25時、夜に堕ちて。
「…!」
奏も気付いたみたいだ、彼女の存在に。
彼女の目には光が灯っていなかった、何に絶望しているのだろうか。
「ミク……どうしてここに人がいるの?」
彼女は、機械音声のような淡々とした声で、ミクにそう聞いたが、ミクは黙ったまま。
「………雪」
奏は、ぼそっとそう呟いた。瑞希と絵名が安心したかのようにほっと息を漏らした。
「K…?えななんとAmia、夜もいたんだ…」
瑞希と絵名が安堵の声を漏らす中、雪は静かに黙っていた。
「私は、ここに一人で居たい」
その声を無視して、雪はぼそっと呟くように本音を口から零していた。もう、「25時、ナイトコードで。」の一人として曲を作りたくないらしい。
「じゃあ、雪は一人で、OWNとして曲を作っていきたいの?」
奏が無表情で佇む雪に尋ねた。瑞希と絵名は驚き、焦っているよう。雪も例外ではないのだろうか。
雪もそれを認め、何故か絵名が怒っているみたい。その二人を必死に瑞希が宥めていた。
「…ニーゴにいる必要がないの、足りなかったから」
雪は、奏の曲に救ってもらえる、自分が見つかる、と思っていたのか、はたまた違うのか。奏がかなり傷ついているようだが、私には知ったこともない。
正直、どうでもいい、と思っている。世間一般では「薄情」と言われるだろうが、言葉に出さなければいいだけでしょう。
「もういいや、この人達を追い出して」
雪が冷徹に、淡々とそう言った。
「あなたは、本当に一人で見つけられるの?」
ミクと名乗る少女が不安気に雪にそう尋ねている。
「それで見つからないなら、私はもう……消えるしかない」
雪が淡々と暗い言葉を積み重ねていく。そして、「消える」という言葉に絵名と瑞希が反論し始めていた。それに反するように、奏は息を押し殺し、怒っているみたいだった。
「だって本当は、KもえななんもAmiaも夜も、誰よりも消えたがってるくせに」
雪が霜を触ったかのように、冷たく、鋭く、痛い言葉を投げかけた。
「 「っ…!」 」
えななんとKがびっくりして声を上げた。
それに反して、珍しくAmiaは息を押し殺していた。そして、それに対して、Amiaが反論すると、雪がAmiaに完璧に言い返した。
「……へぇ」
Amiaは聞いたこともないような低音をこの空間に響かせていた。
「ミク、この人達はこのセカイにいらない」
雪は話を切り、ミクの方を向いてそう言った。ミクは頷いて、絵名、瑞希、奏の順で消していっていった。奏の耳元で何かを呟いていたが、私には知ったことじゃない。
「………早く帰らせて」
「………あなたは、何か話したいことがある?」
疲れているくせして、何を聞いているのやら。
「ない、帰らせて」
淡々と会話が進んでいる。そして、ミクが私の体を触れた。現世に戻してくれたみたい。
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