世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
重たく脳の奥まで響く耳鳴りがしたかと思えば、次の瞬間には世界がモノクロになる。まるで時が止まってしまったかのような感覚。しかし、火が灯る音が微かに聞こえたかと思えば動くことが出来るようになった。世界は依然としてモノクロだが、まだ世界は終わっていない。
[明朝体][太字]『これは...魔神の禁忌魔術か...。さっきの膨大な魔力と言い...ディアスムングロール大陸も大変そうだね。』[/太字][/明朝体]
「言ってる場合?! さっさと決めて!逃げるの?止めに行くの?」
女性の問いを聞いてそのプラチナブロンドの髪を持つ青年は悍ましい魔力を感じる方へと進んでいった。
[太字][明朝体]『当然、止めに行くよ。妹と世界を助けないと。フェノル、あっちで合ってる?』[/明朝体][/太字]
名前を呼ばれた鉄紺色のクロークを着た青年は頷いてエルクスと同じ方へと歩く。
「それじゃあ、それで決まりだな。ほら、行くぞ〜。」
「ちょっと、置いていかないでよ!」
静かで暗く、落ち着かない世界の中で4人は魔神の核の方へと向かっていっていた。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
アレソティラスだったものの禁忌魔術の効果範囲は世界に及んでいた。しかし、ノイトは咄嗟に禁忌魔法を放って対抗する。本来の効果範囲では世界には及ばないが、[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態を経て魔力過多状態になっているノイトの魔力と効果対象の限定によって、禁忌魔術を上書きすることに成功した。それにより発生源の超近距離に居たノイトやリーリャたちも無事だった。
「......っ!......ふぅ...。バケモノめ.........どうしてくれるんだよ、この世界を...。」
リーリャが駆け寄ってきてふらついているノイトを支える。心配そうな表情でノイトに尋ねた。
「ノイト、大丈夫?」
「何とかね......。メルやルミナたちは大丈夫そ?」
「全員無事だよ。ノイトの魔法と、あの黒いスライムのお陰でね。」
ノイトはそれを聞いて安心し、ゆっくりと座り込んだ。流石に魔力を使いすぎたようだ。
「それなら良いや。...ハァ..........疲れたぁ...!」
伸びをして目の前に浮かんでいる魔神の核をじっと見つめる。どうやら、先程の禁忌魔術で魔力のほとんどを消費したらしく、しばらくの間は何もしてこなさそうだ。フィルマリーが駆け寄ってきてノイトとリーリャを心配した。
「ノイトさん!リーリャさん!大丈夫でしたか?! さっきの魔法と言い、今しがたの禁忌魔法と言い......リオールくんが言ってた通りで、それ以上の人ですよノイトさんは...!! ...今、回復魔法をかけますからねっ!」
フィルマリーは杖を掲げる。しかし、回復魔法が発動しない。そもそも魔力が集まっていないようだ。
「え......?もしかして...魔力が、なくなってる?」
先程の魔神の核の禁忌魔術ととノイトの禁忌魔法で周囲の魔力がなくなってしまったのだろうか。その答えをリーリャに支えられた状態のノイトが告げる。
「あぁ...すみません。さっきの僕の禁忌魔法で燃やしちゃいました。」
「「えっ?!」」
「ほら、今は禁忌魔術の効果を上書きするように燃やした状態なんですよ。だから、周囲の魔力がなくなったのもそうですけど、一時的に世界中の魔力が燃え尽きてるんです。」
「ノイト、そこまで出来たんだ......スゴイよ、ホントに。」
じわじわと[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態での反動がのしかかってきて肩が異様な程に重く感じられた。ノイトの視界に映る限り、リュミエは無事でこちらへと駆け寄ってきている。アテルもルミナスとカメリアを包みこんでいて守ったようで無事。メルクは動かなくなったモドーの前で座り込みながらこちらを見ていて、物理的には問題ないようだ。レイクはドメリアスとイルムに支えられながら魔神の攻撃を喰らった箇所の治療を受けている。
(ロズウェルさんとエスミルト騎士団......それとイグさんにラルカは前線から引いてる感じか。前線での被害者はモドーさん1人...。)
ノイトはリーリャの方を向いて頼み事をする。
「ごめんリーリャ、メルの所までお願い。」
「あっ、うん!分かった!!」
リーリャに肩を貸してもらってゆっくりとメルクとモドーが居る場所へと歩いていった。
「ノイトくん...私......モドーが...。」
「...分かってる。ごめんね、ツラい思いさせて。...ありがとう。」
