世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
“知識の魔神”の禁忌魔法をラルカの超級魔法が相殺した。
「......え?え?ラルカ、超級魔法使えたの......?」
ラルカは一応ノルティーク王族の血が混ざっているため魔力量は人一倍多いのである。今までは魔法を使っていなかったため意外だったのだろう。メルクが消えた魔法の余波を頬に感じて目を開いていたそのとき、本館から大きな衝撃音が聞こえてきた。
「え!? 今度は何!?」
遅れて魔力の余波が来た。風と共に訪れたのは焦げた匂いとノイトの気配。“記憶の魔神”はその魔力の余波と気配を感じ取って退却を選ぶ。
[太字][明朝体][大文字]「ふん......どの時代も面倒なものだな、“器”は......。」[/大文字][/明朝体][/太字]
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
研究館に取り残された面々は既に本館の方へと駆け出していた。
(ノイトくん......!無事で居て......!!)
研究館から本館へと繋がる通路を引き返していくと、途中で通路が途切れていた。それどころか本館まで丸ごとクレーターになっている。
「......ラルカ、これって......。」
「ハァ......まったくアイツは。こういうときに限って羽目を外すのだから......。」
上空にあるのは大部分が蒸発した何かと1人の少年。それと少年の魔力を帯びた、白い金属のようなもので創られた謎の物体である。メルクたちの視界に映るのは、空中に浮いているノイトの姿。
(ノイトくん......?なんか......遠い......?)
ノイトはそこに居るはずなのに、どこか遠くに居るような感覚だった。以前“全能の魔神”アレソティラスとの戦闘で見た忘我状態のノイトと似ている。
「[小文字]......弥哲、............。[/小文字]」
ラルカがノイトの前世の名を漏らす。夜風にかき消されたそれがノイトに届いたかは分からない。
周囲を見渡すとクロエの姿はなかった。あれだけ話していたノイトが逃がすとは到底思えないため、恐らくノイトがクロエを仕留めたのだろう。本館は丸ごとクレーターになっていて跡形もないが、上空にはノイトともう一つ、蒸発した何かがあった。黒く焦げた部分がまだ残っていたがそれが何だったのかは分からない。しかしそれがクロエだったものだと気が付き、メルクは安堵と畏敬の念が混ざった感情を覚えた。
(ノイトくん......すごい......。あのクロエをほぼ1人で仕留めちゃうなんて......!)
ゆっくりと降りてきたノイトの元へメルクとラルカが駆けつける。
「ノイトくん!」「弥哲!」
名前を呼ばれたノイトがゆっくりとこちらを見て、目があった。一拍の間が空き、ノイトが安堵のえみを浮かべる。
「あ、メル!無事で良かっ...」
メルクがノイトに抱きつく。ラルカはノイトの袖をすっと掴む。
「2人とも、元気そうだね......。良かったよ。」
「......ノイト、お前は少々働きすぎだ。ストレスを感じないからと言って無理して良いわけではないだろう。今日はもう安め。」
「あはは......そうさせてもらうよ。研究館の方はどう?」
「単刀直入に言おう。まずユリムの姉と、それ以外の実験体を見つけた。そしてユリムの姉の肉体が魔神の核に乗っ取られて“知識の魔神”が生まれた。」
「また魔神か......。何体目だっけ?9体目?」
ノイトに抱きついていたメルクが顔を上げて口を開いた。
「もう......2人とも冷静すぎ。何?“また”って。魔神がどれだけ恐ろしいものか、ちゃんと分かってるはずでしょ?」
「まぁ、僕は一度瀕死状態まで追いやられたわけだし......。」
「よく戻ってこれたよね、本当に。何時間も気を失ったままで心配してたんだからね!」
「はいはい、ありがとう。それじゃあ、僕も研究館の様子を見させて貰おうかな。」
歩き出した途端に視界が一瞬暗くなり、ノイトがふらついた。
「ノイトくん!? 大丈夫!?」
咄嗟にメルクとラルカに支えられて倒れることはなかった。
「うん、ありがとう。魔力の使いすぎで眼前暗黒感が......。」
「相変わらずだな。いきなりその名称が出てくるくらいには気力が残っているようで何よりだ。」
「お陰さまでね。」
1人の少年と、それを支える2人の少女は月明かりに照らし出されたクレーターに背を向けて研究館の中へと入っていった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ふと思った。
