世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
メルクとラルカはミストルの町にある時計塔へと辿り着いた。
「リーリャ!ルミナス様!リュミエ!」
メルクは時計塔の前に立っていた3人を見つけて名前を呼ぶ。振り返った3人が2人に気がついて駆け寄ってきた。
「メルク!ラルカ!無事で良かった......!」
「無事も何もあるか。私たちは問題ない。今問題があるのは......」
“知識の魔神”の方から轟音が響く。何かが爆ぜたような音。ラルカが振り返るとそこにはもう既に戦闘に入っているノイト、フィルマリー、リオールの姿があった。
「み......、ノイトに関しては幹部5人に続いての連戦だ。だがあいつを休ませる余裕はない。お前たちの無事が確認出来た以上、私たちも加わる他ないだろう。」
リーリャはラルカの方を見て黙っている。ルミナスは剣を構えて“知識の魔神”の方を向いた。
[太字][明朝体]「この規模ならレイクやエルクスお兄様やカメリアお姉様が駆けつけてくれるかもしれません。それまでに私たちが出来る限り魔神を削っておきましょう!」[/明朝体][/太字]
リュミエがゲデニスの火を取り出して尋ねる。
「ゲデニス、あの魔神って組織に新しく造られたやつだよね?“全能の魔神”よりも強いってことある?」
[太字][明朝体][大文字]〈いや、それはないだろう。メルクとラルカの記憶から、あれの名は“知識の魔神”だと分かっている。知識が全能を超えることはまずない。だが、手遅れになる前に止めたほうが良さそうだ。〉[/大文字][/明朝体][/太字]
ラルカは時計塔の小屋の中から自身のコートと剣を持ってきて準備を整えた。
「行くぞ。」
「コート?なんでそんなの来ていくの?」
「これも魔具だ。魔法・魔術の反射が出来る。装備しておいた方が良いだろう。」
レイクに続いてメルクも心の準備を整えた。
「正直あの3人の中に交じるのは無理があると懐うけど......。私たちはあの腕みたいなものを何とかしよう!」
リーリャも頷き、リュミエに声をかけた。
「リュミエ。私の魔法は私1人の力じゃ届かないかもしれない。だから、力を貸してくれる?」
「分かった!リーリャのサポート、任せて!!」
「話はまとまったな。私とメルクとルミナスが腕の相手。リーリャとリュミエが遠距離からあの3人の援護。散るぞ!」
「「おー!」」[太字][明朝体]「はい!」[/明朝体][/太字]「うん!」
ラルカに続いてメルクとルミナスが“知識の魔神”の方へと駆けていく。
[太字][明朝体]「[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]!!」[/明朝体][/太字]
ルミナスに呼ばれた[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]が現れ、ルミナスの剣をコーティングするように蒼い鞘となった。
「メルク、北東の腕と東の腕を任せた。」
「分かった。」
「ルミナスは南西の腕、私が西の腕だ。」
[太字][明朝体]「分かりました!」[/明朝体][/太字]
メルクが飛び上がって建物の屋根の上を駆け進んでいく。[漢字]青白磁の金属[/漢字][ふりがな]サスロイカ[/ふりがな]製のミゼリコルドダガーを左手に、普段使っているスティレットを右手に持ち、“知識の魔神”の腕の1本に攻撃を加えた。
[中央寄せ][太字][明朝体][大文字]『[漢字]遊震愛螺刺[/漢字][ふりがな]スサブルアラシ[/ふりがな]』[/大文字][/明朝体][/太字][/中央寄せ]
無数の刺突で“知識の魔神”の文字列のようなものが書かれた紙の腕が切り裂かれていく。もう1本の腕の拳が襲いかかってくるが、メルクはそれを膝蹴りで相殺した。
[中央寄せ][太字][明朝体][大文字]『[漢字]愛浪膝[/漢字][ふりがな]アイロニー[/ふりがな]』[/大文字][/明朝体][/太字][/中央寄せ]
メルクの様子を見ていたルミナスは感心の声を漏らす。
[太字][明朝体]「わぁ......流石メルク様、強いです!たった1人で同時に2本の腕を相手にして......!! 私も頑張らないと、ですね!」[/明朝体][/太字]
飛び上がったルミナスが“知識の魔神”の腕に向かって剣を振るった。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][斜体]『[漢字]竜討剣[/漢字][ふりがな]アスカロン[/ふりがな]』[/斜体][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
ルミナスの攻撃で腕が一撃で真っ二つになる。
[太字][明朝体](やりました......!!)[/明朝体][/太字]
ルミナスは背後に迫ってきていた腕に気が付かなかった。しかし、ラルカの銃弾によってその腕は冷気となって消える。背後から大量の冷気を受けたルミナスが振り返るとそこに腕があったと思わしき魔法の文字列が僅かに残っていた。
[太字][明朝体]「危ないところでした......。お[漢字]義姉[/漢字][ふりがな]ねえ[/ふりがな]様、ありがとうございます!!」[/明朝体][/太字]
「礼は良い。魔神がこの程度であるはずがない。気を抜くなよ。」
[太字][明朝体]「はい!」[/明朝体][/太字]
