二次創作
霊感体質少女の受難
「七つまでは神のうち」
と、いう言葉がある。
昔は医療技術が発展していなくて、7歳までに亡くなってしまう子供が多かったため、7歳までは天からの預かりものでいつ天へ帰ってしまってもおかしくないから、大切にしようねという風習が由来なんだと、お母さんは教えてくれた。
でも祖母はお母さんの説明に加えて、7歳までの子どもは人ではなく神様がいる黄泉に近い子だから大切にするんだと、そういう宗教的な意味も教えてくれた。
よく分かってなさそうに首を傾げる久遠にだいぶ端折って、七つまでは神のうちって言葉は「子供を大切にしようね〜!」という意味だと教えた。
こういう座学的なものには興味がないのか冷たい畳の上にゴロンっと転がって、若葉が茂っている山を見つめていた。今にも探検に行きたそうだけど、反対に私はこのまま冷たい畳の上で寝転がっていたい。
「七つまでの子共は神さんのもんやから簡単に連れでいかれでまう。久遠も刹那もまだ6歳やから、“神さんの領域”に近づいたらあかんで」
そう言って皺々の手で私達二人を撫でた。
6歳のお盆の夏、私達は兵庫のおばあちゃんの家にやってきた。
辺鄙という言葉が似合う山沿いの町は殆ど人がおらず、狐や狸の野生動物の方が多いとおじいちゃんが冗談めかして話すほど田舎だけど、その分家は広いし山の探検もできる。
つまり遊びたいざかりの久遠には絶好の遊び場だ。
「刹那!刹那!刹那!!山行こ、山!」
「行かな〜い」
「なんでェ!?」
「だって暑いもん。私まだおばあちゃんと一緒にいる」
「えー一緒に行こうよ!」
ねーねーねーっと、私に絡み続ける久遠をおばあちゃんはベッドの上から愛おしいそうに見つめる。
一昨年から足を悪くした祖母は介護ベッドから降りることは殆どない。
おじいちゃんや一緒に住んでいるお叔母さんはいつもはラジオや本ばかり読んで暇そうなので、孫の私達が来ている間は楽しそうだと言っていた。
なら少しの間でも一緒に居てあげようと思ったし、おばあちゃんの家は怪異が居ないからどこでも安心してくつろげる。
特におばあちゃんの側は空気は綺麗な気がして一緒にいると心地いいからずっと一緒に居たい………けど、このままだと久遠一人だけで山に行ってしまいそうだ。
どこでも怪異は居る。もちろん山にもだ。
山にいるのは一筋縄ではいかないとても強い怪異が多いので、久遠だけで行くとうっかり怪異と遭遇して死ぬか、連れて行かれるかされてしまいそう。
過保護かもしれない。だけど、心配だった。
さて、どうしたものかと頭を悩ませていると、おばあちゃんがあるお願いをしてきた。
山にある祠までおまい入りに行ってきて欲しい、っと。
曰く、一昨年まで毎日お参りに行っていたけど最近は足を悪くして山を歩くどころか家を歩くことすらままならない。だから、二人に行ってきて欲しい。
多分、おばあちゃんは私がおばあちゃんを気遣っていると思ってお願いという形にしたんだと思う。お願いという形なら私も断りにくいしね。
そんなおばあちゃんを気遣っている私を気遣ったおばあちゃんの提案を断る訳にも行かず、水筒とお供え物をリュックに入れて山を歩くことになった。
「あるこー、あるこー!わたっしはー元気ー!」
小さな目玉が道端を転がっていても気にしない。
木の上からぶらーんっと人っぽいものが垂れ下がっていても気にしない。
内臓が見える魚が空中を泳いでいても気にしない。
なぁーーーんにも気にせず道を歩く。
おばあちゃん家から山にあるという祠までの距離はそんなに遠くない。
家を出て、真っ直ぐにに行くとコンクリートの階段があって、登り切ると舗装がされていない人が歩いた後!って感じの坂道がある。そこを10分ほど歩いた先に祠がある。
大人の足で10分なので子供の私達ではそれ以上掛かってしまう。背の高い木々や、生い茂る草木もあって、気分はさながら山の冒険家だ。
久遠もはしゃいでトト□を歌っている。
それをbgmに蝉時雨の山道をひたすら歩いた。木陰に入ると涼しい風がまだ青い草の匂いを運んできて、これぞ田舎の夏という感じだ。
「刹那、刹那!」
「なあに?」
「ほこらって、どんなんだろうねー」
「久遠も祠見たことあるよ」
「えー!そうだっけ?」
「ほら、このまえ遠足にいったときにちっちゃい神社みたいなところあるでしょ?あそのことだよ」
「もしかし、妖精さんのおうちのこと?」
幼稚園の遠足で行った公園にあった祠を、久遠は神様ではなく妖精さんのお家だと思っていたらしい。
その幼さ故の発想が可愛らしくて思わずニコニコ笑ってしまった。
……だけど、あの公園の祠は妖精さんなんかの家なんて可愛いものではない。
公園に入った瞬間、感じる恐ろしい気配の根源からして祀ってあるのは妖精などではなく、かなり邪悪でタチの悪い怪異だ。
関わらない方がいいヤツだけど………あの遠足の時に目をつけられたのか、最近ずっと幼稚園に居る。
そう、例の超高身長のぽぽぽぽ言ってる怪異の事だ。
アイツ、私が見えていることに気づいているのか時折驚かそうとしてきて、カーテンの向こうからいないいないばあ〜(婉曲表現)をしてきたりするので、反応しないことに必死だ。
と、いう言葉がある。