(......愛してる、なんて心の底から言えないよ。)
それは決して嘘じゃない。
誰かを愛することを知ろうともせず、今まで自分の殻に籠もっていたんだし。
「どんなに考えても分からないよ。」
今までがそうだったから。
この先で理解できる日が来るのかは予想もできないし、考えるつもりもない。
自分にとってはどうでも良いことだから。
「何だかなぁ......。みんなと違うんだよね。」
違いを違いとして受け止めたところでそれ以上には何もない。
気持ちの理解も感情移入もやらないんじゃなくて、できないんだよ。
他人が考えてることは分からないし、適当に雰囲気を合わせておくだけで周りと擦れ合うこともなかったから良いんだけどね。
自分が誰か別の人に感じられて、どこか遠くにいるような感覚だった。
乖離感って言うんだったっけ。以前本で読んだことあるやつ。
知識として知ってるものが後から感覚で理解できるのって、なんかしっくり来やすいな。
理論と経験で二度知る、ってことなのかも。
自分のことを自分でも完全には理解できないんだから、他の人が理解するなんてもっと難しいじゃん。
大体こんなキャラになりたい、っていう理想を演じて生きているのかな。人間っていう生き物は。
空は青い。海も青い。だけど雲は白いし、太陽も白い。
自然でさえそんなに違いがあるんだから、人間同士の違いなんて考えても仕方ががないことだよね。
だから、考えない。考えると疲れちゃうから。
考えるな、感じろ。みたいな。
「感じる、か............。」
音は感じられるし、雰囲気も感じられる。だけど、心がよく分からない。
「......ん?」
空。青く澄んだ空。清々しいくらいに広くて綺麗だけど。
なんか、空っぽだな。自分と同じような、違うような。
どれだけ時間が経っても、1人しか居ない人間。
特別だとは思わないし、なんなら異端な方だと思う。
だけど、それでも良い。こうやって考えてるだけで時間は勝手に流れていってくれるから。
時間は有限だけど、どう生きるかは自分で考えていけば良いよね。
“知識の魔神”の禁忌魔法をラルカの超級魔法が相殺した。
「......え?え?ラルカ、超級魔法使えたの......?」
ラルカは一応ノルティーク王族の血が混ざっているため魔力量は人一倍多いのである。今までは魔法を使っていなかったため意外だったのだろう。メルクが消えた魔法の余波を頬に感じて目を開いていたそのとき、本館から大きな衝撃音が聞こえてきた。
「え!? 今度は何!?」
遅れて魔力の余波が来た。風と共に訪れたのは焦げた匂いとノイトの気配。“記憶の魔神”はその魔力の余波と気配を感じ取って退却を選ぶ。
[太字][明朝体][大文字]「ふん......どの時代も面倒なものだな、“器”は......。」[/大文字][/明朝体][/太字]
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
研究館に取り残された面々は既に本館の方へと駆け出していた。
(ノイトくん......!無事で居て......!!)
研究館から本館へと繋がる通路を引き返していくと、途中で通路が途切れていた。それどころか本館まで丸ごとクレーターになっている。
「......ラルカ、これって......。」
「ハァ......まったくアイツは。こういうときに限って羽目を外すのだから......。」
上空にあるのは大部分が蒸発した何かと1人の少年。それと少年の魔力を帯びた、白い金属のようなもので創られた謎の物体である。メルクたちの視界に映るのは、空中に浮いているノイトの姿。
(ノイトくん......?なんか......遠い......?)
ノイトはそこに居るはずなのに、どこか遠くに居るような感覚だった。以前“全能の魔神”アレソティラスとの戦闘で見た忘我状態のノイトと似ている。
「[小文字]......弥哲、............。[/小文字]」
ラルカがノイトの前世の名を漏らす。夜風にかき消されたそれがノイトに届いたかは分からない。
周囲を見渡すとクロエの姿はなかった。あれだけ話していたノイトが逃がすとは到底思えないため、恐らくノイトがクロエを仕留めたのだろう。本館は丸ごとクレーターになっていて跡形もないが、上空にはノイトともう一つ、蒸発した何かがあった。黒く焦げた部分がまだ残っていたがそれが何だったのかは分からない。しかしそれがクロエだったものだと気が付き、メルクは安堵と畏敬の念が混ざった感情を覚えた。
(ノイトくん......すごい......。あのクロエをほぼ1人で仕留めちゃうなんて......!)
