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死にたがりな君と血濡れたナイフ

#4


「ごめんな。」

そう言う男の感情が、女…リナは理解が出来なかった。

コイツは何を謝罪してるんだ?

言動、態度、性格全てにおいてこの男が理解が出来ない。

思考の過程がブラックボックス。まるで人工知能と対話しているようだった。

そもそも凶器を突きつけられているのに、なんでそんなに嬉しそうなんだよ。

新手の変態かコイツは。

出てくる嫌悪感を隠そうともせず、全面的に表に出すと同時に疑問が湧く。

本当にコイツは私が狙っているターゲットなのか?と。

「意味分かんねぇよ。何でお前が謝るんだ。」

思わず口に出してしまった。

「あのな、嬢ちゃん。俺は人様に指図できるような立派な人生送ってきてないんだわ。生きてる価値なんて微塵もありゃしないぜ。生きる希望も無いしな。」

自分を卑下する目の前の男。
その目はどこか遠くを見るような、淋しげな雰囲気を漂わせていた。

くそ、調子狂う。

いつもの[漢字]ターゲット[/漢字][ふりがな]クソ野郎[/ふりがな]だったら、泣いて喚いて反吐垂らしながら、自分のしてきたことを正当化して「見逃せ」、なんてい言うのに。

普段なら同情など一切しないのに。何でだろう。



『リナ、私に生きる意味なんて無いのかな。』

「リナ、ごめんね』



艷やかな黒髪をわしゃわしゃと掻きながら顔をしかめる。

嫌なこと思い出しちまった。

「殺すならさっさと殺せよ。今こうして息吐いてる時間も、俺のせいで地球温暖化っつーやつが進んでるんだぜ。」

なんだよそれ、ムカつく。

本当なら一息に、首を掻き切ってやりたい。でも、出来ない。能からの命令も体が拒否する。向けたナイフは宙に静止したままだ。

コイツに悪意は感じない。というか、あんな事件を引き起こしたようなやつに見えない。

殺せない。殺すことを目的で来たのに。

「おいオッサン、お前の名前何?」

「翔太…。」

「なぁ翔太。お前今さっき生きる意味無いって言ったよな?」

私の言葉にこくりと頷く。

はあと一つため息をつき

「私がお前の生きる理由を探してやる」
と放つ。

驚いてまじまじと私の顔を見つめる翔太。

何そのマヌケな顔、ウケる。

ああ、私今最高に頭おかしいんだ。全部、全部コイツのせいだ。

ターゲットを見逃すなんて。あの記憶を思い出してしまったから。

くそ、と小さく呟く彼女の顔は、どこか嫌そうであり、誇らしげだった。

2024/12/13 22:51

なつめ ID:≫9tvY7vP3G1jVg
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