モドーはもう動いていない。恐らくメルクの回復魔法では助からなかったのだろう。メルクはモドーのことを嫌っていた。しかし、大事な仲間であるノイトやリーリャを救ったのだ。その借りを返すためにも回復魔法をかけたが、実力と魔力が足りなかった。目の前で命が消えるということは、決して心地の良いものではない。
(メル1人に抱え込ませちゃった...ダメだよ、そんなんじゃ。)
ノイトは両手を合わせて黙祷した。リーリャと、一拍遅れてメルクとフィルマリーも続く。どんな存在であろうとも、命という視点で見れば尊ぶべきものだった。反省と感謝と、冥福を祈る気持ちをモドーに告げ、立ち上がる。
「...全部終わったら近くに石碑でも立てておこうか。」
「......うん。」
リーリャはノイトが先程放った禁忌魔法について少しだけ思うところがあった。
(〔[漢字]時喪恣灯[/漢字][ふりがな]トモシビ[/ふりがな]〕......灯火.........。ノイトが最初に私に見せてくれた魔法。私とノイトの旅の、はじまりの魔法。私が“記憶の魔神”にトドメを刺したときに使った魔法も、ノイトの[[漢字]灯火[/漢字][ふりがな]トーチ[/ふりがな]]があったからこそ出来たものだよ...。)
リーリャは自分でも気が付かないうちにノイトを支える腕に力を込めていた。
「...リーリャ?」
ノイトの声で我に返ったリーリャはノイトを心配させないように笑ってみせた。
「大丈夫だよ、ノイト!本当にお疲れ様っ!!」
よく考えてみればかなりの近距離だった。顔を赤らめることなく済んだのは左と背後から感じるメルクとフィルマリーの視線のおかげだろう。
ふとアテルとルミナスとカメリアが居る方を見ると、他に4人の人物が居た。ノイトはその中の1人を見て直感的にその人物が誰かを察する。プラチナブロンドの髪に、強力な魔具。そして、膨大な魔力量。
(ルミナのお兄さん......第1王子か。)
しばらく何かを話しているようだったが、やがてノイトの方へと向かってきた。ノイトの方も王子に一方的に歩かせるわけにも行かないと思い、リーリャの肩を借りて王子の方へと歩いていく。そして、魔神の核の前で対面した。
[太字][明朝体]『僕はノルティーク帝国第1王子のエルクス=ノルティークだ。お前がノイト=ソルフォトスで間違いないな。』[/明朝体][/太字]
「あっ...はい。そうです。」
エルクスはノイトの返事を聞いてから値踏みするようにしばらくノイトのことを見つめ、いくつか質問をしてきた。
[太字][明朝体]『僕の大事な妹に、自分のことを“お兄ちゃん”などと呼ばせているとか...?』[/明朝体][/太字]
「それはルミナの意志です。どう呼ばれるは正直気にしてないので。」
[太字][明朝体]『そうか。では、魔神を倒したというのは本当か?』[/明朝体][/太字]
「あぁ...一応そうですね。僕の魔法と相性が良かったり他の人と強力したりで、倒すことが出来ました。」
[太字][明朝体]『なるほど。...手紙で父上からお前の話を聞いてからその実力と器を魅せてもらおうと思ったのだが......その様子では難しそうだな。』[/明朝体][/太字]
「えぇ、まぁ......さっきもほぼ瀕死状態だったんで...。」
ノイトの言葉に嘘はない。それを察したのか、エルクスの目から警戒の色が僅かに消える。しかし、次の瞬間にはその警戒が再び目に宿り、剣を抜いた。しかしそれはノイトも同様だ。手元に呼び寄せた【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を握るノイトと、聖剣エクスカリバーを握るエルクス。2人の視線の先にあるのは互いの姿ではなく、魔神の核だった。魔神の核のクールタイムが終わり、再び何かが起こりそうだという予感。それだけでも動くには十分すぎる理由だ。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力斬[/漢字][ふりがな]マギノ・スラッシュ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][大文字][明朝体][太字]『[漢字]精霊巨蛇[/漢字][ふりがな]ヨルムンガンド[/ふりがな]』[/太字][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
2人の攻撃は同時に同じ方向へと放たれた。しかし、そこには魔神の核はない。一瞬の間に躱したようだ。背後で魔術が放たれる。それは魔神の核のものでもフィルマリーのものでもない。そこにあったであろう魔神の核が魔術によって発生した土煙の中から飛び出してきた。その様子を見てエルクスが声を上げる。
[太字][明朝体]『シルイ、そっちだ!!』[/明朝体][/太字]
名前を呼ばれた女性が魔神の核へと両手をかざして魔法陣を浮かべ、召喚獣を喚び出した。
[中央寄せ][大文字][明朝体][[漢字]召喚[/漢字][ふりがな]サモン[/ふりがな]:[太字]アルラウネ[/太字]][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
