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本作は一部を除きフィクションです。
一部を除き、実在する人物、出来事、組織とは関係ありません。

また、一部微細な暴力表現が含まれている場合があります。
これを苦手とする方は閲覧をお控えいただくことをお勧めします。

【せかゆめ1周年!これからもよろしくお願いします!】

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世界に溢れる夢

#122

122.兵器ではなく(2)

[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]

「だーかーらー!俺もお前と同じでこの組織に潜入してる側の人間なの!」
メルクを部屋に連れ込んだ影はメルクの前に座って弁解していた。メルクは警戒を解いておらず、スティレットを構えている。
「......で、だから何?」
「だから何じゃないだろ!今お前はこの拠点ごと組織を潰そうとしてるんだろう?だったら俺も協力する!」
「そんな言葉を信用出来るとでも?」
「頼むからさぁ......お願い!見返りは何もないし、組織の情報も俺が知っている限りは全部吐く!」
「その後は?」
「お前の好きにすれば良い。戦力になると判断したなら味方にすれば良いし、邪魔だと判断したなら俺はお前とはもう極力関わらない。」
メルクが警戒心をわずかに弱める。
「......まぁ、それならそれで良いけど。で、ガヴェルディ。アンタはどこの所属?」
「俺はウェルロンデの情報調査機関・ルズフィアスの諜報員だ。魔神について調べていたんだが......この組織の存在に気がついて潜入することになっていた。」
「あっそ。それはどうでも良いんだけど、アンタが敵対しないのであればノイトくんとラルカの方に向かわないと。アンタ、クロエがどこに居るか分かる?」
「東棟だ。いつもの場所で閉じこもってるはずだが......さっきケイスが動いたから部屋から出てるかもしれない。」
「東...もう1人誰か居た?」
「フェヴロだ。」
「フェヴロが!? 多分あっちにはラルカが居る。ラルカ、フェヴロの実の娘だって。」
「はぁ?あいつ確か娘が言うこと聞いてくれないだとかで失望してる感じだったが......大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょ!フェヴロは厄介すぎる!すぐにラルカのところに行くよ!!」
「分かった!掴まってろ!!」
ガヴェルディはメルクを影で包みこんで地面の影に潜った。影には質量も体積もないため、移動はほぼ一瞬である。2人は東棟の通路の壁から飛び出した。一瞬真っ暗になった視界から光が飛び込んだ先にはラルカとナイフをラルカの目へと振りかざしているフェヴロ。
「ラルカ!」

[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]『[漢字]灼愛射閼召[/漢字][ふりがな]ヤマナイアメ[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]

