世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
「ノイトさん...!」
フィルマリーに名前を呼ばれてノイトは振り返る。直後、視界の端に映るのはフィルマリーの髪。フィルマリーの腕にしがみつかれながらノイトはフィルマリーが自分を心配してくれていたことに気が付いた。
「フィルさん、心配かけてすみません。もう大丈夫ですから。」
「...本当?もうどこか行ったりしない?私だけのノイトさんで居てくれる?」
「それは無理です。メンヘラはやめてください?」
フィルマリーが心配するのも納得出来る。在り来りで退屈だった日常に突然現れて自分を楽しませてくれた存在。そして、彼女自身が愛して止まない魔法や魔術の研究に1番役立つ存在。失いたくないと思うのも当然である。
「ノイトさん...潜在魔力が以前よりも溢れ出て...ますね。さっきよりは収まっているようですけど。さっきはもう、ホントに雲の上から何回も爆音が聞こえて心配だったんですからね!魔力量もスゴいし、魔神の魔力も解放されているしで...。」
「まぁ、こっちの戦力はかなり削れてますけど、勝機は十分にあります。」
「それなら、良いんですけど...。無理してまで倒そうと思わなくても大丈夫ですよ?ノイトさんが居なくなっちゃったりしたら、意味ないですから!」
「それで世界が滅びちゃったら尚更意味ないでしょう?とにかく、勝てば良いんですよ。」
「...でも、いくらノイトさんと言っても...!ノイトさんは何でも1人で抱え込もうとします。それだけじゃ勝てないことだってあり...」
ノイトは人差し指をフィルマリーの口元に当てて黙らせた。
「1人じゃないですよ。」
そこに入ってきたのはリーリャだ。ノイトは指をフィルマリーから離して魔神の方へと歩いていく。その隣に駆け寄ったリーリャと並んでいる姿は他の何よりも似合うものだった。
「勝つよ、ノイト。」
「当然。」
拳を出したリーリャの[漢字]掌外縁[/漢字][ふりがな]手の横[/ふりがな]に、ノイトが同じ場所を軽く当てる。
「フィル、援護してくれる?出来るだけ魔力が集中するやつ。」
「...あっ!はい!!」
ノイトから指示を受けた。フィルマリーが歪んでしまった杖を両手でしっかりと持って掲げる。ノイトとリーリャが相手をするのは“全能の魔神”。半端な魔術では許されない。
[水平線]
[斜体][太字][中央寄せ]ᛋᚺᛁᚾᛁᚾᚵ ᛒᚱᛁᚵᚺᛏᛖᚱ ᛏᚺᚪᚾ ᚪᚾᚤᛏᚺᛁᚾᚵ[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᛖᛚᛋᛖ ᚪᚾᛞ ᚥᚪᛗᛖᚱ ᛏᚺᚪᚾ ᚪᚾᚤᛏᚺᛁᚾᚵ ᛖᛚᛋᛖ[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚥᚪᛏᚳᚺᛖᛋ ᛟᚡᛖᚱ ᛏᚺᛖ ᛖᚪᚱᛏᚺ, [/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚪᚾᛞ ᛏᚺᛖ ᚳᛟᛚᛞ ᛗᛟᛟᚾ,[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚱᛖᚳᛖᛁᚡᛁᚾᚵ ᚪᚾᛞ ᚱᛖᠠᛚᛖᚳᛏᛁᚾᚵ ᛁᛏᛋ ᛚᛁᚺᚵᛏ.[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᛏᛟ ᛏᚺᛖ ᚡᛟᛁᚳᛖ ᛟᠠ ᛏᚺᛖ ᛟᚾᛖ ᚥᚺᛟ ᚳᛟᛗᛗᚪᚾᛞᛋ ᛒᛟᛏᚺ, [/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚪᚾᛞ ᛈᛁᛖᚱᚳᛖ ᚺᛁᛗ ᚾᛟᚥ.[/中央寄せ][/太字][/斜体]
[水平線]
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]完全詠唱/上級魔術『ᚵᛟᛞ ᛋᛚᚪᚤᛖᚱ』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
本来ならそれはその名の通り[漢字]神殺し[/漢字][ふりがな]ゴッドスレイヤー[/ふりがな]の魔術。しかし、フィルマリーはそれをノイトに向かって放った。ノイトも生身でフィルマリーのその魔力を受け取れば無事ではいられない。しかし、[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態を経て魔力が[漢字]滾[/漢字][ふりがな]たぎ[/ふりがな]る今であれば、ノイトの魔力はそれをも凌駕する。
[中央寄せ][[漢字][太字]吸収[/太字][/漢字][ふりがな]アブソープション[/ふりがな]][/中央寄せ]
これは元々魔物に対して扱う、相手や相手の魔法から魔力を奪う上級魔法であるが、発動者の魔力が吸収の対象のそれを超えていれば無条件で取り込むことが出来る。その性質を利用し、フィルマリーの魔術の魔力を隣に居たリーリャへと分けた。
「...えっ、私?」
「流石に1人で制御出来る量じゃないからね。ちょっとだけ預かってて。」
[中央寄せ][[漢字][太字]感覚共有[/太字][/漢字][ふりがな]シェアリング[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトは自身の感覚をリーリャに共有する。感覚を共有されたリーリャの脳内に詠唱の呪文が流れ込んできた。
「これって......」
「1人じゃ出来ないからね。口と命は一つしかないんだし。頼んだよ、相棒?」
「ふふっ...任せてっ!」
2人は並んで詠唱を始めた。
「「-----.」」
フィルマリーの位置からでは膨大な魔力にかき消されて詠唱の内容が聞き取れない。
(あぁ...貴重なノイトさんの二重詠唱が...。...ん?あっ!さっきノイトさんが指を私のく、唇に添えたときに食べちゃえば良かったぁ〜!! もぉ〜!)