魔法陣の中から呼び出されたのは少女のような姿をした植物の魔物。華奢で可憐な見た目であるため、魔神の核は一切の警戒もせずにそのまま突っ込んでいこうとするが、次の瞬間地面から無数の根のようなものが生えてきて魔神の核へと攻撃を仕掛けた。
(攻撃速度ならメルやカメリア様に伍する...までは行かないか。それでも、全然速いな...。)
アテルと言いこのアルラウネと言い、魔物の類であっても圧倒的な実力を持っていれば、固定観念などは簡単にひっくり返ってしまう。
魔神の核はそのアルラウネの攻撃を躱して本体へと向かっていくが、間に1人の青年が入った。その青年は弓矢を構えており、目にも止まらぬ速さで魔神の核を射抜く。真っ直ぐと魔神の核に命中したが、魔神の核は一瞬怯んだかと思うとエルクスたちから逃げるように離れていった。その先に居たのはノイトだ。もう既に【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】は振り下ろしている。
[斜体](また何かしでかしたら面倒だし......これでいっか。)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力断割[/漢字][ふりがな]マギノ・ディヴァイド[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
寸分の狂いもなく魔神の核に命中した。しかし、地面にめり込んだだけで砕けてはいない。余程頑丈らしい。組織の最高傑作のことだ。まだ不安要素も捨てきれない。早い内に仕留めておいた方が良いだろう。リュミエのワイヤーが魔神の核の逃げ道を塞ぎ、レイクとカメリアとイグも駆けつけてきた。逃げ場は上か下しかない。当然、魔神の核は上へと逃げる。地下に潜って雷撃などを喰らえば避けようもないからだ。しかし、魔神の核の上に居たのはフェノルに攻撃力上昇と命中度補正のバフをかけられたエルクスだ。聖剣エクスカリバーを構えている。
[太字][明朝体]『魔神...よくも僕の大事な妹たちや僕の故郷の人々を傷つけてくれたな。ここでお前を仕留める!』[/明朝体][/太字]
[中央寄せ][大文字][明朝体][太字]『[漢字]存生女神[/漢字][ふりがな]ヴェルザンディ[/ふりがな]』[/太字][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
[斜体]「アテル!」[/斜体]
その攻撃が魔神の核を砕くと同時に魔神の魔力が噴き出す。ノイトに仮名を呼ばれたアテルが既に飛び込んできていて、エルクスを守る盾となった。ノイト自身も残りの方向へと飛んできていた魔神の魔力を抑えようと飛び出している。
[中央寄せ][[漢字][太字]吸収[/太字][/漢字][ふりがな]アブソープション[/ふりがな]][/中央寄せ]
超級魔術と禁忌魔法を放った後のノイトの魔力では全ては受け止めきれない。そこで魔神の魔力の中に突っ込んでいったのは一つの弾丸。その弾丸が魔神の魔力に当たった途端、魔力は冷気に変わった。そしてさらにその冷気をフェノルの魔術が包みこんだ。球体となったバリアのようなものによって隙が生まれ、その隙にレイクたちは前線から降りる。
[斜体](あんまり良い感覚じゃないけど...使い捨てならこの魔力でも十分だ!)[/斜体]
ノイトは吸収した魔神の魔力を使って魔法を放った。
[中央寄せ]『[漢字][太字]封核[/太字][/漢字][ふりがな]カンファイン[/ふりがな]』[/中央寄せ]
上級魔法によって魔神の魔力は魔力で出来たカプセルに閉じ込められ、やがて結晶化した。これでもう大丈夫だろう。
「完全に消滅させるのは難しいか...。世界各地に封印...そうだね、魔界に置いて下手に魔獣とか魔族を吸収されたら面倒だし...。」
ノイトの呟きを聞きながら、エルクスが剣を収めて歩み寄ってきた。
[太字][明朝体]『ノイト=ソルフォトス。君の判断力と魔力操作の技術、見せてもらった。ルミナスが“お兄ちゃん”などと呼ぶのも納得出来なくもない。』[/明朝体][/太字]
「あはは...身に余るお言葉で......。」
[太字][明朝体]『余る、か......それだと勿体ない。君になら僕の言葉を全部受け止められる程の器があるだろう。自分にもっと自身を持て。僕が保証する。』[/明朝体][/太字]
ノイトはエルクスの言葉を聞いて少し表情を曇らせた。
「保証する、ですか......。あなたは背負うものがもうたくさんあるでしょう。何でも抱え込めば良いってものじゃないですよ?抱え込み過ぎはダメです。」
「......んー、そっかー。そうだねー。それじゃあノイト!言質取ったからね?ね?」
ノイトは自分を支えていたリーリャに超近距離で言質を取られた。もう1人で抱え込んでなんとかすることも難しいだろう。
(ああぁぁぁ...!)
