世界に溢れる夢
[中央寄せ]・・・[/中央寄せ]
ディアスムングロール大陸にある、音楽都市・ムズィガルド近隣に、膨大な魔力反応があった。その中心に立っていたのは、“全能の魔神”アレソティラス。存在しないはずの9体目の魔神にして、他の魔神とは明らかに格が違うものだった。
[明朝体][大文字]「ここは、なんだ...。我は、誰だ...。」[/大文字][/明朝体]
アレソティラスは、何かが近づいてくることに気がついた。世界中に点在していた魔力反応が集まってくる。
[明朝体][大文字]「我は、魔神。人間に警戒され、討伐される者。...来たか。」[/大文字][/明朝体]
真っ先にその場へと駆けつけたのはノイトとリーリャとメルクの3人だ。
(今まで戦ってきた魔神とはまるで格が違う...。この世界の中では完全に別次元の存在......優に“終焉の魔神”の倍はあるだろ、これは...。)
アレソティラスはノイトたちを見て礼儀正しく挨拶をした。
[明朝体][大文字]「はじめまして、人間の子。我の名は、アレソティラス。お前たち人間に敵対する存在だ。」[/大文字][/明朝体]
「...なんで敵対するの?別に人間側の勝手な勘違いだけで迫害された魔神だって居るんだよ?」
[明朝体][大文字]「そうなのか...、......そうだったな。どうやら我は、多くの[漢字]能力[/漢字][ふりがな]ちから[/ふりがな]を与えられたようだ。分かっていたはずだ。...では聞こう。お前たちは我を殺せるのか?」[/大文字][/明朝体]
「...理論上、可能ではある。かなり厳しいと思うけど。」
[明朝体][大文字]「ならば、我を屠ってみせろ。我に世界を滅ぼされたくなければな。」[/大文字][/明朝体]
アレソティラスの言葉に違和感を覚えたメルクは魔神に尋ねる。
「...アンタの目的は世界を滅ぼすこと?」
[明朝体][大文字]「どうであろうな?さぁ、かかってくるが良い。命を落としたくなければな。」[/大文字][/明朝体]
魔神の気配が変わり、アレソティラスは隙のない構えを取った。
「...ホントにやるの......?」
[明朝体][大文字]「そうだ。気を抜くなよ?」[/大文字][/明朝体]
次の瞬間、命の危険を感じたノイトは咄嗟に行動する。
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
[斜体]「ぐあっ...!!」[/斜体]
ノイトは一瞬の内に行動したつもりだったが、それでも魔神の方が速かった。移動すると同時に魔神の拳がノイトに放たれ、[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]した先で慣性が発動して吹き飛ばされた。さらに次の瞬間にはノイトの目の前に来ていた。
[斜体](速い...!!)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]『[漢字]愛縷繰流素[/漢字][ふりがな]メルクリウス[/ふりがな]』[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
メルクが魔神の拳を横から殴り、軌道を反らした。その衝撃でメルクのスタッズグローブのような魔具は壊れてしまった。
[明朝体][大文字]「なかなか速いな...。そして、こうしている間にも...」[/大文字][/明朝体]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力打撃[/漢字][ふりがな]マギノ・スパンク[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトの攻撃を防いだアレソティラスは僅かに後ろへと跳んだ。
[明朝体][大文字]「連携が取れている。威力もそこそこだ。」[/大文字][/明朝体]
そして、街の方から巨大な魔法陣が浮かび上がり、アレソティラスへと向かって巨大な光の柱が放たれた。
[中央寄せ][太字]上級魔術:[大文字][明朝体]〘ᛈᚢᛋᚺ ᛟᚢᛏ〙[/明朝体][/大文字][/太字][/中央寄せ]
魔神はフィルマリーの上級魔術に押し出された直後、空間を捻じ曲げてその軌道を歪める。
「...随分芸達者なんだな。」
[明朝体][大文字]「我は、与えられた者だ。まだまだ気を抜くなよ。」[/大文字][/明朝体]
「お前もな。」
街の方から次々と魔力反応がやってくるのを感じた。
[明朝体][大文字]「面白い。」[/大文字][/明朝体]
