ〜!なんだか面白そう!!」
その後ろ姿を見ていた黒いスライム・アテルがイグに続いて駆け出していった。

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚ノルティーク大陸/学術都市・ノルストラ〛[/中央寄せ]

ノイトの魔力が底を突き、“知識の魔神”を散り散りに刻んでいた時計の針も消えてしまった。街の建物の屋根の上でフラついたノイトだったが自力でなんとか踏みとどまる。
(あと200ページ弱......!もうちょっと削りたかったけど、ここからは地道に削るしかない!!)
しかしノイトの魔力はもう残っていない。[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]ももう残り2本だ。
「ノイトくん!」
リュミエがノイトの元へと跳んできた。
「ノイトくん、大丈夫?もう、頑張りすぎだよ......ちょっとは休んで。」
「そういうわけにもいかないでしょ......。まだページは残ってる。他の人も疲れてるんだし、僕もやらなきゃ......!」
リュミエがノイトにデコピンをした。
「[明朝体]あだっ[/明朝体]」
「ノイトくん。ノイトくんを楽にする方法はいくらでもあるけど、それは全部ノイトくんが望む方法じゃないでしょ。」
「そうだけど......だから何......?」
「どうしても行くっていうなら私の言う事聞いて。お願い。」
「分かった......聞くから。良識の範囲内で。」
「それじゃあ、私に捕まってて。」
「......え?」
「捕まってて。」
「いや...」
「[太字]捕まってて。[/太字]」
「......はい。」
ノイトがリュミエの首元に手を回して体重を預けた。恐らくリーリャとメルクに見られたら後でさらに面倒なことになるだろう。
「なんでこうなるの?」
「私の手は2つしかないからね、塞がったら困るの。」
「僕がこうやってしがみついてるのも邪魔だと思うけど......。」
「良いの。自分の身体に関してそこまで執着してないから。ノイトくんと違って私の身体は魔神のだし。」
リュミエはワイヤーを駆使して“知識の魔神”の周囲を飛んでいく。
「リュミエ、自分の身体は大事にしてよ?執着がなかったとしても...」
「良いの。ノイトくんに全部あげるから。」
「要らないって......。」
「ハァ............とにかく、今はノイトくん自身の心配をして。」
「はぁーい......。で、僕を連れて何をするつもり?」
「この状態で私が“知識の魔神”の周りを移動して、ノイトくんが状況を把握する。それで私が[[漢字]感覚共有[/漢字][ふりがな]シェアリング[/ふりがな]]でみんなに共有......で良い?」
「分かった。それで良い。リュミエへの負担は?」
「問題ない。誰かさんと違ってまだまだ元気だからねー。」
「それなら良かった。でも、念のためちょっとだけ魔力くれない?万が一のときに僕が困る。」
「......分かった。ご自由にどうぞ。」
「ありがとう。」
[中央寄せ][[漢字][太字]魔力吸収[/太字][/漢字][ふりがな]アブソーブ[/ふりがな]][/中央寄せ]
「んぅ............。」
「変な声出すな、こっちが恥ずかしくなる!」
「ふぅ〜ん?恥ずかしいんだ?......エッチ。」
「オッケー、後で覚悟しとけ。」
「エッチなことの?」
「違う。下ネタ苦手だからそういう発言は控えてくれないかな......?」
「はぁーい。」
ある程度魔力を吸い取ったノイトは状況把握を始めた。それと同時にリュミエも魔法を発動する。
[中央寄せ][[漢字][太字]感覚共有[/太字][/漢字][ふりがな]シェアリング[/ふりがな]][/中央寄せ]
「え〜っと、“知識の魔神”の残りライフゲージ数、もといページ数は185。腕の数は現時点で確認出来るのが64本。そのうち32本は別個体のもの。4方向に8本ずつね。」
「ノイトくん、一応他の人たちへの指示もお願い出来る?」
「分かった。リーリャはそのままそこで待機。必要に応じてまた援護をお願い。メルクとカメリア様、それからエルクス様とレイクさんは4方向に別れて腕の対処を。ルミナとシルイさんは一度時計塔の方に退がってもらって、ラルカとザルヤさんとフェノルさんが遠距離からの腕を片付ける組の援護、リオールさんとフィルさんは引き続きユリメラさんの捜索ってところですね。」
「......前衛を務めるのは私?」
「僕も最低限のことはやる。良いね?」
「うん!」
各々が与えられた役職に就いて攻撃を開始した。
[大文字]
[中央寄せ][太字][明朝体][斜体]『[漢字]閼愛流霞勢[/漢字][ふりがな]アラブルカゼ[/ふりがな]』[/斜体][/明朝体][/太字][/中央寄せ]