心の声は表に出さず、ノイトは言い訳をする。
「いや...1人でたくさん抱え込んでる事実は認めるけど、やっぱり危険なこととかに巻き込みたくないからね。心配してくれるだけでも十二分だよ。」
「ノイトくん、“何でも抱え込めば良いってものじゃない”って言った側からよく言えるね。」
メルクも混ざってきた。今のリーリャの思考力は著しく向上しているため、ノイトは相手がリーリャ1人だとしてもかなり面倒に感じるようにもなってきている。そこにメルクが混ざってしまえばさらに厄介になり、リュミエまで混ざってきたとしたらもうノイトに勝ち目はないかもしれない。リーリャとメルクは笑顔でノイトに詰め寄る。
「ノイト、もう危険だからって私のことを突き放したりしないでね?」
「私たち仲間でしょ?守ってもらうだけじゃないの、分かるよね?」
「1対2...しかも同時に質問してこないでよ...。」
「あぁ〜、勝てないから?」
リーリャの発言は強力な煽りになった。しかしノイトがそれにペースを乱されることはない。
「僕は1人しか居ないんだから、同時に複数の質問には答えられないよ。」
「ノイトくんが相手をしてるのは2人でも、私たちがそれぞれ相手をしてるのはノイトくん1人なんだよ。」
「それは逆の立場で言うやつじゃない...?」
「事実だから。」
「あー、ただ現状を報告しただけか。で、だから何?」
「メルクがやってるのは視点の共有だよ、ノイト。“相手の気持ちを考えて”って子どもでも出来るよ?」
「まだ子どもだよ。」
「あ〜!またそうやって言い訳するぅ〜!! ノイトくん、そうやって都合が悪いときに子どもだってことを免罪符にするタイプでしょ!」
「事実だから。」
ノイトのカウンターはちゃんとメルクに命中し、メルクを黙らせることに成功した。ここまでなら今までと大して変わらなかったのだが、今はリーリャも混ざっている。
「言葉の使い回し?エコだね。でも、語彙力が低いようにも見えるよ?」
「“エコ”なんて言葉で表しきれるかね?」
「解釈を広げれば事足りるでしょ?」
「もっと近い表現の方が良いと思うけど...。」
「例えば?」
「新しいことを知ろうとせずに今の知識にこだわる、っていう意味の山雀利根とかじゃない?」
「それ自分で言ってて悲しくならない?」
「別に。そういうものだし。」
「論点ズレ過ぎじゃない?」
メルクに指摘でようやく元の状況を思い出したリーリャと、覚えていたもののきっかけがなかなか掴めていなかったノイトは、ずっと会話を静かに聞いていたエルクスの方へと目を向ける。
「あ〜、すみません。内輪で勝手に盛り上がっちゃって...。」
[太字][明朝体]『いや、構わない。むしろ、普段の君の様子が少し分かったような気がする。ノイト、君は確かにスゴい人だ。』[/明朝体][/太字]
「...急にどうしたんです?」
[太字][明朝体]『その思考の速度と語彙力、知識......。とても年下とは思えない。その長所は尊敬に値するものだ。』[/明朝体][/太字]
「そんな、わざわざ言われなくても...。」
[太字][明朝体]『気になるか?なら、これは独り言だ。僕は君を認める。...ルミナスの兄として、これからもよろしく頼みたい。』[/明朝体][/太字]
「あっ、はい。わかりました。」
ノイトはエルクスに認められたようだ。リュミエとルミナスもノイトたちの元へと駆け寄ってきている。
[大文字]「エルクス様。久方ぶりに拝謁いたします。」[/大文字]
[太字][明朝体]『やぁ、レイク。久しぶりだね。最近は魔神討伐や戦争などで忙しかったんじゃない?ご苦労さま。』[/明朝体][/太字]
[大文字]「私のような身分の者にまでお気を遣ってくださる殿下のご温情、恐悦至極に存じます。...ただ、そのお言葉はそちらのノイトくんにもかけていただきたい。私は戦争のとき、王城付近の不審人物の対応で前線には出ることが出来ていませんでした。その間敵軍の足止めをしていたのは、ノイトくんとラルカ様です。」[/大文字]
[太字][明朝体]『ラルカ...?』[/明朝体][/太字]
[大文字]「イズベラ様の...隠し子でございます。」[/大文字]
[太字][明朝体]『母上が......そうか。でも、その人が戦争で活躍して無事に僕たちの国が救われたというのならそれで十分だ。』[/明朝体][/太字]
そこでリュミエとルミナスが合流してくる。
「ノイトくん!お疲れ様〜!! さっきは大丈夫だった?ホントに死んじゃったかと思ったじゃん!!」
[太字][明朝体]「お兄様!お兄ちゃ...ノイト様は私の大切な仲間なんです!! だから、私たちを認めてください!」[/明朝体][/太字]
「ルミナ〜!やっぱり清楚系妹枠が1番癒やされるね...。」
「何?私じゃダメなの?年上だから?」
「メルはメルのままで十分頼もしいから、気にしなくて良いよ。」
ノイトが予め考えていた困ったときの常套手段が一つ使われた。リーリャもノイトに尋ねてくる。
「ノイト...私は?」
「リーリャは最近僕と煽り合いでタメを張れるくらい成長してくれたからねぇ〜。ちょっと面倒だと思うこともあるけど、それ以上っていうか、それ以前に大事な[漢字]相棒[/漢字][ふりがな]パートナー[/ふりがな]だからね。」