[中央寄せ][[漢字][太字]青龍御剣[/太字][/漢字][ふりがな]セイリュウミケン[/ふりがな]][/中央寄せ]
一瞬で現れたロズウェルの蒼い魔力を纏った一撃がアレソティラスの眼前に迫った。しかし、それがアレソティラスに届く前にロズウェルの視界の端に迫っていた魔神の拳が当たる。ロズウェルの剣は反射的にその攻撃を防ぎ、壊れた。再び魔神の拳が放たれた瞬間、ロズウェルの姿が消えた。代わりにそこに居たのはレイク。レイクが振り上げた剣が魔神の拳を弾き飛ばした。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]〔[漢字]暴風神[/漢字][ふりがな]ルドラ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
即座に放たれた猛風を纏ったその斬撃は、ノイトが見様見真似で放ったものに比べると遥かに質が違う。魔神の拳は初めて弾かれた。それを見たアレソティラスは笑みを浮かべてレイクへと蹴りを入れた。流石のレイクでも刹那に等しかったその瞬間に入れられた蹴りに耐えきるのは無理がある。
[大文字]「ぐっ...。」[/大文字]
ノルティーク大陸最強と呼ばれる、レイク。その男が耐えきれずに吹き飛ばされる一撃の重さなど、想像もつかない。しかし、その想像もつかないものが今、目の前にあった。
[中央寄せ][[漢字][太字]付与[/太字][/漢字][ふりがな]グラント[/ふりがな]:[明朝体][漢字][太字]攻撃力強化[/太字][/漢字][ふりがな]ストレングス[/ふりがな][/明朝体]][/中央寄せ]
魔力で強化されたノイトの蹴りが魔神へと飛んだ。しかし、いくら魔力で強化したとしても素の筋肉量は影響するものだ。ノイトのそもそもの膂力のせいで大したダメージはないようだ。
[斜体]「...ダメか。」[/斜体]
そこで高速の何かが飛んできて、魔神の腕に浅い傷を付けた。カメリアのようだ。細かく浅い傷であるため、瞬時に回復されて反撃されそうになる。
振り払われた腕からカメリアを救ったのはリオール。リオールはカメリアを突き飛ばして攻撃を回避させ、瞬時に魔術を発動した。
[中央寄せ][太字]上級魔術:[明朝体][大文字]〘ᚾᚢᛗᛒ〙[/大文字][/明朝体][/太字][/中央寄せ]
アレソティラスの動きが一瞬鈍り、その隙にリーリャが魔法を放つ。
[中央寄せ][太字]超級魔法:『[明朝体][大文字][漢字]獄炎弓箭[/漢字][ふりがな]プロクス・ヴェロス[/ふりがな][/大文字][/明朝体]』[/太字][/中央寄せ]
[明朝体][大文字]「どうした、そんなものか...?我にとってはそよ風のようなものだ...。」[/大文字][/明朝体]
しかし、リーリャの炎は攻撃のために放たれたものではなかった。背後に冷たい何かを感じたアレソティラスは振り返る。振り返った瞬間に炎が一瞬で冷気に変わり、魔神の肉体の表面に寒暖差のダメージを与えた。その炎を冷気に変えられる弾を撃ったのはラルカだ。
「まったく...また魔神か。それに...ノイトも。」
ラルカがそう呟いている間に目の前に魔神が立っていたが、ラルカは一切怖気づくこともなくそのまま背後へと倒れた。それによって魔神の攻撃は躱され、僅かに近づいた魔神の腹部に直接その弾を撃ち込んだ。魔神が一瞬で魔力を腹部に集中させて守ったため、魔神が冷気となって消えることはなかったが、それによってまた隙が生まれる。跳び戻ってきたレイクの一撃が魔神の首に当たった。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]〔[漢字]雷霆神[/漢字][ふりがな]トール[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
魔神の硬い首はレイクの攻撃をも通さなかった。しかし、衝撃で魔神の頭部は持っていかれている。そこでノイトが魔法を発動した。
[水平線]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]遅延再生[/漢字][ふりがな]スローモーション[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[水平線]
ノイトの魔法によって瞬時に放たれるはずだった蹴りの速度が僅かに遅くなる。そこでフィルマリーのぬいぐるみたちが魔神へと飛びついてきた。全員が距離を取ったことを確認すると、フィルマリーがぬいぐるみを爆ぜさせ、魔神は炎に包まれる。そしてまたラルカの銃弾がそれを冷気に変えた。はたから見れば烏合の衆とは思えない程に連携が取れている。しかし、アレソティラスへのダメージはあまりないようだ。
