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能力者たちの詩編歌

#3


黄夏視点

シエルさんいい人だったなぁ。
さすがレイル先輩の妹。
いまわたしは、引き続き参考になりそうな文献を探しつつ、街を散策している。
こういうのはフィールドワークが大事だからね多分。
で今ちょっと疲れたから公園のベンチに座ってる。

黄夏「ふう…」
すると。

~♪
どこからか綺麗な男性の歌声と、笛の音色が聞こえる。
黄夏「広場とかによくいる吟遊詩人さんかな…?」
音のする方へ近づくと、美しい水色の長髪の男性が歌を歌っていた。
横には少し背が低めの、金髪の男性が笛を吹いている。
黄夏「珍しい、二人コンビの詩人さんなんて見たことない」
そう思ったのもあって、わたしはその歌を聴くことにした。

黄夏「…あれ、この歌詞…?」
不思議に思って、注意して聞いてみる。

「雫垂れしかの山 木々から漏れる光が
指し示すそこには 精霊の歌が聞こえる
勇敢な凱歌 幸福に満てる声は
そこに薄青の 戦士の宝石ありと謂う」

黄夏「…戦士の、宝石」
なにか引っかかる気がした。

視点は切り替わり
歌を終えて

「おい、ソプラノ。しれっとおひねられようとすんな」
オレの傍で愛想よく笑いながらしっかりお金をいただいていく友人にツッコミを入れる。
ソプラノ「アルト君。これは私たちの歌への感謝の気持ちなのだよ。私たちはこれを受け取り、次の演奏に活かすべきなのさ。」
アルト「かっこよく金を巻き上げるクズ」
ソプラノ「ひどい」

オレたち吟遊詩人(まぁ、オレは作曲を主に担当して、
ソプラノが歌ってるけど)の仕事は、こうして街中で演奏をすること。
もちろんそれだけでは生きていけないので委託された仕事もやったりするけど。

元々この世界の吟遊詩人っていうのは、神や精霊、天使へ歌をささげ、お告げをもらって生きる。そんな職業なんだけど。
オレは正直、神は信じてない。
だって、神がいたなら…

オレもソプラノも、もっと良い生活出来てたと…思ってしまうから。

ソプラノ「そうだアルトk(((

「あの!!」

唐突に背後から女性の声がする。
ソプラノ「…なんだいお嬢さん。キミも詩人志望かな?」

黄夏「わたし、黄夏って言います。詩人志望じゃないですけど…少し、話が聞きたいです」

ソプラノ視点

アルト「…で。話ってなんだよ」
ソプラノ「こら、アルト。乱暴な話し方はよしなさい」
アルト「お母さんみたいな言い方腹立つ」
黄夏「あの、わたしさっき貴方たちの歌を聴いていて、それで…少し、気になる歌があったんです。
…戦士の宝石、というのは。一体何のことなんでしょうか」
私たちの茶番に揺るがないどころか、まさかの歌への質問とは。
案外面白い女性かもしれないね…

ソプラノ「…わからない。」
黄夏「え?!」
アルト「おい、意地悪かよ、いい加減に…」
ソプラノ「違う。本当に知らないんだ。私はこの歌を、森で歌う吟遊詩人から教わっただけだからね」
アルト「…は…?」

ソプラノ「私はよく、作詞のために森へ行くんだ。森はいい、精霊たちの力がよく働いている。
そんな森の深くの方でね。綺麗な銀の竪琴を持った吟遊詩人に会ったんだ。
昔ながらというか、神へ捧げる歌を歌うような人でね。
彼は私が詩人と知り、ある歌を歌ってくれた。」
黄夏「その歌というのが…」
ソプラノ「そう。黄夏君、君が質問してくれた歌だよ。
その歌では秘宝の在処を歌っていた。その秘宝が何かは、私にはわからないが。
私はその歌にひどく感動した…だから教えてもらったのさ。」

私が話し終わると、彼女はしばらく黙ってから、こう答えた。

黄夏「…やっぱり、わたしの思った通りでした」
アルト「は?どういうことだよ」

黄夏「その秘宝。わたしが知ってるとしたら…どうしますか?」

彼女の瞳には、何か奥のありそうな想いが宿っていた。


吟遊詩人。
彼らは昔、神や精霊、天使に捧げるために歌っていたそうだ。
今の私たちのような詩人とは違い、信仰のための歌を歌う職業。
アルトは昔、『神なんか信じてない。』って言っていたが…
私は神を。精霊を、天使を。存在すると思っている。
なぜって?

面白いからさ。
万物はすべて、それらの力で働いてるっていうことだろう?
これほど興味深いことはない。

今目の前にいる黄夏君が、本当に秘宝を知っているなら。
神を信じる詩人が歌った秘宝を知っているなら。
私は、その秘宝を知りたい。

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作者メッセージ

今回全部誰かの視点で動いてますね。
獰猛おとうふです。
最近上げている小説たちの閲覧数が上がってきて嬉しい限りです。
今回出た新キャラの設定↓

天音アルト
男 16歳 音楽家
能力 「変声」自分の声のピッチと大きさを自在に変えられる
イメソン リバーシブル・キャンペーン

海風ソプラノ
男 23歳 歌手
能力 「戦歌」音の力で殴る(音が高いほど攻撃力が増すが、最大でもhi-Eまでしか操れない)
イメソン 幽霊東京

リバーシブル・キャンペーンはいいぞみんな聴こうね(((
次の話も近いうちに上げるので、待っていてくれるとありがたいです。

2024/10/22 00:05

おとうふ ID:≫rpvJPv02lqkiQ
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