狐の面は貴方を隠す。
鈴side
二日目の茜音祭。
亜海は旅行で行かないと言っていたが、彼氏とデートするのを知られたくなくてついた嘘のようだ。
人の恋バナは聞きたがるのに自分の話は一向にしない、それが亜海。
お母さんもそんな感じだよな…全く、なんで私の周りには人間関係に口を出す輩が多いんだ?
佐久「…さっきからうんうん唸ってるけどどうかしたか?」
鈴「いやなんでも〜?」
そういえば、佐久と祭り回ってるんだった。
鈴「よし、あれ食おう!」
私が指さしたのは『パフェ』と書かれている看板の隣にある唐揚げの出店だ。
佐久「…お前ほんと女子っ気ないよな」
鈴「ひどくない!?」
佐久にまで呆れられるとは…私も落ちたもんだな…
女子っ気がない点については、そりゃそうかとも思う。
兄と弟に挟まれた一人娘だ。影響されないはずがない。
鈴「だって甘いの苦手だし…」
佐久「…そうか」
鈴「反応薄っ!佐久なんかしらね〜っと…」
ふいっと佐久と顔を背けると、見たくないものが目に入った。
そいつから目を逸らす、が見つかってしまったようでこっちへやってくる。
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「鈴〜!なんで無視すんだよ〜」
茶髪の癖毛で、鈴より小柄だ。お面をつけているので顔が分からない。
一番驚くところは、彼にくっついている3人の女子。
ギラギラと目を光らせ、まるで天敵を見つけたヒョウのような顔をして鈴を見ている。
その様子を見て一言。
鈴「お前一回死んだら?」
「でも僕が死んじゃったら悲しむ子達がいるから〜」
ね、と後ろにいる女子にウインクする。
佐久「お前誰?」
明らかに警戒している仕草で癖毛の少年に尋ねる。
「はっ!鈴、彼氏?」
鈴「二回くらい死んでこい」
彼の恋愛センサーがピコンと立つ前に辛辣な言葉を浴びせる。
「あ〜…なるほどね。まぁいいや、僕は[漢字]佐方蓮[/漢字][ふりがな]さかたれん[/ふりがな]。鈴の[漢字]弟[/漢字][ふりがな][太字][太字][太字]・[/太字][/太字][/太字][/ふりがな]で〜す!」
なぜ『弟』を強調したかは謎だ。
佐久「え、こいつ弟?」
鈴「いや他人」
蓮「ひどくない…?」
「ねぇ行こうよぉ〜お義姉さんなんて放っておいてさ〜」
蓮「あ、そうだね。じゃあ楽しんで〜」
奇妙な猫撫で声の女子と一緒に、人混みの中に消えていった。
鈴「お“義姉”さんって聞こえたの気のせい?」
佐久「大変だなお前」
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