フィルマリーが心の中で考えていることなど知る由もなく、詠唱を続ける2人の視線に気が付き、アレソティラスがそちらを向く。
[明朝体][大文字](尋常ではない魔力量......喰らったら、死ぬ!)[/大文字][/明朝体]
初めて命の危機を感じたアレソティラスは咄嗟に斬られた脚を再生してノイトたちの方へと駆け出した。
[明朝体][大文字](まず引き剥がすべきは...ノイト!)[/大文字][/明朝体]
一瞬のことだった。詠唱に集中していたノイトは突っ込んできたアレソティラスの拳に対応しきれない。
[斜体]「ノイト!!」[/斜体]
殴り飛ばされたノイトを飛び込んできたアテルが受け止める。しかし、魔神の拳はリーリャにも向かってきていた。
[斜体]「リーリャ!!」[/斜体]
足場はスライム。強く踏み込んで跳び出すことも出来ず、そもそも座り込んだような体勢が悪い。ノイトでは間に合わない。再び視界がスローモーションになる。しかし身体はうまく動かない。
[斜体](リーリャ...!リーリャ!ダメだ、逝かないで!!)[/斜体]
必死に手を伸ばすも、距離が離れすぎている。轟音と共に勢いよく土煙が吹き出し、ノイトは咄嗟に片目を瞑る。もう片方の目でリーリャを見ようとするが、土煙のせいで何も見えない。
[斜体](リーリャ!!)[/斜体]
ようやく足場がしっかりして、ノイトは強く踏み込む。しかし今のノイトは丸腰。魔力を制御している以上、半端な魔法では通用しないだろう。かと言って協力な魔法や魔術などを使うにも時間が足りない。そして何より、そのことを理解すると同時に魔神の拳は地面にめり込んでいる。
「......ぁ...。」
か細い声が喉から漏れ出した。情けない声であることは分かっている。普段から思っている“カッコつけたいだけ”なんていう理想と正反対であることも分かっている。それでも、ただノイトの目はリーリャが居た方を見ようとした。
土煙が晴れ、魔神の姿が見える。そこに振り下ろされた魔神の拳には血が滲んでいる。小規模なクレーターから魔神の拳が上げられると、そこには先程まで身体の一部であったであろう潰れた赤い物体。血の量が明らかに少ない。そう思ったと同時に左の方から浅く速い呼吸音が聞こえてきた。その方を見ると、リーリャと倒れたモドーが居た。
[斜体]「リーリャ!モドーさん!」[/斜体]
メルクはノイトの声に気が付いて駆け寄る。倒れ込んだモドーの隣に居るのは、リーリャとノイト。2人の様子からして、モドーはかなり危険な状態だろう。
(あの馬鹿...一体何が...!)