[明朝体][大文字]「どいつもこいつも粒ぞろい...だが、足りんな。」[/大文字][/明朝体]
ここまで、この魔神は拳や蹴り、腕の振り回しなどの単純な攻撃しかしてきていない。レイクやカメリアの攻撃を受けても大したダメージを負わない程の相手のことだ。下手をすれば一方的に蹂躙される可能性もある。
[明朝体][大文字]「3秒だ。もし3秒 間が空けば、我の魔術で命を落とすことになるだろう。忙しなく足掻くが良い。」[/大文字][/明朝体]
この人数でも戦力差は圧倒的に大きい。その中で3秒間の隙を与えでもすれば最悪の場合全滅してしまうだろう。
(3秒...ヘイトを極力分散させた状態でそれはちょっと厳しいかな...?反応速度はここに居る誰よりも速い。レイクさんやカメリア様が辛うじて対応出来ているけど、僕やメルでは無理があるかもな...。)
ノイトが策を練ろうと思考している間もラルカやフィルマリーやリオールが足止めをしてくれている。
(リーリャとルミナは前線には出せない...。この魔神の影響が世界規模なら、ラクスドルム大陸に居る人ももしかしたら駆けつけてきてくれるかもしれないけど...二の矢への期待はしたくないな...。)
フィルマリーの杖が魔神の手刀で歪んだ。一瞬の隙が生まれたため、ノイトはアレソティラスへと攻撃を加える。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力斬[/漢字][ふりがな]マギノ・スラッシュ[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[斜体](硬っ...!!)[/斜体]
[漢字]青白磁の金属[/漢字][ふりがなサスロイカ][/ふりがな]製の武器とノイトの魔力を込めた攻撃であっても、アレソティラスにダメージを与えるには及ばないようだった。浅い傷が一瞬のうちに回復していく。
[斜体](まだ昨日の戦いから魔力が全回復してないんだけど...?人手...戦力が足りていない...!!)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力防御[/漢字][ふりがな]マギノ・シールド[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトはアレソティラスの腕の振りをを間一髪で防いだが、上空へと弾き飛ばされた。
[斜体](元々の物量も大したものだけど...今ので分かった!! 無意識かもしれないけど、あの攻撃には魔力が込められている!そうじゃなきゃ、今の技で防げてない!!)[/斜体]
[斜体]「ラルカ!」[/斜体]
[中央寄せ][[漢字][太字]渦潮[/太字][/漢字][ふりがな]ウェルプール[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトの魔法が魔神を飲み込んだと同時に、ラルカの銃弾がそれを凍らせ、魔神を氷漬けにした。
[斜体]「フィルさん!」[/斜体]
[中央寄せ][太字]上級魔法:[大文字][明朝体]〘ᚠᚢᛚᛗᛁᚾᚪᛏᛁᛟᚾ〙[/明朝体][/大文字][/太字][/中央寄せ]
フィルマリーが放った巨大な雷霆が氷漬けにされた魔神を貫く。
[明朝体][大文字][斜体]「うぐっ......やるな。」[/斜体][/大文字][/明朝体]
[斜体](ちゃんとダメージは通ってる...けど全員魔力が持たない......!こっちの体力も削れていく...!!)[/斜体]
リオールが魔神の足場をぬかるませてはめるが、魔神は無理やり沈んだ先の地面を蹴って脱出する。
[斜体]「ゴリ押し過ぎだろ...!!」[/斜体]
[明朝体][大文字]「純粋な力の出し惜しみはしない...。」[/大文字][/明朝体]
リオールはアレソティラスに向かって1つ勘違いしていることを指摘した。
[斜体]「違う。脚に魔力が行き過ぎだって話だ。」[/斜体]
魔神の背後にはノイトが居る。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体][明朝体]〔[漢字]魔力裂斬[/漢字][ふりがな]マギノ・ガッシュ[/ふりがな]〕[/明朝体][/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