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][斜体]〔[漢字]魔力打撃[/漢字][ふりがな]マギノ・スパンク[/ふりがな]〕[/斜体][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[斜体]「硬っ......!!」[/斜体]
ノイトの攻撃ですら本体には大したダメージにはならないようだった。むしろ反作用でノイトの方にダメージが返ってくる。リオールが黒い鋼で出来た棘の魔術を発動したが、大きな傷にはならない。フィルマリーが巨大な光の柱を出現させようとした。
「えっ......!?」
「待て、フィルマリー!ここでやるのか!?」
ノイトとリオールが咄嗟に[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]で距離を取った直後、“知識の魔神”を囲う規模で白い光の柱が燦めく。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]上級魔法:〘ᚪᚾᚵᛖᛚ ᛚᚪᛞᛞᛖᚱ〙[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
“知識の魔神”が白い光の中に消えた。しかし、次の瞬間。何かのページがめくられる音がして、目の前には少しだけ巨大化した“知識の魔神”が居た。腕の本数は4本から8本に増え、恐らくその強度も上がっている。
「ウェーブ何まであるんだろうなこれ......。」
フィルマリーが再び詠唱を始めて上空に無数の光の柱が見えた。ラルカがその様子に気がついて呟く。
「漁火光柱......?」
否、すべて先程の上級魔術である。
「フィルさん待って!」
「フィルマリー!ここでやると街が壊れる!!」
フィルマリーは容赦なく無数の光の柱を“知識の魔神”へと浴びせた。腕が貫かれ、本体にも光の柱が降り注がれる。
何十回、何百回、ページをめくる音が聞こえ、また“知識の魔神”のそこに居た。フィルマリーは次第に魔力を消耗していっているが、まだ倒れなかった。
[斜体][太字]「ハァ......ハァ......ハァ......ハァ............。」[/太字][/斜体]
髪も息も乱れて来て、魔力も滲み出している。しかし、フィルマリーの目はただ“知識の魔神”の中に居るユリメラに向けられていた。
[斜体][太字]「待っててください、ユリメラ......今、助けますから............!!」[/太字][/斜体]
再び詠唱を行おうとしたフィルマリーがふらつき、リオールが咄嗟に支えた。
「フィルマリー、頭を冷やせ!このままじゃユリメラも助けられなくなるぞ!!」
[斜体][太字]「でも......ユリメラ......。」[/太字][/斜体]
そのとき、“知識の魔神”の腕が2人を叩き落とした。しかしノイトは理性で振り向きそうになるのを堪える。直後、ギリギリで“知識の魔神”の腕を受け止めた。
[斜体](気を抜いたら誰も守れなくなる......!!)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]記憶の剣先[/漢字][ふりがな]キオクノハリ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトが再現したのはかつて自身が幼少期に発動した禁忌魔法を再現した。皓く眩しい光を放つ槍が“記憶の魔神”を貫き止める。その隙に時計塔の方へ合図をした。
(来た......!ノイトからの合図!!)
リーリャはノイトからの合図を受け取って演奏を始める。
[中央寄せ][明朝体]『超級魔法:[明朝体][大文字][漢字]幻想奏楽[/漢字][ふりがな]パフォーマンス[/ふりがな][/大文字][/明朝体]』[/明朝体][/中央寄せ]
[中央寄せ][[漢字][太字]広範拡声[/太字][/漢字][ふりがな]アンプリフィケーション[/ふりがな]][/中央寄せ]
リュミエによる効果範囲の拡大によってリーリャの演奏は“知識の魔神”の元へも届いた。虹色の魔力を帯びた黒い五線譜が魔神の腕に絡みつき、同時に街を覆うように広がる。
(ノイトはきっと疲れてる......私が頑張らないと!!)
音符は光の粒となって街中に降り注いだ。
メルクもルミナスもラルカも、魔神の腕を少しでも多く落とすために奮闘しているが、先程のフィルマリーの上級魔術によってその腕の耐久度と数は増えている。
「リオールさん!フィルさんを止めてください!! このままじゃ増援が来る前に......。」
ノイトはそこであることに気がついた。
「分かった!フィルマリー、落ち着け!!」
(なんで僕は、増援が来ると確信していたんだ......?)
実際、増援は来るかもしれない。むしろこの状況だと来ない方がおかしい。しかし、だからといって不確定な事実に縋るのはノイトの普段の思考回路では発生しないエラーである。
「ノイト!! 動け!!」
次の瞬間、“知識の魔神”の顔のような部分にある目から出されたレーザーがいつの間にかノイトの目の前に跳んできていたラルカのコートによって弾かれていた。
「ラルカ......!」
「気を抜くな。」
ラルカに蹴飛ばされてノイトは街へと落下していく。しかし、途中で背中に魔力で出来た大きな翼が生えたようになり、背中に来るはずの衝撃が来なかった。
(これが“[漢字]翼の象徴[/漢字][ふりがな]ウィング[/ふりがな]”の効果......。そんなことは今はどうでも良い!ラルカのお陰で思考はリセット出来た。もう一度前線に!!)
