鏡の向こうの君は誰
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翌朝
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いつも通り、鏡を見た。
鏡には、
私じゃない誰かが映っていた。
奇妙に思えて叫んでしまった。
お母さんや弟が来てしまうかもと思ったけれど、意外にも誰も来なかった。
代わりに。
「はる君」が此方を向いた。
声を出した。
[明朝体]「はるちゃん?」[/明朝体]
[明朝体]「春花ちゃんだよね」[/明朝体]
「うん。」
大人びていて、艶やかで。
美しい顔に似合った声だった。
あぁ、そういや春樹君は人気だったなぁ。
輝いていたなぁ。
そう考えると、
私は春樹君に嫉妬した。
腹が立った。
ずるい。
なんでそんなに輝いているの?と。
問いたくなった。
「なんでそんなに輝いているの?」
[明朝体]「僕からしたら、君の方が輝いていると思うよ」[/明朝体]
[明朝体]「僕はくすんでいるさ。」[/明朝体]
理解できなかった。
[明朝体]「それよりだね」[/明朝体]
話を逸らしやがった。
[明朝体]「僕は困っているんだ。」[/明朝体]
「え?」
[明朝体]「いいや、正確にいうとだな。」[/明朝体]
[明朝体]「僕は困ってしまったんだ。ついさっき」[/明朝体]
「何故?」
[明朝体]「そのうち君も困ると思う。」[/明朝体]
[明朝体]「同じ理由でね」[/明朝体]
やっぱりこの人とは次元が違うように思えた。
理解ができない。
何を言っているのか分からない。
そう思っていたら、
[小文字]「おねぇちゃん。」[/小文字]
[小文字]「助け」[/小文字]
弟のか細い声。
「え、」
[大文字]「はるちゃんっ...聞こえるかしら。お母さんよ、お母さん」[/大文字]
「なに?」
[大文字]「どうにか[/大文字]音ちゃんだけでも[小文字]助けてあ」[/小文字]
音ちゃん。
私の弟。
それが?
どうした?
「どういうこと?」
「助けるって」
「何?」
「私は何をすればいいの?」
「お母さん、お母さん?」
「何が起きているの?」
「私はどうすれば...」
[大文字][明朝体]「君は」[/明朝体][/大文字]
春樹君の美しい声が響く。
[明朝体]「今、困っただろう?」[/明朝体]
「...うん。」
[明朝体]「同じ状況さ」[/明朝体]
[明朝体]「僕も、君も」[/明朝体]
「そう。やっと理解できた」
[明朝体]「流石だ。」[/明朝体]
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