世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
組織の拠点の研究館に入ったノイトは荒れている実験室とユリムを見つけた。
「ん......どうしたんですか?」
「......ノイトさん......。お姉ちゃんが“知識の魔神”に......。」
「そうですか。メル、魔神は“全能の魔神”と同じように核が本体のやつ?」
「うん、そうだよ。最近の組織が造った魔神は全部そう。」
「なるほど。じゃあまだ助けられるかもしれないね。」
「本当ですか!? それなら、またお姉ちゃんと......!」
ノイトが頷き、ユリムの顔の強張りが僅かに緩む。ラルカがノイトの隣で他の実験体の様子を確認した。
「......他の実験体は今のところ命に別状はないように見えるな。」
「そうだね。一応今行方不明になってる人たちのリストと照らし合わせてみてくれる?」
「......分かった。」
妙な間が空く。ラルカは今のノイトに対して何か違和感を感じているようだ。
「ノイト。何かあったか?」
「いや?何もないよ。」
「............。」
「ラルカ、どうかしたの?ノイトくんの様子、そんなにおかしい?」
「......いや、何でもない。忘れて良い。」
その時、ガヴェルディとミーリアが研究室の地下へ繋がっていると思われる階段からあがってきた。
「......ノイト=ソルフォトスさん、ですね。あなたへ見せたいものがあります。地下室まで。」
「あ、分かりました。」
ノイトたちはミーリアに続いて研究館の地下室へと降りていった。階段を降りると檻に入れられた魔物らしきものが居た。純粋な魔物ではなく、大部分が人間の姿である。
(ロリ、ウッウン......キメラかな?)
少し近づいてみてみるとそれがクラゲのような姿をしているのが分かった。透き通った髪がクラゲの触手のようで、微細な魔力を放っている。
(擬人化キャラってこんな感じだよな......。)
ノイトが膝を突いて目線の高さを合わせた後に手を伸ばしてみた。
「ヒィッ...... 誰......?」
「僕はノイト。君は?」
「私は......バケモノ?」
「バケモノではなさそうだけどねぇ......?華奢でかわいいクラゲの魔物に見えるけど。」
「魔物......?」
ノイトはミーリアの方を見る。ミーリアはノイトの視線に気がついて説明を始めた。
「その個体はこの組織で生み出された人間とジェリーのハイブリットです。ただの興味本位での実験の結果ですので、何かを期待して造られたものではありません。」
「ハァ......まったく持って勝手すぎるものですね。」
「......私は、何?」
「そうだねぇ、フィゼリアとでも名付けておこうか。」
「フィゼリア......?バケモノじゃない?」
「うん、君はバケモノなんかじゃない。僕が保証する。」
フィゼリアはゆっくりとノイトが伸ばした手へと自身の手を伸ばす。手と手が触れ合い、ノイトの手の温度に溶かされていくようにフィゼリアの手の強張りが緩まっていった。
「あたたかい......。」
(ん〜、この子はシルイさんに任せるか。魔物の要素があるのであれば、召喚師で魔物の扱いにも長けている人が面倒を見た方が良いだろうし。)
ノイトが顔を上げると他にもたくさんの檻があることに気がついた。しかし、そこに居たのはどれも形がぐちゃぐちゃとなったキメラらしき生物ばかりである。
「こんなにたくさん。上に居た実験体の人たちの一部ですよね、これ。」
「はい。恐らく30年前には既にこの地下室でキメラの合成実験が行われていたものかと。」
「......命がある以上無闇に処分は出来ないですね。他の生物に危害を加える可能性はありますか?」
「その可能性は極めて高いです。この中には高い知能を持つ個体も居ます。野放しにするわけにもいきません。」
「......かと言ってここにずっと置いておくわけにもいかなさそうですね。しょうがないですけど、僕の仲間の人に頼んでどうにかしてもらおうと思います。」
「分かりました。では、上に戻りましょうか。他の実験体の中から救えるものは救いましょう。」
「......あなた、なんでこの組織に所属してたんですか?全然組織の思想に染まるような性格には見えませんけど。」
階段を上ろうとしていたミーリアはノイトの言葉で歩みを止め、ノイトの方を振り返る。
「別に、私は雇われただけですよ。先代のボスに。彼には多大な恩があるんです。それをただ返しただけ。」
「なるほど。」
ノイトはフィゼリアを連れて研究室へと戻った。ラルカはノイトが戻ってきたことに気が付き、声をかけてくる。
「ノイト。実験体の中からリーリャたちに捜索を任せていた行方不明者らしき少年が見つかったぞ。」
「ミルーサさんの弟か。容態は?」
ガヴェルディが様子を確認しながら答えた。
「大したダメージもないようだ。適切な処置を取れば回復も早いだろう。ただ......。」
「ただ......?」
「この少年の身内らしき男女は後遺症が残るかもしれん。」