「...それ、素直に受け取って大丈夫なやつ?」
今のリーリャでもノイトの心の深奥までは読み解けない。最近は煽り合いばかりしていたがために、少し疑わしくも感じてしまうのだ。しかし、ノイトは出会ったときからずっとノイトのままである。
「大丈夫だよ。僕は煽り以外では心から思ったことしか言わないからね。」
前世の世界に戻っていたせいで、リーリャは久しぶりに真っ直ぐとノイトの言葉を受け取った気がした。ノイトの家での煽り合いの記憶が根強く残っているのが原因だろう。
(もう......ノイトはそういうところだよ。無意識に私のペースを乱そうとしてきて...!でも、それがノイトの本音なら私は......。)
リーリャはノイトにそっと抱きついた。
[斜体][小文字]「 ─────。」[/小文字][/斜体]
抱きつかれたノイトは一瞬固まったが、リーリャの言葉を聞いて安心したような呆れたような表情で言葉を返した。
「────────。」
重たく脳の奥まで響く耳鳴りがしたかと思えば、次の瞬間には世界がモノクロになる。まるで時が止まってしまったかのような感覚。しかし、火が灯る音が微かに聞こえたかと思えば動くことが出来るようになった。世界は依然としてモノクロだが、まだ世界は終わっていない。
[明朝体][太字]『これは...魔神の禁忌魔術か...。さっきの膨大な魔力と言い...ディアスムングロール大陸も大変そうだね。』[/太字][/明朝体]
「言ってる場合?! さっさと決めて!逃げるの?止めに行くの?」
女性の問いを聞いてそのプラチナブロンドの髪を持つ青年は悍ましい魔力を感じる方へと進んでいった。
[太字][明朝体]『当然、止めに行くよ。妹と世界を助けないと。フェノル、あっちで合ってる?』[/明朝体][/太字]
名前を呼ばれた鉄紺色のクロークを着た青年は頷いてエルクスと同じ方へと歩く。
「それじゃあ、それで決まりだな。ほら、行くぞ〜。」
「ちょっと、置いていかないでよ!」
静かで暗く、落ち着かない世界の中で4人は魔神の核の方へと向かっていっていた。
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
アレソティラスだったものの禁忌魔術の効果範囲は世界に及んでいた。しかし、ノイトは咄嗟に禁忌魔法を放って対抗する。本来の効果範囲では世界には及ばないが、[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態を経て魔力過多状態になっているノイトの魔力と効果対象の限定によって、禁忌魔術を上書きすることに成功した。それにより発生源の超近距離に居たノイトやリーリャたちも無事だった。
「......っ!......ふぅ...。バケモノめ.........どうしてくれるんだよ、この世界を...。」
リーリャが駆け寄ってきてふらついているノイトを支える。心配そうな表情でノイトに尋ねた。
「ノイト、大丈夫?」
「何とかね......。メルやルミナたちは大丈夫そ?」
「全員無事だよ。ノイトの魔法と、あの黒いスライムのお陰でね。」
ノイトはそれを聞いて安心し、ゆっくりと座り込んだ。流石に魔力を使いすぎたようだ。
「それなら良いや。...ハァ..........疲れたぁ...!」
伸びをして目の前に浮かんでいる魔神の核をじっと見つめる。どうやら、先程の禁忌魔術で魔力のほとんどを消費したらしく、しばらくの間は何もしてこなさそうだ。フィルマリーが駆け寄ってきてノイトとリーリャを心配した。
「ノイトさん!リーリャさん!大丈夫でしたか?! さっきの魔法と言い、今しがたの禁忌魔法と言い......リオールくんが言ってた通りで、それ以上の人ですよノイトさんは...!! ...今、回復魔法をかけますからねっ!」
フィルマリーは杖を掲げる。しかし、回復魔法が発動しない。そもそも魔力が集まっていないようだ。
「え......?もしかして...魔力が、なくなってる?」
先程の魔神の核の禁忌魔術ととノイトの禁忌魔法で周囲の魔力がなくなってしまったのだろうか。その答えをリーリャに支えられた状態のノイトが告げる。
「あぁ...すみません。さっきの僕の禁忌魔法で燃やしちゃいました。」
「「えっ?!」」
「ほら、今は禁忌魔術の効果を上書きするように燃やした状態なんですよ。だから、周囲の魔力がなくなったのもそうですけど、一時的に世界中の魔力が燃え尽きてるんです。」
「ノイト、そこまで出来たんだ......スゴイよ、ホントに。」
じわじわと[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態での反動がのしかかってきて肩が異様な程に重く感じられた。ノイトの視界に映る限り、リュミエは無事でこちらへと駆け寄ってきている。アテルもルミナスとカメリアを包みこんでいて守ったようで無事。メルクは動かなくなったモドーの前で座り込みながらこちらを見ていて、物理的には問題ないようだ。レイクはドメリアスとイルムに支えられながら魔神の攻撃を喰らった箇所の治療を受けている。
(ロズウェルさんとエスミルト騎士団......それとイグさんにラルカは前線から引いてる感じか。前線での被害者はモドーさん1人...。)
