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秋の日のかげ

#1


秋。残暑を超えて過ごしやすくなってくるこの季節。
少年少女たちは、午後の白い日差しを受け、めいっぱいに大声で笑い、遊ぶ。

しかし、そうでない少年もいる。

「いいな…みんなで遊べるの」
青いパーカーを着て呟く少年の名は、霧雨翔馬。
彼は公園の木陰に座って、目の前の景色を羨ましそうに眺めている。

「しょうまくんはさそわないの?」
ふと、こんな声が聞こえる。無邪気な女の子の声だ。
すぐにやんちゃで意地悪な男の子の声がする。
「だってあいつがいるとおもしろくねぇもん。なぁ?」
あはは、と明るい笑い声が聞こえる。それは少年の心をちくちくと切りつけていく。

それが、霧雨翔馬の「日常」だった。

夕方。オレンジ色の空が広がっている。
先ほどとは打って変わり、閑散とした公園に、まだ一人で佇む翔馬。
木々。遊具。夕日の反対方向に伸びていくそれらの影。彼はただそれを見つめていた。

そのときだった。

「ねえ、きみ」

どこからか声がする。
可憐な少女の声。

「こんにちは!…こんばんは?狭間だから…こんばちは!」
そうして、翔馬の目の前にそれは現れた。
「うわ!?…だれ?きみ」
自分より一回り小さいような少女。
黒いロングヘアに黒いワンピース。黒ずくめの恰好が、夕日でオレンジ色に染まった公園に目立っている。

「わたし?わたしはねぇ、かげ!」
「かげ?」
かげ、と名乗る少女は、驚いて目を見開く翔馬に向かってにこっと笑う。
「きみはだあれ?」

「ぼくはしょうま。」
かげの笑顔に疑いを解いたのか、少しぎこちなく翔馬も笑う。
「あ、そうだ」
そういうと翔馬はかげに近くのベンチに座らせ、自分も隣に腰掛ける。
自分と同じように、独りでここにいる子供…
もしかしたら、「仲間」かもしれない。うっすらと希望を抱きながら、翔馬はかげに尋ねた。
「きみはどうしてここにいるの?」
すると彼女はこう答えた。

「わたしはかげだからだよ」

「かげ、だから…?」
驚いて言葉を繰り返す翔馬。お構いなしに、かげはこう続けた。
「かげはずっと、みんなをみてたよ」
「しょうまくんのことも、ずっとみてたの」
不思議な女の子だなあ、と率直に思ってしまう翔馬。
でもこういう考え方を嫌わない彼は、純粋な瞳を向けて聞いた。
「どうしてみてたの?」
「たのしいからだよ」
かげはすぐに答えてくれる。
翔馬にとって、こんなに長く同年代の子と話をしたことはこれが初めてだった。
「みんながにこにこわらって、きらきらしてるのみるの、大好きなんだ」
そう話すかげの目も輝いている。
「ぼくも、みんなが笑ってるのみるの好き」
くしゃっと笑ってみせる翔馬。その笑顔を見て、かげは言った。

「ねぇねぇしょうまくん、わたしがなんでいましょうまくんとおはなししてるか。知りたい?」
翔馬はそれを聞き少し驚いたが、すぐに
「うん、知りたい」
と返した。
「それはね…」
「それは!?」

「ないしょ!」

明るく綺麗に。少しいたずらっぽく笑うかげ。
「えぇ~、なんで?!おしえてよ!」
「だめー!」
「なんでぇ…?!」

「じゃあ、わたしとおともだちになってくれる?」

かげは翔馬のまっすぐ目の前に立って言った。
「おともだち…?」
「うん。おともだち、だよ」
初めてできる友達、それも同年代の女の子。
翔馬は初めて感じる興奮が身体を渦巻くのがわかった。
「うん!!」
今日一番の輝く笑顔で、しっかりと頷いてみせる翔馬。
2人の少年少女の様子を、もうじき沈む夕日が見つめていた。



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作者メッセージ

はじめまして、おとうふです!
今回初投稿ということで、表現力の欠如や誤字脱字があるかもしれないんですけど…
大目に見てもらえるとありがたいです…((
面白いな、と思ってくれることを願っています☆

2024/10/11 20:33

おとうふ ID:≫rpvJPv02lqkiQ
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