「取り敢えず今助かる人は極力助けましょう。」
ノイトの隣へと歩いて並んだラルカがボソリと呟く。
「手が届く範囲は救いたい、だったか。」
「......まだ覚えてたの......?」
「当然だ。お前の言葉はほとんど覚えているぞ。」
「それはそれで怖いよ......。」
ガヴェルディは研究調査機関の人間だからか実験台だった人の応急処置の手際が良い。ノイトは感心しながらもメルクとユリムの方へと歩み寄った。
「ユリムさん。」
「......ノイトさん......私は何をすれば良いですか?お姉ちゃんを助けるために私も何か出来ることを......!」
「“知識の魔神”は討伐します。」
「............へ?」
「でも、あなたのお姉さんは助けられるように最大限手を尽くします。」
「え、あぁ......はい!お願いします!!」
「以上です。」
「......?」
ノイトはユリムに余計な負担をかけないようにユリム自身が何かをすることを防いだ。
「懸命な判断だな。相手が魔神であり、その上組織によって生み出されたものであれば危険なのは当然。ただ、他の魔神よりも警戒する必要がありそうだ。何しろ、“全能の魔神”という前例が居るのだからな。」
“全能の魔神”の魔神の話が出てメルクが少しピリついたような表情をしたように見える。ノイトは“全能の魔神”との戦闘を思い出し、ため息を吐いた。
「あの時は1回死にかけた......っていうか既に1度死んでるんだけど。またああなるのはちょっとね。」
「ノイト。ちゃんと危機感を持たないと今度こそ死ぬぞ。」
「......。分かったよ。」
フィゼリアがノイトの後ろから顔を覗かせるようにしてしがみついている。何か言いたいことがあるのか、ノイトの手を引いた。
「ん、どうしたの?フィゼリア。」
「私......ここ、嫌い。」
「......まぁ、そうだよね。居心地悪いし。実験体にされた人たちの応急処置が終わったらすぐにこんなところ出ていくよ。それまでもうちょっとだけ我慢しててくれる?」
「......うん。がんばる。」
ノイトがふと周囲の様子を確認すると以前感じたことのある魔力の気配を感じる。
(フィルさん......?)
ノイトは先程[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態に近い状態になったため、その余韻で普段よりも魔力の察知が敏感だった。恐らく先程のノイトの魔術の魔力を感じ取ったのだろう。
丁度ガヴェルディが応急処置を終えたとき。本館があった方角からフィルマリーの声が聞こえた。
[小文字]「ノイトさーん!!」[/小文字]
「やっぱりフィルさんだ。」
通路の方から走ってきたフィルマリーはノイトを見つけた途端に飛びついてくる。
「ノイトさん!」
「グヘェッ...... フィルさん、どうしたんですか?こんなところで......。」
「やっぱりノイトさんですね? さっきのあの膨大な魔力、ノイトさんの魔術でしたか!」
「それはまぁ、そうですけど。」
「すごかったです!ざっと10kmは離れている場所からでも感じ取れる程に!」
「そんなに......?ただクロエと戦ってただけなんですけどねぇ......。」
「それでもノイトさんはすごいです!自信持ってください!!」
「まぁ、僕のことは別に良いんですよ。丁度良かったです。フィルさんに少しお願いがあって......。」
「私にですか?ノイトさんのお願いなら何でも聞いちゃいます!!」
「ここの地下にキメラの失敗作みたいなのが沢山居るんですけど、このまま放置するわけにもいかないし、かと言って処分してしまうのもよろしくないかと思ってまして......。ぬいぐるみにするなりフィルさんの研究に活用するなり、好きなようにしちゃって大丈夫です!多分。」
フィルマリーは表情を明るくしてノイトに抱きつく力を強めた。
「本当ですか!ありがとうございます、ノイトさん!!」
「あの......ちょっと......力が強いです......。」
結局、フィルマリーに実験体だった人の搬送も任せてしまった。
「すみません、フィルさんも疲れてるでしょう?」
「大丈夫です!ノイトさんのためなら!!」
相変わらずのフィルマリーを見ながら微笑むノイトをラルカが軽く支えている。流石のノイトも魔力が回復しきっていないようだ。
「フィルマリーさんが居てくれるのは頼もしいけど......。なんでガヴェルディまで着いて来てんの?」
「あのなぁ、地下室に居たというキメラと実験台だった人らのその後の情報もまとめて持ち帰る、って言ったろ?俺が居ることがそんなに不満か?」
「一応元組織の人間だからまだ警戒はしてるよ。」
「お前が言えたことじゃないだろう......それを言うならミーリア。アンタも元組織の人間だからな!」
「理解しています。その上でノルティーク帝国へ向かう予定です。」
「予定です、じゃなくてな......。」
「そういえば、ガヴェルディってまだその影みたいな姿なの?いい加減解いちゃっても良くない?」
