悪ノ怪様によろしく【Lier's world】
雨の降る外の景色。
[漢字]陰日[/漢字][ふりがな]かげび[/ふりがな]と書かれた表札はすっかり濡れてしまっている。
雨はしとしとと落ちていく縁側を伝って、木の床の体温までも奪っていく。
______雨は好きじゃない。
だからと言って雨が嫌い、という話でもないけれど。
夜空に輝く星々を雲に覆い隠されると言うのは、僕にとって気分のいいものではない。
天体観測がまともにできなきゃ[太字]未確認の飛行物体も、ましてや宇宙人なんて、それこそまた夢の話になってしまうんだから。[/太字]
「[太字][漢字]宇宙[/漢字][ふりがな]そら[/ふりがな][/太字]ぁ、ご飯できたわよぉ」
陰日「あ、ありがとうおばあちゃん!じゃあ一緒に食べよ!」
今僕にいる唯一の頼り身のおばあちゃん。
僕の大切な人。[太字]いっつも笑顔で優しくて、大好きな人。[/太字]
「無理させちゃってごめんねおばあちゃん、明日僕料理手伝うからさ、ご飯作る時になったら言って?」
無理させちゃってるってのは僕でも分かってるから、ちゃんとこうやって手伝いだってする。僕って偉い。
「いいのかい?ありがとうねぇ、宇宙は本当に優しい子に育ったよねぇ」
「おばあちゃんほどじゃないよ」
「.........にしてもねぇ本当、[太字]うちの息子が可哀想よ、こんな優しくて素直な子を置いてっちゃうなんてねぇ[/太字]」
「大丈夫だよおばあちゃん、[太字]お父さんはきっと戻ってくるから!ね?[/太字]」
そう、お父さんは█████████だから!
████████なんて嘘に決まってる!
だってお父さんは、[太字]宇宙人に連れ去られただけなんだから![/太字]
だから雨なんか降ってないでさ、[太字]早く夜空で飛んでるUFOをこの目に納めなきゃいけないの![/太字]
[太字]それだけでお父さんも、お母さんも、皆が救われるから![/太字]
「........おばあちゃんが作るご飯っていっつも美味しいよね。俺おばあちゃんの作るご飯大好き」
「あらそう?じゃあ今度は宇宙も一緒に作ってみるかい?」
「え、いいの!?やったぁ!約束だよおばあちゃん!」
「ふふ、宇宙は大袈裟ねぇ」
「だって本当に嬉しいんだもん!」
ふと眺めた先の雨は豪雨に様変わりしていた。
流星群みたいで、地に当たる度きらきらと音を立てている気がする。
熱心に目の先で月刊ムーンの文字列を辿ってくだけの、寂しい空気の染みついた二人の食事。
何だかんだでこの生活がいつも、元の僕に戻らなくたっていいんだよって教えてくれる。
全部嘘だから何も聞かなくていいんだよって、誤魔化し笑いしてくれる。
[太字]これがきっと、『今の僕の』幸せ。[/太字]
他のことなんて、気にしなくていい。
右腕に巻いた花蘇芳のブレスレットが「残念だよ」と言うみたいに、幸せな幻覚の甘い香りを冷たい風に乗せた。