ノイトは大きく翼を羽ばたかせて飛び上がった。武器を大きく振るってラルカへと迫っていた魔神の腕を弾き飛ばす。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力打撃[/漢字][ふりがな]マギノ・スパンク[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
反作用の方が大きいが、ラルカに攻撃が届くことはなかった。
「ラルカ、ルミナ1人に任せるのは流石に無理があると思うけど?」
「問題ない。先程お前は“増援”というワードで固まった。来るかどうかも分からないものだったからだろう。だが、レイクなら必ず来る。そこは信じろ。」
「......分かったよ。僕たちは本体と腕の相手をしよう。フィルさんとリオールさんはしばらく動かせない。」
「リーリャの魔法の拘束で少しは隙が出来ている。ノイトは本体を。援護は任せろ。」
「了解!」
ノイトが[漢字]魔霊晶[/漢字][ふりがな]アメジスト[/ふりがな]に魔力を込めて斬撃を放った。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力裂断[/漢字][ふりがな]マギノ・ガッシュ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
斬撃が本体に当たる直前に何かに弾かれたように見える。
(腕をどうにかしないといけないタイプか......。さっきよりも腕の本数と強度が上がってるっぽいし、何回もページをめくったのと関係がありそうだね。体力が一定未満になるとページをめくっていて、その度に回復......はないか。それじゃあ、ページの数だけライフゲージがあるようなタイプかも。今まで戦ってきた中で一番面倒だなぁ......。)
ノイトは手を“知識の魔神”の本体へと翳し、魔術を唱えた。
[中央寄せ][太字][大文字]上級魔法:〔[漢字]聖なる大槍[/漢字][ふりがな]ホーリー・ランス[/ふりがな]〕[/大文字][/太字][/中央寄せ]
甲高い金属音が響き、ノイトの魔法によって生み出された槍と“知識の魔神”のバリアが膠着状態に陥った。その間にリーリャの魔法によって拘束されていない腕がノイトへと迫る。
「邪魔だ。」
ラルカが放った銃弾が3本の腕を冷気に変えて消滅させた。
「一応僕1人でも今のは対処出来たけど......ありがと。」
「援護は任せろ、と言ったはずだぞ。お前は本体に集中しろ。」
「了解。」
ノイトが再び本体へと攻撃する。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力裂開[/漢字][ふりがな]マギノ・リップ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
魔神の腕は既に無力化されていたため、ノイトが振り下ろした【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】が“知識の魔神”の本体を縦に引き裂いた。本の[漢字]喉[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]の部分が深く裂けたため本体へのダメージも大きいだろう。
(さて、と......目的は2つ。“知識の魔神”を倒すことと、ユリムのお姉さんでありフィルさんの友人の人......ユリメラさんを助けること。ユリメラさんの肉体はどこにある?この短時間で本に変えられることは考えられないし、どこか別の場所に......?)
「ん?」
ノイトがふと振り向くと、魔神の腕の1本が時計塔の方へと手を翳しており、手から光の柱のようなものを発そうとしている。ノイトは当然それを止めようと動こうとしたが、そのとき、ページがめくられる音が聞こえて“知識の魔神”がまた残機を表した。
(面倒だな......。残機は恐らく吸収した知識量に比例する。フィルさんがめくった数百ページがあれだけ薄いのであれば、もう既に5000ページはあるだろうね......。)
魔神の腕がさらに増え、今度は紙札のような腕に術式が展開され浮かべられたものとなっていた。
(街への被害は問題ない。だけどこの場所じゃなければ一瞬で焦土になってもおかしくはない......。今はより多くのページを削ることに専念しよう。)
魔神の手から複数の魔術が発動された。無詠唱、しかも高速発動である。そのうちの一つが時計塔へと放たれたが、それをラルカがコートで弾き返した。
「......ノイトの思い出の場所の一つだ。それを壊すつもりなら死ぬ気で来い!」
腕の攻撃がラルカへと集中していく。しかしラルカ自身も実力者だ。腕を躱しつつどんどん片付けていく。
(MVPを掻っ攫っていく人が来ない限りはラルカが一番働いてるなぁ......。ユリメラさんの位置はフィルさんとリオールさんに任せよう。まだ“知識の魔神”の討伐までのページ数は多すぎる......。)
ノイトはラルカが腕をすべて消滅させたタイミングで本体へと攻撃を加えた。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力波撃[/漢字][ふりがな]マギノ・ビブラート[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
魔力による膨大な質量によって魔神の本体へと叩きつけられた振動が内部で反響して震えた。残響が外に漏れてなお、余韻が残る程の威力。
(思いっきり手を叩くと痛いのを参考にしてみたけど......意外となんとかなるもんだね。この出力をずっと出し続けるのは流石に無理がありそうだけど。)
ノイトはリーリャの演奏が終わったことに気がついてすぐに時計塔の方へと向かった。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]時帝神[/漢字][ふりがな]クロノス[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