「あぁ、もううるさいなぁ!いっぺんに話しかけてくるな!!」
うるさいなら耳を塞げば良い。そういう考えのノイトは何も言わずに両手で耳を塞いでいた。
「結構組織の被害はあったね......。」
「そうだな。実父やら幹部やらの末路はどうであれ、それ以前に魔神の復活や戦争の裏での動きも気になる。後でお[漢字]義父[/漢字][ふりがな]とう[/ふりがな]様にも報告せねば。」
「......フフッ。」
笑みを漏らしたノイトがラルカの頬をつつく。ラルカは虚を突かれたような表情を浮かべたが、その手を取り払うような真似はしなかった。
「なんだ、いきなり。」
「その堅苦しい喋り方だとなーんか面白いんだよね〜。」
「[小文字]......別に、普通に喋ろうと思えば普通に喋れるんだけど。[/小文字]」
「[小文字]あ、デレた。ツンデレだなぁ。[/小文字]」
「[小文字]その言葉、そっくりそのまま返すよ。[/小文字]」
「ちょっと、ノイトくんとラルカ。2人で何コソコソ話してるの〜?」
小声で話していた2人だったが、流石に何か話していることはバレたようだ。
「いや〜、気にしなくて良いよ。ただラルカがツンデ...」
「ノイトの妄言だ。気にするな。」
メルクは不満げに頬を膨らませながらノイトに近づいた。
「ノイトくん、なんで最近私に冷たいの?」
「え、冷たくなってた?」
「冷たいよ。昔はあんなことやこんなことまでしてたのに......。」
「[漢字]同衾共枕[/漢字][ふりがな]あんなこと[/ふりがな]や[漢字]魔神の討伐[/漢字][ふりがな]こんなこと[/ふりがな]、ねぇ......。」
「とにかく、もっと私にも構って!寂しいでしょ!!」
「かまちょ......?」
「んぅ......そうだよ。悪い?」
「別に悪くないけど......。」
「けど......?」
「メル、なんでそんなに僕に構うの?」
「ん、好きだからに決まってんじゃん。」
「そうじゃなくて......いや、それもあるかもしれないけど、もっと根本的にあるでしょ?理由。」
メルクは少し考えた後で少し寂しげな表情になる。
「うん。あるよ。後で話すね。」
「.......分かった。ありがとう。」
組織の拠点があった場所から歩いてそろそろ一番近くの街に辿り着く頃だろう。そこでノイトはあることに気がついた。
「あれ、そういえばフィルさんなんで走ってきたんですか?」
「え?」
「いつもはすぐ近くまで[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]してくるじゃないですか?さっきわざわざ走ってきたのはなんでかな〜、と思って。」
「あぁ、それは具体的な座標が割り出せなかったからです。」
「......と言いますと?」
「普段は正確なノイトさんの位置まで分かるんですけど、この場所は特殊な結界が張られていて座標が僅かに歪んでいるんです。それに、先程のノイトさんの魔術でちょっとビックリしちゃって......。少しだけ感覚が鈍っちゃったんですかね?」
「そうだったんですか......。大丈夫です?」
「はい!今は何事もなく平和なようなので!!」
「「「「「............。」」」」」
全員が黙った。フィルマリーは気がついていなかったようだ。ユリムがおずおずと手を挙げながら口を開いた。
「あの......私のお姉ちゃんが“知識の魔神”に乗っ取られてしまって......。」
ユリムを見た途端にフィルマリーの気配が変わる。
「......フィルさん、どうしたんですか?」
「────。」
フィルマリーは何も答えない。
「フィルさん?」
(え......?え?そんな......いや、違うかもしれな、.......違わない!! でも、......あぁ......!え?あぁ......待っ、そんな.......わけ......な......。)
「フィルさん!」
「ハッ............。でも、いや......そんな......あぁ......!!」
「フィルさん、落ち着いてください。一体何があっ...」
フィルマリーがノイトの肩を強く掴んだ。
「だって、ユリメラは!私の大事な友達なんです!!」
「──── !!」
フィルマリーは親子や兄弟の間の魔力の似ている部分を感じることが出来る。それ故だろう。ユリムを見て今一度その魔力の質を感じたことで、彼女の姉であり、フィルマリーの友人であるユリメラに起きた事実を知ってしまった。
「待ってて、ユリメラ......!今行きますから......!!」
「ラルカ。」
ノイトに名前を呼ばれるや否や、ラルカは[漢字]縫式の手袋[/漢字][ふりがな]キルト・グローブ[/ふりがな]を装着してフィルマリーの腕を掴む。
「離してください......ラルカさん......。私が行かないと......。」
フィルマリーが魔法で移動しようとしたが、フィルマリーがラルカの手に縫い付けられたかのように動かない。
「え......?なんで......?」