ノイトの斬撃がアレソティラスが振りかざした左手を飛ばし、ラルカの狙撃によってアレソティラスの手首から二の腕までが冷気になって消えた。即座にリオールが魔術を放って魔神の身体を針で拘束した。
[明朝体][大文字]「ほぅ...悪くない。...この拘束はお前の魔力で1から生み出したものだろう。その分魔力は消費する。それと、先程我が言った言葉を忘れたな。」[/大文字][/明朝体]
[斜体](なっ...!! まずい...!)[/斜体]
その意味に気がついたノイトが咄嗟に前へと飛び出したが、間に合わない。
[明朝体][大文字]「言ったはずだ。“3秒 間が空けば、我の魔術で命を落とすことになる”と。」[/大文字][/明朝体]
[水平線]
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][大文字]災害級禁忌魔術:[[漢字]禁忌箱[/漢字][ふりがな]パンドラ[/ふりがな]][/大文字][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[水平線]
ノイトは目を見開く。
[斜体](その魔術は...!!)[/斜体]
その魔術は“終焉の魔神”のものだった。ノイトの魔法で魔神とノイトの時間を止めていなければ一瞬でノルティーク大陸が滅びていたかもしれない技。当然,それをそのまま目の前で見送ってしまえば間違いなくムズィガルド周辺に居る者だけではなくこのディアスムングロール大陸のほとんどが焦土になってしまうだろう。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]時夢姫[/漢字][ふりがな]シンデレラ[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトとアレソティラスの時間が止まった。しかし、“終焉の魔神”の時と比べて効果は薄い。情報量が多すぎて長い時間は止められないようだ。ただでさえノイトの魔法の効きが悪く完全に動きを封じ込めきれない魔術で、アレソティラスが放った禁忌魔術は“終焉の魔神”マズロインのものよりも強力。ノイトの魔法で魔神の魔術の動きが遅くなった隙にナニカが現れる。
ノイトの魔法の効果は在りえない程に早く切れた。しかし、その瞬間、全員の前に現れたのは──。
[水平線]
[中央寄せ][斜体][大文字][大文字][大文字][明朝体]──⦓ⰳⱀⱑⰲⰵⱀⱏ... ⰰⰸⱏ ⱅⰵⰱⰵ ⱀⰵ ⰾⱓⰱⰾⱓ. ⱅⱁ ⱆⱀⰹⱄⱅⱁⰶⱔ.⦔──[/明朝体][/大文字][/大文字][/大文字][/斜体][/中央寄せ]
[水平線]
その場に居る全ての存在が根源的な恐怖を感じた。それは突然目を覚まし、現れる。
( ヌミノース。 こ れは. .. 魔物 や 魔 族の類 じ ゃ ない . .. もっと [漢字]上[/漢字][ふりがな]うえ[/ふりがな] の... 言 うなれ ば、“[漢字]不可説の摂理[/漢字][ふりがな]ぜったい[/ふりがな]”。)
ノイトだけではない。この世界の全てがそれを感じる。根源的畏敬。絶対的なナニカ。
[水平線]
[太字][大文字][大文字][大文字][明朝体][中央寄せ]──⦓[漢字]其[/漢字][ふりがな]そ[/ふりがな]は衍。帰せよ。⦔──[/中央寄せ][/明朝体][/大文字][/大文字][/大文字][/太字]
[水平線]
次の瞬間、その無何有であるカミが巨大化...否、その姿がさらに見えるようになり、アレソティラスの禁忌魔術を呑んだ。すると、一体どこから見ていたのかも、何故姿を現したのかも知れない世界の摂理は姿を消す。代わりに、何事もなかったかのように平穏な空が広がっていた。
(.........。)
しばらくの間、誰も動けなかった。1番最初に動けるようになったのは丁度街から魔神の元へと向かおうとしていたルミナスだ。
[明朝体][太字]「リュミエさん、大丈夫でしたか?! 早くお兄ちゃんたちの元へ向かいましょう!!」[/太字][/明朝体]
ルミナスの言葉でようやく思考を切り替えることが出来たリュミエは頷いてノイトたちの方へと駆け出した。
「...あっ、うん!そうだね。急ごう!!」
ノイトもレイクもラルカもアレソティラスも、それを理解しようとしてしまったがために脳の処理が追いつかない。
(存在が暗黙の公理となった、அதுの[漢字]深淵[/漢字][ふりがな]ゼニス[/ふりがな]...!!)
(アレは...すべての根源...?世界の理そのものかのような圧倒的存在感......。)
(なんだアレは......神...?神、なのか...?)