「やっほー。」
「ノイト!」「ノイトくん!」
ノイトはすぐにリュミエの手を取って再び街の方を向いた。
「リュミエ、ちょっと手伝って。リーリャはもう少しだけここで待機。また魔神が動き出したら演奏を頼みたい。」
リーリャはノイトが選んだのが自分ではないことに少しむっとしつつもふと浮かんだ疑問をぶつけた。
「でも、私1人じゃあの場所まで届かないよ?リュミエがノイトの方に行くんだったら、誰が私の演奏を街まで届けるの......?」
ノイトはリーリャの方を振り返って笑みを浮かべる。
「大丈夫。直に分かるよ。それじゃ、期待してるね。」
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
1人残されたリーリャはただ時計塔のバルコニーからノイトが向かった街の方を見ることしか出来なかった。時計塔の前に誰が現れたのか、リーリャはまだ知らない。
ノイトとリュミエが街に着くと、魔神はまだノイトの魔法によって動きを止められていた。
「それで、私はどうすれば良いの?」
「僕を抱えて魔神の周りを飛び回ってくれれば良いよ。」
「......私、一応華奢なレディーなんですけど?」
「リュミエの能力ならどうとでも出来るはずだけどねぇ?」
「ん......後で覚えておきなさいよ。」
「ありがとうございまーす。」
リュミエは自身に幻惑を施し、ノイトの重さが実際よりも軽いという錯覚に陥る。その状態でノイトを抱え、空いた手でワイヤーを魔神へと伸ばした。
「魔法の反動で吹き飛ばされないように気をつけてよ?」
「舐めてもらっちゃ困るよ、ノイトくん。」
リュミエがワイヤーでグラッピングをしながら移動し始めた。ノイトはリュミエに抱えられたまま空中に斬撃を残していく。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]時繰空間[/漢字][ふりがな]ラグ・エリア[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
それと同時に固定した斬撃の位置をラルカとルミナスとリュミエに共有した。
[中央寄せ][[漢字][太字]感覚共有[/太字][/漢字][ふりがな]シェアリング[/ふりがな]][/中央寄せ]
「この場所だけ気をつけて。一応腕は遠くまで伸びるから極力引きつけるようにして、遠距離からの攻撃をメインに。」
“知識の魔神”の周囲に[漢字]罠[/漢字][ふりがな]トラップ[/ふりがな]を仕掛けていったノイトを見ながら、リュミエもワイヤーを張る。
「ノイトくん、よくこんなの思いつくね。こういうゲームはまりやってなかったんでしょ?アニメの影響?」
「んー、何となく......かな。これは攻撃用ではないけど、時間稼ぎには十分でしょ。もうすぐ他の人たちも来てくれる。」
「......ノイトくんが1人で抱え込まないのって、なんか珍しいね。」
「まぁね。......色々抱え込むことには慣れてるから良いんだけど、やっぱり集中したいって言うか。」
「......?」
ノイトの魔法の効果が解ける。“知識の魔神”は再び動き出した。
「ノイトくん。」
「何?」
「[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]のガブ飲みはもうしないでね?」
「('ー')」
「そんな顔してもダメだよ。」
「はいはい、それは置いておこう。今は魔神に集中。」
「話題逸らしたね......まぁ、別に良いけど。無理しないでよ?ノイトくん、ほぼ連戦でしょ。オーバーワークじゃない?」
無視。ノイトはそのまま“知識の魔神”の本体へと跳んでいった。ラルカが銃弾の[漢字]再装填[/漢字][ふりがな]リロード[/ふりがな]を終えて腕へと狙いを定めている。それを見たノイトが少し銃弾を弄った。
[中央寄せ][[漢字][太字]確定軌道[/太字][/漢字][ふりがな]オービット[/ふりがな]:[漢字][太字]追尾[/太字][/漢字][ふりがな]トラック[/ふりがな]][/中央寄せ]
ラルカはノイトが何かをしたことに気が付き、数発発砲する。僅かに[漢字]照準[/漢字][ふりがな]エイム[/ふりがな]がズレたものがあったが、それが空中でなだらかな曲線軌道で魔神の腕へと吸い寄せられるように進んでいった。
(追尾仕様か。便利な魔法を生み出す奴だな。)
ノイトは残りの腕へと攻撃を仕掛ける。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力断割[/漢字][ふりがな]マギノ・ディバイド[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
数本の腕がノイトの攻撃によって劃たれたが、まだ数本残っている。そのうちの2本がルミナスへと襲いかかっていった。腕は既に魔法を発動している。
[太字][明朝体](来ました......!!)[/明朝体][/太字]
ルミナスは剣を振るって腕を迎撃した。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]『[漢字]爪剣[/漢字][ふりがな]ネァイリング[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
振るわれた剣の軌跡が魔神の腕と魔法を断ち切る。しかしもう1本の腕はルミナスの背後から迫っていた。ルミナスは振り向きざまに剣でそれを突く。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]『[漢字]突刺剣[/漢字][ふりがな]フルンティング[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