「行かせませんよ、フィルさん。フィルさんの知人であろうと、今の相手は魔神です。1人で勝てるような相手じゃない。」
([漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態で“全能の魔神”を凌駕した人物が何を言っているんだか......。)
ラルカは内心で突っ込むだけに留め、フィルマリーを引き戻した。
「それでも!行かないと......ユリメラを助けに行かないと......!!」
「ユリメラさんは必ず助けます。だから、もう少しだけ落ち着いてください。」
[中央寄せ][太字]上級魔術:[大文字][太字]〘ᛖᛗᚪᚾᚳᛁᛈᚪᛏᛁᛟᚾ〙[/太字][/大文字][/太字][/中央寄せ]
[中央寄せ][[漢字][太字]位置置換[/太字][/漢字][ふりがな]サブスティテュート[/ふりがな]][/中央寄せ]
フィルマリーが放った上級魔術を咄嗟に回避したノイトはフィルマリーの手を掴む。
「フィル!待って!!」
「......!!」
「焦ったまま突っ込んでいったらどうしようもないですよ......。まず、『[漢字]門[/漢字][ふりがな]ゲート[/ふりがな]』からノルストラに戻りましょう。リオールさんにも報告してから“知識の魔神”の捜索を始めます。」
「......分かり、ました......。」
「ガヴェルディさん、近くの街までお願いできますか?」
「四の五の言ってる場合じゃないだろ、当然だ。」
[中央寄せ][[漢字][太字]空間転移[/太字][/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]][/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚ラクスドルム大陸/占星都市・ステリアル〛[/中央寄せ]
一行はステリアルの『[漢字]門[/漢字][ふりがな]ゲート[/ふりがな]』の前に出た。
「すぐにノルストラに戻りますよ!」
ステリアルの街並みを見る暇もなく、『[漢字]門[/漢字][ふりがな]ゲート[/ふりがな]』を通り抜けた。
[中央寄せ]エリア〚ノルティーク大陸/学術都市・ノルストラ〛[/中央寄せ]
「「「「「「「「[太字][大文字]!![/大文字][/太字]」」」」」」」」」
全員が息を呑んだ。なぜなら、既にノルストラの上空に“知識の魔神”が居たからだ。
「ユリメラ!!」
フィルマリーの声は夜風に掻き消されて届かない。飛び出しそうになるフィルマリーを押さえてノイトたちは図書館へと駆け出した。
「メル、ラルカ、リーリャたちを探して時計塔の方に集めて!」
「分かった!」「分かった!」
ノイトの指示で2人は時計塔の方へと向かう。
「ガヴェルディさん、ミーリアさん、実験台だった人の中に親族を持つ人が街のカフェに居ます。その人を連れてプロセティアで治療してもらってください!」
「承知した!」「了解しました!!」
ガヴェルディとミーリアの2人は実験台だった人々が入ったカプセルをフィルマリーから受け取って街の外れへと向かった。
「ユリムさん、フィルさん、僕たちはこのままリオールさんに現状報告を...」
「その必要はない。僕はここに居る。」
声が聞こえる方へと振り向くと、リオールが待っていた。グレーのクロークを靡かせながらいつでも“知識の魔神”の元へと迎えるように空中に浮かんでいる。
「フィルマリー、先生への報告は済んでいる。今すぐにアレを止めるぞ。」
「......。」
「フィルマリー?」
「あれは......ユリメラです。」
「! あれが...!?」
今、“知識の魔神”は巨大な書物のような姿をしていた。本から手腕のような文字列が伸び、周囲から魔力を吸い取っているようだ。
「お姉ちゃん......!!」
このままではフィルマリーもユリムも耐えきれない。そう判断したノイトは[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]を喉に流し込んで【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】をマジックバッグから取り出した。
「止めに行きますよ。」
「......フィルマリー、ノイトにアレを返してやれ。」
「......あ、はい......!」
フィルマリーはノイトから預かっていた“[漢字]翼の象徴[/漢字][ふりがな]ウィング[/ふりがな]”をノイトの首にかける。
「それの説明を出来る状況じゃないのは申し訳ないですが、私が知る限りその魔具は...」
「知ってます。」
「え?」
「すみません、あの時フィルさんから逃げるために押し付けただけで、感覚で理解は出来てます。本当にごめんなさい。」
「............ハァ、別に良いですよ。私もそんなことだろうと分かってましたから。」
「それじゃあ、あの魔神を止めに行きましょう。」
ノイトとフィルマリーとリオールの3人は一斉に飛び出した。