[大文字][明朝体](我を...我の魔術は、[漢字]世界[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]には要らぬということか...?)[/明朝体][/大文字]
誰一人として理解することすら許されないその存在のことを、誰も考えてはいけない。
ディアスムングロール大陸にある、音楽都市・ムズィガルド近隣に、膨大な魔力反応があった。その中心に立っていたのは、“全能の魔神”アレソティラス。存在しないはずの9体目の魔神にして、他の魔神とは明らかに格が違うものだった。
[明朝体][大文字]「ここは、なんだ...。我は、誰だ...。」[/大文字][/明朝体]
アレソティラスは、何かが近づいてくることに気がついた。世界中に点在していた魔力反応が集まってくる。
[明朝体][大文字]「我は、魔神。人間に警戒され、討伐される者。...来たか。」[/大文字][/明朝体]
真っ先にその場へと駆けつけたのはノイトとリーリャとメルクの3人だ。
(今まで戦ってきた魔神とはまるで格が違う...。この世界の中では完全に別次元の存在......優に“終焉の魔神”の倍はあるだろ、これは...。)
アレソティラスはノイトたちを見て礼儀正しく挨拶をした。
[明朝体][大文字]「はじめまして、人間の子。我の名は、アレソティラス。お前たち人間に敵対する存在だ。」[/大文字][/明朝体]
「...なんで敵対するの?別に人間側の勝手な勘違いだけで迫害された魔神だって居るんだよ?」
[明朝体][大文字]「そうなのか...、......そうだったな。どうやら我は、多くの[漢字]能力[/漢字][ふりがな]ちから[/ふりがな]を与えられたようだ。分かっていたはずだ。...では聞こう。お前たちは我を殺せるのか?」[/大文字][/明朝体]
「...理論上、可能ではある。かなり厳しいと思うけど。」
[明朝体][大文字]「ならば、我を屠ってみせろ。我に世界を滅ぼされたくなければな。」[/大文字][/明朝体]
アレソティラスの言葉に違和感を覚えたメルクは魔神に尋ねる。
「...アンタの目的は世界を滅ぼすこと?」
[明朝体][大文字]「どうであろうな?さぁ、かかってくるが良い。命を落としたくなければな。」[/大文字][/明朝体]
魔神の気配が変わり、アレソティラスは隙のない構えを取った。
「...ホントにやるの......?」
[明朝体][大文字]「そうだ。気を抜くなよ?」[/大文字][/明朝体]
次の瞬間、命の危険を感じたノイトは咄嗟に行動する。
[中央寄せ][[漢字][太字]瞬間移動[/太字][/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]][/中央寄せ]
[斜体]「ぐあっ...!!」[/斜体]
ノイトは一瞬の内に行動したつもりだったが、それでも魔神の方が速かった。移動すると同時に魔神の拳がノイトに放たれ、[漢字]瞬間移動[/漢字][ふりがな]ワープ[/ふりがな]した先で慣性が発動して吹き飛ばされた。さらに次の瞬間にはノイトの目の前に来ていた。
[斜体](速い...!!)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]『[漢字]愛縷繰流素[/漢字][ふりがな]メルクリウス[/ふりがな]』[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
メルクが魔神の拳を横から殴り、軌道を反らした。その衝撃でメルクのスタッズグローブのような魔具は壊れてしまった。
[明朝体][大文字]「なかなか速いな...。そして、こうしている間にも...」[/大文字][/明朝体]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]魔力打撃[/漢字][ふりがな]マギノ・スパンク[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトの攻撃を防いだアレソティラスは僅かに後ろへと跳んだ。
[明朝体][大文字]「連携が取れている。威力もそこそこだ。」[/大文字][/明朝体]
そして、街の方から巨大な魔法陣が浮かび上がり、アレソティラスへと向かって巨大な光の柱が放たれた。
[中央寄せ][太字]上級魔術:[大文字][明朝体]〘ᛈᚢᛋᚺ ᛟᚢᛏ〙[/明朝体][/大文字][/太字][/中央寄せ]
魔神はフィルマリーの上級魔術に押し出された直後、空間を捻じ曲げてその軌道を歪める。
「...随分芸達者なんだな。」
