好きです、殺させて下さい。
[太字][中央寄せ][大文字]いちにちめ[/大文字][/中央寄せ][/太字]
あの手紙から約1週間後。
特に変わったことはなく、ただ変わらぬ高校生活が続いていた。
今俺は、電車でぼんやり手紙を見つめている。
まだ付け慣れないコンタクトに不快感をおぼえながらも
すっかり短くなった前髪を掻き分けて覗き込む。
有線のイヤホンが邪魔をして良く見えないけれど
ひとつ、気づいたことがあった。
グレーのレターパックの端にこんなことが書いてあったのだ。
「”はじめましてコウタくん”?...」
ごく小さい声で読み上げ、頭を捻った。
なにがなんだか分からなかったので一旦リュックにしまい、
それからスマホを開く。
イヤホンから流れる音楽が煩わしく感じるほど、
その手紙の真相がとにかく気になった。
・・・
教室へ入るとまず出迎えてくれるのは
蒼汰「よ、コータ!」
クラスメイトであり幼馴染でもある星月蒼汰。
コイツとはいわゆる腐れ縁というヤツで
小中高ずっと同じ学校へ通ってきた。
「...おはようソータ、今日も元気だね」
イヤホンを外しつつおもむろに蒼汰へ挨拶を返す。
そんな中、イヤホンをリュックへしまいながら
こっそり手紙を奥へと押し込んだ。
表情を隠すため顎に忍ばせておいたマスクを
ここぞとばかりに引き上げて
不機嫌そうな顔をするソータに再度目を向ける。
蒼汰「...ンでマスクしたんだよ」
そんなことか、と安心して息を吐くも
それが蒼汰の怒りに触れてしまったようで、
勢いよくマスクを引っ剥がされた。
「え、ちょっ」
蒼汰「理由を30文字以内で述べよ!」
今度は国語のテストに影響を受けたみたいだ。
「...急なイメチェンにちょっと恥ずくなりまして」
蒼汰「合格!」
まっすぐ俺を見つめるその蒼い目にいたたまれなくなって、
目を逸らしながらなんとか理由を話す。
それまで不機嫌だった蒼汰がわかりやすく明るくなるのを見て
本当は違うけどね、と内心悪態をついた。
(だめだ)
蒼汰と話していても頭のどこかでグレーがちらつく。
今も尚、あの手紙が気になったままだった。
返してもらったマスクをぐっと握りつぶして
なにもない空間をにらみつける。
高く響く女子の声が、無性にうざったく感じた。
それで、思わず首筋を引っ掻いた。
”好きです、大好きです、愛してます”
”はじめましてコウタくん”
あの手紙から約1週間後。
特に変わったことはなく、ただ変わらぬ高校生活が続いていた。
今俺は、電車でぼんやり手紙を見つめている。
まだ付け慣れないコンタクトに不快感をおぼえながらも
すっかり短くなった前髪を掻き分けて覗き込む。
有線のイヤホンが邪魔をして良く見えないけれど
ひとつ、気づいたことがあった。
グレーのレターパックの端にこんなことが書いてあったのだ。
「”はじめましてコウタくん”?...」
ごく小さい声で読み上げ、頭を捻った。
なにがなんだか分からなかったので一旦リュックにしまい、
それからスマホを開く。
イヤホンから流れる音楽が煩わしく感じるほど、
その手紙の真相がとにかく気になった。
・・・
教室へ入るとまず出迎えてくれるのは
蒼汰「よ、コータ!」
クラスメイトであり幼馴染でもある星月蒼汰。
コイツとはいわゆる腐れ縁というヤツで
小中高ずっと同じ学校へ通ってきた。
「...おはようソータ、今日も元気だね」
イヤホンを外しつつおもむろに蒼汰へ挨拶を返す。
そんな中、イヤホンをリュックへしまいながら
こっそり手紙を奥へと押し込んだ。
表情を隠すため顎に忍ばせておいたマスクを
ここぞとばかりに引き上げて
不機嫌そうな顔をするソータに再度目を向ける。
蒼汰「...ンでマスクしたんだよ」
そんなことか、と安心して息を吐くも
それが蒼汰の怒りに触れてしまったようで、
勢いよくマスクを引っ剥がされた。
「え、ちょっ」
蒼汰「理由を30文字以内で述べよ!」
今度は国語のテストに影響を受けたみたいだ。
「...急なイメチェンにちょっと恥ずくなりまして」
蒼汰「合格!」
まっすぐ俺を見つめるその蒼い目にいたたまれなくなって、
目を逸らしながらなんとか理由を話す。
それまで不機嫌だった蒼汰がわかりやすく明るくなるのを見て
本当は違うけどね、と内心悪態をついた。
(だめだ)
蒼汰と話していても頭のどこかでグレーがちらつく。
今も尚、あの手紙が気になったままだった。
返してもらったマスクをぐっと握りつぶして
なにもない空間をにらみつける。
高く響く女子の声が、無性にうざったく感じた。
それで、思わず首筋を引っ掻いた。
”好きです、大好きです、愛してます”
”はじめましてコウタくん”
※ダブルクリック(2回タップ)してください