二次創作
霊感体質少女の受難
「刹那!はやく!」
「待って、久遠。バスはまだ来ないよ」
あれから数年。私達はみるみる内に成長して保育園児になった。
黄色い帽子に水色のスモック。
一般的な幼稚園児の姿でバスにのりこみドンドコドンっと揺れが激しいバスに揺られて幼稚園まで登園する。
その間にも首のない人が道端に蹲っていたり、家の隙間からぎょろぎょろとした目玉がのぞいたり、空中で血だらけになりながらバレーを踊っている女の人がいたり。
圧倒的ホラーな光景に思わず目を背けたくなるけど背けた先にも何故か手が生えてるんだよね………いや、何故?
まぁ無視してたらいつの間にか消えてるんだけどさァ………
転生して双子の兄を得たのはいいだろう。最初は混乱してよく分からなかったけど、吹っ切れた今では色々しでかす兄は見ていて楽しいからいいんだけど、コレが見えるのは全くもって楽しくない。
転生して霊感体質に目覚めた私は人間以外の様々なものが見えるようになった。
幽霊、妖怪、化け物、怪異、モンスター、魑魅、怪物、幽鬼、魔物、妖魔、その他エトセトラ。呼び方は色々あるけど、総称として怪異と呼んでいるソレ。
ベビーベッドに寝ていた頃、私のほっぺたをツンツンしてきたのも怪異だ。アレは人の形から明らかに外れているから怪異だと分かったけど、中には人の形に限りなく近いモノもいてそれに反応すると見えると分かって他の怪異まで寄ってくる。
取り敢えずソレらに反応を見せなければ飽きて消えていくので、スルースキルを全力で発動させて何事もなかったかのようにしていればいい。転生してから要らんスキルばっかり磨かれてしまう……
吹っ切れて幼稚園児生活を送っているけど、中身は大学生なので外で鬼ごっことかする元気はない。だから室内で絵本を読んだり、絵を描いたりして遊んでいる。
反対に久遠は元気に鬼ごっこをして、外に行くのを渋る私を無理矢理つれだして遊ばさせるタイプ。
双子だけど男女だし、性格も反対だけど仲は良いと先生たちには認識されている。
今日もいつも通り久遠は鬼ごっこに誘ってきたけど、今日は嫌だった。というか、行ったらダメだと思った。
だから久遠も引き留めて一緒に本を呼んでいる。普段は自分なから言わない私の頼みだったから、不思議に思った久遠は部屋の端っこで一緒に本を読んでいる。
窓側にはできるだけ近づきたくなかったので、端っこで絵本に集中しているフリをした。最初はちょっとつまらなそうな久遠だったけど、絵本にハマったのかしばらくしたら齧り付くように読み始めた。
私も絵本を膝に置いて「赤ずきんちゃん」をパラパラと読む。
そして自由時間が終わってお片付けの時間になった。読んでいた本を閉じて、元の棚に戻そうとしたけど久遠がついて来ていない。いつもならすぐずったりせずに、ぐにお片付けするのに不思議だった。
「くおん、おかたづけの時間だって」
「んー」
「くおん、たなに本なおさないとおこられちゃうよ」
「やー」
「くおん」
「あとちょっとだけ」
生返事。
いつもなら呼びかけただけで犬みたいに近寄ってくるのに、変だと思った。
そして、その原因が久遠が持っている絵本だということにも。
早歩きで久遠のところまで行って、目線を合わせる為にかがみ込んだ。
「久遠」
真っ黒な表紙に赤いタイトルが書かれた不思議な絵本を無理やり閉じさせる。勢いよく閉じたせいでダンっと、音が響いた。
「豆原 久遠」
「んぇっ………えっ、刹那?」
「えほん、なおそ?」
フルネームで呼べば久遠はハッとしたように絵本を戻しにいった。
名前は魂と繋がっているから呼べば戻ってくる……とは聞いたけど、本当に[漢字]戻って[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]来てくれてよかった。
あのままあの絵本に飲み込まれていたら、危ないところだった。
絵本を戻してきた久遠はいつも通りの元気いっぱい小僧になっていた。名前を呼べばすぐに返事もしれくれるし、今すぐにも鬼ごっこしたそうだ。
でも今はご飯中だから落ち着いて。
しっかし、なんであんな魂を吸おうとするような危険物が幼稚園にあるんだろ?
曰くつきとまでは分からなくても、あの異様な表紙を見れば幼児に読ませる本ではないと分かるだろうに。
他の子が読まない為に後で回収した方がいいかなと思ったけど、いつの間にかあの絵本は無くなっていた。
そういう怪異なのか、誰かに回収されたのか……前者だった場合は二度と現れない事を、後者だった場合は悪用されない事を祈ろう。
そんな事を考えながらチラリと大きな滑り台がある幼稚園の庭を見た。そこには朝から相変わらず、怪異がいた。
カンカン帽にすこしダボついたシャツ。
そして異様に長い身長。
帽子のつばの向こうから鋭い眼光が覗いていた。
「ぽ、ぽぽぽぽ」
「待って、久遠。バスはまだ来ないよ」
あれから数年。私達はみるみる内に成長して保育園児になった。
黄色い帽子に水色のスモック。
一般的な幼稚園児の姿でバスにのりこみドンドコドンっと揺れが激しいバスに揺られて幼稚園まで登園する。
その間にも首のない人が道端に蹲っていたり、家の隙間からぎょろぎょろとした目玉がのぞいたり、空中で血だらけになりながらバレーを踊っている女の人がいたり。
圧倒的ホラーな光景に思わず目を背けたくなるけど背けた先にも何故か手が生えてるんだよね………いや、何故?