[明朝体][大文字]「我は、与えられた者だ。まだまだ気を抜くなよ。」[/大文字][/明朝体]
「お前もな。」
街の方から次々と魔力反応がやってくるのを感じた。
[明朝体][大文字]「面白い。」[/大文字][/明朝体]
[中央寄せ][[漢字][太字]青龍御剣[/太字][/漢字][ふりがな]セイリュウミケン[/ふりがな]][/中央寄せ]
一瞬で現れたロズウェルの蒼い魔力を纏った一撃がアレソティラスの眼前に迫った。しかし、それがアレソティラスに届く前にロズウェルの視界の端に迫っていた魔神の拳が当たる。ロズウェルの剣は反射的にその攻撃を防ぎ、壊れた。再び魔神の拳が放たれた瞬間、ロズウェルの姿が消えた。代わりにそこに居たのはレイク。レイクが振り上げた剣が魔神の拳を弾き飛ばした。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]〔[漢字]暴風神[/漢字][ふりがな]ルドラ[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
即座に放たれた猛風を纏ったその斬撃は、ノイトが見様見真似で放ったものに比べると遥かに質が違う。魔神の拳は初めて弾かれた。それを見たアレソティラスは笑みを浮かべてレイクへと蹴りを入れた。流石のレイクでも刹那に等しかったその瞬間に入れられた蹴りに耐えきるのは無理がある。
[大文字]「ぐっ...。」[/大文字]
ノルティーク大陸最強と呼ばれる、レイク。その男が耐えきれずに吹き飛ばされる一撃の重さなど、想像もつかない。しかし、その想像もつかないものが今、目の前にあった。
[中央寄せ][[漢字][太字]付与[/太字][/漢字][ふりがな]グラント[/ふりがな]:[明朝体][漢字][太字]攻撃力強化[/太字][/漢字][ふりがな]ストレングス[/ふりがな][/明朝体]][/中央寄せ]
魔力で強化されたノイトの蹴りが魔神へと飛んだ。しかし、いくら魔力で強化したとしても素の筋肉量は影響するものだ。ノイトのそもそもの膂力のせいで大したダメージはないようだ。
[斜体]「...ダメか。」[/斜体]
そこで高速の何かが飛んできて、魔神の腕に浅い傷を付けた。カメリアのようだ。細かく浅い傷であるため、瞬時に回復されて反撃されそうになる。
振り払われた腕からカメリアを救ったのはリオール。リオールはカメリアを突き飛ばして攻撃を回避させ、瞬時に魔術を発動した。
[中央寄せ][太字]上級魔術:[明朝体][大文字]〘ᚾᚢᛗᛒ〙[/大文字][/明朝体][/太字][/中央寄せ]
アレソティラスの動きが一瞬鈍り、その隙にリーリャが魔法を放つ。
[中央寄せ][太字]超級魔法:『[明朝体][大文字][漢字]獄炎弓箭[/漢字][ふりがな]プロクス・ヴェロス[/ふりがな][/大文字][/明朝体]』[/太字][/中央寄せ]
[明朝体][大文字]「どうした、そんなものか...?我にとってはそよ風のようなものだ...。」[/大文字][/明朝体]
しかし、リーリャの炎は攻撃のために放たれたものではなかった。背後に冷たい何かを感じたアレソティラスは振り返る。振り返った瞬間に炎が一瞬で冷気に変わり、魔神の肉体の表面に寒暖差のダメージを与えた。その炎を冷気に変えられる弾を撃ったのはラルカだ。
「まったく...また魔神か。それに...ノイトも。」
ラルカがそう呟いている間に目の前に魔神が立っていたが、ラルカは一切怖気づくこともなくそのまま背後へと倒れた。それによって魔神の攻撃は躱され、僅かに近づいた魔神の腹部に直接その弾を撃ち込んだ。魔神が一瞬で魔力を腹部に集中させて守ったため、魔神が冷気となって消えることはなかったが、それによってまた隙が生まれる。跳び戻ってきたレイクの一撃が魔神の首に当たった。
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体]〔[漢字]雷霆神[/漢字][ふりがな]トール[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
魔神の硬い首はレイクの攻撃をも通さなかった。しかし、衝撃で魔神の頭部は持っていかれている。そこでノイトが魔法を発動した。
[水平線]
[中央寄せ][大文字][斜体][太字][明朝体]〔[漢字]遅延再生[/漢字][ふりがな]スローモーション[/ふりがな]〕[/明朝体][/太字][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[水平線]