魔神の腕は剣によって貫かれた。しかし腕の慣性までは受け止めきれなかったようで、そのまま腕が迫ってくる。腕がルミナスにぶつかる直前、ルミナスの前へ現れて迫りくる腕の手を袈裟斬りにした者がいた。
[大文字]「この方は私の大切な御主人様だ。相手が魔神であろうと、傷付けようと言うのであれば容赦はしない。」[/大文字]
[太字][明朝体]「レイク......!!」[/明朝体][/太字]
[太字][明朝体]『ルミナス、あれが魔神で間違いないね?あそこに居るのは......ノイトか。』[/明朝体][/太字]
レイクだけではなくエルクス一行も駆けつけてきていたようだ。シルイもザルヤも初めて見る魔神を警戒している。フェノルはいつでも攻撃を仕掛けられるように魔神を見据えていた。
[太字][明朝体]「エルクスお兄様!シルイ様にザルヤ様にフェノル様まで!! 心強いです!」[/明朝体][/太字]
[大文字]「カメリア様は一足先に前線へ向かっていらっしゃいます。」[/大文字]
[太字][明朝体]「分かりました!私たちも行きましょう!!」[/明朝体][/太字]
[太字][明朝体]『よし。』[/明朝体][/太字]「はい!」「はい!」[大文字]「御意。」[/大文字]
メルクとラルカはミストルの町にある時計塔へと辿り着いた。
「リーリャ!ルミナス様!リュミエ!」
メルクは時計塔の前に立っていた3人を見つけて名前を呼ぶ。振り返った3人が2人に気がついて駆け寄ってきた。
「メルク!ラルカ!無事で良かった......!」
「無事も何もあるか。私たちは問題ない。今問題があるのは......」
“知識の魔神”の方から轟音が響く。何かが爆ぜたような音。ラルカが振り返るとそこにはもう既に戦闘に入っているノイト、フィルマリー、リオールの姿があった。
「み......、ノイトに関しては幹部5人に続いての連戦だ。だがあいつを休ませる余裕はない。お前たちの無事が確認出来た以上、私たちも加わる他ないだろう。」
リーリャはラルカの方を見て黙っている。ルミナスは剣を構えて“知識の魔神”の方を向いた。
[太字][明朝体]「この規模ならレイクやエルクスお兄様やカメリアお姉様が駆けつけてくれるかもしれません。それまでに私たちが出来る限り魔神を削っておきましょう!」[/明朝体][/太字]
リュミエがゲデニスの火を取り出して尋ねる。
「ゲデニス、あの魔神って組織に新しく造られたやつだよね?“全能の魔神”よりも強いってことある?」
[太字][明朝体][大文字]〈いや、それはないだろう。メルクとラルカの記憶から、あれの名は“知識の魔神”だと分かっている。知識が全能を超えることはまずない。だが、手遅れになる前に止めたほうが良さそうだ。〉[/大文字][/明朝体][/太字]
ラルカは時計塔の小屋の中から自身のコートと剣を持ってきて準備を整えた。
「行くぞ。」
「コート?なんでそんなの来ていくの?」
「これも魔具だ。魔法・魔術の反射が出来る。装備しておいた方が良いだろう。」
レイクに続いてメルクも心の準備を整えた。
「正直あの3人の中に交じるのは無理があると懐うけど......。私たちはあの腕みたいなものを何とかしよう!」
リーリャも頷き、リュミエに声をかけた。
「リュミエ。私の魔法は私1人の力じゃ届かないかもしれない。だから、力を貸してくれる?」
「分かった!リーリャのサポート、任せて!!」
「話はまとまったな。私とメルクとルミナスが腕の相手。リーリャとリュミエが遠距離からあの3人の援護。散るぞ!」
「「おー!」」[太字][明朝体]「はい!」[/明朝体][/太字]「うん!」
ラルカに続いてメルクとルミナスが“知識の魔神”の方へと駆けていく。
[太字][明朝体]「[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]!!」[/明朝体][/太字]
ルミナスに呼ばれた[漢字]小夜啼鳥[/漢字][ふりがな]ナイチンゲール[/ふりがな]が現れ、ルミナスの剣をコーティングするように蒼い鞘となった。
「メルク、北東の腕と東の腕を任せた。」
「分かった。」
「ルミナスは南西の腕、私が西の腕だ。」
[太字][明朝体]「分かりました!」[/明朝体][/太字]
メルクが飛び上がって建物の屋根の上を駆け進んでいく。[漢字]青白磁の金属[/漢字][ふりがな]サスロイカ[/ふりがな]製のミゼリコルドダガーを左手に、普段使っているスティレットを右手に持ち、“知識の魔神”の腕の1本に攻撃を加えた。
[中央寄せ][太字][明朝体][大文字]『[漢字]遊震愛螺刺[/漢字][ふりがな]スサブルアラシ[/ふりがな]』[/大文字][/明朝体][/太字][/中央寄せ]
無数の刺突で“知識の魔神”の文字列のようなものが書かれた紙の腕が切り裂かれていく。もう1本の腕の拳が襲いかかってくるが、メルクはそれを膝蹴りで相殺した。
[中央寄せ][太字][明朝体][大文字]『[漢字]愛浪膝[/漢字][ふりがな]アイロニー[/ふりがな]』[/大文字][/明朝体][/太字][/中央寄せ]
メルクの様子を見ていたルミナスは感心の声を漏らす。
[太字][明朝体]「わぁ......流石メルク様、強いです!たった1人で同時に2本の腕を相手にして......!! 私も頑張らないと、ですね!」[/明朝体][/太字]
飛び上がったルミナスが“知識の魔神”の腕に向かって剣を振るった。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][斜体]『[漢字]竜討剣[/漢字][ふりがな]アスカロン[/ふりがな]』[/斜体][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
ルミナスの攻撃で腕が一撃で真っ二つになる。
[太字][明朝体](やりました......!!)[/明朝体][/太字]
ルミナスは背後に迫ってきていた腕に気が付かなかった。しかし、ラルカの銃弾によってその腕は冷気となって消える。背後から大量の冷気を受けたルミナスが振り返るとそこに腕があったと思わしき魔法の文字列が僅かに残っていた。
