これで良かったんだ。……多分。
#1
『もう分かんないや。君が友達なのか______なのか。多分、___かな?』
僕はその言葉を聞いた瞬間、満たされていた心が空っぽになったんだ。すぐにバレるなんて思ってもなかったのに,バレるなんて。このことを知られたら、……きっと君は絶望してしまうと思ってたんだけど、なんで……なんで……なんで、僕をぎゅっと優しく抱きしめるのだろうか。これから君の命を奪うのにね。
[水平線]
ある日、僕___死神は人間の魂を奪う仕事をしに,人間の学校を探査しているが、今回のターゲットがなかなか見つからない。
「水間矢 翠という人を探すなんて……顔も知らないし、見つかるわけないと思うけどな」
そう言い、探していたら、ふと、後ろから探している人の名前が聞こえてきた。
「翠ちゃん! 一緒に理科室行こ!」
「……うん。良いよ! 行こう!」
あの人だ。顔も覚えれたし、後はバレずに魂を奪うだけ。今回は見つけるの遅かったけれど周りに流されそうなターゲットみたいだし、上手くいくと思う。魂を奪うときは生徒のフリをしていけば良い。ただ、どうやって距離を縮めるのかが分からない。だから今は……様子見かな。
[水平線]
様子を見て1ヶ月経った。今、僕は制服に着替えて、教室___じゃなくて、僕1人しかいない屋上にいる。何故かって?この前、彼女は登校するとすぐにここに向かうと分かっているからだ。そして、彼女に会い、今日中には魂を奪えたら上出来かな。もうそろそろこっちも動き出さないといけないし、新鮮な魂を奪うときは早くなければいけないからね。彼女について考えていると、ドアが開き、ドアを開いた彼女がこっちをみて少し驚いてから悲しそうな顔をして戻ろうとした……が、もちろん僕は動く。彼女の細い華奢な腕を掴んだ。
「……何?」
「あの……話したいことあって」
話したいこととは……友達になって欲しい、その1つの願いだった。友達といっても僕にとっては紙みたいに薄い軽いペラペラの関係なんだ、……魂を奪うだけだから。
「友達になって欲しいな」
その言葉を聞いたとき、彼女は悲しい顔から純粋の笑顔に少しずつ変わった。
「うん……良いよ!」
明るい声で返された言葉になんだか、心がずんっと重くなった。今までそんなことはなかったんだけど。
「それじゃ、放課後ここに集まろうよ。約束ね」
僕はそう言い、まだ屋上にいる彼女に手を振り、ここを離れる。これで良かった、そう思いながら自分の姿を他の人から見えなくしたのが間違いだった。
[水平線]
放課後、僕は屋上の硬い床に座っていると、彼女が後ろから脅かせてきた。びっくりしたけど、声には出さなかった。
「あれ?驚かないんだ。意外だね」
意外ということは僕、そんなに大声出す人だと思われていたのかな。……あ、危ない! 本題を忘れてその事で頭がいっぱいになりそうだった。
「そう?」
「うん。意外……っていうか、私、話したいことがあるんだけど」
話したいことって、なんだろう?
「話したいこと?」
「そうそう、私、見ちゃったんだ。……君が目の前で姿を消すところ」
聞いた瞬間、ドキッとした。でもまだバレてはいない。
「それって見違えたんじゃない?」
「ううん。ちゃんと見たんだ。消えるところ。……それで君は何か秘密があるんじゃないか?って思って」
「いいや。持ってないよ」
僕は必死に秘密を守る。そうでもしないと、僕は今の僕でいられなくなるから。
「……じゃあ、その鎌は何?」
「ッ!」
そうだった。僕は小さい鎌をポケットに入れてたんだ。取り出したら立派な鎌になる、とても便利な鎌。
「えぇーと……」
次の言い訳を探していると、彼女は僕の言葉を待つことなく、正体を当ててしまう。
「…………やっぱり友達って何か分かんない。誰もかも友達って名乗っておいてすぐに離れる。だけど君は違っていると思っていたのに…………君のことも、もう分かんないや。君が友達なのか偽善者か死神なのか。多分、死神かな?」
あともう少しだったのに。あともうちょっとだったのに。正体を当てられ、僕は多分……俯いて悲しい顔をしている。彼女が僕の顔を覗くと、ぎゅっと抱きしめ、口を開く。
「…………私の魂……もらっていいよ」
「え?何で……?」
彼女はまだ死にたくないはずだし、このことを知られたら絶望すると思ったのに、魂をもらっていいよ、そう答えたのは謎だった。
「さぁーね。でも、君と一緒にいたいからと友達……ううん、親友だしね!」
僕は彼女を見て、正体を知っても友達と言ってくれる人はこの人しかいない。この人しか頼れない。この人しか頼っちゃいけない。そう思うようになった。天界には天使や神がいるけれど僕を見ると邪魔者のように扱われ、僕に味方なんていなかったから。
「分かった。それじゃ魂、奪うよ?」
「うん。ありがとう」
『ありがとう』、僕はその言葉の意味が分からずに鎌を振り、彼女の魂を取った。これで最後の任務は終わり。人間に正体がバレたら魂になる決まりだから。僕は結果を、偉い死神に報告しに少しずつ少しずつ天界へ彼女と向かった。
[下線][大文字][中央寄せ]
多分、これで良かったんだ。[/中央寄せ][/大文字][/下線]
『もう分かんないや。君が友達なのか______なのか。多分、___かな?』