昔は医療技術が発展していなくて、7歳までに亡くなってしまう子供が多かったため、7歳までは天からの預かりものでいつ天へ帰ってしまってもおかしくないから、大切にしようねという風習が由来なんだと、お母さんは教えてくれた。
でも祖母はお母さんの説明に加えて、7歳までの子どもは人ではなく神様がいる黄泉に近い子だから大切にするんだと、そういう宗教的な意味も教えてくれた。
よく分かってなさそうに首を傾げる久遠にだいぶ端折って、七つまでは神のうちって言葉は「子供を大切にしようね〜!」という意味だと教えた。
こういう座学的なものには興味がないのか冷たい畳の上にゴロンっと転がって、若葉が茂っている山を見つめていた。今にも探検に行きたそうだけど、反対に私はこのまま冷たい畳の上で寝転がっていたい。
「七つまでの子共は神さんのもんやから簡単に連れでいかれでまう。久遠も刹那もまだ6歳やから、“神さんの領域”に近づいたらあかんで」
そう言って皺々の手で私達二人を撫でた。
6歳のお盆の夏、私達は兵庫のおばあちゃんの家にやってきた。
辺鄙という言葉が似合う山沿いの町は殆ど人がおらず、狐や狸の野生動物の方が多いとおじいちゃんが冗談めかして話すほど田舎だけど、その分家は広いし山の探検もできる。
つまり遊びたいざかりの久遠には絶好の遊び場だ。
「刹那!刹那!刹那!!山行こ、山!」
「行かな〜い」
「なんでェ!?」
「だって暑いもん。私まだおばあちゃんと一緒にいる」
「えー一緒に行こうよ!」
ねーねーねーっと、私に絡み続ける久遠をおばあちゃんはベッドの上から愛おしいそうに見つめる。
一昨年から足を悪くした祖母は介護ベッドから降りることは殆どない。
おじいちゃんや一緒に住んでいるお叔母さんはいつもはラジオや本ばかり読んで暇そうなので、孫の私達が来ている間は楽しそうだと言っていた。
なら少しの間でも一緒に居てあげようと思ったし、おばあちゃんの家は怪異が居ないからどこでも安心してくつろげる。
特におばあちゃんの側は空気は綺麗な気がして一緒にいると心地いいからずっと一緒に居たい………けど、このままだと久遠一人だけで山に行ってしまいそうだ。
どこでも怪異は居る。もちろん山にもだ。
山にいるのは一筋縄ではいかないとても強い怪異が多いので、久遠だけで行くとうっかり怪異と遭遇して死ぬか、連れて行かれるかされてしまいそう。
過保護かもしれない。だけど、心配だった。
さて、どうしたものかと頭を悩ませていると、おばあちゃんがあるお願いをしてきた。
山にある祠までおまい入りに行ってきて欲しい、っと。
曰く、一昨年まで毎日お参りに行っていたけど最近は足を悪くして山を歩くどころか家を歩くことすらままならない。だから、二人に行ってきて欲しい。
多分、おばあちゃんは私がおばあちゃんを気遣っていると思ってお願いという形にしたんだと思う。お願いという形なら私も断りにくいしね。
そんなおばあちゃんを気遣っている私を気遣ったおばあちゃんの提案を断る訳にも行かず、水筒とお供え物をリュックに入れて山を歩くことになった。
「あるこー、あるこー!わたっしはー元気ー!」
小さな目玉が道端を転がっていても気にしない。
木の上からぶらーんっと人っぽいものが垂れ下がっていても気にしない。
内臓が見える魚が空中を泳いでいても気にしない。
なぁーーーんにも気にせず道を歩く。
おばあちゃん家から山にあるという祠までの距離はそんなに遠くない。
家を出て、真っ直ぐにに行くとコンクリートの階段があって、登り切ると舗装がされていない人が歩いた後!って感じの坂道がある。そこを10分ほど歩いた先に祠がある。
大人の足で10分なので子供の私達ではそれ以上掛かってしまう。背の高い木々や、生い茂る草木もあって、気分はさながら山の冒険家だ。
久遠もはしゃいでトト□を歌っている。
それをbgmに蝉時雨の山道をひたすら歩いた。木陰に入ると涼しい風がまだ青い草の匂いを運んできて、これぞ田舎の夏という感じだ。
「刹那、刹那!」
「なあに?」
「ほこらって、どんなんだろうねー」
「久遠も祠見たことあるよ」
「えー!そうだっけ?」
「ほら、このまえ遠足にいったときにちっちゃい神社みたいなところあるでしょ?あそのことだよ」
「もしかし、妖精さんのおうちのこと?」
幼稚園の遠足で行った公園にあった祠を、久遠は神様ではなく妖精さんのお家だと思っていたらしい。
その幼さ故の発想が可愛らしくて思わずニコニコ笑ってしまった。
……だけど、あの公園の祠は妖精さんなんかの家なんて可愛いものではない。
公園に入った瞬間、感じる恐ろしい気配の根源からして祀ってあるのは妖精などではなく、かなり邪悪でタチの悪い怪異だ。
関わらない方がいいヤツだけど………あの遠足の時に目をつけられたのか、最近ずっと幼稚園に居る。
そう、例の超高身長のぽぽぽぽ言ってる怪異の事だ。
アイツ、私が見えていることに気づいているのか時折驚かそうとしてきて、カーテンの向こうからいないいないばあ〜(婉曲表現)をしてきたりするので、反応しないことに必死だ。
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