二次創作
君にサーブ!
「青葉城西、コート入りまーす!!」
アナウンスが響くと同時に、会場がざわついた。
今日は準決勝。相手は烏野。
そして――勝てば、決勝の相手は白鳥沢。
「行ってくるぜ、チビマネちゃん」
「頑張ってください!勝ってください!」
「うん、もちろん!」
岩泉先輩が力強くうなずいてくれた。
松川先輩と花巻先輩も、それぞれ私に手を振ってくれる。
最後に目が合ったのは、及川先輩。
(“俺を見てて”って言ったくせに、そんな目で見られたら、こっちが泣きそうになる)
「いってらっしゃい、キャプテン」
「……頼むよ、チビマネちゃん。俺、ちゃんとカッコつけてくるから」
そして、試合が始まった。
◇ ◇ ◇
――1セット目、烏野が先取。
――2セット目、青葉城西が巻き返す。
「ナイスサーブ!!及川!!」
「よし、流れきてるぞ!」
会場は沸き上がり、応援席もヒートアップ。
私も、手が痛くなるほどタオルを握りしめていた。
3セット目――最終セット。点差は常に1〜2点の攻防。
そして、スコアは23-24。
青葉城西、あと1点で――負ける。
「……ラスト、止めるぞ!!」
岩泉先輩の叫びが響いた。
(お願い……)
及川先輩の目が、ボールを、相手を、そして――
私たちの方を、ほんの一瞬だけ見た気がした。
サーブ。
ラリー。
レシーブ。
スパイク。
ブロック。
拾う――
……だけど、最後の1本。
青葉城西のスパイクは、相手の壁に跳ね返された。
「――試合終了!!勝者、烏野!!」
静かだった。
耳が、遠くなった。
コートに倒れ込む岩泉先輩。
しゃがみ込んで顔を覆う松川と花巻。
そして、膝をついて天井を見上げる及川先輩。
私の目にも、何か熱いものが溢れていた。
(負けた――)
でも、誰もが全力だった。
誰もが、戦い抜いた。
私は、タオルと水を持って、コートに駆け寄った。
「……先輩……」
「……ごめん、勝つとこ……見せられなかったな」
「そんなこと……ないです。かっこよかったです」
及川先輩は泣いてなかった。
けど、その瞳は濡れていた。
「……もうちょっとだけ、そばにいて」
「はい」
私はそっと彼の隣に座って、黙って空を見上げた。
引退――その言葉が、胸に痛いほど響いていた。
◇ ◇ ◇
その日の夜。宿舎のベンチで、及川先輩と2人きり。
「……引退したら、俺、ちょっとは変わるのかな」
「えっ?」
「……好きって、素直に言えるようになれるのかなって」
心臓が、止まりかけた。
「……それ、誰にですか?」
しばらくの沈黙。そして――
「……チビマネちゃんに、だよ」
アナウンスが響くと同時に、会場がざわついた。
今日は準決勝。相手は烏野。
そして――勝てば、決勝の相手は白鳥沢。
「行ってくるぜ、チビマネちゃん」
「頑張ってください!勝ってください!」
「うん、もちろん!」
岩泉先輩が力強くうなずいてくれた。
松川先輩と花巻先輩も、それぞれ私に手を振ってくれる。
最後に目が合ったのは、及川先輩。
(“俺を見てて”って言ったくせに、そんな目で見られたら、こっちが泣きそうになる)
「いってらっしゃい、キャプテン」
「……頼むよ、チビマネちゃん。俺、ちゃんとカッコつけてくるから」
そして、試合が始まった。
◇ ◇ ◇
――1セット目、烏野が先取。
――2セット目、青葉城西が巻き返す。
「ナイスサーブ!!及川!!」
「よし、流れきてるぞ!」
会場は沸き上がり、応援席もヒートアップ。
私も、手が痛くなるほどタオルを握りしめていた。
3セット目――最終セット。点差は常に1〜2点の攻防。
そして、スコアは23-24。
青葉城西、あと1点で――負ける。
「……ラスト、止めるぞ!!」
岩泉先輩の叫びが響いた。
(お願い……)
及川先輩の目が、ボールを、相手を、そして――
私たちの方を、ほんの一瞬だけ見た気がした。
サーブ。
ラリー。
レシーブ。
スパイク。
ブロック。
拾う――
……だけど、最後の1本。
青葉城西のスパイクは、相手の壁に跳ね返された。
「――試合終了!!勝者、烏野!!」
静かだった。
耳が、遠くなった。
コートに倒れ込む岩泉先輩。
しゃがみ込んで顔を覆う松川と花巻。
そして、膝をついて天井を見上げる及川先輩。
私の目にも、何か熱いものが溢れていた。
(負けた――)
でも、誰もが全力だった。
誰もが、戦い抜いた。
私は、タオルと水を持って、コートに駆け寄った。
「……先輩……」
「……ごめん、勝つとこ……見せられなかったな」
「そんなこと……ないです。かっこよかったです」
及川先輩は泣いてなかった。
けど、その瞳は濡れていた。
「……もうちょっとだけ、そばにいて」
「はい」
私はそっと彼の隣に座って、黙って空を見上げた。
引退――その言葉が、胸に痛いほど響いていた。
◇ ◇ ◇
その日の夜。宿舎のベンチで、及川先輩と2人きり。
「……引退したら、俺、ちょっとは変わるのかな」
「えっ?」
「……好きって、素直に言えるようになれるのかなって」
心臓が、止まりかけた。
「……それ、誰にですか?」
しばらくの沈黙。そして――
「……チビマネちゃんに、だよ」