[中央寄せ][太字][明朝体]『[漢字]散華の舞踏[/漢字][ふりがな]ブルーム[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/中央寄せ]

[中央寄せ][太字][明朝体][斜体]〔[漢字]雷帝神[/漢字][ふりがな]トール[/ふりがな]〕[/斜体][/明朝体][/太字][/中央寄せ][/大文字]

メルク、カメリア、レイクがそれぞれの腕へと斬りかかる中で、1人だけ異質な雰囲気を纏う人物が居た。ノルティーク帝国の第1王子・エルクスだ。
[大文字][大文字]
[中央寄せ][太字][明朝体]『[漢字]虚狼[/漢字][ふりがな]フェンリル[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/中央寄せ][/大文字][/大文字]

彼の持つ聖剣・エクスカリバーから立ち上る魔力の幻影のようなものが形をなして巨大な狼の巨像を映し出す。魔神の腕が吸い寄せられるようにその像へ襲いかかっていくが、腕は全て空を切る。エルクスが剣を振るうと虚狼が駆け出して一瞬のうちに魔神の腕を噛みちぎっていった。
その様子を見ていたノイトとリュミエが感嘆の声を漏らす。
「うひょ〜、すごいねあの人。ノイトくん、あれ出来る?」
「んー、やろうと思えばそれらしいものは再現出来るかもしれないけど、魔剣術としてはあれは最高峰じゃないかな?ノルティーク王族の質の良い魔力と剣術センスが組み合わさったものだね。」
「まさに奇跡......みたいな?」
「流石にそうは言わないよ。あれはエルクス様の努力ありきの結果。人の努力と奇跡だなんて、僕は呼んだりしない。」
「......そっか!」

続いてラルカとザルヤとフェノルが離れた場所から援護を始める。
[大文字]
[中央寄せ][斜体][太字][明朝体]『[漢字]標的狙撃[/漢字][ふりがな]エイム・シューティング[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/斜体][/中央寄せ]

[中央寄せ][斜体][太字]『[漢字]天光雨矢[/漢字][ふりがな]イーオケアイラ[/ふりがな]』[/太字][/斜体][/中央寄せ]

[中央寄せ][明朝体][召喚:[太字]アルラウネ[/太字]][/明朝体][/中央寄せ][/大文字]

遠距離からでも正確に魔神の腕に命中していて、どんどん優勢になっていった。
ノイトは周囲が予想以上に早く片付いたため、リュミエに捕まっていた腕を離す。
「ノイトくん!?」
「大丈夫。ほら、攻撃準備して〜。」
「分かってるって!」

[水平線]

[中央寄せ][大文字][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]時操御神[/漢字][ふりがな]デウス・テンポリス[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/大文字][/中央寄せ]

[中央寄せ][大文字][大文字][斜体][太字][明朝体]{[漢字]幻惑神[/漢字][ふりがな]パンタソス[/ふりがな]}[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/大文字][/中央寄せ]

[水平線]

リュミエの幻惑の能力によってノイトの背後に現れた天をも穿つ巨大なヒトガタが巨大な大鎌を“知識の魔神”へと容赦なく振り落とした。
その結果、“知識の魔神”が真っ二つに裂けた。