ノイトはリーリャの方を向いて頼み事をする。
「ごめんリーリャ、メルの所までお願い。」
「あっ、うん!分かった!!」
リーリャに肩を貸してもらってゆっくりとメルクとモドーが居る場所へと歩いていった。
「ノイトくん...私......モドーが...。」
「...分かってる。ごめんね、ツラい思いさせて。...ありがとう。」
モドーはもう動いていない。恐らくメルクの回復魔法では助からなかったのだろう。メルクはモドーのことを嫌っていた。しかし、大事な仲間であるノイトやリーリャを救ったのだ。その借りを返すためにも回復魔法をかけたが、実力と魔力が足りなかった。目の前で命が消えるということは、決して心地の良いものではない。
(メル1人に抱え込ませちゃった...ダメだよ、そんなんじゃ。)
ノイトは両手を合わせて黙祷した。リーリャと、一拍遅れてメルクとフィルマリーも続く。どんな存在であろうとも、命という視点で見れば尊ぶべきものだった。反省と感謝と、冥福を祈る気持ちをモドーに告げ、立ち上がる。
「...全部終わったら近くに石碑でも立てておこうか。」
「......うん。」
リーリャはノイトが先程放った禁忌魔法について少しだけ思うところがあった。
(〔[漢字]時喪恣灯[/漢字][ふりがな]トモシビ[/ふりがな]〕......灯火.........。ノイトが最初に私に見せてくれた魔法。私とノイトの旅の、はじまりの魔法。私が“記憶の魔神”にトドメを刺したときに使った魔法も、ノイトの[[漢字]灯火[/漢字][ふりがな]トーチ[/ふりがな]]があったからこそ出来たものだよ...。)
リーリャは自分でも気が付かないうちにノイトを支える腕に力を込めていた。
「...リーリャ?」
ノイトの声で我に返ったリーリャはノイトを心配させないように笑ってみせた。
「大丈夫だよ、ノイト!本当にお疲れ様っ!!」
よく考えてみればかなりの近距離だった。顔を赤らめることなく済んだのは左と背後から感じるメルクとフィルマリーの視線のおかげだろう。
ふとアテルとルミナスとカメリアが居る方を見ると、他に4人の人物が居た。ノイトはその中の1人を見て直感的にその人物が誰かを察する。プラチナブロンドの髪に、強力な魔具。そして、膨大な魔力量。
(ルミナのお兄さん......第1王子か。)
しばらく何かを話しているようだったが、やがてノイトの方へと向かってきた。ノイトの方も王子に一方的に歩かせるわけにも行かないと思い、リーリャの肩を借りて王子の方へと歩いていく。そして、魔神の核の前で対面した。
[太字][明朝体]『僕はノルティーク帝国第1王子のエルクス=ノルティークだ。お前がノイト=ソルフォトスで間違いないな。』[/明朝体][/太字]
「あっ...はい。そうです。」
エルクスはノイトの返事を聞いてから値踏みするようにしばらくノイトのことを見つめ、いくつか質問をしてきた。
[太字][明朝体]『僕の大事な妹に、自分のことを“お兄ちゃん”などと呼ばせているとか...?』[/明朝体][/太字]
「それはルミナの意志です。どう呼ばれるは正直気にしてないので。」
[太字][明朝体]『そうか。では、魔神を倒したというのは本当か?』[/明朝体][/太字]
「あぁ...一応そうですね。僕の魔法と相性が良かったり他の人と強力したりで、倒すことが出来ました。」
[太字][明朝体]『なるほど。...手紙で父上からお前の話を聞いてからその実力と器を魅せてもらおうと思ったのだが......その様子では難しそうだな。』[/明朝体][/太字]
「えぇ、まぁ......さっきもほぼ瀕死状態だったんで...。」
ノイトの言葉に嘘はない。それを察したのか、エルクスの目から警戒の色が僅かに消える。しかし、次の瞬間にはその警戒が再び目に宿り、剣を抜いた。しかしそれはノイトも同様だ。手元に呼び寄せた【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を握るノイトと、聖剣エクスカリバーを握るエルクス。2人の視線の先にあるのは互いの姿ではなく、魔神の核だった。魔神の核のクールタイムが終わり、再び何かが起こりそうだという予感。それだけでも動くには十分すぎる理由だ。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力斬[/漢字][ふりがな]マギノ・スラッシュ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][大文字][明朝体][太字]『[漢字]精霊巨蛇[/漢字][ふりがな]ヨルムンガンド[/ふりがな]』[/太字][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
2人の攻撃は同時に同じ方向へと放たれた。しかし、そこには魔神の核はない。一瞬の間に躱したようだ。背後で魔術が放たれる。それは魔神の核のものでもフィルマリーのものでもない。そこにあったであろう魔神の核が魔術によって発生した土煙の中から飛び出してきた。その様子を見てエルクスが声を上げる。
[太字][明朝体]『シルイ、そっちだ!!』[/明朝体][/太字]