ノイトの魔法によって瞬時に放たれるはずだった蹴りの速度が僅かに遅くなる。そこでフィルマリーのぬいぐるみたちが魔神へと飛びついてきた。全員が距離を取ったことを確認すると、フィルマリーがぬいぐるみを爆ぜさせ、魔神は炎に包まれる。そしてまたラルカの銃弾がそれを冷気に変えた。はたから見れば烏合の衆とは思えない程に連携が取れている。しかし、アレソティラスへのダメージはあまりないようだ。
[明朝体][大文字]「どいつもこいつも粒ぞろい...だが、足りんな。」[/大文字][/明朝体]
ここまで、この魔神は拳や蹴り、腕の振り回しなどの単純な攻撃しかしてきていない。レイクやカメリアの攻撃を受けても大したダメージを負わない程の相手のことだ。下手をすれば一方的に蹂躙される可能性もある。
[明朝体][大文字]「3秒だ。もし3秒 間が空けば、我の魔術で命を落とすことになるだろう。忙しなく足掻くが良い。」[/大文字][/明朝体]
この人数でも戦力差は圧倒的に大きい。その中で3秒間の隙を与えでもすれば最悪の場合全滅してしまうだろう。
(3秒...ヘイトを極力分散させた状態でそれはちょっと厳しいかな...?反応速度はここに居る誰よりも速い。レイクさんやカメリア様が辛うじて対応出来ているけど、僕やメルでは無理があるかもな...。)
ノイトが策を練ろうと思考している間もラルカやフィルマリーやリオールが足止めをしてくれている。
(リーリャとルミナは前線には出せない...。この魔神の影響が世界規模なら、ラクスドルム大陸に居る人ももしかしたら駆けつけてきてくれるかもしれないけど...二の矢への期待はしたくないな...。)
フィルマリーの杖が魔神の手刀で歪んだ。一瞬の隙が生まれたため、ノイトはアレソティラスへと攻撃を加える。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力斬[/漢字][ふりがな]マギノ・スラッシュ[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
[斜体](硬っ...!!)[/斜体]
[漢字]青白磁の金属[/漢字][ふりがなサスロイカ][/ふりがな]製の武器とノイトの魔力を込めた攻撃であっても、アレソティラスにダメージを与えるには及ばないようだった。浅い傷が一瞬のうちに回復していく。
[斜体](まだ昨日の戦いから魔力が全回復してないんだけど...?人手...戦力が足りていない...!!)[/斜体]
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]魔力防御[/漢字][ふりがな]マギノ・シールド[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトはアレソティラスの腕の振りをを間一髪で防いだが、上空へと弾き飛ばされた。
[斜体](元々の物量も大したものだけど...今ので分かった!! 無意識かもしれないけど、あの攻撃には魔力が込められている!そうじゃなきゃ、今の技で防げてない!!)[/斜体]
[斜体]「ラルカ!」[/斜体]
[中央寄せ][[漢字][太字]渦潮[/太字][/漢字][ふりがな]ウェルプール[/ふりがな]][/中央寄せ]
ノイトの魔法が魔神を飲み込んだと同時に、ラルカの銃弾がそれを凍らせ、魔神を氷漬けにした。
[斜体]「フィルさん!」[/斜体]
[中央寄せ][太字]上級魔法:[大文字][明朝体]〘ᚠᚢᛚᛗᛁᚾᚪᛏᛁᛟᚾ〙[/明朝体][/大文字][/太字][/中央寄せ]
フィルマリーが放った巨大な雷霆が氷漬けにされた魔神を貫く。
[明朝体][大文字][斜体]「うぐっ......やるな。」[/斜体][/大文字][/明朝体]
[斜体](ちゃんとダメージは通ってる...けど全員魔力が持たない......!こっちの体力も削れていく...!!)[/斜体]
リオールが魔神の足場をぬかるませてはめるが、魔神は無理やり沈んだ先の地面を蹴って脱出する。
[斜体]「ゴリ押し過ぎだろ...!!」[/斜体]
[明朝体][大文字]「純粋な力の出し惜しみはしない...。」[/大文字][/明朝体]
リオールはアレソティラスに向かって1つ勘違いしていることを指摘した。
[斜体]「違う。脚に魔力が行き過ぎだって話だ。」[/斜体]
魔神の背後にはノイトが居る。
[中央寄せ][大文字][太字][斜体][明朝体]〔[漢字]魔力裂斬[/漢字][ふりがな]マギノ・ガッシュ[/ふりがな]〕[/明朝体][/斜体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