[斜体]「────。」[/斜体]

ノイトは鎌を振るうように動いていたためバランスを崩して近くの屋根へと着地する。
「......っ、ハァ......ハァ......!どうだ......?」
ページがまとめてめくられた。しかし、めくれたのは10ページ程だった。
(足りない......どうしたものか............。)
「ノイトくん、大丈夫?」
「大丈夫......。ほら、まだ残ってるから僕に構わず行って!」
「でも......。」
「大丈夫だから、ね?」
「......分かった............。少しでもツラくなったらすぐに言ってね!!」
リュミエを見送ってノイトはマジックバッグの中の水瓶の中身を飲み込んだ。
「ふぅ......これ以上ツラくなったら何も言えずに倒れるっての。」
少しずつではあるが“知識の魔神”は確かに削れている。今の戦力でも勝てない相手ではない。しかし、油断は禁物である。
「............ん?何か来た......?」
ノイトが振り返ると、遠くの空から何かが迫ってきている。よく目を凝らしてみてみると、それは人の形をしていた。
(人間の気配じゃないな......戦闘狂の......まさかまた魔神じゃないだろうね。)
それどころではないノイトは“知識の魔神”の方へと視線を戻し、[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]を飲み込む。そこで先程こちらへ向かってきた魔力の気配がノイトの斜め後方で止まった。
「なるほど、こりゃあ楽しそうじゃのう......。」
「......。」
「お、なんじゃ小僧。わしの美貌に惚れたか?」
「あなた誰です?」
「わしは“紅き災害”・[漢字]朱羅珠雀[/漢字][ふりがな]しゅらみじゃく[/ふりがな]じゃ!」
「......で、何の用ですか?」
「待て待てい!わしの名を聞いてなんとも思わんのか!?」
「まぁ、ただの自己紹介でしょう。」
「ハァ......分かっとらんのぉ......。ならば教えてやろう!」
「今忙しいんですけど?」
「まぁ聞け。わしはかつて絢爛都市・エオボロビアンを滅亡に追い込んだ“紅き災害”!人々が言うには、わしは“街を焼き、空を歪め、大地を震わす祟り神”だそうじゃ!恐れ慄き、崇め祀れ!わしこそが此岸の覇者じゃ!!」
「はぁ......。」
「何じゃそのピンと来ていないような声は!だらしないぞ!みっともない!!」
「( ᥪ ᥧ ᥪ )」
「何じゃその顔はぁ!! わしが怖くないのか!」
「まぁ、そうなんじゃないですか?」
「ぬぅ......妙に落ち着いた小僧め。さてはお主、転生者じゃな?わしを長らく封印していた一族の忌まわしき血筋め。」
「半分正解、半分不正解、と言ったところですかね。」
「転生者か......懐かしいな。だがわしの名を知らんとはどういうことじゃ?」
「それ以上の脅威でも現れて忘れられたんでしょうよ。」
「何じゃと?わしを差し置いてわし以上の者が現れるとは許せん......。」
「まぁ、そんなことどうでも良いんで手伝うかどっか行くかしてください。」
「まぁ待て。わしは災害と呼ばれた女じゃ。その実力を魅せてやろう!」
「............。」
朱羅珠雀が袂から取り出した扇を広げ、仰ぐように炎を魔神へと放つ。

[中央寄せ][太字][明朝体][大文字]『乱舞・桜灯竜』!![/大文字][/明朝体][/太字][/中央寄せ]