咄嗟に飛び出したメルクの斬撃がフェヴロのナイフを弾き飛ばした。
[斜体](メルク......!!)[/斜体]
フェヴロが距離を取ろうと後ろへ下がるが、そこにはガヴェルディが居る。メルクを拘束したときのように影の触手のようなものでフェヴロを拘束した。
[斜体]「!! ......ガヴェルディ、そっち側だったか......。」[/斜体]
「お前、今実の娘を手に掛けようとしていたな。何故だ?」
フェヴロはどこか余裕がありそうな表情を浮かべてラルカを見据える。
「何故?あの子は人間じゃない。別の何かだ。生まれて此の方一度も私の言うことに従おうとする素振りすら見せない。だから私はあれを兵器として育てることにした。武器庫を見せたときだけ目を輝かせていたからな、あれを見たときだけは私は嬉しかった。」
ラルカは[漢字]拳銃[/漢字][ふりがな]ハンドガン[/ふりがな]を構えてフェヴロを睨んでいた。
「嬉しかっただと......?」
「あぁ、そうだ。私は昔から親からの拘束が厳しくてな......その影響でもあるのだろうが、逆に何かを支配することに価値を感じるようになったんだ。」
メルクも感傷に浸るようなフェヴロの表情を見て眉根を寄せている。
「自分がされたことは誰かにしても良いと思ってるの......?」
「あぁ。少なくとも私はその考えだ。私の言う事が気に入らないなら抵抗すれば良い。当然それに伴って拘束も強めるがな。私は何者にも拘束されずに生きる。」
ガヴェルディの拘束が解けてしまった。フェヴロは話を続ける。
「私のことを反面教師にでも超えるべき壁にでもすれば良い。ただ、私は私の道を貫く。ラルカ、お前もそうすれば良い。兵器であるお前に、それが出来るのであればな。」
「私は人間だ。兵器は仲間を持たないだろう。」
「どうだかな。仲間だなんていう仮初めの口だけの関係に兵器が縋って何になる......?」
「兵器として育てられる前に、私は人間として生まれてきた。好きな本を読み、自分の思想を持ち、それを語り合える者とも会えた。それは私が人間として積み上げてきた大事な記憶だ。」
「......思想を語り合える者?そんなやつにいつ出会ったんだ。私はお前にそれを許した覚えはないぞ。」
「許しを得る必要などないだろう。自分の意思を持ち、自分で行動する。それがあいつの生き方だ。私はあいつの生き方に憧れていた。だから真似したんだ。」
「あいつ......?」
(.........。)
「私は人間だ。」
「違う。お前は兵器だ。」
カツン。
通路に響いた足音。その方を見るとそこに立っていたのはノイトだ。
「ノイト=ソルフォトス......父子の話に首を突っ込むなよ。」
「“父子だなんていう仮初めの血だけの関係に支配欲塗れの自己中が縋って何になる?”」
「聞いていたのか......。だがお前のそれには間違いがあ◌、」
フェヴロの言葉が途切れた。宣言が出来ない。ノイトの解釈がフェヴロの宣言を確定させることを不可能にしている。
(何だ......舌が回らない。筋が通っている......否定できないのか。)
フェヴロは宣言を諦めてただの自己主張に方向転換した。
「ラルカを誰よりも長く見てきたのは私だ。私がラルカを兵器として育てたのであれば、それはもう兵器だ。違うか?!」
「違う。」
フェヴロが黙った。ノイトの短く、早い返事。フェヴロの脳は勝手に先程の宣言を却下されたときの衝撃が残っている。ノイトは【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を前へと突き出してフェヴロを見据えた。
「ラルカは兵器なんかじゃない。れっきとした人間で、ちゃんと自分の思想を持った子で、僕の大事な仲間だよ。」
「それとこれとでは話がち」
「さっき仲間は仮初めの口だけの関係だって言ってたよね。仲間って本当に口だけの関係?誰よりも近くに居て、誰よりも仲良くて、一緒に居て楽しい人が、本当に口だけ?仮初めなんて言葉で簡単に否定出来る程、軽いものじゃないんだよ、絆ってものは。」
「絆......?そんなもの裏切りやすれ違いで簡単に壊れるものだろう!!」
「ねぇ、......なんでもしもの場合を普遍的なものだって嘘付けるの?」
「......は?」
2人の温度差は火を見るより明らかだった。まさに火と氷。フェヴロが段々とムキになって熱が上がってきていて、ノイトはフェヴロの破綻した考えへの失望で熱が冷めていく。
「“裏切りやすれ違い”......それって必ずあるものじゃないでしょ。僕は絆そのものの話をしているんだけど、お前は限定的な“場合による”結果を述べてんの。分かる?」
分かっていないようだ。
「ノイト、お前は何故そこまでして......。」
「やると決めたものは責任を持ってやり遂げたいから。」
「?」
ラルカとノイトの会話はメルクやフェヴロ、ガヴェルディには何のことだか理解出来ていないようだった。しかしそんなことはどうでも良い。
「...ノイト=ソルフォトス......お前が何と言おうがラルカは私が育てた人形に過ぎない。」
「......お前もか。名前は一生背負うものだ。まさかとは思ったけど......良くない意味で予想通り。」

[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力打撃[/漢字][ふりがな]マギノ・スパンク[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]

