二次創作
霊感体質少女の受難
そんな感じ時間は過ぎて、いつの間にやら眠気を誘う午後2時過ぎを時計の針が刺していた。
前世大学生で、彼氏の浮気の証拠集めとレポートに追われていたので赤ん坊の食っちゃ寝生活は暇に感じる。
なので祖母が出産祝いにくれたぬいぐるみを唾で汚さぬように気をつけながら、握ったり離したりして握力トレーニング。まだ寝返りは打てないのでこれくらいしか出来ることがない。
でもいい加減疲れてきたので握力トレーニングは辞めて、双子用のベビーベッドに転がった。
久遠は握力トレーニングをしていた私が気になっていたのか、眠たそうに目を閉じたり開いたりしているけど寝ていない。寝れないからとぐずられても母の迷惑になるので、久遠を寝かせることにした。
また小さな手を重ねて、私はここに居るよと主張すると久遠は驚くほどすぐに眠る。
双子だし何かあるのかな?と考えたけど、言葉はまだ発せれないし、赤ん坊に出来ることは限られているので暇だ。
もうちょっと大きくなったら双子のシンクロ率とか調べてみたいなーっと考えながら私も眠りにつく。
ふわふわと意識が霧散するように現実世界から遠のいていき、一気に夢の中に入るようなこの瞬間が気に入っていたりする。今日も羊代わりに天井のシミを数えて、少しずつ意識が遠のいていく…………
そんなとき、眠気も何もかもをすっ飛ばす悍ましいモノが“見えた”。
体と釣り合いが取れない大きな顔にはギザギザの歯があって、今にも食べられそうだった。枝のように細い腕をベビーベッドの柵に掛けてじっとこちらを見て来た。
見るからに人外だ。ぜったい見えたらダメ系の化け物だ。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
何を喋っているのか分からない。
分かるのは言葉もこの地球上には存在しないってことだけ。
ソレは恐ろしかった。
ソレは悍ましかった。
ソレは恐怖を感じた。
ただ本能的に見えていることがバレてはいけないと思ったので、絶対に反応はしなかった。
視線を違う方向に移動させて目を閉じる。
必殺、狸寝入り。
私は今から寝るんです。オマエのことなんて見えていません。そういう気持ちで存在を無視する。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
「……」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎」
「………」
「⬛︎⬛︎」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
「……」
なのにお構いなしに化け物は勝手に喋ってその場を動かない。恐ろしさで身が凍るようだった。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
その言葉が合図だったのだろうか。
あっマズい、そう思った時にはもう遅くてソレは私に手を伸ばされていて私のふくふくのほっぺに冷たい指が置かれていた。
怖い。怖い、怖い。
どうしよう、泣きそう。泣いたら見えるってバレる、振り払いたい。振り払えない。なんでこんなことになってるの?
分かんないどうしよう、どうしよう………どうしよう。誰か助けて……
そう願った時、私の手に温かい体温が重ねられた。
狸寝入りしていることも忘れて目を見開くと、親指をしゃぶりながらこっちを見つめる片割れがいた。
手を重ねただけ。だけど、重ねただけで得られる安堵感があった。
まるで「大丈夫だよ、泣かないで」と言っているような気がして自然と涙は引っ込んだ。
暫くして化け物は飽きたのかベビーベッドから離れて、壁へと消えていった。是非、二度とお越しくださらないでください。
「あーふ、ぇ」
ありがとう。
未発達な声帯を震わせて精一杯のありがとうを伝える。
そうすると久遠は大きな目をいっぱいに見開いてから、いつものふにゃふにゃな微笑みを向けた。
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