「どうじゃ?」
放たれた炎は舞って輝く桜を纏い、魔神の腕を燃やし尽くした。今の技と魔力量から推し量るに、恐らく本気を出せばレイクとのタイマンで互角程度だろう。
「普通に魔神レベルじゃないですか......。」
「魔神?何じゃそれは。」
「アナタそんなに昔から居るんです?」
「左様。それはともかく......どうじゃ?わしの恐ろしさを思い知ったか?!」
「......良かった......。」
「?」
「丁度人手が足りてなかったんですよ。来てくれて助かりました!」
「......そうか......。まぁ、どういたしまして......?」
こうしてノイトは伝説を丸く抑え込んだ。少し遅れてイグがやってくる。
「ノイト!」
「ん?イグさん!どうしたんですか?」
「ノービリアの山の祠に封印されていた災害が封印を破って外に出てきてしまってな......幸いノービリアやオボロノサトには被害は出ていないものの、そのまま放っておくわけにもいかず追いかけてきたのだが......。」
イグが朱羅珠雀の方を見た。
「お主、何故ここまで来たのだ?」
「そりゃあ、あの膨大な魔力を感じたからに決まっておろう。実際にこの目で確かめに来たのじゃ。おい転生者の小僧、名は何という?」
「ノイト=ソルフォトスです。」
「ノイト、賭けをしよう。あれを先に狩った方にもう片方が魂を差し出す。どうじゃ?」
「興味ないですね。子供ですか?」
「なんじゃと!?」
ため息を吐いたノイトが呆れながら朱羅珠雀へと話した。
「あのですね、こっちは遊びじゃないんですよ。僕は今疲れてるんです。この状態だと並の魔物を倒せるかどうかすら怪しい。それに、0か100かの勝負は結果次第でコスパが悪いでしょう。」
「コスパ......?」
「要するに、損得の落差が大きすぎて乗り気にならないんです。僕はほぼ同じ条件をスタートとして、そこからどう立ち回って相手を上回るかの過程が好きなんです!」
「あぁ......んん......?」
「ハァ......まぁ良いです。[漢字]朱羅[/漢字][ふりがな]シュラ[/ふりがな]さん、取り敢えず力を貸してください。」
「わしの名前は朱羅珠雀じゃ!略すな!!」
「朱羅。」
「だから略すな!!」
「かわいいじゃないですか、“朱羅”って?」
「お前......今ここで焼き尽くしてやろうかぁ......?あぁ?」
ノイトは体力も魔力も残っていない割には余裕があるように見える。不敵に笑ったノイトは朱羅珠雀へとトドメを指した。
「へぇ〜、あそこに居る“知識の魔神”は流石に怖いんだ?だからすぐに殺せるであろう僕を先に?まぁ、怖いならしょうがないですけどね!怖いなら行かなくて大丈夫です!! 怖いんだよね、朱羅ちゃん?」
[斜体]「わしを舐めるなァ!! わしは“紅き災害”・朱羅珠雀じゃァァァ!!!!」[/斜体]
完全にノイトの手のひらの上で転がされている。そのまま怒りに任せて“知識の魔神”へと特攻していき、炎の竜が“知識の魔神”に纏わりついた。赤い電撃が無数に走り、“知識の魔神”のページがめくられていく。
「んんー、もうちょっと突き放した感じの方が良かったですかね?」
「さぁ、煽りはわしの担当分野ではないからな......。」

