二次創作
霊感体質少女の受難
やっばーい。今世史上の大ピンチかもしれない。
さて、ここで私の選択肢は2つ。
何も見なかったふりして帰るか、怪異と話してみるか。
まぁ何も見なかった一択なんだけど何気に意思疎通が出来る怪異って初めて見たから、私はともかく久遠だけは攫わないでくださいっ!!!って正直に言うのも出来るかもしれない。
かもなんだけどねっ!!
「こんにちは、さっきはお参り来てくれてありがとうなー」
「………」
「この家不思議やなぁ、西洋式の結界貼られてて怪異が全然入られへんねんけど」
「………」
無視しろ。
何も見なかったふりして部屋に戻ろう。おばあちゃんの家には何故か怪異は入れないから、戻ったら大丈夫だ。
「入れはせんけど、祟ることはできるで」
「……っ!」
枝の間から除く垂れ目がきゅっと、楽しそうに細まった。
「なぁ、お話しよや」
繋くんが知性のある怪異は関わったらヤバいと言っていた理由が、なんとなく分かる気がする。
「………は、い」
あゝごめんねお母さん、お父さん、久遠。
めちゃくちゃめんどくさい事に巻き込まれて、先立つ親不をお許しください。
「なぁなぁ、栗子ちゃんっていつから俺らのこと見えるようになったん?」
「栗子……?」
「だってほら髪の色が栗っぽいやん」
「なるほど?」
なるほど、さっぱり分からん。
家は入れへんけど中の人祟れんで〜という脅しに屈して、私は今垣根越しに怪異と話している。
うっかり選択肢を間違えたら食われるか、祟られるか。気に入られたら付き纏われるか、連れ去られるか……。地獄の口頭試問辞めよぉ……と言っている暇はない。
えーっと確か、いつから怪異が見えるようになったかだっけ?
「さぁ、気づいた時には見えてました」
「ほーん。じゃあ誰かに怪異について教えてもらったりしたんか?俺らの対処法やけに知っとるみたいやん」
「対処法って程でもないですけど、見える人知り合いから怪異は基本は無視するのと。境界線は渡ったらダメだと教えてもらいました」
「だから川渡らんかったんやな。賢い賢い」
全然褒めてなさそうなトーンで言われてもな。
もちろん対処法はなんちゃってオタク知識と実体験、あとは近所の見える仲間繋くんに教えて貰った。
繋くんとは、近所の商店の跡取り息子である烏養繋心のことだ。見た目はヤンキーだが、なんだかんだで面倒見がいいし優しい。漫画でよく見る雨の日に「お前もひとりなのか…」って言って捨て猫拾うタイプだ。
まぁご両親とも健在でよく久遠と御つかいに言ってるんですけど。
「というか、あなたあの時のきつねさんだったんですね」
「そうそう。あの時、川の向こうに居たかっこいい狐さんやで。あのお稲荷さんうまかったわ、またちょうだいな」
二度と行きたくないですが???と言ったら怒られそうなので言わなかった。
ではでは、そろそろ夕ご飯の匂いがしてきたので切り上げるとするか。
「それじゃあ、私はご飯食べに行きますね。祠までは御気をつけて」
「ほな、“また”な栗子ちゃん」
ぺこりと頭を下げて網戸を閉めた。
そしたら一気にドクッドクッと、心臓が耳元に移動したんじゃないかというぐらい煩くなって、怖かった。
すぅーっと背筋に凍ったように冷たい汗が伝う。
あー!!怖かった……!!
すぐにおばあちゃんに言って本職の人を呼ばせてもらおう、早くあの怪異から離れたい。
祀られていたということはそれなりに力があるのは間違いないから、今の会話で気に入られたら終わり、嫌われても終わるクソゲー。急がないと、急いで離れないと。
部屋の障子を開けた。
それからの記憶はない。