図書館の地下、大書庫。そこにある書物の知識をすべて吸い取られた場合、“知識の魔神”は“最強”となる。それを防ぐかのように、図書館には魔力で創られた障壁が張られていた。
組織の拠点の研究館に入ったノイトは荒れている実験室とユリムを見つけた。
「ん......どうしたんですか?」
「......ノイトさん......。お姉ちゃんが“知識の魔神”に......。」
「そうですか。メル、魔神は“全能の魔神”と同じように核が本体のやつ?」
「うん、そうだよ。最近の組織が造った魔神は全部そう。」
「なるほど。じゃあまだ助けられるかもしれないね。」
「本当ですか!? それなら、またお姉ちゃんと......!」
ノイトが頷き、ユリムの顔の強張りが僅かに緩む。ラルカがノイトの隣で他の実験体の様子を確認した。
「......他の実験体は今のところ命に別状はないように見えるな。」
「そうだね。一応今行方不明になってる人たちのリストと照らし合わせてみてくれる?」
「......分かった。」
妙な間が空く。ラルカは今のノイトに対して何か違和感を感じているようだ。
「ノイト。何かあったか?」
「いや?何もないよ。」
「............。」
「ラルカ、どうかしたの?ノイトくんの様子、そんなにおかしい?」
「......いや、何でもない。忘れて良い。」
その時、ガヴェルディとミーリアが研究室の地下へ繋がっていると思われる階段からあがってきた。
「......ノイト=ソルフォトスさん、ですね。あなたへ見せたいものがあります。地下室まで。」
「あ、分かりました。」
ノイトたちはミーリアに続いて研究館の地下室へと降りていった。階段を降りると檻に入れられた魔物らしきものが居た。純粋な魔物ではなく、大部分が人間の姿である。
(ロリ、ウッウン......キメラかな?)
少し近づいてみてみるとそれがクラゲのような姿をしているのが分かった。透き通った髪がクラゲの触手のようで、微細な魔力を放っている。
(擬人化キャラってこんな感じだよな......。)
ノイトが膝を突いて目線の高さを合わせた後に手を伸ばしてみた。
「ヒィッ...... 誰......?」
「僕はノイト。君は?」
「私は......バケモノ?」
「バケモノではなさそうだけどねぇ......?華奢でかわいいクラゲの魔物に見えるけど。」
「魔物......?」
ノイトはミーリアの方を見る。ミーリアはノイトの視線に気がついて説明を始めた。
「その個体はこの組織で生み出された人間とジェリーのハイブリットです。ただの興味本位での実験の結果ですので、何かを期待して造られたものではありません。」
「ハァ......まったく持って勝手すぎるものですね。」
「......私は、何?」
「そうだねぇ、フィゼリアとでも名付けておこうか。」
「フィゼリア......?バケモノじゃない?」
「うん、君はバケモノなんかじゃない。僕が保証する。」
フィゼリアはゆっくりとノイトが伸ばした手へと自身の手を伸ばす。手と手が触れ合い、ノイトの手の温度に溶かされていくようにフィゼリアの手の強張りが緩まっていった。
「あたたかい......。」
(ん〜、この子はシルイさんに任せるか。魔物の要素があるのであれば、召喚師で魔物の扱いにも長けている人が面倒を見た方が良いだろうし。)
ノイトが顔を上げると他にもたくさんの檻があることに気がついた。しかし、そこに居たのはどれも形がぐちゃぐちゃとなったキメラらしき生物ばかりである。
「こんなにたくさん。上に居た実験体の人たちの一部ですよね、これ。」
「はい。恐らく30年前には既にこの地下室でキメラの合成実験が行われていたものかと。」
「......命がある以上無闇に処分は出来ないですね。他の生物に危害を加える可能性はありますか?」
「その可能性は極めて高いです。この中には高い知能を持つ個体も居ます。野放しにするわけにもいきません。」
「......かと言ってここにずっと置いておくわけにもいかなさそうですね。しょうがないですけど、僕の仲間の人に頼んでどうにかしてもらおうと思います。」
「分かりました。では、上に戻りましょうか。他の実験体の中から救えるものは救いましょう。」
「......あなた、なんでこの組織に所属してたんですか?全然組織の思想に染まるような性格には見えませんけど。」
階段を上ろうとしていたミーリアはノイトの言葉で歩みを止め、ノイトの方を振り返る。
「別に、私は雇われただけですよ。先代のボスに。彼には多大な恩があるんです。それをただ返しただけ。」
「なるほど。」
ノイトはフィゼリアを連れて研究室へと戻った。ラルカはノイトが戻ってきたことに気が付き、声をかけてくる。
「ノイト。実験体の中からリーリャたちに捜索を任せていた行方不明者らしき少年が見つかったぞ。」
「ミルーサさんの弟か。容態は?」
ガヴェルディが様子を確認しながら答えた。
「大したダメージもないようだ。適切な処置を取れば回復も早いだろう。ただ......。」
「ただ......?」