「私は良い感じだと想いますよ〜!」
そこで入ってきたのはアテルだ。魔力が尽きているノイトを見てアテルがノイトの肩によじ登った。
「魔力が全然ないです!空っぽです!」
「連戦だったからね......。」
「なら、私の魔力を差し上げましょう!」
「大丈夫。僕は最悪の場合どうとでもなるから。」
「魔力は必要ないですか?」
「まぁ、今は必要ないかも。」
「そうですか......。分かりました!必要になったらいつでも頼ってください!」
「うん、ありがと。」
「えへへ〜」
魔力が枯れきった少年と悍ましい程の魔力を持つスライムが談笑しているのはなかなかにシュールだった。ましてやここは“知識の魔神”との戦闘の前線から数百メートルも離れていない場所である。常人の精神では持たないだろう。
「イグさんは朱羅を追ってここまで来たんですよね?この後はどうするつもりです?朱羅は僕たちで引き取っても良いですけど......。」
「まぁ、ノイトたちが引き取るなら問題はないだろう。わしはそうだな、少し休んだら帰るとするか。ツバメとスズメが待っている。」
「スズメ......?」
「そうか、以前オボロノサトに来たときには会っていなかったか。スズメはツバメの妹だ。」
「なるほど。2人ともかわいらしい鳥の名前ですね。」
アテルはノイトとイグの会話を聞きながら“知識の魔神”の方を見ていた。
「ん?アテル、どうしたの?」
「いや、膨大な魔力......美味しそうだなと思いまして!」
「あはは......食べちゃダメだからね。」
「は〜い。」
「あ、そうだ。丁度イグさんに伝えておくことがあったんですよ。」
「何だ?」
「ザールナイト......さん?が“身体を大事にして欲しい”ってイグさんに。」
「......そうか、ザールナイトが............。分かった。伝言ありがとう。」
「いえ、まぁ僕も助けてもらった側ですし。このくらいは恩返しにもなりませんよ。ぬいぐるみになってるのだけ不憫ですけどね。」
「そうか............ん?ぬいぐるみ?」
「あぁ〜、あの人は今、フィルさんのコレクションにされてぬいぐるみ化してます。」
「............。」
「............。」
「......道理で連絡が途絶えていたわけだな。」
「......心中お察しします。」
ノイトがふとアテルをつついてみるとひんやりしていて気持ちよかった。
「柔らかい......。」
「えへへっ、どうですか〜?」
「癒される......。真っ黒だけどね。」
「それなら、これでどうでしょうか!!」
アテルがみるみる形を変えていき、その姿の今の人格に合った天真爛漫そうな幼女のようになっていた。髪はツヤがありサラサラしていて、腕も幼女らしい質感に見える。
「はい!これならノイトと同じ姿なのでギューも出来ますよ!」
「外見の年の差で問題が出てくるからそれは流石に......。」
「大丈夫です!ほら!」
アテルが抱きついてきた。スライムだとは信じられない程人間らしく、温もりを感じる。体力もあまり残っていないため諦めたノイトがアテルの頭をそっと撫でた。
「ポカポカして温かい........................スゥ......。」
アテルはそのまま寝てしまった。
「ん、ちょっとアテル?......ハァ............しょうがないな。」
ノイトはマジックバッグの中から[漢字]希璋石[/漢字][ふりがな]フィスリテル[/ふりがな]を取り出して時計塔の隣の小屋にあるハンモックと入れ替えた。
[中央寄せ][[漢字][太字]位置置換[/太字][/漢字][ふりがな]サブスティテュート[/ふりがな]][/中央寄せ]
ハンモックにアテルを寝かせて再び“知識の魔神”の方を向く。
(......あと100ページ......フィルさんとリオールさんがユリメラさんの位置を見つけられれば良いんだけど......。)
ノイトは体力を温存するためにその場に座り、しばらく様子を見ていた。その途中であることを思い出す。
(ん......?あれ?フィゼリアのこと忘れてた!!)
組織の研究所から連れ出してシルイに預けようと思っていたところだったはずが、“知識の魔神”との戦闘でそれどころではなくなってしまっていた。運よくこの戦闘にエルクス一行が駆けつけてきてくれたため手間は省けたが、肝心のフィゼリアを放っておいてしまっては仕方がない。
「イグさん!アテルと僕のハンモックをお願いできますか?ちょっと探さなきゃいけない子が居て......!」
「分かった。ここは任せろ。」
「ありがとうございます!!」
ノイトは屋根から飛び降りて先程“知識の魔神”を見つけた辺りまで引き返す。周囲を見渡すと、近くの草陰に隠れていた。
「フィゼリア......良かった!ごめんね、いきなり置いて行っちゃって。」
「......怖かった。」
「もう大丈夫だよ。よし、時計塔まで行くから捕まってて!」
ノイトはフィゼリアを抱きかかえてミストルの町の時計塔の方へと走り出す。遠くで“知識の魔神”とノイトの仲間たちの戦いが繰り広げられているが、攻撃の余波などはここまで届いていないようだ。