その場に駆けつけると。モドーの片腕がない。どうやら、魔神の攻撃からリーリャを助け出すために飛び出し、その結果片腕を失ったようだ。
[斜体]「モドー!? アンタどうして...腕が!!」[/斜体]
モドーは辛うじて生きているが、戯言をほざく余裕もないらしい。メルクはモドーに回復魔法をかける。
「じっとしてて。」
「メル...。」
ノイトは自身も魔力でモドーに回復魔法をかける。精度であればフィルマリーの魔法の方が上だが、フィルマリーをこの場に立ち会わせるわけにもいかなかった。
[斜体](こんな惨状、フィルさんには見せられない...!でもこのままじゃ...いや、フィルさんの方が...!! 不平等に?そうじゃない。トリアージ。魔神はまだ居る。このまま全員危ない。命。でも。でも?“でも”じゃない。だから...!!)[/斜体]
「...そうじゃないでしょう......。」
ノイトにとって、魔神の復活と製造を目論む組織の一員であるモドーの存在を見過ごすことは出来ない。メルクのように組織に反抗的であれば良いが、モドーはそうではない。そして、メルクとも犬猿の仲。その情報だけ見ればノイトがモドーを救う義理などは微塵もない。運が悪かったと冷酷に切り捨てるべきだった。しかし、モドーが今しでかしたのはリーリャの命を救うことだ。同じ転生者であり、1番長く時を共にし、前世に戻ったときも一緒だった。自分のことを好きだと言ってくれる大切な人。ノイトの命よりも大事な人。それを救ったモドーは恩人でしかない。それを理解しているからこそ、ノイトは勝手に動いてしまう。
先程の魔法は“全能の魔神”にダメージを与えるには十分だった。だからこそ魔神も生存本能で攻撃したのだろう。ノイトだって立場が逆であればそうしていた。しかし、結果だけ見れば圧倒的な力を持った魔神が人間を蹂躙しているようにしか見えない。
[明朝体][大文字](生まれて初めて感じた、恐怖...!! これが人間!)[/大文字][/明朝体]
いくらノイトでも大切な人を傷つけようとされたらムカつかないこともない。
(あれ...何だろう......なんかすごく、...ふふっ。)
「みっとも[漢字]ねえ[/漢字][ふりがな][太字][大文字]・・[/大文字][/太字][/ふりがな]なぁ、アレソティラス。そこまで生に執着しちゃったりして。ビビってんのォ?」
ノイトのボルテージが上がる。再び魔力が昂ってきた。[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態程までは行かないものの、魔力は溢れ出してくる。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]『[漢字]破壊[/漢字][ふりがな]アヴラ・カダヴラ[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[斜体]([[漢字][太字]付与[/太字][/漢字][ふりがな]グラント[/ふりがな][太字]:[明朝体][漢字]衝撃[/漢字][ふりがな]ノックバック[/ふりがな][/明朝体]][/太字].........[[漢字][太字]一点集中[/太字][/漢字][ふりがな]ポイント[/ふりがな]].........![[漢字][太字]創生[/太字][/漢字][ふりがな]クリエイト[/ふりがな]].........[[漢字][太字]金縛り[/太字][/漢字][ふりがな]パライシス[/ふりがな]]............!)[/斜体]
[明朝体][大文字]「んっ...!!」[/大文字][/明朝体]
ノイトは自身へのバフを乗せるだけでなく、魔神の肉体も拘束した。そしてほぼ必中となったその拳が魔神の心窩部に命中する。
[斜体][大文字][明朝体]「ガハァッ...!!」[/明朝体][/大文字][/斜体]
その衝撃で【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】とルミナスの聖剣が魔神の身体から抜け、2人はそれを拾った。そのままノイトは武器を振りかぶって魔神の腕を落とす。体勢を崩したアレソティラスだったが、そのままノイトへともう片足を振り回した。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力防御[/漢字][ふりがな]マギノ・シールド[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
この魔法は魔力による攻撃は吸収出来る。魔神が相手であれば大抵の攻撃は魔力で強化された肉体のものであるためダメージを軽減出来るはずだ。しかし、今のアレソティラスの攻撃は純粋な物理攻撃だったようだ。その肉体も、組織によって開発されたものであって後から魔力で強化したものではない。したがってノイトは100%の衝撃を受けて殴り飛ばされた。それと同時に魔神が追撃しようと迫ってくる。間にレイクが入ってアレソティラスの拳を受け止めた。
甲高い金属音が響き、押し合いが続く。レイクの剣はノイトの【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】と同じく[漢字]青白磁の金属[/漢字][ふりがな]サスロイカ[/ふりがな]製で、鍛冶職人のムールが[漢字]鍛造[/漢字][ふりがな]つくっ[/ふりがな]だものだ。当然、魔神の攻撃にも耐えることが出来る。
[大文字]「ノイトくん、カメリア様はあの黒いスライムが保護している。ルミナス様とリーリャくんも連れて避難を。」[/大文字]
「駄目ですよ、レイクさん。“全能の魔神”は“終焉の魔神”のほぼ上位互換です。前線を離れる訳には行きません!」