[太字][明朝体]「危ないところでした......。お[漢字]義姉[/漢字][ふりがな]ねえ[/ふりがな]様、ありがとうございます!!」[/明朝体][/太字]
「礼は良い。魔神がこの程度であるはずがない。気を抜くなよ。」
[太字][明朝体]「はい!」[/明朝体][/太字]
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][斜体]〔[漢字]魔力打撃[/漢字][ふりがな]マギノ・スパンク[/ふりがな]〕[/斜体][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[斜体]「硬っ......!!」[/斜体]
ノイトの攻撃ですら本体には大したダメージにはならないようだった。むしろ反作用でノイトの方にダメージが返ってくる。リオールが黒い鋼で出来た棘の魔術を発動したが、大きな傷にはならない。フィルマリーが巨大な光の柱を出現させようとした。
「えっ......!?」
「待て、フィルマリー!ここでやるのか!?」
ノイトとリオールが咄嗟に[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]で距離を取った直後、“知識の魔神”を囲う規模で白い光の柱が燦めく。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]上級魔法:〘ᚪᚾᚵᛖᛚ ᛚᚪᛞᛞᛖᚱ〙[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
“知識の魔神”が白い光の中に消えた。しかし、次の瞬間。何かのページがめくられる音がして、目の前には少しだけ巨大化した“知識の魔神”が居た。腕の本数は4本から8本に増え、恐らくその強度も上がっている。
「ウェーブ何まであるんだろうなこれ......。」
フィルマリーが再び詠唱を始めて上空に無数の光の柱が見えた。ラルカがその様子に気がついて呟く。
「漁火光柱......?」
否、すべて先程の上級魔術である。
「フィルさん待って!」
「フィルマリー!ここでやると街が壊れる!!」
フィルマリーは容赦なく無数の光の柱を“知識の魔神”へと浴びせた。腕が貫かれ、本体にも光の柱が降り注がれる。
何十回、何百回、ページをめくる音が聞こえ、また“知識の魔神”のそこに居た。フィルマリーは次第に魔力を消耗していっているが、まだ倒れなかった。
[斜体][太字]「ハァ......ハァ......ハァ......ハァ............。」[/太字][/斜体]
髪も息も乱れて来て、魔力も滲み出している。しかし、フィルマリーの目はただ“知識の魔神”の中に居るユリメラに向けられていた。
[斜体][太字]「待っててください、ユリメラ......今、助けますから............!!」[/太字][/斜体]
再び詠唱を行おうとしたフィルマリーがふらつき、リオールが咄嗟に支えた。
「フィルマリー、頭を冷やせ!このままじゃユリメラも助けられなくなるぞ!!」
[斜体][太字]「でも......ユリメラ......。」[/太字][/斜体]
そのとき、“知識の魔神”の腕が2人を叩き落とした。しかしノイトは理性で振り向きそうになるのを堪える。直後、ギリギリで“知識の魔神”の腕を受け止めた。
[斜体](気を抜いたら誰も守れなくなる......!!)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]記憶の剣先[/漢字][ふりがな]キオクノハリ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトが再現したのはかつて自身が幼少期に発動した禁忌魔法を再現した。皓く眩しい光を放つ槍が“記憶の魔神”を貫き止める。その隙に時計塔の方へ合図をした。
(来た......!ノイトからの合図!!)
リーリャはノイトからの合図を受け取って演奏を始める。
[中央寄せ][明朝体]『超級魔法:[明朝体][大文字][漢字]幻想奏楽[/漢字][ふりがな]パフォーマンス[/ふりがな][/大文字][/明朝体]』[/明朝体][/中央寄せ]
[中央寄せ][[漢字][太字]広範拡声[/太字][/漢字][ふりがな]アンプリフィケーション[/ふりがな]][/中央寄せ]
リュミエによる効果範囲の拡大によってリーリャの演奏は“知識の魔神”の元へも届いた。虹色の魔力を帯びた黒い五線譜が魔神の腕に絡みつき、同時に街を覆うように広がる。
(ノイトはきっと疲れてる......私が頑張らないと!!)
音符は光の粒となって街中に降り注いだ。
メルクもルミナスもラルカも、魔神の腕を少しでも多く落とすために奮闘しているが、先程のフィルマリーの上級魔術によってその腕の耐久度と数は増えている。
「リオールさん!フィルさんを止めてください!! このままじゃ増援が来る前に......。」
ノイトはそこであることに気がついた。
「分かった!フィルマリー、落ち着け!!」
(なんで僕は、増援が来ると確信していたんだ......?)
実際、増援は来るかもしれない。むしろこの状況だと来ない方がおかしい。しかし、だからといって不確定な事実に縋るのはノイトの普段の思考回路では発生しないエラーである。
「ノイト!! 動け!!」
次の瞬間、“知識の魔神”の顔のような部分にある目から出されたレーザーがいつの間にかノイトの目の前に跳んできていたラルカのコートによって弾かれていた。
「ラルカ......!」
「気を抜くな。」
ラルカに蹴飛ばされてノイトは街へと落下していく。しかし、途中で背中に魔力で出来た大きな翼が生えたようになり、背中に来るはずの衝撃が来なかった。
(これが“[漢字]翼の象徴[/漢字][ふりがな]ウィング[/ふりがな]”の効果......。そんなことは今はどうでも良い!ラルカのお陰で思考はリセット出来た。もう一度前線に!!)