しばらく走って時計塔に辿り着くと、ルミナスとシルイが既に到着していた。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん!」[/明朝体][/太字]「ノイトくん!」
「ルミナ、シルイさん、無事で何より。」
「あれ......その子は?」
「この子はフィゼリアです。例の組織の研究所で実験体として捕まってたので連れ出してきました。」
「......。」
黙ってシルイを見つめているフィゼリアを見てシルイが微笑む。
「初めまして、フィゼリア。私はシルイ。よろしくねっ!」
シルイが出した手におずおずと手を伸ばし、触れた途端にフィゼリアの表情が柔らかくなった。
「フィゼリア、僕よりもシルイさんの方が君の良い所をたくさん見つけてくれると思う。だから、これからはシルイさんと一緒に居てくれる?」
「......うん!」
どうやらフィゼリアはシルイに懐いたようだ。その様子を見て微笑みながらルミナスがノイトへと話しかけてきた。
[太字][明朝体]「お兄ちゃん、お疲れ様です!さっきのお兄ちゃんの技、すごかったです......!! ......えっと......お怪我はありませんか?」[/明朝体][/太字]
「大丈夫だよ。ルミナの方は大丈夫?」
[太字][明朝体]「はい!レイクと......ラルカお[漢字]義姉[/漢字][ふりがな]ねえ[/ふりがな]様が守ってくれましたので!」[/明朝体][/太字]
「それなら良かったよ。」
[太字][明朝体]「......お兄ちゃん。」[/明朝体][/太字]
「......ん?どうしたの?」
[太字][明朝体]「ここに居る皆さんはものすごく強いです。私の何十倍も。......私も、皆さんのように強くなれるのでしょうか?」[/明朝体][/太字]
ルミナスの翡翠色の瞳に僅かに不安が揺れているようだった。ノイトはしゃがんでルミナスと目線をあわせる。
「大丈夫だよ。ルミナがそれを望むのであればきっとみんなと同じようになれるし、違う道で役に立とうと思えばみんなとは違う方向で強くなれるはず。」
[太字][明朝体]「違う方向で......?」[/明朝体][/太字]
「ルミナには、ルミナにしか出来ないことがあるでしょ。それを自分で見つけるのって、ワクワクしない?」
[太字][明朝体]「......!! します!ワクワク!!」[/明朝体][/太字]
「ふふっ、それで良いよ。ルミナ。」
立ち上がったノイトがルミナスに拳を出した。
「自分の生きる理由、焦る必要はないけど、探してみてねっ!」
[太字][明朝体]「......はいっ!!」[/明朝体][/太字]
“知識の魔神”の残り体力は95ページ。ノイト側の戦力も少しずつ削れているため次第に戦力差が縮められていくだろう。“紅き災害”・朱羅珠雀もとい朱羅が味方側の戦力となって尚、相手は厄介な魔神である。
(本当にいざというときに手は打ってくれる......僕は今出来ることを。)


作者メッセージ

 作者の御鏡 梟(みかがみ きょう)です。
今回は“紅き災害”・朱羅珠雀こと朱羅(シュラ)ちゃんの登場を描きました。イグやアテルとの再会もあり、味方陣営の戦力はさらに増えましたが......?次回もお楽しみに!!
本作を読んでの感想の他、キャラクターや世界観についての質問も受付けています。本作品を読んでいただき、ありがとうございました!!

感想・質問・考察などは
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[追記]
アテルが前線に出たらすぐに片付いてしまうので、アテルは正確にはノイト側の戦力としてカウントしていません。

2026/07/06 02:21

御鏡 梟 ID:≫ m9kR/WFBrng.A
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