二次創作
君にサーブ!
卒業式の日。
グラウンドの奥にある、誰もいない体育館。
私はそこで、ひとり――最後の空気を吸い込んでいた。
(青葉城西で過ごした時間、全部が宝物みたいだった)
ドアが開く音。
「やっぱりここにいた」
振り返ると、制服姿の及川先輩。
でも、どこかあの頃の“キャプテン”とは違う雰囲気で――ちょっと大人びて見えた。
「……ここ、俺たちが最後に戦った場所」
「……覚えてます。あの時の声も、空気も、全部」
少しの沈黙のあと、及川先輩が優しく笑った。
「――もう、試合もないけど。今日だけは、チビマネちゃんと話がしたかった」
「……はい」
及川先輩は、いつもの冗談も言わず、私をまっすぐ見つめて言った。
「……あの日、言いかけた言葉。ちゃんと伝えるよ」
「俺――チビマネちゃんのことが、好きだった。いや、今も好き。ずっと好き」
心臓の音が、鼓膜を打つ。
全身に熱が広がって、目の前が少しぼやける。
「……私も、ずっと……先輩のこと、好きでした」
及川先輩は、一歩だけ近づいて、そっと私の頬に手を添えた。
「今からサーブ打ったら、ちゃんとレシーブしてくれる?」
「……受け止めます。どんな速さでも、どんな角度でも」
2人だけのコート。
ボールはないけど、心は確かに、受け渡された。
「……じゃあ、今日から俺の彼女、なってくれる?」
「……はい!」
返事をした瞬間、及川先輩がふわっと笑って――
ほんの少し、私の額にキスを落とした。
「チビマネちゃんは、もう“チビ”じゃないね。俺にとっては、でっかい存在だったよ」
その言葉に、涙がこぼれた。
嬉しくて、寂しくて、でも確かに幸せで。
◇ ◇ ◇
それから。
及川先輩はアルゼンチンへ。私は2年生として、新しい代のマネージャーになった。
彼は遠くから、時々LINEをくれる。
「そっちのチビマネちゃんは、元気にやってる? こっちは凄く元気です☆」
とか、
「今度会いに行ってもいい? 会いたいからさ」
とか。
私はスマホを抱きしめて、心の中でそっと答える。
(……もちろん、です)
春の風が吹いた体育館で、後輩たちが練習に励む中――
私は胸を張って、笑顔で叫んだ。
「みんな、練習始めるよー!!」
――青春は終わらない。君にサーブを打ち続ける限り。
グラウンドの奥にある、誰もいない体育館。
私はそこで、ひとり――最後の空気を吸い込んでいた。
(青葉城西で過ごした時間、全部が宝物みたいだった)
ドアが開く音。
「やっぱりここにいた」
振り返ると、制服姿の及川先輩。
でも、どこかあの頃の“キャプテン”とは違う雰囲気で――ちょっと大人びて見えた。
「……ここ、俺たちが最後に戦った場所」
「……覚えてます。あの時の声も、空気も、全部」
少しの沈黙のあと、及川先輩が優しく笑った。
「――もう、試合もないけど。今日だけは、チビマネちゃんと話がしたかった」
「……はい」
及川先輩は、いつもの冗談も言わず、私をまっすぐ見つめて言った。
「……あの日、言いかけた言葉。ちゃんと伝えるよ」
「俺――チビマネちゃんのことが、好きだった。いや、今も好き。ずっと好き」
心臓の音が、鼓膜を打つ。
全身に熱が広がって、目の前が少しぼやける。
「……私も、ずっと……先輩のこと、好きでした」
及川先輩は、一歩だけ近づいて、そっと私の頬に手を添えた。
「今からサーブ打ったら、ちゃんとレシーブしてくれる?」
「……受け止めます。どんな速さでも、どんな角度でも」
2人だけのコート。
ボールはないけど、心は確かに、受け渡された。
「……じゃあ、今日から俺の彼女、なってくれる?」
「……はい!」
返事をした瞬間、及川先輩がふわっと笑って――
ほんの少し、私の額にキスを落とした。
「チビマネちゃんは、もう“チビ”じゃないね。俺にとっては、でっかい存在だったよ」
その言葉に、涙がこぼれた。
嬉しくて、寂しくて、でも確かに幸せで。
◇ ◇ ◇
それから。
及川先輩はアルゼンチンへ。私は2年生として、新しい代のマネージャーになった。
彼は遠くから、時々LINEをくれる。
「そっちのチビマネちゃんは、元気にやってる? こっちは凄く元気です☆」
とか、
「今度会いに行ってもいい? 会いたいからさ」
とか。
私はスマホを抱きしめて、心の中でそっと答える。
(……もちろん、です)
春の風が吹いた体育館で、後輩たちが練習に励む中――
私は胸を張って、笑顔で叫んだ。
「みんな、練習始めるよー!!」
――青春は終わらない。君にサーブを打ち続ける限り。