名前を呼ばれた女性が魔神の核へと両手をかざして魔法陣を浮かべ、召喚獣を喚び出した。
[中央寄せ][大文字][明朝体][[漢字]召喚[/漢字][ふりがな]サモン[/ふりがな]:[太字]アルラウネ[/太字]][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
魔法陣の中から呼び出されたのは少女のような姿をした植物の魔物。華奢で可憐な見た目であるため、魔神の核は一切の警戒もせずにそのまま突っ込んでいこうとするが、次の瞬間地面から無数の根のようなものが生えてきて魔神の核へと攻撃を仕掛けた。
(攻撃速度ならメルやカメリア様に伍する...までは行かないか。それでも、全然速いな...。)
アテルと言いこのアルラウネと言い、魔物の類であっても圧倒的な実力を持っていれば、固定観念などは簡単にひっくり返ってしまう。
魔神の核はそのアルラウネの攻撃を躱して本体へと向かっていくが、間に1人の青年が入った。その青年は弓矢を構えており、目にも止まらぬ速さで魔神の核を射抜く。真っ直ぐと魔神の核に命中したが、魔神の核は一瞬怯んだかと思うとエルクスたちから逃げるように離れていった。その先に居たのはノイトだ。もう既に【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】は振り下ろしている。
[斜体](また何かしでかしたら面倒だし......これでいっか。)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力断割[/漢字][ふりがな]マギノ・ディヴァイド[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
寸分の狂いもなく魔神の核に命中した。しかし、地面にめり込んだだけで砕けてはいない。余程頑丈らしい。組織の最高傑作のことだ。まだ不安要素も捨てきれない。早い内に仕留めておいた方が良いだろう。リュミエのワイヤーが魔神の核の逃げ道を塞ぎ、レイクとカメリアとイグも駆けつけてきた。逃げ場は上か下しかない。当然、魔神の核は上へと逃げる。地下に潜って雷撃などを喰らえば避けようもないからだ。しかし、魔神の核の上に居たのはフェノルに攻撃力上昇と命中度補正のバフをかけられたエルクスだ。聖剣エクスカリバーを構えている。
[太字][明朝体]『魔神...よくも僕の大事な妹たちや僕の故郷の人々を傷つけてくれたな。ここでお前を仕留める!』[/明朝体][/太字]
[中央寄せ][大文字][明朝体][太字]『[漢字]存生女神[/漢字][ふりがな]ヴェルザンディ[/ふりがな]』[/太字][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
[斜体]「アテル!」[/斜体]
その攻撃が魔神の核を砕くと同時に魔神の魔力が噴き出す。ノイトに仮名を呼ばれたアテルが既に飛び込んできていて、エルクスを守る盾となった。ノイト自身も残りの方向へと飛んできていた魔神の魔力を抑えようと飛び出している。
[中央寄せ][[漢字][太字]吸収[/太字][/漢字][ふりがな]アブソープション[/ふりがな]][/中央寄せ]
超級魔術と禁忌魔法を放った後のノイトの魔力では全ては受け止めきれない。そこで魔神の魔力の中に突っ込んでいったのは一つの弾丸。その弾丸が魔神の魔力に当たった途端、魔力は冷気に変わった。そしてさらにその冷気をフェノルの魔術が包みこんだ。球体となったバリアのようなものによって隙が生まれ、その隙にレイクたちは前線から降りる。
[斜体](あんまり良い感覚じゃないけど...使い捨てならこの魔力でも十分だ!)[/斜体]
ノイトは吸収した魔神の魔力を使って魔法を放った。
[中央寄せ]『[漢字][太字]封核[/太字][/漢字][ふりがな]カンファイン[/ふりがな]』[/中央寄せ]
上級魔法によって魔神の魔力は魔力で出来たカプセルに閉じ込められ、やがて結晶化した。これでもう大丈夫だろう。
「完全に消滅させるのは難しいか...。世界各地に封印...そうだね、魔界に置いて下手に魔獣とか魔族を吸収されたら面倒だし...。」
ノイトの呟きを聞きながら、エルクスが剣を収めて歩み寄ってきた。
[太字][明朝体]『ノイト=ソルフォトス。君の判断力と魔力操作の技術、見せてもらった。ルミナスが“お兄ちゃん”などと呼ぶのも納得出来なくもない。』[/明朝体][/太字]
「あはは...身に余るお言葉で......。」
[太字][明朝体]『余る、か......それだと勿体ない。君になら僕の言葉を全部受け止められる程の器があるだろう。自分にもっと自身を持て。僕が保証する。』[/明朝体][/太字]
ノイトはエルクスの言葉を聞いて少し表情を曇らせた。
「保証する、ですか......。あなたは背負うものがもうたくさんあるでしょう。何でも抱え込めば良いってものじゃないですよ?抱え込み過ぎはダメです。」
「......んー、そっかー。そうだねー。それじゃあノイト!言質取ったからね?ね?」
ノイトは自分を支えていたリーリャに超近距離で言質を取られた。もう1人で抱え込んでなんとかすることも難しいだろう。
(ああぁぁぁ...!)