ノイトの斬撃がアレソティラスが振りかざした左手を飛ばし、ラルカの狙撃によってアレソティラスの手首から二の腕までが冷気になって消えた。即座にリオールが魔術を放って魔神の身体を針で拘束した。
[明朝体][大文字]「ほぅ...悪くない。...この拘束はお前の魔力で1から生み出したものだろう。その分魔力は消費する。それと、先程我が言った言葉を忘れたな。」[/大文字][/明朝体]
[斜体](なっ...!! まずい...!)[/斜体]
その意味に気がついたノイトが咄嗟に前へと飛び出したが、間に合わない。
[明朝体][大文字]「言ったはずだ。“3秒 間が空けば、我の魔術で命を落とすことになる”と。」[/大文字][/明朝体]
[水平線]
[中央寄せ][大文字][太字][明朝体][大文字]災害級禁忌魔術:[[漢字]禁忌箱[/漢字][ふりがな]パンドラ[/ふりがな]][/大文字][/明朝体][/太字][/大文字][/中央寄せ]
[水平線]
ノイトは目を見開く。
[斜体](その魔術は...!!)[/斜体]
その魔術は“終焉の魔神”のものだった。ノイトの魔法で魔神とノイトの時間を止めていなければ一瞬でノルティーク大陸が滅びていたかもしれない技。当然,それをそのまま目の前で見送ってしまえば間違いなくムズィガルド周辺に居る者だけではなくこのディアスムングロール大陸のほとんどが焦土になってしまうだろう。
[中央寄せ][大文字][斜体][明朝体][太字]〔[漢字]時夢姫[/漢字][ふりがな]シンデレラ[/ふりがな]〕[/太字][/明朝体][/斜体][/大文字][/中央寄せ]
ノイトとアレソティラスの時間が止まった。しかし、“終焉の魔神”の時と比べて効果は薄い。情報量が多すぎて長い時間は止められないようだ。ただでさえノイトの魔法の効きが悪く完全に動きを封じ込めきれない魔術で、アレソティラスが放った禁忌魔術は“終焉の魔神”マズロインのものよりも強力。ノイトの魔法で魔神の魔術の動きが遅くなった隙にナニカが現れる。
ノイトの魔法の効果は在りえない程に早く切れた。しかし、その瞬間、全員の前に現れたのは──。
[水平線]
[中央寄せ][斜体][大文字][大文字][大文字][明朝体]──⦓ⰳⱀⱑⰲⰵⱀⱏ... ⰰⰸⱏ ⱅⰵⰱⰵ ⱀⰵ ⰾⱓⰱⰾⱓ. ⱅⱁ ⱆⱀⰹⱄⱅⱁⰶⱔ.⦔──[/明朝体][/大文字][/大文字][/大文字][/斜体][/中央寄せ]
[水平線]
その場に居る全ての存在が根源的な恐怖を感じた。それは突然目を覚まし、現れる。
( ヌミノース。 こ れは. .. 魔物 や 魔 族の類 じ ゃ ない . .. もっと [漢字]上[/漢字][ふりがな]うえ[/ふりがな] の... 言 うなれ ば、“[漢字]不可説の摂理[/漢字][ふりがな]ぜったい[/ふりがな]”。)
ノイトだけではない。この世界の全てがそれを感じる。根源的畏敬。絶対的なナニカ。
[水平線]
[太字][大文字][大文字][大文字][明朝体][中央寄せ]──⦓[漢字]其[/漢字][ふりがな]そ[/ふりがな]は衍。帰せよ。⦔──[/中央寄せ][/明朝体][/大文字][/大文字][/大文字][/太字]
[水平線]
次の瞬間、その無何有であるカミが巨大化...否、その姿がさらに見えるようになり、アレソティラスの禁忌魔術を呑んだ。すると、一体どこから見ていたのかも、何故姿を現したのかも知れない世界の摂理は姿を消す。代わりに、何事もなかったかのように平穏な空が広がっていた。
(.........。)
しばらくの間、誰も動けなかった。1番最初に動けるようになったのは丁度街から魔神の元へと向かおうとしていたルミナスだ。
[明朝体][太字]「リュミエさん、大丈夫でしたか?! 早くお兄ちゃんたちの元へ向かいましょう!!」[/太字][/明朝体]
ルミナスの言葉でようやく思考を切り替えることが出来たリュミエは頷いてノイトたちの方へと駆け出した。
「...あっ、うん!そうだね。急ごう!!」
ノイトもレイクもラルカもアレソティラスも、それを理解しようとしてしまったがために脳の処理が追いつかない。
(存在が暗黙の公理となった、அதுの[漢字]深淵[/漢字][ふりがな]ゼニス[/ふりがな]...!!)
(アレは...すべての根源...?世界の理そのものかのような圧倒的存在感......。)
(なんだアレは......神...?神、なのか...?)
[大文字][明朝体](我を...我の魔術は、[漢字]世界[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]には要らぬということか...?)[/明朝体][/大文字]
誰一人として理解することすら許されないその存在のことを、誰も考えてはいけない。