レイクが“終焉の魔神”マズロインと戦ったときは手数で僅かに押されていた。しかし今は、単純な物量で押されている。アレソティラスの方がマズロインよりも速度も上であるはず。そのことを考えるといくらレイクであろうとも最前線に出れば無事では済まないだろう。アレソティラスがいつの間にか再生していたもう片方の腕を突き出した。レイクでも躱しきれない。咄嗟にその腕を剣で受け止めようとしたのはルミナスだ。
[斜体](ルミナ...!?)[大文字](ルミナス様...!?)[/大文字][/斜体]
ルミナス1人で受け止めきれる程魔神の拳は生易しいものではない。しかし、腕が一瞬止まった。リュミエのワイヤーが魔神の腕を引き留めようとしたのだ。
[斜体]「リュミエ!」[/斜体]
しかし、リュミエも魔神とは言えども膂力は外見年齢とほぼ同じく10代後半の女子並。抑え込めるはずがない。アテルが飛び込んできて腕を止めようとするが、獣のようになった今の魔神の爪がそのカラダを貫いた。
「あれれ〜?」
その隙にカメリアが跳んできてルミナスを連れて遠くへと離れ、前線にでているのはアレソティラスに近い順に、レイクとアテル、ノイト、リーリャ、フィルマリー、リュミエ、メルクとなった。レイクの剣は無事だが、肉体はそうはいかない。ノイトが前に出て【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を構え、それを魔神が振るっていた方の腕へと投げた。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力投擲[/漢字][ふりがな]マギノ・スロー[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
次の瞬間、ノイトの武器に魔神の腕が弾かれたと同時にレイクの姿が消える。代わりにそこにあったのは[漢字]希璋石[/漢字][ふりがな]フィスリテル[/ふりがな]。ノイトやリーリャがやったわけではない。メルクやリュミエもそれを所持していない。決して安価ではないその石を持っている可能性。ノイトの中で考えられるのは。
[斜体](ドメリアスさん...!)[/斜体]
ノルティーク帝国の王家直属の研究調査機関・イスラの現場調査員であるドメリアスならいくらでも理由を付けてここまで来ることが出来るはずだ。そして、ノイトが気絶してリーリャとともに前世世界で過ごしていた間、前線で戦っていたのはドメリアスも一緒である。
[斜体](レイクさんは前線から離れた。リュミエも射程範囲外。アテルもすぐに避ける。それなら...)[/斜体]
[斜体]「-----.」[/斜体]
ノイトのその詠唱を、リーリャは聞き逃さなかった。リーリャもノイトの方へと駆け出す。
[斜体](ノイトがやる気なら私も...!!)[/斜体]
[斜体]「-----.」[/斜体]
ノイトへと魔神の拳が飛ぶが、フィルマリーの防御魔術が衝撃を吸収したためノイトへのダメージは限定的だった。それでも飛ばされたノイトの背中を、リーリャが押す。ノイトの魔力とリーリャの魔力(※フィルマリーから受け取ったもの)が合わさり、膨大な一つの魔力になった。2人の声が重なり、その魔術は魔神へと放たれる。
[中央寄せ][大文字][大文字][斜体][太字][明朝体]二重詠唱/超級魔術:〘[漢字]ᛋᛟᚢᛚᛗᚪᛏᛖ[/漢字][ふりがな]ソウルメイト[/ふりがな]〙[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/大文字][/中央寄せ]
その光はアレソティラスを包み込み、肉体を蒸発させた。
[斜体][大文字][明朝体](............!!)[/明朝体][/大文字][/斜体]
[漢字]白緑[/漢字][ふりがな]びゃくろく[/ふりがな]に光る魔術がアレソティラスを消滅させる勢いでそのまま周囲の大気すらも払っていく。一直線状に雲が割れ、月の光が戦地を照らした。しばらくしてそこに残っていたのは2人の少年少女と、一欠片の結晶と化した魔神の核。
「うっひゃぁ...ノイトくん、えげつな...。」
リュミエはギリギリ射程範囲外に居たため消滅せずに済んでいる。あまりにも凄絶な光景を目の当たりにし、リーリャも力なくへなへなと座り込んだ。
「えぇ......。ここまで...?」
ノイトも魔力をかなり消費したため、息を切らしている。ノイトの魔力とリーリャの魔力とフィルマリーの魔力を合わせた超級魔術。それでも核を消滅させるには至らなかったのだ。まだ気は抜けない。
強力な魔術を放った直後で、ノイトもリーリャも動けないでいる。しかし、その間にもアレソティラスだったものの魔力は消えない。やがて結晶が宙に浮き、魔力を帯び始めた。
[大文字][明朝体]「なるほど...これが、超級魔術か......。よく分かった。ここまで我に学びを与えてくれたこと、感謝する。そしてそれにより、ようやく我の能力は完成された...。お前の思想も我のこの身が滅ぶまで、確かに温め続けようぞ。」[/明朝体][/大文字]
[斜体](まさか...!? 今!?)[/斜体]
洒落にならない。今この場で魔神の魔力で禁忌魔術など、放たれたらどうなるか。すぐに世界は滅びる。それだけはなんとしてでも避けなければならない。ノイトは地面に貼り付けられたように動かない脚を無理やり前に出して手をかざす。
[斜体]「待っ...!」[/斜体]
魔神の核は止まらなかった。
[水平線]
[中央寄せ][大文字][大文字][太字][明朝体]終焉級禁忌魔術:『[漢字]██[/漢字][ふりがな]■■■■■■[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][大文字][明朝体][太字][大文字]禁忌魔法:〔[漢字]時喪恣灯[/漢字][ふりがな]トモシビ[/ふりがな]〕[/大文字][/太字][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
