二次創作
運命の糸は絡まり続ける
[明朝体] ドアがパタリと閉まり、少しの喪失感が生まれる
ドアから視線を外し、一度部屋をくるりと見渡す
『.........本棚...』
彼の部屋に本棚、あるんだな。意外だなぁ.........
そんなことを間抜けに考えていたら、不意に目が止まったモノがあった
『恋愛攻略本、運命のあの子と結ばれちゃうかも..............』
"恋愛攻略本〜運命のあの子と結ばれちゃうかも〜"という本が、ふいに目に留まった
どうしても気になって、それが誰のものかなんて忘れて無意識に手を伸ばしていた
「すみません、忘れ物して.......!」
ガチャというドアの音と聞き覚えのある声で、現実へ引き戻され、ハッとする
直ぐに体勢を直し、声のした方へ視線を向ける
『あっ、どうしたの?忘れ物って.......』
「えーっと........タオル忘れたんですよね.....』
『わ、大変だ』
直ぐに取ってきなね、と彼に告げると、彼が少し視線を傾け一歩踏み出す
その瞬間、いつの間にか彼の足元にあったタオルを、踏んでしまったガオナァくん
そして、体勢を崩しこちらへと傾く身体
「.....っと...!?........ぎゃっ!」
『.......っわ.....!?』
15センチ以上あった距離がいつの間にか、10センチ未満になっていた
目の前には、少し髪の乱れた彼。心なしかその頬は赤く染まっており、緊張感が走った
「..........」
『..........』
彼の橙色の目に見入る。その視線に捕まり、離してくれない
顔、綺麗だな。鼻高いし、目だっておっきい。よく見たら、髪の質感だって.......
ガオナァくん、
かっこいいな
《駄目だよ?》
私の脳に語りかけてくる、よく通る声
いやそれより、私今なんて.........
《○○ちゃんは、この子のことかっこいいなんて思っちゃ駄目だよ?》
《ほら、よく思い出して........?彼の糸は、何色だったっけ?彼の糸は、
君に繋がってる?》
ハッとして、橙色の目から視線を逸らす
駄目だ、気の迷いだ。早くこの状況を、
『が、ガオナァくん.......?』
「.......っあ、すいません!直ぐ退きます!」
ほんの一瞬、僅かに彼の苦しそうな顔が、私の瞳に映った
「タオル、見つかったので行ってきますね!」
『あ、うん........』
バタンと、やや強く閉められた扉。
あーあ、何考えちゃってんだろ.........ガオナァくんは運命の子じゃないでしょ?
彼にはもっといい子が居るし、運命の人と出逢わなきゃ..........
なのに、
熱くなる体温を、下げることができなかった
(勘違いの慈しみさえ)[/明朝体]