「この少年の身内らしき男女は後遺症が残るかもしれん。」
「取り敢えず今助かる人は極力助けましょう。」
ノイトの隣へと歩いて並んだラルカがボソリと呟く。
「手が届く範囲は救いたい、だったか。」
「......まだ覚えてたの......?」
「当然だ。お前の言葉はほとんど覚えているぞ。」
「それはそれで怖いよ......。」
ガヴェルディは研究調査機関の人間だからか実験台だった人の応急処置の手際が良い。ノイトは感心しながらもメルクとユリムの方へと歩み寄った。
「ユリムさん。」
「......ノイトさん......私は何をすれば良いですか?お姉ちゃんを助けるために私も何か出来ることを......!」
「“知識の魔神”は討伐します。」
「............へ?」
「でも、あなたのお姉さんは助けられるように最大限手を尽くします。」
「え、あぁ......はい!お願いします!!」
「以上です。」
「......?」
ノイトはユリムに余計な負担をかけないようにユリム自身が何かをすることを防いだ。
「懸命な判断だな。相手が魔神であり、その上組織によって生み出されたものであれば危険なのは当然。ただ、他の魔神よりも警戒する必要がありそうだ。何しろ、“全能の魔神”という前例が居るのだからな。」
“全能の魔神”の魔神の話が出てメルクが少しピリついたような表情をしたように見える。ノイトは“全能の魔神”との戦闘を思い出し、ため息を吐いた。
「あの時は1回死にかけた......っていうか既に1度死んでるんだけど。またああなるのはちょっとね。」
「ノイト。ちゃんと危機感を持たないと今度こそ死ぬぞ。」
「......。分かったよ。」
フィゼリアがノイトの後ろから顔を覗かせるようにしてしがみついている。何か言いたいことがあるのか、ノイトの手を引いた。
「ん、どうしたの?フィゼリア。」
「私......ここ、嫌い。」
「......まぁ、そうだよね。居心地悪いし。実験体にされた人たちの応急処置が終わったらすぐにこんなところ出ていくよ。それまでもうちょっとだけ我慢しててくれる?」
「......うん。がんばる。」
ノイトがふと周囲の様子を確認すると以前感じたことのある魔力の気配を感じる。
(フィルさん......?)
ノイトは先程[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態に近い状態になったため、その余韻で普段よりも魔力の察知が敏感だった。恐らく先程のノイトの魔術の魔力を感じ取ったのだろう。
丁度ガヴェルディが応急処置を終えたとき。本館があった方角からフィルマリーの声が聞こえた。
[小文字]「ノイトさーん!!」[/小文字]
「やっぱりフィルさんだ。」
通路の方から走ってきたフィルマリーはノイトを見つけた途端に飛びついてくる。
「ノイトさん!」
「グヘェッ...... フィルさん、どうしたんですか?こんなところで......。」
「やっぱりノイトさんですね? さっきのあの膨大な魔力、ノイトさんの魔術でしたか!」
「それはまぁ、そうですけど。」
「すごかったです!ざっと10kmは離れている場所からでも感じ取れる程に!」
「そんなに......?ただクロエと戦ってただけなんですけどねぇ......。」
「それでもノイトさんはすごいです!自信持ってください!!」
「まぁ、僕のことは別に良いんですよ。丁度良かったです。フィルさんに少しお願いがあって......。」
「私にですか?ノイトさんのお願いなら何でも聞いちゃいます!!」
「ここの地下にキメラの失敗作みたいなのが沢山居るんですけど、このまま放置するわけにもいかないし、かと言って処分してしまうのもよろしくないかと思ってまして......。ぬいぐるみにするなりフィルさんの研究に活用するなり、好きなようにしちゃって大丈夫です!多分。」
フィルマリーは表情を明るくしてノイトに抱きつく力を強めた。
「本当ですか!ありがとうございます、ノイトさん!!」
「あの......ちょっと......力が強いです......。」
結局、フィルマリーに実験体だった人の搬送も任せてしまった。
「すみません、フィルさんも疲れてるでしょう?」
「大丈夫です!ノイトさんのためなら!!」
相変わらずのフィルマリーを見ながら微笑むノイトをラルカが軽く支えている。流石のノイトも魔力が回復しきっていないようだ。
「フィルマリーさんが居てくれるのは頼もしいけど......。なんでガヴェルディまで着いて来てんの?」
「あのなぁ、地下室に居たというキメラと実験台だった人らのその後の情報もまとめて持ち帰る、って言ったろ?俺が居ることがそんなに不満か?」
「一応元組織の人間だからまだ警戒はしてるよ。」
「お前が言えたことじゃないだろう......それを言うならミーリア。アンタも元組織の人間だからな!」
「理解しています。その上でノルティーク帝国へ向かう予定です。」
「予定です、じゃなくてな......。」