[水平線]
「ノイトさん...!」
フィルマリーに名前を呼ばれてノイトは振り返る。直後、視界の端に映るのはフィルマリーの髪。フィルマリーの腕にしがみつかれながらノイトはフィルマリーが自分を心配してくれていたことに気が付いた。
「フィルさん、心配かけてすみません。もう大丈夫ですから。」
「...本当?もうどこか行ったりしない?私だけのノイトさんで居てくれる?」
「それは無理です。メンヘラはやめてください?」
フィルマリーが心配するのも納得出来る。在り来りで退屈だった日常に突然現れて自分を楽しませてくれた存在。そして、彼女自身が愛して止まない魔法や魔術の研究に1番役立つ存在。失いたくないと思うのも当然である。
「ノイトさん...潜在魔力が以前よりも溢れ出て...ますね。さっきよりは収まっているようですけど。さっきはもう、ホントに雲の上から何回も爆音が聞こえて心配だったんですからね!魔力量もスゴいし、魔神の魔力も解放されているしで...。」
「まぁ、こっちの戦力はかなり削れてますけど、勝機は十分にあります。」
「それなら、良いんですけど...。無理してまで倒そうと思わなくても大丈夫ですよ?ノイトさんが居なくなっちゃったりしたら、意味ないですから!」
「それで世界が滅びちゃったら尚更意味ないでしょう?とにかく、勝てば良いんですよ。」
「...でも、いくらノイトさんと言っても...!ノイトさんは何でも1人で抱え込もうとします。それだけじゃ勝てないことだってあり...」
ノイトは人差し指をフィルマリーの口元に当てて黙らせた。
「1人じゃないですよ。」
そこに入ってきたのはリーリャだ。ノイトは指をフィルマリーから離して魔神の方へと歩いていく。その隣に駆け寄ったリーリャと並んでいる姿は他の何よりも似合うものだった。
「勝つよ、ノイト。」
「当然。」
拳を出したリーリャの[漢字]掌外縁[/漢字][ふりがな]手の横[/ふりがな]に、ノイトが同じ場所を軽く当てる。
「フィル、援護してくれる?出来るだけ魔力が集中するやつ。」
「...あっ!はい!!」
ノイトから指示を受けた。フィルマリーが歪んでしまった杖を両手でしっかりと持って掲げる。ノイトとリーリャが相手をするのは“全能の魔神”。半端な魔術では許されない。
[水平線]
[斜体][太字][中央寄せ]ᛋᚺᛁᚾᛁᚾᚵ ᛒᚱᛁᚵᚺᛏᛖᚱ ᛏᚺᚪᚾ ᚪᚾᚤᛏᚺᛁᚾᚵ[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᛖᛚᛋᛖ ᚪᚾᛞ ᚥᚪᛗᛖᚱ ᛏᚺᚪᚾ ᚪᚾᚤᛏᚺᛁᚾᚵ ᛖᛚᛋᛖ[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚥᚪᛏᚳᚺᛖᛋ ᛟᚡᛖᚱ ᛏᚺᛖ ᛖᚪᚱᛏᚺ, [/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚪᚾᛞ ᛏᚺᛖ ᚳᛟᛚᛞ ᛗᛟᛟᚾ,[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚱᛖᚳᛖᛁᚡᛁᚾᚵ ᚪᚾᛞ ᚱᛖᠠᛚᛖᚳᛏᛁᚾᚵ ᛁᛏᛋ ᛚᛁᚺᚵᛏ.[/中央寄せ]
[中央寄せ]ᛏᛟ ᛏᚺᛖ ᚡᛟᛁᚳᛖ ᛟᠠ ᛏᚺᛖ ᛟᚾᛖ ᚥᚺᛟ ᚳᛟᛗᛗᚪᚾᛞᛋ ᛒᛟᛏᚺ, [/中央寄せ]
[中央寄せ]ᚪᚾᛞ ᛈᛁᛖᚱᚳᛖ ᚺᛁᛗ ᚾᛟᚥ.[/中央寄せ][/太字][/斜体]
[水平線]
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]完全詠唱/上級魔術『ᚵᛟᛞ ᛋᛚᚪᚤᛖᚱ』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
本来ならそれはその名の通り[漢字]神殺し[/漢字][ふりがな]ゴッドスレイヤー[/ふりがな]の魔術。しかし、フィルマリーはそれをノイトに向かって放った。ノイトも生身でフィルマリーのその魔力を受け取れば無事ではいられない。しかし、[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態を経て魔力が[漢字]滾[/漢字][ふりがな]たぎ[/ふりがな]る今であれば、ノイトの魔力はそれをも凌駕する。
[中央寄せ][[漢字][太字]吸収[/太字][/漢字][ふりがな]アブソープション[/ふりがな]][/中央寄せ]
これは元々魔物に対して扱う、相手や相手の魔法から魔力を奪う上級魔法であるが、発動者の魔力が吸収の対象のそれを超えていれば無条件で取り込むことが出来る。その性質を利用し、フィルマリーの魔術の魔力を隣に居たリーリャへと分けた。
「...えっ、私?」
「流石に1人で制御出来る量じゃないからね。ちょっとだけ預かってて。」
[中央寄せ][[漢字][太字]感覚共有[/太字][/漢字][ふりがな]シェアリング[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトは自身の感覚をリーリャに共有する。感覚を共有されたリーリャの脳内に詠唱の呪文が流れ込んできた。
「これって......」
「1人じゃ出来ないからね。口と命は一つしかないんだし。頼んだよ、相棒?」
「ふふっ...任せてっ!」
2人は並んで詠唱を始めた。
「「-----.」」
フィルマリーの位置からでは膨大な魔力にかき消されて詠唱の内容が聞き取れない。
(あぁ...貴重なノイトさんの二重詠唱が...。...ん?あっ!さっきノイトさんが指を私のく、唇に添えたときに食べちゃえば良かったぁ〜!! もぉ〜!)
