「は？」

俺の言葉を聞いた途端、素っ頓狂な声を上げて少しのけぞった彼女。驚きながらも見つめるその黒い目は明らかに引いてる眼であって。

握っていたナイフがからんと軽い音を立て、床に落ちる。

あーあ、またやっちまった。

どうして俺はいつもこうなんだ。

家が貧乏でスマホを買ってもらなかったため、クラスの話題に中々ついて行けず、友達と向き合うより机と向き合う時間が多かった高校生活も。

大学に進学してやっと買ってもらえた念願のスマホに浮かれきって羽目を外しすぎてしまった大学生活も。

『お前空気読めよ』

『皆これにで良いって言ってるから良いよね？』

『それ、今言う必要ある？』

学生生活と言われ、思いだすのはもう顔も名前も覚えていないようなクラスメイトから罵倒され、批判されている自分。

今でも悪夢として出てきてしまうこの忌まわしい思い出を一刻でも早く脳内フォルダから消去してやりたい。やりたいのに……。

それらのトラブルを作っている原因が俺だと言うことに自分でも気付いているから思い出しちまうんだ。残っちまうんだ。

やっぱり自分ってつくづく空気が読めない奴なんだな。自己嫌悪に陥りながらも名前も知らない彼女に呟く。

「……ごめんな。」