ノイトは大きく翼を羽ばたかせて飛び上がった。武器を大きく振るってラルカへと迫っていた魔神の腕を弾き飛ばす。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力打撃[/漢字][ふりがな]マギノ・スパンク[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
反作用の方が大きいが、ラルカに攻撃が届くことはなかった。
「ラルカ、ルミナ1人に任せるのは流石に無理があると思うけど?」
「問題ない。先程お前は“増援”というワードで固まった。来るかどうかも分からないものだったからだろう。だが、レイクなら必ず来る。そこは信じろ。」
「......分かったよ。僕たちは本体と腕の相手をしよう。フィルさんとリオールさんはしばらく動かせない。」
「リーリャの魔法の拘束で少しは隙が出来ている。ノイトは本体を。援護は任せろ。」
「了解!」
ノイトが[漢字]魔霊晶[/漢字][ふりがな]アメジスト[/ふりがな]に魔力を込めて斬撃を放った。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力裂断[/漢字][ふりがな]マギノ・ガッシュ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
斬撃が本体に当たる直前に何かに弾かれたように見える。
(腕をどうにかしないといけないタイプか......。さっきよりも腕の本数と強度が上がってるっぽいし、何回もページをめくったのと関係がありそうだね。体力が一定未満になるとページをめくっていて、その度に回復......はないか。それじゃあ、ページの数だけライフゲージがあるようなタイプかも。今まで戦ってきた中で一番面倒だなぁ......。)
ノイトは手を“知識の魔神”の本体へと翳し、魔術を唱えた。
[中央寄せ][太字][大文字]上級魔法:〔[漢字]聖なる大槍[/漢字][ふりがな]ホーリー・ランス[/ふりがな]〕[/大文字][/太字][/中央寄せ]
甲高い金属音が響き、ノイトの魔法によって生み出された槍と“知識の魔神”のバリアが膠着状態に陥った。その間にリーリャの魔法によって拘束されていない腕がノイトへと迫る。
「邪魔だ。」
ラルカが放った銃弾が3本の腕を冷気に変えて消滅させた。
「一応僕1人でも今のは対処出来たけど......ありがと。」
「援護は任せろ、と言ったはずだぞ。お前は本体に集中しろ。」
「了解。」
ノイトが再び本体へと攻撃する。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力裂開[/漢字][ふりがな]マギノ・リップ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
魔神の腕は既に無力化されていたため、ノイトが振り下ろした【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】が“知識の魔神”の本体を縦に引き裂いた。本の[漢字]喉[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]の部分が深く裂けたため本体へのダメージも大きいだろう。
(さて、と......目的は2つ。“知識の魔神”を倒すことと、ユリムのお姉さんでありフィルさんの友人の人......ユリメラさんを助けること。ユリメラさんの肉体はどこにある?この短時間で本に変えられることは考えられないし、どこか別の場所に......?)
「ん?」
ノイトがふと振り向くと、魔神の腕の1本が時計塔の方へと手を翳しており、手から光の柱のようなものを発そうとしている。ノイトは当然それを止めようと動こうとしたが、そのとき、ページがめくられる音が聞こえて“知識の魔神”がまた残機を表した。
(面倒だな......。残機は恐らく吸収した知識量に比例する。フィルさんがめくった数百ページがあれだけ薄いのであれば、もう既に5000ページはあるだろうね......。)
魔神の腕がさらに増え、今度は紙札のような腕に術式が展開され浮かべられたものとなっていた。
(街への被害は問題ない。だけどこの場所じゃなければ一瞬で焦土になってもおかしくはない......。今はより多くのページを削ることに専念しよう。)
魔神の手から複数の魔術が発動された。無詠唱、しかも高速発動である。そのうちの一つが時計塔へと放たれたが、それをラルカがコートで弾き返した。
「......ノイトの思い出の場所の一つだ。それを壊すつもりなら死ぬ気で来い!」
腕の攻撃がラルカへと集中していく。しかしラルカ自身も実力者だ。腕を躱しつつどんどん片付けていく。
(MVPを掻っ攫っていく人が来ない限りはラルカが一番働いてるなぁ......。ユリメラさんの位置はフィルさんとリオールさんに任せよう。まだ“知識の魔神”の討伐までのページ数は多すぎる......。)
ノイトはラルカが腕をすべて消滅させたタイミングで本体へと攻撃を加えた。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力波撃[/漢字][ふりがな]マギノ・ビブラート[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
魔力による膨大な質量によって魔神の本体へと叩きつけられた振動が内部で反響して震えた。残響が外に漏れてなお、余韻が残る程の威力。
(思いっきり手を叩くと痛いのを参考にしてみたけど......意外となんとかなるもんだね。この出力をずっと出し続けるのは流石に無理がありそうだけど。)
ノイトはリーリャの演奏が終わったことに気がついてすぐに時計塔の方へと向かった。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]時帝神[/漢字][ふりがな]クロノス[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
「やっほー。」
「ノイト!」「ノイトくん!」
ノイトはすぐにリュミエの手を取って再び街の方を向いた。
「リュミエ、ちょっと手伝って。リーリャはもう少しだけここで待機。また魔神が動き出したら演奏を頼みたい。」
リーリャはノイトが選んだのが自分ではないことに少しむっとしつつもふと浮かんだ疑問をぶつけた。
「でも、私1人じゃあの場所まで届かないよ?リュミエがノイトの方に行くんだったら、誰が私の演奏を街まで届けるの......?」