心の声は表に出さず、ノイトは言い訳をする。
「いや...1人でたくさん抱え込んでる事実は認めるけど、やっぱり危険なこととかに巻き込みたくないからね。心配してくれるだけでも十二分だよ。」
「ノイトくん、“何でも抱え込めば良いってものじゃない”って言った側からよく言えるね。」
メルクも混ざってきた。今のリーリャの思考力は著しく向上しているため、ノイトは相手がリーリャ1人だとしてもかなり面倒に感じるようにもなってきている。そこにメルクが混ざってしまえばさらに厄介になり、リュミエまで混ざってきたとしたらもうノイトに勝ち目はないかもしれない。リーリャとメルクは笑顔でノイトに詰め寄る。
「ノイト、もう危険だからって私のことを突き放したりしないでね?」
「私たち仲間でしょ?守ってもらうだけじゃないの、分かるよね?」
「1対2...しかも同時に質問してこないでよ...。」
「あぁ〜、勝てないから?」
リーリャの発言は強力な煽りになった。しかしノイトがそれにペースを乱されることはない。
「僕は1人しか居ないんだから、同時に複数の質問には答えられないよ。」
「ノイトくんが相手をしてるのは2人でも、私たちがそれぞれ相手をしてるのはノイトくん1人なんだよ。」
「それは逆の立場で言うやつじゃない...?」
「事実だから。」
「あー、ただ現状を報告しただけか。で、だから何?」
「メルクがやってるのは視点の共有だよ、ノイト。“相手の気持ちを考えて”って子どもでも出来るよ?」
「まだ子どもだよ。」
「あ〜!またそうやって言い訳するぅ〜!! ノイトくん、そうやって都合が悪いときに子どもだってことを免罪符にするタイプでしょ!」
「事実だから。」
ノイトのカウンターはちゃんとメルクに命中し、メルクを黙らせることに成功した。ここまでなら今までと大して変わらなかったのだが、今はリーリャも混ざっている。
「言葉の使い回し?エコだね。でも、語彙力が低いようにも見えるよ?」
「“エコ”なんて言葉で表しきれるかね?」
「解釈を広げれば事足りるでしょ?」
「もっと近い表現の方が良いと思うけど...。」
「例えば?」
「新しいことを知ろうとせずに今の知識にこだわる、っていう意味の山雀利根とかじゃない?」
「それ自分で言ってて悲しくならない?」
「別に。そういうものだし。」
「論点ズレ過ぎじゃない?」
メルクに指摘でようやく元の状況を思い出したリーリャと、覚えていたもののきっかけがなかなか掴めていなかったノイトは、ずっと会話を静かに聞いていたエルクスの方へと目を向ける。
「あ〜、すみません。内輪で勝手に盛り上がっちゃって...。」
[太字][明朝体]『いや、構わない。むしろ、普段の君の様子が少し分かったような気がする。ノイト、君は確かにスゴい人だ。』[/明朝体][/太字]
「...急にどうしたんです?」
[太字][明朝体]『その思考の速度と語彙力、知識......。とても年下とは思えない。その長所は尊敬に値するものだ。』[/明朝体][/太字]
「そんな、わざわざ言われなくても...。」
[太字][明朝体]『気になるか?なら、これは独り言だ。僕は君を認める。...ルミナスの兄として、これからもよろしく頼みたい。』[/明朝体][/太字]
「あっ、はい。わかりました。」
ノイトはエルクスに認められたようだ。リュミエとルミナスもノイトたちの元へと駆け寄ってきている。
[大文字]「エルクス様。久方ぶりに拝謁いたします。」[/大文字]
[太字][明朝体]『やぁ、レイク。久しぶりだね。最近は魔神討伐や戦争などで忙しかったんじゃない?ご苦労さま。』[/明朝体][/太字]
[大文字]「私のような身分の者にまでお気を遣ってくださる殿下のご温情、恐悦至極に存じます。...ただ、そのお言葉はそちらのノイトくんにもかけていただきたい。私は戦争のとき、王城付近の不審人物の対応で前線には出ることが出来ていませんでした。その間敵軍の足止めをしていたのは、ノイトくんとラルカ様です。」[/大文字]
[太字][明朝体]『ラルカ...?』[/明朝体][/太字]
[大文字]「イズベラ様の...隠し子でございます。」[/大文字]
[太字][明朝体]『母上が......そうか。でも、その人が戦争で活躍して無事に僕たちの国が救われたというのならそれで十分だ。』[/明朝体][/太字]
そこでリュミエとルミナスが合流してくる。
「ノイトくん!お疲れ様〜!! さっきは大丈夫だった?ホントに死んじゃったかと思ったじゃん!!」
[太字][明朝体]「お兄様!お兄ちゃ...ノイト様は私の大切な仲間なんです!! だから、私たちを認めてください!」[/明朝体][/太字]
「ルミナ〜!やっぱり清楚系妹枠が1番癒やされるね...。」
「何?私じゃダメなの?年上だから?」
「メルはメルのままで十分頼もしいから、気にしなくて良いよ。」
ノイトが予め考えていた困ったときの常套手段が一つ使われた。リーリャもノイトに尋ねてくる。
「ノイト...私は?」
「リーリャは最近僕と煽り合いでタメを張れるくらい成長してくれたからねぇ〜。ちょっと面倒だと思うこともあるけど、それ以上っていうか、それ以前に大事な[漢字]相棒[/漢字][ふりがな]パートナー[/ふりがな]だからね。」
「...それ、素直に受け取って大丈夫なやつ?」
今のリーリャでもノイトの心の深奥までは読み解けない。最近は煽り合いばかりしていたがために、少し疑わしくも感じてしまうのだ。しかし、ノイトは出会ったときからずっとノイトのままである。
「大丈夫だよ。僕は煽り以外では心から思ったことしか言わないからね。」
前世の世界に戻っていたせいで、リーリャは久しぶりに真っ直ぐとノイトの言葉を受け取った気がした。ノイトの家での煽り合いの記憶が根強く残っているのが原因だろう。
(もう......ノイトはそういうところだよ。無意識に私のペースを乱そうとしてきて...!でも、それがノイトの本音なら私は......。)
リーリャはノイトにそっと抱きついた。
[斜体][小文字]「 ─────。」[/小文字][/斜体]
抱きつかれたノイトは一瞬固まったが、リーリャの言葉を聞いて安心したような呆れたような表情で言葉を返した。
「────────。」