ゆっくりと降りてきたノイトの元へメルクとラルカが駆けつける。
「ノイトくん!」「弥哲!」
名前を呼ばれたノイトがゆっくりとこちらを見て、目があった。一拍の間が空き、ノイトが安堵のえみを浮かべる。
「あ、メル!無事で良かっ...」
メルクがノイトに抱きつく。ラルカはノイトの袖をすっと掴む。
「2人とも、元気そうだね......。良かったよ。」
「......ノイト、お前は少々働きすぎだ。ストレスを感じないからと言って無理して良いわけではないだろう。今日はもう安め。」
「あはは......そうさせてもらうよ。研究館の方はどう?」
「単刀直入に言おう。まずユリムの姉と、それ以外の実験体を見つけた。そしてユリムの姉の肉体が魔神の核に乗っ取られて“知識の魔神”が生まれた。」
「また魔神か......。何体目だっけ?9体目?」
ノイトに抱きついていたメルクが顔を上げて口を開いた。
「もう......2人とも冷静すぎ。何?“また”って。魔神がどれだけ恐ろしいものか、ちゃんと分かってるはずでしょ?」
「まぁ、僕は一度瀕死状態まで追いやられたわけだし......。」
「よく戻ってこれたよね、本当に。何時間も気を失ったままで心配してたんだからね!」
「はいはい、ありがとう。それじゃあ、僕も研究館の様子を見させて貰おうかな。」
歩き出した途端に視界が一瞬暗くなり、ノイトがふらついた。
「ノイトくん!? 大丈夫!?」
咄嗟にメルクとラルカに支えられて倒れることはなかった。
「うん、ありがとう。魔力の使いすぎで眼前暗黒感が......。」
「相変わらずだな。いきなりその名称が出てくるくらいには気力が残っているようで何よりだ。」
「お陰さまでね。」
1人の少年と、それを支える2人の少女は月明かりに照らし出されたクレーターに背を向けて研究館の中へと入っていった。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ふと思った。
(......愛してる、なんて心の底から言えないよ。)
それは決して嘘じゃない。
誰かを愛することを知ろうともせず、今まで自分の殻に籠もっていたんだし。
「どんなに考えても分からないよ。」
今までがそうだったから。
この先で理解できる日が来るのかは予想もできないし、考えるつもりもない。
自分にとってはどうでも良いことだから。
「何だかなぁ......。みんなと違うんだよね。」
違いを違いとして受け止めたところでそれ以上には何もない。
気持ちの理解も感情移入もやらないんじゃなくて、できないんだよ。
他人が考えてることは分からないし、適当に雰囲気を合わせておくだけで周りと擦れ合うこともなかったから良いんだけどね。
自分が誰か別の人に感じられて、どこか遠くにいるような感覚だった。
乖離感って言うんだったっけ。以前本で読んだことあるやつ。
知識として知ってるものが後から感覚で理解できるのって、なんかしっくり来やすいな。
理論と経験で二度知る、ってことなのかも。
自分のことを自分でも完全には理解できないんだから、他の人が理解するなんてもっと難しいじゃん。
大体こんなキャラになりたい、っていう理想を演じて生きているのかな。人間っていう生き物は。
空は青い。海も青い。だけど雲は白いし、太陽も白い。
自然でさえそんなに違いがあるんだから、人間同士の違いなんて考えても仕方ががないことだよね。
だから、考えない。考えると疲れちゃうから。
考えるな、感じろ。みたいな。
「感じる、か............。」
音は感じられるし、雰囲気も感じられる。だけど、心がよく分からない。
「......ん?」
空。青く澄んだ空。清々しいくらいに広くて綺麗だけど。
なんか、空っぽだな。自分と同じような、違うような。
どれだけ時間が経っても、1人しか居ない人間。
特別だとは思わないし、なんなら異端な方だと思う。
だけど、それでも良い。こうやって考えてるだけで時間は勝手に流れていってくれるから。
時間は有限だけど、どう生きるかは自分で考えていけば良いよね。