「そういえば、ガヴェルディってまだその影みたいな姿なの?いい加減解いちゃっても良くない?」
「あぁ、もううるさいなぁ!いっぺんに話しかけてくるな!!」
うるさいなら耳を塞げば良い。そういう考えのノイトは何も言わずに両手で耳を塞いでいた。
「結構組織の被害はあったね......。」
「そうだな。実父やら幹部やらの末路はどうであれ、それ以前に魔神の復活や戦争の裏での動きも気になる。後でお[漢字]義父[/漢字][ふりがな]とう[/ふりがな]様にも報告せねば。」
「......フフッ。」
笑みを漏らしたノイトがラルカの頬をつつく。ラルカは虚を突かれたような表情を浮かべたが、その手を取り払うような真似はしなかった。
「なんだ、いきなり。」
「その堅苦しい喋り方だとなーんか面白いんだよね〜。」
「[小文字]......別に、普通に喋ろうと思えば普通に喋れるんだけど。[/小文字]」
「[小文字]あ、デレた。ツンデレだなぁ。[/小文字]」
「[小文字]その言葉、そっくりそのまま返すよ。[/小文字]」
「ちょっと、ノイトくんとラルカ。2人で何コソコソ話してるの〜?」
小声で話していた2人だったが、流石に何か話していることはバレたようだ。
「いや〜、気にしなくて良いよ。ただラルカがツンデ...」
「ノイトの妄言だ。気にするな。」
メルクは不満げに頬を膨らませながらノイトに近づいた。
「ノイトくん、なんで最近私に冷たいの?」
「え、冷たくなってた?」
「冷たいよ。昔はあんなことやこんなことまでしてたのに......。」
「[漢字]同衾共枕[/漢字][ふりがな]あんなこと[/ふりがな]や[漢字]魔神の討伐[/漢字][ふりがな]こんなこと[/ふりがな]、ねぇ......。」
「とにかく、もっと私にも構って!寂しいでしょ!!」
「かまちょ......?」
「んぅ......そうだよ。悪い?」
「別に悪くないけど......。」
「けど......?」
「メル、なんでそんなに僕に構うの?」
「ん、好きだからに決まってんじゃん。」
「そうじゃなくて......いや、それもあるかもしれないけど、もっと根本的にあるでしょ?理由。」
メルクは少し考えた後で少し寂しげな表情になる。
「うん。あるよ。後で話すね。」
「.......分かった。ありがとう。」
組織の拠点があった場所から歩いてそろそろ一番近くの街に辿り着く頃だろう。そこでノイトはあることに気がついた。
「あれ、そういえばフィルさんなんで走ってきたんですか?」
「え?」
「いつもはすぐ近くまで[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]してくるじゃないですか?さっきわざわざ走ってきたのはなんでかな〜、と思って。」
「あぁ、それは具体的な座標が割り出せなかったからです。」
「......と言いますと?」
「普段は正確なノイトさんの位置まで分かるんですけど、この場所は特殊な結界が張られていて座標が僅かに歪んでいるんです。それに、先程のノイトさんの魔術でちょっとビックリしちゃって......。少しだけ感覚が鈍っちゃったんですかね?」
「そうだったんですか......。大丈夫です?」
「はい!今は何事もなく平和なようなので!!」
「「「「「............。」」」」」
全員が黙った。フィルマリーは気がついていなかったようだ。ユリムがおずおずと手を挙げながら口を開いた。
「あの......私のお姉ちゃんが“知識の魔神”に乗っ取られてしまって......。」
ユリムを見た途端にフィルマリーの気配が変わる。
「......フィルさん、どうしたんですか?」
「────。」
フィルマリーは何も答えない。
「フィルさん?」
(え......?え?そんな......いや、違うかもしれな、.......違わない!! でも、......あぁ......!え?あぁ......待っ、そんな.......わけ......な......。)
「フィルさん!」
「ハッ............。でも、いや......そんな......あぁ......!!」
「フィルさん、落ち着いてください。一体何があっ...」
フィルマリーがノイトの肩を強く掴んだ。
「だって、ユリメラは!私の大事な友達なんです!!」
「──── !!」
フィルマリーは親子や兄弟の間の魔力の似ている部分を感じることが出来る。それ故だろう。ユリムを見て今一度その魔力の質を感じたことで、彼女の姉であり、フィルマリーの友人であるユリメラに起きた事実を知ってしまった。
「待ってて、ユリメラ......!今行きますから......!!」
「ラルカ。」
ノイトに名前を呼ばれるや否や、ラルカは[漢字]縫式の手袋[/漢字][ふりがな]キルト・グローブ[/ふりがな]を装着してフィルマリーの腕を掴む。
「離してください......ラルカさん......。私が行かないと......。」
フィルマリーが魔法で移動しようとしたが、フィルマリーがラルカの手に縫い付けられたかのように動かない。