フィルマリーが心の中で考えていることなど知る由もなく、詠唱を続ける2人の視線に気が付き、アレソティラスがそちらを向く。
[明朝体][大文字](尋常ではない魔力量......喰らったら、死ぬ!)[/大文字][/明朝体]
初めて命の危機を感じたアレソティラスは咄嗟に斬られた脚を再生してノイトたちの方へと駆け出した。
[明朝体][大文字](まず引き剥がすべきは...ノイト!)[/大文字][/明朝体]
一瞬のことだった。詠唱に集中していたノイトは突っ込んできたアレソティラスの拳に対応しきれない。
[斜体]「ノイト!!」[/斜体]
殴り飛ばされたノイトを飛び込んできたアテルが受け止める。しかし、魔神の拳はリーリャにも向かってきていた。
[斜体]「リーリャ!!」[/斜体]
足場はスライム。強く踏み込んで跳び出すことも出来ず、そもそも座り込んだような体勢が悪い。ノイトでは間に合わない。再び視界がスローモーションになる。しかし身体はうまく動かない。
[斜体](リーリャ...!リーリャ!ダメだ、逝かないで!!)[/斜体]
必死に手を伸ばすも、距離が離れすぎている。轟音と共に勢いよく土煙が吹き出し、ノイトは咄嗟に片目を瞑る。もう片方の目でリーリャを見ようとするが、土煙のせいで何も見えない。
[斜体](リーリャ!!)[/斜体]
ようやく足場がしっかりして、ノイトは強く踏み込む。しかし今のノイトは丸腰。魔力を制御している以上、半端な魔法では通用しないだろう。かと言って協力な魔法や魔術などを使うにも時間が足りない。そして何より、そのことを理解すると同時に魔神の拳は地面にめり込んでいる。
「......ぁ...。」
か細い声が喉から漏れ出した。情けない声であることは分かっている。普段から思っている“カッコつけたいだけ”なんていう理想と正反対であることも分かっている。それでも、ただノイトの目はリーリャが居た方を見ようとした。
土煙が晴れ、魔神の姿が見える。そこに振り下ろされた魔神の拳には血が滲んでいる。小規模なクレーターから魔神の拳が上げられると、そこには先程まで身体の一部であったであろう潰れた赤い物体。血の量が明らかに少ない。そう思ったと同時に左の方から浅く速い呼吸音が聞こえてきた。その方を見ると、リーリャと倒れたモドーが居た。
[斜体]「リーリャ!モドーさん!」[/斜体]
メルクはノイトの声に気が付いて駆け寄る。倒れ込んだモドーの隣に居るのは、リーリャとノイト。2人の様子からして、モドーはかなり危険な状態だろう。
(あの馬鹿...一体何が...!)