フェヴロはノイトの攻撃で通路の壁に叩きつけられてうめき声をあげた。受け身を取っただけではなく何かを仕込んでいたためか、一撃で仕留めることが出来なかった。だが、それも大したことではない。
(ラルカ......ポーランド語で“人形”......。悪意ある使い方はやめて欲しいんだけどな。)
ノイトはフェヴロの方へと踏み出したが、ラルカが止めた。
「待て、ノイト。......私が。」
ラルカは[漢字]縫式の手袋[/漢字][ふりがな]キルト・グローブ[/ふりがな]を装着した状態でフェヴロの顔をラルカの方へと向け、[漢字]拳銃[/漢字][ふりがな]ハンドガン[/ふりがな]を両手で構えた。フェヴロを見下すようにしてラルカは口を開いた。
「フェヴロ。今の貴様に、この弾は当たらないのか。」
「......あぁ、当たらない。私の宣言は絶対なんだ......否定しきれないものを相手取るとき以外はな。」
「そうか。」
ラルカが引き金を引く。すると、その弾はフェヴロに命中した。声も出せずにフェヴロは冷気になって消滅する。メルクとガヴェルディは何故ラルカの弾が当たったのか理解が出来ていなかったが、ノイトが居たことでノイトが何かしたのだと判断した。メルクがノイトへと駆け寄ってきて声をかける。
「ノイトくん、お疲れ様!見た感じまだクロエとは会ってないようで良かったよ!!」
「メルも無事で良かった。あと幹部は何人くらい?」
そこでガヴェルディが答えた。
「元々居た12人の幹部のうち、セルミース、モドー、ケイス、バーリンス、フクルス、グレーウィー、サバルネ、フェヴロの8人は既に死亡、あるいは戦闘不能状態にある。ガヴェルディ......これも偽名だがな、俺は敵対するつもりはないから、残る幹部は実質3人だ。」
「そう。なら、僕の気配探知をくぐり抜けたやつが1人居るね。メルは何人倒した?」
「私はまだ1人も。ノイトくんとラルカが心配でガヴェルディが協力するって聞いてからすぐにこっちに来ちゃったから。」
「ラルカは?」
「まだフェヴロだけだ。」
「僕が3人倒してきて、それ以上の気配は感じなかったから......こっち側の通路とメルが行ってた方の通路に最低1人ずつ。分担はどうする?」
そこでメルクが手を上げて分担を提案する。
「ノイトくんとクロエは会わせられないから私がこっち側の幹部の相手をする。ガヴェルディの話では元々この棟にクロエが居たらしいし。」
「勝てるの?」
「勝つよ。」
「やめておけ、メルク。お前じゃクロエには勝てない。見た感じ一番戦闘力があるのはノイト=ソルフォトスだ。」
「でも、私がやるしかないの。ノイトくんとクロエを会わせたらノイトくんが危ない。相性が最悪なの。」
ラルカはノイトの様子をじっと見ていた。
「ノイト......思い詰めたような表情をしているな。何か問題があるのか?」
「えっ、あぁ......うん。」
軽く俯いていたノイトは顔を上げて自身の懸念を話す。
「クロエはメルの話を聞く限りかなり性格がひん曲がっていてヤバいやつなんでしょ?それでメルでは勝てない。それなら僕が行くしかないよ。相性がどれだけ大事なのかはゲデニスと戦ったときに十分理解したつもりだけど......。やらなきゃいけないときってあるでしょ。」
「でも......。」
「ノイトが決めたことだ。任せても良いだろう。」
「でも、心配だよ......また“虚無の魔神”のときみたいになっちゃったら......。」
メルクは不安そうに両手を握りしめた。その様子を見たラルカは、真っ直ぐとメルクを見て話しかける。
「メルク。心配することと信頼することは違うから問題ない。私だってノイトをもう失いたくないが、ノイトならやってくれるとも思うし、ノイトにこそやって欲しいとも思う。ノイトがやると言ったのであれば私はそれを信用する。お前は違うのか?」
「......ノイトくんは、すぐに調子に乗る私を引き止めてくれるし、ノリも良くてカッコイイし......だから、どうしても心配が勝っちゃうの。......私、どうしたら良いのかな...?」
ノイトが2回手を叩く。
「目の前で僕を巡って色々心配しなくて良いから。大丈夫、僕は何とかすることは得意な方だからね。...救えなかったものもあるけど、無碍にしたくはない。」
「ノイト、やはりお前はクロエの相手をするつもりなのか?それなら私が一緒に...」
「ごめん、巻き込みたくないんだよ。それじゃ。」
ノイトは通路の先へと進んでいってしまった。メルクは追いかけようとしたが、ラルカが止める。
「ラルカ、ノイトくんが...!」
「......。」
メルクがラルカの手を振り払おうとするも、そのラルカの表情を見て手を止めた。被っていた帽子に隠れていて目元はよく見えないが、きっとメルクと同じ気持ちである。
「......みんな、酷いよ。私と同じになるなんて。」
ガヴェルディが黙ったまま2人を影で包みこんで他の幹部の元へと移動した。

ノイトは組織の拠点の東棟の通路を1人で歩いている。バーリンスの血の鞭のせいか、下っ端な幹部未満のメンバーはほとんど居ない。
(2人には悪いけど、クロエは危険すぎる。巻き込まないためにも、僕が相手をしないと。)


作者メッセージ

 作者の御鏡 梟(みかがみ きょう)です。
今回はフェヴロの討伐を中心に描きました。次回もお楽しみに!!
本作を読んでの感想の他、キャラクターや世界観についての質問も受け付けています。
本作品を読んでいただき、ありがとうございました!!

2026/04/19 19:47

御鏡 梟 ID:≫ m9kR/WFBrng.A
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