まぁ無視してたらいつの間にか消えてるんだけどさァ………
転生して双子の兄を得たのはいいだろう。最初は混乱してよく分からなかったけど、吹っ切れた今では色々しでかす兄は見ていて楽しいからいいんだけど、コレが見えるのは全くもって楽しくない。
転生して霊感体質に目覚めた私は人間以外の様々なものが見えるようになった。
幽霊、妖怪、化け物、怪異、モンスター、魑魅、怪物、幽鬼、魔物、妖魔、その他エトセトラ。呼び方は色々あるけど、総称として怪異と呼んでいるソレ。
ベビーベッドに寝ていた頃、私のほっぺたをツンツンしてきたのも怪異だ。アレは人の形から明らかに外れているから怪異だと分かったけど、中には人の形に限りなく近いモノもいてそれに反応すると見えると分かって他の怪異まで寄ってくる。
取り敢えずソレらに反応を見せなければ飽きて消えていくので、スルースキルを全力で発動させて何事もなかったかのようにしていればいい。転生してから要らんスキルばっかり磨かれてしまう……
吹っ切れて幼稚園児生活を送っているけど、中身は大学生なので外で鬼ごっことかする元気はない。だから室内で絵本を読んだり、絵を描いたりして遊んでいる。
反対に久遠は元気に鬼ごっこをして、外に行くのを渋る私を無理矢理つれだして遊ばさせるタイプ。
双子だけど男女だし、性格も反対だけど仲は良いと先生たちには認識されている。
今日もいつも通り久遠は鬼ごっこに誘ってきたけど、今日は嫌だった。というか、行ったらダメだと思った。
だから久遠も引き留めて一緒に本を呼んでいる。普段は自分なから言わない私の頼みだったから、不思議に思った久遠は部屋の端っこで一緒に本を読んでいる。
窓側にはできるだけ近づきたくなかったので、端っこで絵本に集中しているフリをした。最初はちょっとつまらなそうな久遠だったけど、絵本にハマったのかしばらくしたら齧り付くように読み始めた。
私も絵本を膝に置いて「赤ずきんちゃん」をパラパラと読む。
そして自由時間が終わってお片付けの時間になった。読んでいた本を閉じて、元の棚に戻そうとしたけど久遠がついて来ていない。いつもならすぐずったりせずに、ぐにお片付けするのに不思議だった。
「くおん、おかたづけの時間だって」
「んー」
「くおん、たなに本なおさないとおこられちゃうよ」
「やー」
「くおん」
「あとちょっとだけ」
生返事。
いつもなら呼びかけただけで犬みたいに近寄ってくるのに、変だと思った。
そして、その原因が久遠が持っている絵本だということにも。
早歩きで久遠のところまで行って、目線を合わせる為にかがみ込んだ。
「久遠」
真っ黒な表紙に赤いタイトルが書かれた不思議な絵本を無理やり閉じさせる。勢いよく閉じたせいでダンっと、音が響いた。
「豆原 久遠」
「んぇっ………えっ、刹那?」
「えほん、なおそ?」
フルネームで呼べば久遠はハッとしたように絵本を戻しにいった。
名前は魂と繋がっているから呼べば戻ってくる……とは聞いたけど、本当に[漢字]戻って[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]来てくれてよかった。
あのままあの絵本に飲み込まれていたら、危ないところだった。
絵本を戻してきた久遠はいつも通りの元気いっぱい小僧になっていた。名前を呼べばすぐに返事もしれくれるし、今すぐにも鬼ごっこしたそうだ。
でも今はご飯中だから落ち着いて。
しっかし、なんであんな魂を吸おうとするような危険物が幼稚園にあるんだろ?
曰くつきとまでは分からなくても、あの異様な表紙を見れば幼児に読ませる本ではないと分かるだろうに。
他の子が読まない為に後で回収した方がいいかなと思ったけど、いつの間にかあの絵本は無くなっていた。
そういう怪異なのか、誰かに回収されたのか……前者だった場合は二度と現れない事を、後者だった場合は悪用されない事を祈ろう。
そんな事を考えながらチラリと大きな滑り台がある幼稚園の庭を見た。そこには朝から相変わらず、怪異がいた。
カンカン帽にすこしダボついたシャツ。
そして異様に長い身長。
帽子のつばの向こうから鋭い眼光が覗いていた。
「ぽ、ぽぽぽぽ」
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