その場に駆けつけると。モドーの片腕がない。どうやら、魔神の攻撃からリーリャを助け出すために飛び出し、その結果片腕を失ったようだ。
[斜体]「モドー!? アンタどうして...腕が!!」[/斜体]
モドーは辛うじて生きているが、戯言をほざく余裕もないらしい。メルクはモドーに回復魔法をかける。
「じっとしてて。」
「メル...。」
ノイトは自身も魔力でモドーに回復魔法をかける。精度であればフィルマリーの魔法の方が上だが、フィルマリーをこの場に立ち会わせるわけにもいかなかった。
[斜体](こんな惨状、フィルさんには見せられない...!でもこのままじゃ...いや、フィルさんの方が...!! 不平等に?そうじゃない。トリアージ。魔神はまだ居る。このまま全員危ない。命。でも。でも?“でも”じゃない。だから...!!)[/斜体]
「...そうじゃないでしょう......。」
ノイトにとって、魔神の復活と製造を目論む組織の一員であるモドーの存在を見過ごすことは出来ない。メルクのように組織に反抗的であれば良いが、モドーはそうではない。そして、メルクとも犬猿の仲。その情報だけ見ればノイトがモドーを救う義理などは微塵もない。運が悪かったと冷酷に切り捨てるべきだった。しかし、モドーが今しでかしたのはリーリャの命を救うことだ。同じ転生者であり、1番長く時を共にし、前世に戻ったときも一緒だった。自分のことを好きだと言ってくれる大切な人。ノイトの命よりも大事な人。それを救ったモドーは恩人でしかない。それを理解しているからこそ、ノイトは勝手に動いてしまう。
先程の魔法は“全能の魔神”にダメージを与えるには十分だった。だからこそ魔神も生存本能で攻撃したのだろう。ノイトだって立場が逆であればそうしていた。しかし、結果だけ見れば圧倒的な力を持った魔神が人間を蹂躙しているようにしか見えない。
[明朝体][大文字](生まれて初めて感じた、恐怖...!! これが人間!)[/大文字][/明朝体]
いくらノイトでも大切な人を傷つけようとされたらムカつかないこともない。
(あれ...何だろう......なんかすごく、...ふふっ。)
「みっとも[漢字]ねえ[/漢字][ふりがな][太字][大文字]・・[/大文字][/太字][/ふりがな]なぁ、アレソティラス。そこまで生に執着しちゃったりして。ビビってんのォ?」
ノイトのボルテージが上がる。再び魔力が昂ってきた。[漢字]忘我[/漢字][ふりがな]フロー[/ふりがな]状態程までは行かないものの、魔力は溢れ出してくる。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]『[漢字]破壊[/漢字][ふりがな]アヴラ・カダヴラ[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[斜体]([[漢字][太字]付与[/太字][/漢字][ふりがな]グラント[/ふりがな][太字]:[明朝体][漢字]衝撃[/漢字][ふりがな]ノックバック[/ふりがな][/明朝体]][/太字].........[[漢字][太字]一点集中[/太字][/漢字][ふりがな]ポイント[/ふりがな]].........![[漢字][太字]創生[/太字][/漢字][ふりがな]クリエイト[/ふりがな]].........[[漢字][太字]金縛り[/太字][/漢字][ふりがな]パライシス[/ふりがな]]............!)[/斜体]
[明朝体][大文字]「んっ...!!」[/大文字][/明朝体]
ノイトは自身へのバフを乗せるだけでなく、魔神の肉体も拘束した。そしてほぼ必中となったその拳が魔神の心窩部に命中する。
[斜体][大文字][明朝体]「ガハァッ...!!」[/明朝体][/大文字][/斜体]
その衝撃で【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】とルミナスの聖剣が魔神の身体から抜け、2人はそれを拾った。そのままノイトは武器を振りかぶって魔神の腕を落とす。体勢を崩したアレソティラスだったが、そのままノイトへともう片足を振り回した。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力防御[/漢字][ふりがな]マギノ・シールド[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
この魔法は魔力による攻撃は吸収出来る。魔神が相手であれば大抵の攻撃は魔力で強化された肉体のものであるためダメージを軽減出来るはずだ。しかし、今のアレソティラスの攻撃は純粋な物理攻撃だったようだ。その肉体も、組織によって開発されたものであって後から魔力で強化したものではない。したがってノイトは100%の衝撃を受けて殴り飛ばされた。それと同時に魔神が追撃しようと迫ってくる。間にレイクが入ってアレソティラスの拳を受け止めた。
甲高い金属音が響き、押し合いが続く。レイクの剣はノイトの【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】と同じく[漢字]青白磁の金属[/漢字][ふりがな]サスロイカ[/ふりがな]製で、鍛冶職人のムールが[漢字]鍛造[/漢字][ふりがな]つくっ[/ふりがな]だものだ。当然、魔神の攻撃にも耐えることが出来る。
[大文字]「ノイトくん、カメリア様はあの黒いスライムが保護している。ルミナス様とリーリャくんも連れて避難を。」[/大文字]
「駄目ですよ、レイクさん。“全能の魔神”は“終焉の魔神”のほぼ上位互換です。前線を離れる訳には行きません!」