ノイトはリーリャの方を振り返って笑みを浮かべる。
「大丈夫。直に分かるよ。それじゃ、期待してるね。」
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
1人残されたリーリャはただ時計塔のバルコニーからノイトが向かった街の方を見ることしか出来なかった。時計塔の前に誰が現れたのか、リーリャはまだ知らない。
ノイトとリュミエが街に着くと、魔神はまだノイトの魔法によって動きを止められていた。
「それで、私はどうすれば良いの?」
「僕を抱えて魔神の周りを飛び回ってくれれば良いよ。」
「......私、一応華奢なレディーなんですけど?」
「リュミエの能力ならどうとでも出来るはずだけどねぇ?」
「ん......後で覚えておきなさいよ。」
「ありがとうございまーす。」
リュミエは自身に幻惑を施し、ノイトの重さが実際よりも軽いという錯覚に陥る。その状態でノイトを抱え、空いた手でワイヤーを魔神へと伸ばした。
「魔法の反動で吹き飛ばされないように気をつけてよ?」
「舐めてもらっちゃ困るよ、ノイトくん。」
リュミエがワイヤーでグラッピングをしながら移動し始めた。ノイトはリュミエに抱えられたまま空中に斬撃を残していく。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]時繰空間[/漢字][ふりがな]ラグ・エリア[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
それと同時に固定した斬撃の位置をラルカとルミナスとリュミエに共有した。
[中央寄せ][[漢字][太字]感覚共有[/太字][/漢字][ふりがな]シェアリング[/ふりがな]][/中央寄せ]
「この場所だけ気をつけて。一応腕は遠くまで伸びるから極力引きつけるようにして、遠距離からの攻撃をメインに。」
“知識の魔神”の周囲に[漢字]罠[/漢字][ふりがな]トラップ[/ふりがな]を仕掛けていったノイトを見ながら、リュミエもワイヤーを張る。
「ノイトくん、よくこんなの思いつくね。こういうゲームはまりやってなかったんでしょ?アニメの影響?」
「んー、何となく......かな。これは攻撃用ではないけど、時間稼ぎには十分でしょ。もうすぐ他の人たちも来てくれる。」
「......ノイトくんが1人で抱え込まないのって、なんか珍しいね。」
「まぁね。......色々抱え込むことには慣れてるから良いんだけど、やっぱり集中したいって言うか。」
「......?」
ノイトの魔法の効果が解ける。“知識の魔神”は再び動き出した。
「ノイトくん。」
「何?」
「[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]のガブ飲みはもうしないでね?」
「('ー')」
「そんな顔してもダメだよ。」
「はいはい、それは置いておこう。今は魔神に集中。」
「話題逸らしたね......まぁ、別に良いけど。無理しないでよ?ノイトくん、ほぼ連戦でしょ。オーバーワークじゃない?」
無視。ノイトはそのまま“知識の魔神”の本体へと跳んでいった。ラルカが銃弾の[漢字]再装填[/漢字][ふりがな]リロード[/ふりがな]を終えて腕へと狙いを定めている。それを見たノイトが少し銃弾を弄った。
[中央寄せ][[漢字][太字]確定軌道[/太字][/漢字][ふりがな]オービット[/ふりがな]:[漢字][太字]追尾[/太字][/漢字][ふりがな]トラック[/ふりがな]][/中央寄せ]
ラルカはノイトが何かをしたことに気が付き、数発発砲する。僅かに[漢字]照準[/漢字][ふりがな]エイム[/ふりがな]がズレたものがあったが、それが空中でなだらかな曲線軌道で魔神の腕へと吸い寄せられるように進んでいった。
(追尾仕様か。便利な魔法を生み出す奴だな。)
ノイトは残りの腕へと攻撃を仕掛ける。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力断割[/漢字][ふりがな]マギノ・ディバイド[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
数本の腕がノイトの攻撃によって劃たれたが、まだ数本残っている。そのうちの2本がルミナスへと襲いかかっていった。腕は既に魔法を発動している。
[太字][明朝体](来ました......!!)[/明朝体][/太字]
ルミナスは剣を振るって腕を迎撃した。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]『[漢字]爪剣[/漢字][ふりがな]ネァイリング[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
振るわれた剣の軌跡が魔神の腕と魔法を断ち切る。しかしもう1本の腕はルミナスの背後から迫っていた。ルミナスは振り向きざまに剣でそれを突く。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]『[漢字]突刺剣[/漢字][ふりがな]フルンティング[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
魔神の腕は剣によって貫かれた。しかし腕の慣性までは受け止めきれなかったようで、そのまま腕が迫ってくる。腕がルミナスにぶつかる直前、ルミナスの前へ現れて迫りくる腕の手を袈裟斬りにした者がいた。
[大文字]「この方は私の大切な御主人様だ。相手が魔神であろうと、傷付けようと言うのであれば容赦はしない。」[/大文字]
[太字][明朝体]「レイク......!!」[/明朝体][/太字]
[太字][明朝体]『ルミナス、あれが魔神で間違いないね?あそこに居るのは......ノイトか。』[/明朝体][/太字]
レイクだけではなくエルクス一行も駆けつけてきていたようだ。シルイもザルヤも初めて見る魔神を警戒している。フェノルはいつでも攻撃を仕掛けられるように魔神を見据えていた。
[太字][明朝体]「エルクスお兄様!シルイ様にザルヤ様にフェノル様まで!! 心強いです!」[/明朝体][/太字]
[大文字]「カメリア様は一足先に前線へ向かっていらっしゃいます。」[/大文字]
[太字][明朝体]「分かりました!私たちも行きましょう!!」[/明朝体][/太字]
[太字][明朝体]『よし。』[/明朝体][/太字]「はい!」「はい!」[大文字]「御意。」[/大文字]