夏のインターハイが終わった。桜南高校は決勝戦で脅威の力を見せたが、ミスが増え桜南高校は、2位で幕を下りた。

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真緒は夏のインターハイでの敗北から、いまだに立ち直れずにいた。優勝が手の届くところにあったのに、自分の判断ミスと緊張から、試合は一瞬のうちに崩れ去った。その日の悔しさは、何度も彼女の脳裏をよぎり、晴れた空の下ではなく、常に暗い影の中を歩いているような気持ちを引き起こしていた。

校舎の裏にある古びた体育館へ向かう道を歩く真緒の心には、少しずつ決意が芽生えていた。「次は絶対に勝つ。これが私の最後のチャンスじゃない」と。その思いが彼女の心を支えていた。

桜南高校バドミントン部の現状は寂しいものだった。昨年のメンバーが次々と卒業し、新入部員は数えるほどしかいなかった。真緒の他には、ひとつ年下の新入部員、安田晴斗がスタメンを任されていた。彼は身体が大きく、見るからに元気いっぱいな性格だが、経験は真緒に比べると浅い。それでも、彼には真緒にないものがあった。それは、無邪気さと真剣さだ。彼女は、その二つを育てていく責任を感じていた。

体育館のドアを開けると、木の床が心地よく鳴り響き、真緒の心も高まる。彼女はコートの真ん中に立ち、青いバドミントンのシャトルを手の平に載せた。軽やかなシャトルの感触に、少しずつ心が解きほぐされていく。「今日もいい練習をするぞ…絶対に無駄にはしない」と自分に誓った。

その時、「おはよう、真緒さん！」と、晴斗の声が響いた。彼の声は太陽のように明るい。元気な姿を見て、真緒の心にもほのかな安堵が広がった。互いに目を合わせ、彼の表情にはまっすぐな熱意が宿っている。今、彼がいることが彼女を少しでも支えていることを感じた。

「じゃあ、まずは基本のストロークからやろうか」と真緒が言うと、晴斗はすぐに頷き、ラケットを構えた。彼のストロークはまだまだ未熟だったが、ミスをしても笑顔を崩さず、自分の未熟さを受け入れながら練習に励む。真緒はその姿勢に心が柔らかくなり、自分自身も成長しようと思い始めた。

練習が進むにつれて、真緒は晴斗の成長を実感する。「この子はきっと伸びるかもしれない」と希望が湧いてくる。そんな折、晴斗が突然真剣な眼差しで言った。「真緒さん、僕もインターハイに出たいな。真緒さんと一緒に、もっと強くなりたい！」

その言葉が真緒の心の奥底に隠れていた不安を少しずつ消していく。「一緒に頑張ろう、晴斗。私も今年こそインターハイで勝ちたいから」と真緒は彼に返した。彼の言葉は響き、彼女の心に新たな希望を灯した。

彼の存在が、彼女の背中を思いっきり押してくれる。二人はこれから、共に強くなるチームを作っていくのだ。風吹く体育館の窓からは、まるで私たちの挑戦を応援してくれているかのような爽やかな風が入ってきた。
「頑張ろう、桜南高校！私たちの挑戦は始まったばかりだ！」真緒は決意を胸に、再びシャトルを打ち返した。

「今のは、チャンスだった！スマッシュかドライブで決めなきゃ！」真緒がみんなに言う。「はい！」みんなの返事は体育館に轟き、未来への道しるべのように響き渡り、清々しい空気を感じさせた。

新たなスタートを切った二人は、毎日一歩ずつ、夢に向かって進んでいく。練習の合間には笑い声が絶えず、時にはお互いの悩みを分かち合ったり、バドミントン以外の話で打ち解けたりもした。青春の真っただ中にいる彼らは、仲間として巻き起こす熱い想いと共に日々を過ごし、互いを高め合っていくのだった。

「私たちが勝つ未来を、心の中に描こう。シャトルを追いかける中で、必ずそれが見つかるはずだ」真緒の心には、彼女の思い描く未来が強く刻まれていった。

次回.2話:練習試合