レイクが“終焉の魔神”マズロインと戦ったときは手数で僅かに押されていた。しかし今は、単純な物量で押されている。アレソティラスの方がマズロインよりも速度も上であるはず。そのことを考えるといくらレイクであろうとも最前線に出れば無事では済まないだろう。アレソティラスがいつの間にか再生していたもう片方の腕を突き出した。レイクでも躱しきれない。咄嗟にその腕を剣で受け止めようとしたのはルミナスだ。
[斜体](ルミナ...!?)[大文字](ルミナス様...!?)[/大文字][/斜体]
ルミナス1人で受け止めきれる程魔神の拳は生易しいものではない。しかし、腕が一瞬止まった。リュミエのワイヤーが魔神の腕を引き留めようとしたのだ。
[斜体]「リュミエ!」[/斜体]
しかし、リュミエも魔神とは言えども膂力は外見年齢とほぼ同じく10代後半の女子並。抑え込めるはずがない。アテルが飛び込んできて腕を止めようとするが、獣のようになった今の魔神の爪がそのカラダを貫いた。
「あれれ〜?」
その隙にカメリアが跳んできてルミナスを連れて遠くへと離れ、前線にでているのはアレソティラスに近い順に、レイクとアテル、ノイト、リーリャ、フィルマリー、リュミエ、メルクとなった。レイクの剣は無事だが、肉体はそうはいかない。ノイトが前に出て【[漢字]時憶の指針[/漢字][ふりがな]トオクノハリ[/ふりがな]】を構え、それを魔神が振るっていた方の腕へと投げた。
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力投擲[/漢字][ふりがな]マギノ・スロー[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
次の瞬間、ノイトの武器に魔神の腕が弾かれたと同時にレイクの姿が消える。代わりにそこにあったのは[漢字]希璋石[/漢字][ふりがな]フィスリテル[/ふりがな]。ノイトやリーリャがやったわけではない。メルクやリュミエもそれを所持していない。決して安価ではないその石を持っている可能性。ノイトの中で考えられるのは。
[斜体](ドメリアスさん...!)[/斜体]
ノルティーク帝国の王家直属の研究調査機関・イスラの現場調査員であるドメリアスならいくらでも理由を付けてここまで来ることが出来るはずだ。そして、ノイトが気絶してリーリャとともに前世世界で過ごしていた間、前線で戦っていたのはドメリアスも一緒である。
[斜体](レイクさんは前線から離れた。リュミエも射程範囲外。アテルもすぐに避ける。それなら...)[/斜体]
[斜体]「-----.」[/斜体]
ノイトのその詠唱を、リーリャは聞き逃さなかった。リーリャもノイトの方へと駆け出す。
[斜体](ノイトがやる気なら私も...!!)[/斜体]
[斜体]「-----.」[/斜体]
ノイトへと魔神の拳が飛ぶが、フィルマリーの防御魔術が衝撃を吸収したためノイトへのダメージは限定的だった。それでも飛ばされたノイトの背中を、リーリャが押す。ノイトの魔力とリーリャの魔力(※フィルマリーから受け取ったもの)が合わさり、膨大な一つの魔力になった。2人の声が重なり、その魔術は魔神へと放たれる。
[中央寄せ][大文字][大文字][斜体][太字][明朝体]二重詠唱/超級魔術:〘[漢字]ᛋᛟᚢᛚᛗᚪᛏᛖ[/漢字][ふりがな]ソウルメイト[/ふりがな]〙[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/大文字][/中央寄せ]
その光はアレソティラスを包み込み、肉体を蒸発させた。
[斜体][大文字][明朝体](............!!)[/明朝体][/大文字][/斜体]
[漢字]白緑[/漢字][ふりがな]びゃくろく[/ふりがな]に光る魔術がアレソティラスを消滅させる勢いでそのまま周囲の大気すらも払っていく。一直線状に雲が割れ、月の光が戦地を照らした。しばらくしてそこに残っていたのは2人の少年少女と、一欠片の結晶と化した魔神の核。
「うっひゃぁ...ノイトくん、えげつな...。」
リュミエはギリギリ射程範囲外に居たため消滅せずに済んでいる。あまりにも凄絶な光景を目の当たりにし、リーリャも力なくへなへなと座り込んだ。
「えぇ......。ここまで...?」
ノイトも魔力をかなり消費したため、息を切らしている。ノイトの魔力とリーリャの魔力とフィルマリーの魔力を合わせた超級魔術。それでも核を消滅させるには至らなかったのだ。まだ気は抜けない。
強力な魔術を放った直後で、ノイトもリーリャも動けないでいる。しかし、その間にもアレソティラスだったものの魔力は消えない。やがて結晶が宙に浮き、魔力を帯び始めた。
[大文字][明朝体]「なるほど...これが、超級魔術か......。よく分かった。ここまで我に学びを与えてくれたこと、感謝する。そしてそれにより、ようやく我の能力は完成された...。お前の思想も我のこの身が滅ぶまで、確かに温め続けようぞ。」[/明朝体][/大文字]
[斜体](まさか...!? 今!?)[/斜体]
洒落にならない。今この場で魔神の魔力で禁忌魔術など、放たれたらどうなるか。すぐに世界は滅びる。それだけはなんとしてでも避けなければならない。ノイトは地面に貼り付けられたように動かない脚を無理やり前に出して手をかざす。
[斜体]「待っ...!」[/斜体]
魔神の核は止まらなかった。
[水平線]
[中央寄せ][大文字][大文字][太字][明朝体]終焉級禁忌魔術:『[漢字]██[/漢字][ふりがな]■■■■■■[/ふりがな]』[/明朝体][/太字][/大文字][/大文字][/中央寄せ]
[中央寄せ][大文字][明朝体][太字][大文字]禁忌魔法:〔[漢字]時喪恣灯[/漢字][ふりがな]トモシビ[/ふりがな]〕[/大文字][/太字][/明朝体][/大文字][/中央寄せ]
[水平線]