「え......?なんで......?」
「行かせませんよ、フィルさん。フィルさんの知人であろうと、今の相手は魔神です。1人で勝てるような相手じゃない。」
([漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態で“全能の魔神”を凌駕した人物が何を言っているんだか......。)
ラルカは内心で突っ込むだけに留め、フィルマリーを引き戻した。
「それでも!行かないと......ユリメラを助けに行かないと......!!」
「ユリメラさんは必ず助けます。だから、もう少しだけ落ち着いてください。」
[中央寄せ][太字]上級魔術:[大文字][太字]〘ᛖᛗᚪᚾᚳᛁᛈᚪᛏᛁᛟᚾ〙[/太字][/大文字][/太字][/中央寄せ]
[中央寄せ][[漢字][太字]位置置換[/太字][/漢字][ふりがな]サブスティテュート[/ふりがな]][/中央寄せ]
フィルマリーが放った上級魔術を咄嗟に回避したノイトはフィルマリーの手を掴む。
「フィル!待って!!」
「......!!」
「焦ったまま突っ込んでいったらどうしようもないですよ......。まず、『[漢字]門[/漢字][ふりがな]ゲート[/ふりがな]』からノルストラに戻りましょう。リオールさんにも報告してから“知識の魔神”の捜索を始めます。」
「......分かり、ました......。」
「ガヴェルディさん、近くの街までお願いできますか?」
「四の五の言ってる場合じゃないだろ、当然だ。」
[中央寄せ][[漢字][太字]空間転移[/太字][/漢字][ふりがな]テレポート[/ふりがな]][/中央寄せ]
[中央寄せ]エリア〚ラクスドルム大陸/占星都市・ステリアル〛[/中央寄せ]
一行はステリアルの『[漢字]門[/漢字][ふりがな]ゲート[/ふりがな]』の前に出た。
「すぐにノルストラに戻りますよ!」
ステリアルの街並みを見る暇もなく、『[漢字]門[/漢字][ふりがな]ゲート[/ふりがな]』を通り抜けた。
[中央寄せ]エリア〚ノルティーク大陸/学術都市・ノルストラ〛[/中央寄せ]
「「「「「「「「[太字][大文字]!![/大文字][/太字]」」」」」」」」」
全員が息を呑んだ。なぜなら、既にノルストラの上空に“知識の魔神”が居たからだ。
「ユリメラ!!」
フィルマリーの声は夜風に掻き消されて届かない。飛び出しそうになるフィルマリーを押さえてノイトたちは図書館へと駆け出した。
「メル、ラルカ、リーリャたちを探して時計塔の方に集めて!」
「分かった!」「分かった!」
ノイトの指示で2人は時計塔の方へと向かう。
「ガヴェルディさん、ミーリアさん、実験台だった人の中に親族を持つ人が街のカフェに居ます。その人を連れてプロセティアで治療してもらってください!」
「承知した!」「了解しました!!」
ガヴェルディとミーリアの2人は実験台だった人々が入ったカプセルをフィルマリーから受け取って街の外れへと向かった。
「ユリムさん、フィルさん、僕たちはこのままリオールさんに現状報告を...」
「その必要はない。僕はここに居る。」
声が聞こえる方へと振り向くと、リオールが待っていた。グレーのクロークを靡かせながらいつでも“知識の魔神”の元へと迎えるように空中に浮かんでいる。
「フィルマリー、先生への報告は済んでいる。今すぐにアレを止めるぞ。」
「......。」
「フィルマリー?」
「あれは......ユリメラです。」
「! あれが...!?」
今、“知識の魔神”は巨大な書物のような姿をしていた。本から手腕のような文字列が伸び、周囲から魔力を吸い取っているようだ。
「お姉ちゃん......!!」
このままではフィルマリーもユリムも耐えきれない。そう判断したノイトは[漢字]回復薬[/漢字][ふりがな]ポーション[/ふりがな]を喉に流し込んで【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】をマジックバッグから取り出した。
「止めに行きますよ。」
「......フィルマリー、ノイトにアレを返してやれ。」
「......あ、はい......!」
フィルマリーはノイトから預かっていた“[漢字]翼の象徴[/漢字][ふりがな]ウィング[/ふりがな]”をノイトの首にかける。
「それの説明を出来る状況じゃないのは申し訳ないですが、私が知る限りその魔具は...」
「知ってます。」
「え?」
「すみません、あの時フィルさんから逃げるために押し付けただけで、感覚で理解は出来てます。本当にごめんなさい。」
「............ハァ、別に良いですよ。私もそんなことだろうと分かってましたから。」
「それじゃあ、あの魔神を止めに行きましょう。」
ノイトとフィルマリーとリオールの3人は一斉に飛び出した。
図書館の地下、大書庫。そこにある書物の知識をすべて吸い取られた場合、“知識の魔神”は“最強”となる。それを防ぐかのように、図書館には魔力で創られた障壁が張られていた。