僕はその言葉を聞いた瞬間、満たされていた心が空っぽになったんだ。すぐにバレるなんて思ってもなかったのに,バレるなんて。このことを知られたら、……きっと君は絶望してしまうと思ってたんだけど、なんで……なんで……なんで、僕をぎゅっと優しく抱きしめるのだろうか。これから君の命を奪うのにね。
[水平線]
ある日、僕___死神は人間の魂を奪う仕事をしに,人間の学校を探査しているが、今回のターゲットがなかなか見つからない。
「水間矢 翠という人を探すなんて……顔も知らないし、見つかるわけないと思うけどな」
そう言い、探していたら、ふと、後ろから探している人の名前が聞こえてきた。
「翠ちゃん! 一緒に理科室行こ!」
「……うん。良いよ! 行こう!」
あの人だ。顔も覚えれたし、後はバレずに魂を奪うだけ。今回は見つけるの遅かったけれど周りに流されそうなターゲットみたいだし、上手くいくと思う。魂を奪うときは生徒のフリをしていけば良い。ただ、どうやって距離を縮めるのかが分からない。だから今は……様子見かな。
[水平線]
様子を見て1ヶ月経った。今、僕は制服に着替えて、教室___じゃなくて、僕1人しかいない屋上にいる。何故かって?この前、彼女は登校するとすぐにここに向かうと分かっているからだ。そして、彼女に会い、今日中には魂を奪えたら上出来かな。もうそろそろこっちも動き出さないといけないし、新鮮な魂を奪うときは早くなければいけないからね。彼女について考えていると、ドアが開き、ドアを開いた彼女がこっちをみて少し驚いてから悲しそうな顔をして戻ろうとした……が、もちろん僕は動く。彼女の細い華奢な腕を掴んだ。
「……何?」
「あの……話したいことあって」
話したいこととは……友達になって欲しい、その1つの願いだった。友達といっても僕にとっては紙みたいに薄い軽いペラペラの関係なんだ、……魂を奪うだけだから。
「友達になって欲しいな」
その言葉を聞いたとき、彼女は悲しい顔から純粋の笑顔に少しずつ変わった。
「うん……良いよ!」
明るい声で返された言葉になんだか、心がずんっと重くなった。今までそんなことはなかったんだけど。
「それじゃ、放課後ここに集まろうよ。約束ね」
僕はそう言い、まだ屋上にいる彼女に手を振り、ここを離れる。これで良かった、そう思いながら自分の姿を他の人から見えなくしたのが間違いだった。
[水平線]
放課後、僕は屋上の硬い床に座っていると、彼女が後ろから脅かせてきた。びっくりしたけど、声には出さなかった。
「あれ?驚かないんだ。意外だね」
意外ということは僕、そんなに大声出す人だと思われていたのかな。……あ、危ない! 本題を忘れてその事で頭がいっぱいになりそうだった。
「そう?」
「うん。意外……っていうか、私、話したいことがあるんだけど」
話したいことって、なんだろう?
「話したいこと?」
「そうそう、私、見ちゃったんだ。……君が目の前で姿を消すところ」
聞いた瞬間、ドキッとした。でもまだバレてはいない。
「それって見違えたんじゃない?」
「ううん。ちゃんと見たんだ。消えるところ。……それで君は何か秘密があるんじゃないか?って思って」
「いいや。持ってないよ」
僕は必死に秘密を守る。そうでもしないと、僕は今の僕でいられなくなるから。
「……じゃあ、その鎌は何?」
「ッ!」
そうだった。僕は小さい鎌をポケットに入れてたんだ。取り出したら立派な鎌になる、とても便利な鎌。
「えぇーと……」
次の言い訳を探していると、彼女は僕の言葉を待つことなく、正体を当ててしまう。
「…………やっぱり友達って何か分かんない。誰もかも友達って名乗っておいてすぐに離れる。だけど君は違っていると思っていたのに…………君のことも、もう分かんないや。君が友達なのか偽善者か死神なのか。多分、死神かな?」
あともう少しだったのに。あともうちょっとだったのに。正体を当てられ、僕は多分……俯いて悲しい顔をしている。彼女が僕の顔を覗くと、ぎゅっと抱きしめ、口を開く。
「…………私の魂……もらっていいよ」
「え?何で……?」
彼女はまだ死にたくないはずだし、このことを知られたら絶望すると思ったのに、魂をもらっていいよ、そう答えたのは謎だった。
「さぁーね。でも、君と一緒にいたいからと友達……ううん、親友だしね!」
僕は彼女を見て、正体を知っても友達と言ってくれる人はこの人しかいない。この人しか頼れない。この人しか頼っちゃいけない。そう思うようになった。天界には天使や神がいるけれど僕を見ると邪魔者のように扱われ、僕に味方なんていなかったから。
「分かった。それじゃ魂、奪うよ?」
「うん。ありがとう」
『ありがとう』、僕はその言葉の意味が分からずに鎌を振り、彼女の魂を取った。これで最後の任務は終わり。人間に正体がバレたら魂になる決まりだから。僕は結果を、偉い死神に報告しに少しずつ少しずつ天界へ彼女と向かった。
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多分、これで良かったんだ。[/中央寄せ][/大文字][/下線]
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