悪ノ怪様によろしく【Lier's world】
魔法とは何か?
魔法は爆ぜ、[漢字]蠢[/漢字][ふりがな]うごめ[/ふりがな]き、[漢字]闊歩[/漢字][ふりがな]かっぽ[/ふりがな]する。
泣き、怒り、[漢字]憤慨[/漢字][ふりがな]ふんがい[/ふりがな]する。
癒やし、傷つけ、戦わせる。
薬と同じようなものだ。
飲めば解毒剤になると同時に、足を踏み外せば毒となる。
そしてそれを誰も知らず、呑気に毒を飲み続ける。
______ならば、そうだ。
[太字]神にすら手に負えなくなって、全てを見捨てられた世界の話をしようか。[/太字]
[水平線]
魔法だなんて、結局はちっぽけでくだらないもの。
周りを見てみろ。
[太字][漢字]鉄の塊[/漢字][ふりがな]でんしゃ[/ふりがな]が走って、[漢字]一枚の板[/漢字][ふりがな]スマホ[/ふりがな]で情報という情報の森羅万象を一瞬にして手にすることができる。
そこに魔法だなんて冗談は存在しなくて、完全なる[漢字]夢物語[/漢字][ふりがな]メルヘン[/ふりがな]。[/太字]
そんな幼稚でおふざけなものは[漢字]端[/漢字][ふりがな]はた[/ふりがな]から存在しない。
[太字]そこにあるのは文明と、物理だけ。[/太字]
そんな、退屈で、どうでも良くて、それでも幾分かは食べやすいような、そんなお話。
[太字]どこかに本当にあるかもしれない、そんなお話。
_______そうやって、物語は今日も描かれていく。
能力のない世界、それこそ、描いた彼が望んだ世界だった。[/太字]
その中には鼻で笑いそうになるほど馬鹿馬鹿しい愚者の幻覚にしか見えないような話だったり、
完全なる[漢字]御伽噺[/漢字][ふりがな]おとぎばなし[/ふりがな]だろうと足蹴にしたくなるものも、人によってはあるかもしれない。
知らない男が、知らない宗教の知らない唯一神を私達に、社会常識だと謳うようなものだ。
しかし、それを描き集め揃った一つのパズルで、束の間の空想に浸るというのは、一種の彼の趣味でもあった。
暗くなった景色の街灯から差し込む光に照らされ、世界に傷のつかないよう、原稿を下敷きにして。
「.........やっと終わった。」
漫画家である彼、[太字]メトロ・エイシド[/太字]の心を一番に満たせるのは、歳月を費やし、自らの手で作り上げたものを、初めて『完成品』と称される事だった。
[太字]ふと見れば、雨が降っていた。[/太字]
しとしとと音を立てて、窓に霧が立ち込める。
[太字]噂が人々の心を恐怖に染め上げていくように、じわり、じわりと。[/太字]
窓は白さを携えていく。
この雨はしばらく止みそうにない。
霧にぼやけた街灯の光を探るよう、張り付けの白を遊び心で拭い、そこに綺麗な黒猫を指先から創る。
[小文字]メトロ「........別にもう、[太字]描きたくはないのに[/太字]」[/小文字]
猫は死期が近づくと主の前から姿を消すと言う。
がんじがらめならいっその事、[太字]私も同じようになってしまいたかった。[/太字]
窓に描いた猫は段々と、形を成さずに溶けゆくのだった。